――まず、このタイミングで再録ベストを出すことになった理由とは?
このメンバーだからじゃないですか?
ライヴでやってる曲を中心っていうことであれば、今が一番いいので。
――ということは、選曲も?
基本は、ライヴでやっている曲っていう感じですね。
――昔から最近の曲まで取り混ぜて、セットリストを作り上げているんですね。
それは選曲部長が。
でも、『YOKOZUNA』はやっていない時期もあったんですよね。でも、なんや、みんな知ってるから、取り敢えず入れておきましょうか、みたいな。20年も歌ってるから、あんまり新鮮味はないんやけど(笑)
――『YOKOZUNA』は、収録されている中では、一番古い曲ですよね。
こん中ではそうですね。
――今作を聴くと、キャッチーなのは昔からということもわかりますが、このスタイルがはじまったのって?
『King of Smell』っていう曲をお兄が作ってきて。
最初はね、よくわからない、エセな反抗みたいな歌詞だったんですけど、反抗する理由もないじゃないか、そういうのも違うんじゃない?って。それで、一番メッセージ性がないものを作りたいと思って、結果、誰かが聴いてメッセージだと思えば、それはそれで面白いしっていうところで『King of Smell』って曲を作ってから、今の芸風になった。
――逆ですよね。みんな曲に意味を持たせたがるのに。
それでだいたい失敗するでしょ。いや、そもそも、相手に伝える時って、間違って伝わるじゃないですか。
メロディにのっていて、後ろに曲が鳴っているってなると、余計に。
そんなの、相手が勝手に解釈してくれる方が面白いし、もしくは単刀直入にこれですってぼかさずに言った方がいい。
『YOKOZUNA』なんて、ただの紹介ですからね、横綱っていうか、相撲の。
――描写そのものですよね。
まぁ、相手にされませんでしたね。殆どコミックバンドやと思われていたし。
だから、逆に曲はふざけないっていう。アルバム中に一曲くらいは悪ふざけがあってもいいですけど。
そういうギャップというか、バランスは、常に考えていますね。
――当時はコミックバンドっていう言い方が普通にありましたからね。
そうですね。プラス、バンド名がこれですからね、話にならないっていう。
――でも、今や、ロックバンドと言えども、各々いろんな歌詞を打ち出しているじゃないですか。こういう道を切り開いた自負はありますか?
ある時期まではありましたね。
ただ、増えてき出すと、名前が出た方が勝ちなんで、そっちに行くじゃないですか。彼らがはじめたんですよっていう。
それを、指くわえて、まじでぇ?って言うのを経験しているんで、思わないようにしていますね。
多数が言った方が正解なんで、この世の中は。敢えてそこで反論する気もないし。
そういうの無駄じゃないですか、余計なところで神経使うの。あと、自分のプライドとか。
音楽やってると大事だと思うんですけど、それは演奏だのに注げばいいことであって、オプション的なところでそういうふうに思うのはしんどいですね、面倒臭い。それで、人の意見が変わるかって言ったら、変わらないわけですしね。
みすぼらしいじゃないですか。俺らが俺らがって。はいはいはいはいってなりますよね、傍から見ていても。
――今まで、ベスト盤という形では、何枚か出ていますよね。
そうですよね。アルケミーでもあるし、ブルでもあるし。
でも、聴けないんですよね、そういうのって。当時の録音なんで。今回はこのメンバーで録っていて、聴けますからね。
今のいい感じが入ってるんで。だから、一番聴きたかったのは俺らかもしれないです。
楽曲を冷静に見れるじゃないですか、今はこういうふうに録れるんやなって。
発信する方なんで、聴き手ではないですけど、録音して聴くことによって聴き手になれるので、そういう作業をしたかったのもありますね。これが中途半端なメンバーだったら聴けないですけど、出せる気持ちになれたのがデカいんじゃないですかね。
だから、外に対して出した重要性よりは、バンド内で出せた重要性の方が大きいと思うんですよね。
――今まで、再録ベストはなかったわけですもんね。
まとまった再録はなかったですね。企画で昔の曲を数回レコーディングしたことはあったんですけど。
――踏み切りたいメンバーが揃ったっていうことですよね。
うん
あと、お客さんの目線から言えば、殆ど手に入らないアルバムとかに収録されていたりするので、古き良き人たちはわあわあ言ってくれるんですけど、最近知ってくれた人は、ライヴで演奏してもポカンなんですよね。新しい、『失恋モッシュ』くらいになると張り切りだすけど。挙句、『YOKOZUNA』の《ごっつぁん》を《どすこい》って歌っていたり。
――惜しいですね(笑)。
惜しいんですよね。だから教えてあげなきゃなって。入門編みたいな。
――あぁ、HAWAIIANやホルモンのライヴでガーリックを知った人は、彼らよりもさらに下の世代なわけですもんね。
10代とか20代とか。そうなるとライヴでしか曲を覚えることができなかったんですよね。
そうですね。YOUTUBEって便利なものはありますから、声のタイミングはわかるんですけど、《どすこい》ってなってしまう。また笑顔で、《どすこい》って言ってくれてねぇ……ありがたいんですけど、これを聴いてもらえればなって。
周りの人らに出させてもらったっていうのもありますけどね。
レイザーズも同じレーベルやし、対バンのお客さんの前でやらせてもらうと、伝えたいなと思うから。
こういう出会いがなくて、今までの感じでやっていたら、この発想には至らなかったと思いますね。
知ってる人だけ、昔ながらのお客さんだけ相手にして、みんなで盛り上がります、みたいなではなく、新しい方に向かっていけているのは、みんなのお陰やと思いますね。
――再録する上で考えたことはありますか?
