――そもそも、何故横綱をテーマに曲が書かれたのでしょう。
千代の富士ですよ。凄い勝っていた時期に作ったんですよね。相撲いいじゃない、千代の富士頑張ってるやんっていう話の中から、『YOKOZUNA』になった感じですね。単純にそれだけです。
――この歌詞は当時から驚かれたんじゃないですか。
周り見てなかったですね。評価は気にしてなかったんじゃないですか? やってる方は。
で、結果としてコミックバンドって呼ばれるんやって。
――でも、代表曲へと成長していき。当時からその予感はあったんでしょうか。
思わなかったな、俺は。
うーん、そこまで考えてなかったな。
いや、いい曲ができたとは思ったんですけどね。
――演奏した回数は最も多いですよね。
やっぱ多いですね。
――愛される理由って何だと思います?
愛されているんですかね?
ゴリ押ししているんじゃないですかね(笑)。
覚えやすいからなんかな。
わりとさらっとできた曲なんですけどね。
こういうふうにしてやろうっていうのも全くなかったですね。
この曲の一番のキーポイントは、テレーレ、らしいです。人によると。
イントロが、ジャジャージャでも、ダダーダでもなくって、テレーレテレーレとしか口で言えないんですよ。後付けですけどね。
TOM(STOMPIN'BIRD)君かな、あそこテレーレとしか言えないなって言ってたって。
あ、そんな曲を作ってしまったんだなって。複雑ではないですからね、テレーレ(笑)。
――歌詞に関してはどうでしょう。
テレビ番組的な。
ご対面番組みたいな。
当時、家族の愚痴を言うテレビみたいなのがあったんですよ。
あれをいじくって小馬鹿にしたような歌詞ですよね。
――ネタを絶妙に拾ってきますね。
そうっすね、やることなかったらテレビしか見てませんでしたから。
ははははは! そういう時期あったな、5年くらい。バイトも行ってないし、一日中家におったっていう。
――96、7年くらいですか? バンドの活動が円滑に……。
いってない時でしたね。
この曲は、《飲んじゃって 吐いちゃって》の歌詞の部分じゃないですか。
これはEPICソニーにいた頃、アメリカ帰りのすんごいパーティ野郎な人と知り合って。
その人が出版会社の人で、昔、音楽誌で見ていたマスクを被った凄腕ギタリストのKUNIさんなんですけどね。
KUNIメンって呼んでますけど(笑)。で、そのKUNIメンがバーでジャックアンドソーダ20杯くれ、みたいな、わけわからへん人で(笑)。キャバクラとかも凄く行っていて、打ち上げの席でこれをやっちゃうんですよ。
『ヘイメーン。飲めよーお前ら!、パーリラ、パリラパーリラ、ハイハイ! 飲んじゃってー、吐いちゃって、なーんちゃってー、飲め飲め!』って(笑)。初めて見たんです、そういう業界ノリみたいなのを。狂ってんちゃうかなって。
わりとその人らとプライベートでも飲みに行ってたんですけど、そのパリラハイハイって何ですか? って聞いたら、掛け声だよ掛け声!って。あー、そういうのあるんやって。
それと、打ち上げでよく見る風景を重ねて歌詞にしたっていう。
まぁ、ほんまによくおりそうな。
身近にいっぱいおりましたからね。おぞましい光景でしたもん。
何なの、何でそんなにテンション上がってんの!? バカじゃないのってほんまに思いましたからね。
そのうち、ギャルっぽいのがこういうの言い出して、居酒屋でも聞くようになって。
ちなみに、これは、わりと複合技なんですよね。
HOWLING BULLにいたジャンボ君っていう人がいたんですけど、彼の口癖だったんですよ。それ、飛ばし過ぎ!って。
そのキーワードが頭に残っていて、コラムをやる時に、あんた飛ばしすぎってタイトルでやっていて。
そっから俺が、これはええ言葉や、歌詞にせなあかんわって。
――いろんな人が思い浮かぶ曲ですね(笑)。
そうですそうです。
これが、AKBっぽいとtwitterで書かれていた(笑)。
『ポニーテールとシュシュ』? そんなの、カタカナに“と”が付いてるだけやがな。
『串カツと焼き鳥』でもええやん。
(笑)。
共通点はそこしかないもん。あと髪型。
――(笑)。でも、名曲ですよ。
いいですね、いいんですね。『Too Late True Love』やれたから、これもやれたし。
――勢いがある曲とは、歌い方も必然的に変わってきますけど。
全然考えてなかった。多分何も考えてなかった、昔は(笑)。考えてたのかもしれないけど。
どっちや(笑)。でも、ネタ的には完全に身内ネタなんでね。字面だけ見ると完全にラヴソングじゃないですか。
でも、マッシュルームカットって、俺なんですよね。
それで、ダッフルコート着ていたっていう。
