Comeback My Daughters Special Interview
連続インタビューの最終回は、ニューヨーク・レコーディングの裏話を、メンバー全員に語ってもらった。もちろん、これは笑いあり涙あり(?)の18日間の、ほんの一部にしかすぎない。しかし、これだけでも彼らがニューヨーク滞在中、1日1日をとことん楽しんでいたことはわかってもらえるはず。音楽を作る喜びと楽しさにあふれた『Outta Here』の温もりあるサウンドは、そんな毎日が反映された結果でもあったのだ、と話を聞きながらふとそんなことを感じたカムバックのニューヨーク珍道中(笑)。
アドリブを入れたら監督からすげえ怒られました。 「友達やめるぞ」って(笑)(CHUN2)
――ところで、今回、ニューヨークでは「Why」のビデオも撮影したんですよね。ビデオ、おもしろいですね。全編ワンカットってことは何回もリハーサルを重ねたんですか?
中津川 それがそんなに綿密なリハーサルをしない監督で。友達なんですけど、なんとなく説明して、「とりあえずやってみようか」って(笑)。
高本 慣れるとよくないって、ずっと言ってたから、それも演出だったのかな。
戸川 でも今考えると説明不足だったような気がします(笑)。
CHUN2 だからけっこうミステイクも多かった(苦笑)。
中津川 結局、5、6回撮りなおしましたね。
戸川 (CHUN2に)おまえ、すげえ怒られたよな。
CHUN2 そう。アドリブを入れたら監督からすげえ怒られました。「友達やめるぞ」って(笑)。ごめんごめんって謝ったら、「友達だったら言うこと聞けよ」って(笑)。それがちょっと納得行かなくて、なんで、友達だったら言うことを聞かなきゃいけないのかなって。
戸川 その直後のCHUN2の顔、すごかった。CHUN2 怒られてガーンと落ち込んで、その直後に録ったテイクがOKで。 [ ↗ ]
戸川 ビデオでCHUN2がなぜクリストファー・ウォーケンばりに険しい顔をしてるかと言うと。
CHUN2 もうミスれねえっていう後がない顔ですよ(苦笑)。
戸川 心の底から出た顔(笑)。
中津川 ギターぶつけてるしね。
高本 しかも、あのギター、僕のなんです。
戸川 バコーンってけっこういい音してたよ。
高本 道の向こうにいる僕がわかったからね。
CHUN2 でも、ESPのギター頑丈なんで、全然折れない。
――撮影中、警察に怒られるってことはなかったんですか?
高本 それはなかったですね。
CHUN2 撮影中に黒人にタバコくれって言われたよね。
高本 からまれましたね。やっぱりおもしろいんでしょうね、アジア人がニューヨークのど真ん中で撮影しているのが。みんなが撮影してる様子が見えて、何かやってるなっていうのがわかったみたいで、そこで待っている僕もその一味だなって(笑)。それで僕に聞くんですよ、「何をやってんの?」って。でも、本当はタバコがほしいだけ。撮影しててもおかまいなしですよ(笑)。


CHUN2 ビデオの中で俺が高本の所に走っていくんですけど、走っていったら、高本が電柱につかまって、扇形で待ってたんですよ(笑)。
高本 あれよかったでしょ。
CHUN2 コイツやる気あるなって(笑)。
高本 あれジャパニーズ・スタイルです。気づいてくれた、あれ?(笑) 監督から怒られるかなと思ったけど、扇のアドリブは大丈夫でした(笑)。
――ところで、ニューヨークの印象はいかがでしたか?
中津川 僕は好きでしたね。着いて2日間ぐらいは思ったより汚いって印象と、ぶっきらぼうだなって感じたんですけど、3日目ぐらいからは、逆なんだって思うようになってずっと楽しかった。できることならずっと住んでいたいって思うぐらい。便利ですしね。
高本 僕は思ってたよりも都会だったなって。思っていた食べ物とかお酒とかあまりなかった。男の子も女の子もすらっとしてて、フルーツとかサラダとかばかり食べてるんですよ。
CHUN2 女の子もかわいい子ばかりで、男は男でアバクロのモデルみたいな奴ばかりで、最初はいけすかねえなって(笑)。
戸川 なるべく一人で出かけたほうがいいって言って、結局、一人で出かけてたのは吾郎ちゃんだけで、吾郎ちゃんはアメリカでも住めるんじゃないかって思いました。 [ ↗ ]
ハラル・フードしばらく食べられないなって思ったら、 翌日、別の屋台で復活してたんですよ。 隣には黒焦げの車置いたまま(戸川)