いじらないことですよ。録ろうと決めた時から、いろんな人に、再録ベストとか何が一番嫌かって聞いたら、いじってるやつって言うのね。そんなアレンジせんでええやんっていう、やり過ぎ感があるベスト盤が多いので、元々あった曲は殆どいじらずにっていうところと、ライヴ感は出したいっていうところですね。
――これまでもライヴでは、原型と同じアレンジを貫くようにしています?
うん。軸は変えるべきではないと思うんですよね。もちろん上に乗っかってるものは、多少なりともアレンジはしてますけど、聴き心地はそこまで変えていないつもりではあります。
――あとは、2011年ならではのいい音質で録ることも、大きなテーマだったんじゃないですか?
そうですね。昔はテープとかでしたからね。
――やり慣れている曲たちだから、レコーディングはスムーズでしたか?
わりとスムーズではあったかな。あ、リズム隊は……
聴く人は、絶対に前の音源と比べるじゃないですか。そこは意識しましたね。
そう言う人らに、前の方がいいとか評価されないように。でも、録りだしたら、あんま気にならなかったですね。
自分はこれしかできひんから。メンバーもいいって言ってくれたら、それが一番いいっていうか。
――RYOさんは、レコーディングは?
コブラのトリヴュートに参加したのが、入って一か月後くらいで。
まとまったのは初やろ。
そうです。必死でしたね(苦笑)。
レコーディング前に(PESSINと)話してたんですけど、僕らにとっては昔聴いていた、雲の上の存在の曲というか、伝説を録り直すっていう感覚があって、レコーディング前はヤバいなって口に出していたんですけど、いざスケジュールが迫ってきて、録り始めると、そんなんじゃなく、自分の納得できるものができればそれでいいっていう感覚になれたので。
そういう必死さはありました。
『あんた飛ばしすぎ』を自分が弾いてるわ!って、レコーディング中に思いましたね。
僕、加入さしてもらってからライヴでは何百本もやっているんですけど、改めて思いました。
僕はコーラス録りの時に思いました。《ちょっとあんた》って言った瞬間にうわーって。
メンバーとして初めてライヴをやった時も思ったんですけど、いつも、ステージの下から、すげぇなぁって思って見ていたバンドの背中を何で見ているんだろうってハテナマークが出て(笑)
――PETAさんは、改めてどうですか?
これこそベスト。ええのができました。いやぁー、ね、録り直したいとほんまに思っていたから。
自分のヴォーカルの全然できていないところが気になっていて、昔の曲を聴くのが辛いなってずっと思っていたから。歌えてへんし。だから、これ録れて、むちゃくちゃ嬉しいですよ。
『群青』より前は、全てあかんなぁと思う。ライヴでもそうやし、今が一番ええなって。
その時は満足しているんですよ。振り返ってみるとね。
そやねん。これでええと思ってたもん。今は恥ずかしい!
――昔の作品を聴いてお客さんがライヴにくるっていうパターンもあったでしょうし。
そやねん。だからこれを出すのは自分の中で凄く重要だった。
――じゃあ、レコーディングも気合いが入りました?
期待は大きかったな。前のオリジナルよりは、数十倍ええのができるって自分では思っていたから。
――過去の気になっていたことを払拭できました?