時代を逆流していたんで、なんかマッシュルームカットにしてしまって。
それに、ダッフルコートを着るのが、一番カッコいいと思っていたんです。
そうしたら、当時のスタッフが、俺の格好を真似したんですよね。
ダッフルコート、彼が緑で俺が赤で、それでツアーを各地練り歩いていたっていう。
それで北陸に行ったんで、二人の情景を描いたんですね、バラしてしまうと。
――《めかしてニヤリ得意気》だったんですか(笑)。
そうですよ、得意気でしたもん。おぞましいですけどね、当時の写真を見ると。やってるなー、ヒドいなーって。
見るからに南海キャンディーズの山ちゃんです。
――(笑)。でも、アルバムのジャケットのイメージも相俟って……。
佐伯(俊男)先生のイラストで。このアルバムの時、初めてやってもらったんですけどね。
やって欲しかったんです、三上寛さん好きだったし。。
――ノスタルジックな楽曲に聴こえてきますよね。
是非、そう捉えて欲しいですね。
子供とかに聴かせられないんよ……センズリ言うてもうたもん。
(PETAに)センズリ言うてくれって言った気がする。
お兄が言ってた。入れてって。
面白いから。当時、子供とかもおらんし、お客さんも面白がってくれるから、いいかなって。
俺は大分嫌やってん。ライヴで歌われへんもん。今やから言えるけど、センズリって……。
――それ以外にも、そういう言葉が散りばめられてますよね。
露骨ですよね。完全に盛ってますね。ちょっと下品な感じにはしたかったんですよ。ぼかすよりは。
曲で、センズリとか言ってるのは、三上寛さんくらいしか知らないので、寛さんに並ぶくらいになればいいかなって。
ただ、今、カミさんが子供に聴かせているらしく、どうしようかなって……まぁ、しょうがないですよね。
そのうち、そういう言葉も覚えるし。この曲で覚えてもらったら本望ですよ。
――曲が男臭いから、こういう歌詞になったんですか?
曲ありきやったな。荒野っぽかったから、何故かこうなってしまった。
荒野関係ないよな、完全に。荒野が殆ど描写されてない。いきなり下ネタ全開やもん。
この、《恋人はサンタクロースもといダッチワイフ》っていうのも、時代感じさせる。わからへんやろ。
松任谷由美の『恋人はサンタクロース』を『恋人はダッチワイフ』って間違えてもうたって面白いネタやなって思ったんやけど、今となっては、恋人はサンタクロースって何かわからへんもん。
――他の曲もそうですよね。時代をちゃんと反映しているという(笑)。
ほんまや。時代は切り取ってますよ。
これ、《トゥ トゥ》って歌ってて、《Truth》って歌詞がええなぁって思って。
ごっつちっさいところしか言わへんな。
なんか怒ってる感じ……。
――《Truth》が引き金になって、歌詞を書いたということですか?
そう、そこ。
全然わからへん(笑)。
あんま意味ないねん(笑)。そういうのが多い。感覚です。
――ライヴではやり続けていますよね。
最近そうですね。ストレートじゃないですからね。
勢いはあるけど、コンパクトに変速が入っているので、ライヴ流れの中で面白い展開になるので。
流れは壊さずにあっと思わせるセクションにはちょうどいいんでね。
ちょっと猥褻な。今読むと。
多いっすね。下ネタ的なのは。身近におったんじゃないですか? ナルシストが。
ぶっさいくなのに鏡見てメイクしているバンドマンとかを見つつ、バカじゃないっていう話をしながらこうなったんじゃないですかね。若かったですからね(笑) それをストーリー仕立てにしたっていう。
――曲に関してはどうでしょうか。
これはとにかく、これっていうジャンルの曲にはしたくない時期だったので、いろんな要素を入れましたね。刻みだの重いリフだの、展開にしろそうですけど。
これが(PESSINが)イントロに半日かかった曲です。
先が見えなかったですね。レコーディングが終わらないと思いました。イントロの10何秒でそれなんで。
これ半日ってことは、残り10曲を録るのに、何年掛かるんかなって。
どうしようかな……指なくなった方がええんかなって(苦笑)。
――これを越えて今があるっていう。
よかったなぁ(笑)。
はい(苦笑)。
『群青』の時は、最初ミックスで聴いた時に、うるうるしましたね。
できてよかったって。
ええ歌やなって思った。俺もうるってきたもん。
だから、今回はリベンジですね、自分的には。
半日じゃなくて、ちゃんと録るっていう。
――当たり前ですけど、すんなり行きましたよね(笑)。
いやぁ、すらっと行きました(笑)。
――そういう物語を考えると、『再録ベスト』のラインナップには入るべき曲でしたね。
そうですね。
重要!。
――こういう、大人の男らしい路線も、この曲あたりからはじまった気がします。
そうですね。曲として新しい感じですよね。渋みのある、背中で泣いている系です。
なかなかそこまでできてなかったので、できてよかったですね。
ちょうどその頃、身内に不幸があったりして。まだ若くて周りにそういうことがなければ、こういう歌詞にも曲にもならないんで。ある程度年齢を経たからできた気がしますね、この曲は特に。
今までとは詞の世界観も変わったんで。
――絶妙な情景描写に留まらない、深く味わえる歌詞というか。
そうですね。
流れ的には、『荒野のさびしん棒』の流れですよね。
――でも、歌詞は胸キュンなところもあり。
これも知り合いの失恋話を聴いて。お客さんで来てる子なんですけど。
それで、失恋モッシュすればって言ったのがタイトルになったっていう。
落ち込んでいるんで、泣きながらモッシュすればいいよって。
――そこで“失恋”と“モッシュ”っていう絶妙な組み合わせが。
モッシュっていう言葉が、また回りまわってやってきたっていう認識の方が強いんですけどね。
アンスラックスの時期とか言ってましたけど、それから暫くモッシュって言葉、ダサくて使われなかったですけど、昨今ライヴでモッシュっていう言葉をヤングの間で聴くようになって、だから敢えて使ったろうと。
――これは読んで字の如く、タイトルはラモーンズからきているんですか?
いやいや、結果そうなりましたけど、ある人がいて、めっちゃバカで、それを見ていて、結果そうやって生きるのが楽なんちゃうかなって思って、《馬鹿になりたいよ》というキーワードで俺が歌詞を書いたんです。
これ、元々、『流星雨』の歌詞にしようと思っていたんですよ。
そうしたら、ええ加減にしてくれって(PETAに)言われて。
そうやったっけ。
そうそう。それでこれはオムニバス(『The Very Best of PIZZA OF DEATH』)に入る曲になって。
――《暴れだすトラウマ》とか、悲しい言葉も混じっていますが。
自分のことちゃうの?。
ほぼそうかもしれない(苦笑)。
作った発端は、バカな人を見て作ったんですけどね。
何回言ってもバカ故にわからないっていう。辛かったですね。
――みんな知ってる方のようですね。
そりゃあもう。
形を変えて、この曲と対になっているのが『ダメ男のメロディー』なんですよ。
あれは歌詞を上手いこと書いて、俺らみたいなダメな男でも、っていうふうに持っていってるんですけど、発端はそのダメ男=馬鹿になりたいよ、の人なんで。
――2曲もできるくらい、相当のストレスがあったんですね。
そうですそうです。
それはそれでありがたいですけどね、そういう落とし物してくれて、歌詞ができましたから。
――《伝説のセラピスト》は現れなかったと。
いや、我々がセラピストになるつもりでしたけど、無理でしたね。
電撃を与えればよかったんですけど、電撃はなかったですね。
――その苦労を聞くと、今の充実度が伺えます……。
そうそう(笑)。
言葉的には元気が出る言葉ですもんね。
当時からハッスルって殆ど死語だったんですけど、面白いから使ってみようかなって。
これ、実話ですからね。
――マジですか!?
それをイメージして僕が書いたっていう。
いや、逐一言ったから、何も創作やあらへんがな。
二十歳くらいって、性風俗の目覚めってあるじゃないですか。一発目がそれだったんですよ。
ほんまに声掛けられて、三十代、未亡人、スレンダーがいるけど、どない?って言われて、マジですか、ちょっといいですかって付いていったら、三畳くらいの場所に、シミーズ姿のおばはんが来たんですよね。
ショックですよ。おかんと同じくらいの年ですし。
しかも、豆球だけで薄暗いんですけど、その姿がボケてないんですよね。
リアルにわかるんですよ、体がデカ過ぎて無理やと思って。
そうしたら、女はね、少し太ってるくらいがいいのよとか言われて、バカじゃないのと。
――歌詞のまんまじゃないですか。
だいたい歌詞は実録です。
冷静に考えると、何歌ってるんだあいつっていう話ですよね。
――おばさんと死語という組み合わせも合っているという(笑)。
そうそう。レトロでしょ?。
――この曲も、ガーリックの代名詞みたいなところもあると思いますが。
そうですかね。(『ハッスル』は)とんでもないジャケットですけどね。
何を!?っていう。如何にEPICソニーにやる気がないか、見えてますやん。
あんた貼ったねみたいなジャケットでしょ。
フォトショップ使ってももっと上手くできるやん。むちゃくちゃやん。
――(笑)。でも、名曲が多い作品ですよ。『野球拳~YAKYU拳~』とか。