そう、そこが一番重要(笑)
――長く続けてきて、進化してきてよかったですね。
それはほんまに思ったわ。バンドやっててよかったって。
――これまで、ジャケットも印象的なものが多かったですね。
素晴らしい。
全て素晴らしい。
――『LOVE』とか、びっくりしましたもん。
インパクトあるでしょ、おじいさん。大不評だったんですけどね。だいたい不評ですね。
――そんなことないはずです(笑)。そして、タイトルも印象的なものも多かったですけど、今作もまた、潔くて。
潔いですね(笑)
――何故、こうなったんでしょう。
いやぁ……タイトルが思い浮かばなかったから(苦笑)。候補はいろいろあったんですよ、『YOKOZUNA』とか。
でも、そういうのいいんじゃない?とか。ベストだし。少し前に、ライヴ盤を『実録ライヴ』というタイトルで出したんで、同じ流れで『再録ベスト』でいいんじゃないかなって。付けてみてよかったと思いますね、そのタイトルで。
捻ろう捻ろうと思って失敗してきたので、これでいいんですよ。
ははははは!
――しかし、選曲に関してはさっき伺いましたが、これが入ってない、あれが入っていないっていう曲も、結構ありますよね。
そこなんですよ。
ははははは!
バンドは、まだ作ろうとしていますからね。
このアルバムでミラクルが起きたら、もう一枚作れるっていう、山田くん(ピザスタッフ)との契約が(笑)。
ピザとじゃなくて(笑)。酒飲ませてね。
バンド的にもあるんですよ、あれも録り直したいとか、あれも聴いて欲しいとか。
だからこれでツアー廻って、聴かせたい曲はレパートリーに加えていくと思いますね。
頭の中で、次に出すっていうのは漠然と決めていたので、この曲は次に回そうとか言ってましたから、レコーディング中に。
問題はこれをどう出していくかっていう。
――今まで作った曲ってどれくらいなんでしょうね。
200くらいかな。
一応、僕のiPodには170曲入ってますよ。
――加入してから、何曲くらい演奏できるようになりました?
いやいやいや
全部は僕らもできないですもん。
――暫く演奏していない曲を聴いたりもするんですか?
車の中でRYOくんがかけてくれたりするので。わりと、曲としてはいいじゃないかと思ったり。
――PESSINさんとRYOさんは、リスナーとして、特に好きだった曲って、何ですか?
僕は『十』の時によく対バンをさせていただいたので、『十』の曲は。
初期の曲も好きですけど、実際に話をさせてもらうようになったのがその頃なので。
でも、いちリスナーとしては『あんた飛ばしすぎ』じゃないですか。
僕は……音楽をよく聴く時期ってあるじゃないですか。
その中の一枚にガーリックがあって、一曲を集中して聴くんじゃなく、広く聴いていたんですけど、また月日が過ぎて、久しぶりに聴いて、あ!って思ったのが、『ハナクソマン』だったんですよ(笑)
あー
今作に入ってないけどな。
次(笑)
あ、僕は『ハッスルするっす』もですね。
リリースされた当時は高校生で、地元のCD屋で見て、『ハッスル』のジャケットがシルエットじゃないですか。
どんな顔なんだろう、凄い怖い人たちだと思っていました(笑)。
まさか自分が加入して弾く日がくるとは。
僕も、久しぶりに聴くようになったキッカケはそれであって、『ナルシスト宣言』とか、『あんた飛ばしすぎ』とかも好きですね。
――今作を聴いていると、26年間、歌詞も曲もセオリーに囚われず自分たちのものにしてきた、変わらないスタンスを改めて感じます。
好き勝手やってますからね。
『Too Late True Love』を作った頃も、こういう曲を作るバンドもいなかったので、やいのやいの言われつつ、そんなの関係ないやって、続けて『マッシュルームカットとダッフルコート』をか作ったんで、周りの状況は関係なしにやってきた気がしますけどね。常に影響を与えてくれるバンドもいましたし。
『Too Late True Love』みたいな歌モノをやった時は、マグネッツ、BEYONDSにいた中村くんが、その後でTABLEってバンドを組んだんですけど、そのバンドを聴いて、こんなんやっていいんやって自信ついて。
それで今の方向性も徐々に決まってきたところもあったんじゃないですかね。
歌モノって我々が呼んでるんですけど、それをレパートリーに加えることに、何の抵抗もなくなりましたし。
――こういうスタンスを何で築くことができたんでしょうね。
あんまり、他のバンドとつるまなかったっていうのもあるんじゃないですか。どうしてもそこに入ってしまうと縛られるので。
縛られるのが嫌でこういうことをやっているのにね。縛られるなら、会社務めしててもええやんっていう。発端がそこなんでね。
やりたいことっていっぱいあるじゃないですか。
そのためにやってるし、表現したいし。
――そこはこれからも変わらないですか?
ですね。それが自然になってるので。
未だにいろんなものから影響を受け続けていますから。
【 発売記念スペシャルインタビュー 第2回「再録ベストについて」終 】
インタビュー@高橋美穂