あれも苦労しましたね、著作権の問題で。
前田伍健っていう人が作詞して、登録されてるんで、許可得て録音したんです。
あと、このアルバムには、アマゾンで、外国のバンドのマネは辞めた方がいいぜってコメントがあったんですけどね、外国のバンドでこんな音を出す奴らはおるかっていう。
バカじゃないのって。
これもよく見る光景ですね。
あの子のことじゃないの?。
あ、10tっていうあだ名のお友達がいたんですよ。
その子はめっちゃええ子だったんですけど、また別で、当時、SHAZNAとか見ていたら、お客さんでこういうふうにしている子が(手を挙げて踊るマネ)、前列にいるじゃないですか。そういう子が気になっていて。
――その子=ダンシングタンク……。
悪いことしてるなぁ……。
――でも、失礼ながら、わかると思わずにはいられないです。それって他の曲にもありますよね。わかる!ってポイントが。
そこは重要なのかも。あるある!っていう。
――しかも他のバンドが曲にしていない場面を曲にするっていう。
そうかもしれないですね。そういう話しかしないんですよね。
――ライヴでも探しちゃいそうです、そういう人を。
見ちゃうんですよ、探しちゃうんですよ。向こうには悪気ないですからね。
でも、そういう人に限って、何よ!みたいな行動をするんですよね(またマネ)。
私がファンのリーダーよ、みたいな。
それでライヴ終わりで話していても声がデカいんですよね。『今日のライヴさぁー!』って。イメージですけど。
――やっぱり《ファンクラブ会長》だから(笑)。
絶対いますよね。私会長とか。。
――何の会だっていう(笑)。
前のベースが、バンド名が付いた曲を一曲くらいやりましょうって。
止めようや、そんなん付けんでもわかってるやん、そこまでアピールするか!?って思ったんですけど、話は進んで行ったんですよね。
でも、わかりやすいですからね。
歌詞は、BOYSじゃないよっていうことを書いていて。
――そんな複雑にできあがった曲だったとは。でも、ライヴでもやっていますよね。
最近はそうですね。ここっていう時のアンコールのケツとかに。
こういう曲は風潮としてもご法度みたいなところはあったんで。やりたかったっていうのもあるし。
近しいバンドマンとカラオケに行くと、絶対にJ-POPを歌うんですよ。
コワモテでやってる癖して、ええ声で歌うんですよね。
聴いてるやん!実は好きなんやん!好きならやればええのにって思ったところからはじまって。
――意地を張らずに。
そうです。ただ、他の曲を作る時に、そんなに難しいと思ったことはないですけど、この曲は一番難しかったですね。
振り切るまでに。クオリティの問題ですよね。
やりたいけどできるかどうかってのもあるし、聴いた感じ、所謂ポップスとして聴かせるクオリティがないと意味がないと思ったんで。バンドサウンドがあるポップスとして。
録り終わってそうなったんで、あ、これはできるなと。いろんな楽曲混ぜたり、スラッシーだったり、パンクだったり、いろんな曲があるけど、やっぱりここに手を付けるのが一番難しかった。
こういうアンダーグラウンドなフィールドにいるバンドとしては、メジャーにアンチテーゼがありますけど、パロディにしろ本気にしろ、やりたいからやるんやし、今までやりたいことやってきて、これに手を付けへんおはおかしいから。
歌詞も難しかったなぁ。
ラヴソングで、でもガーリックらしいっていう。
気持ち悪い歌やもんな。
ストーカー的な。
実はそういう。
最終的に殺してるっていう。
歌詞的にも、ここで広がった感じはしますけどね。
――いい曲にいい歌詞じゃないところが大きいですね。
うん、そこはガーリックらしく。そこがないとあかんなって。
――反響はどうでしたか?
歌謡曲になったとか言われましたね。
何したいのかわからない、J-POPしたいのとか。いや、J-POPしたいわけじゃないっていう。
それまでは、ポップな曲も、違う味付けにして逃げてた部分はあって。ストレートに所謂歌モノは手を付けてなかったんでね。
――ここで逃げずに向き合ったんですね。
そうそう。
――ライヴでも当時からやってましたよね。
やってましたね。ノリがいい曲に演者の目も行きがちなんですけどね。
あと、前のバンドじゃスキル的に行き切れてなかったですけど、バンドとしてのポップスも表現できていると思うんですよね、
今は。
――この曲で、面白さとシリアスさ、どちらもガーリックの魅力だって気付けた気がします。
その両方を知ってくれている人が、今も支えてくれているとことはありますからね。
【 発売記念スペシャルインタビュー 第3回「再録ベスト全曲解説」終 】
インタビュー@高橋美穂