――向こうの食べ物はいかがでしたか?
高本 ハラル・フードって、イスラム教の料理なんですけど、それの屋台がいっぱい出てて。ニューヨークに着いた日、エンジニアのヨウヘイ君に教えてもらった屋台がすげえうまかった。大体5ドルぐらいで食べられるんですけど、「胃もたれするから、たまに食べるといいよ」って。でも、僕らほとんど毎日食べてました。
――胃もたれしなかったんですか?
CHUN2 いやぁ、全然(笑)。


戸川 そしたら俺達が毎日通ってた、そのハラル・フードの屋台がある日、火事で燃えちゃって。
CHUN2 それをカメラで撮ろうとしたら婦人警官に「ゲラウェイ!」ってすげえ怒られて(苦笑)。 
高本 あれ、すごいテンションだったよね。
戸川 ハラル・フードしばらく食べられないなって思ったら、翌日、別の屋台で復活してたんですよ。隣には黒焦げの車置いたまま。
CHUN2 でも、多少元気がないんですよ。

――あ、店員は同じ人達なんだ。
戸川 ヴァイタリティーを感じたよね。 [ ↗ ]
中津川 東京と同じで、ごはん代がけっこうかかるなって印象があって、それでそのハラル・フードならリーズナブルだし、おなかもいっぱいになるしってことで、そればかり食べてたんですけどね。
戸川 飽きたら日本から持ってきた七味唐辛子かけたり醤油かけたり、そしたらすごくおいしかったです。
高本 七味、次(海外に行く時は)、絶対バッグに入れるね。
CHUN2 それと日清のどん兵衛。ビデオの監督から差し入れてもらったんですけど、それがなかったら死んでたかもしれない。
高本 エンジニアのヨウヘイ君は海外生活が長いんで、現在の、麺がピンとなった液体つゆ仕立てのどん兵衛を食べたことがなかったんですけど、「うどん屋のうどんじゃん」って驚いてましたね(笑)。
CHUN2 アメリカにも日清のカップヌードルってあるんですけど、味が激ウスで、味噌汁の素を入れたら味噌ラーメンになるんじゃないかってやってみたらけっこういけたんですよ(笑)。
高本 2週間ぐらい経った頃から、CHUN2と僕の朝食は味噌汁ラーメン。七味がねぇ。
CHUN2 合うんですよ~。
――時間を見つけて、どこかに出かけたりはしなかったんですか?
高本 入口がすげえ狭い中古レコード屋とか古着屋とか行きました。そういうところはそれぞれに行ったりしましたね。


CHUN2 俺、バスケットボール見にいったんですよ。マジソン・スクエア・ガーデンに。ずっと夢だったんですよ。
――それは一人で?
CHUN2 一人で。チケットが売り切れてて、「あー、ダメだ。残念だったね」ってみんなに嫌味言われたんですけど、どうしても見たかったんで、試合開始の1時間前に会場に行ってダフ屋を探したら案の定いて、屈強な黒人が(笑)。その中から一番優しそうな奴を選んで、「チケットある?」って聞いたら、「スリー?トゥー?ワン?」っていくら持ってるか聞くから、「ワン」って答えたら「カモンカモン」っていきなり暗い路地裏に連れていかれたんですよ。そしたらボスみたいな奴が出てきて、へんなコピー用紙を差し出して、「トゥー」って言うんですよ。だから「さっき100ドルって言ったじゃん。150ドルしか持ってない」って言ったら、「それでいい」って。でも、そのコピー用紙が本物かどうかわからないから冷や冷やものだったんですけど、無事入れて、ポップコーンとビールを買って、試合を見てきました。 [ ↗ ]
そういうところタフになりますよね。 これはやばい、あふれたらどうしようと思ったら、 もう突っ込むしかないってなりました(中津川)
――150ドルですか。ふつうに買ったらいくらなんですか?
CHUN2 20ドル。
(全員 爆笑)
CHUN2 完全に足元見られました。でも見られたからいいかな。ニックスとセルティックス戦ってけっこうビッグ・マッチですよ。でも、盛り上がってるのは一人か二人で。俺は騒ぎたかったんですけど、小声で「よし!」とか言って(笑)。
高本 それならテレビでよかったんじゃないかって(笑)。
CHUN2 俺、ニックスのファンなんですけど、周りがセルティックスのファンばかりで。みんな(チームカラーの)緑色の服着てて、喜ぶところが俺と逆なんですよ(笑)。でも、すげえ楽しかったです。
――お話を聞くかぎり、レコーディングも含め、かなりニューヨーク生活を満喫してきたようですね。
戸川 この5人で行くって決まったとき、毎日が笑いの連続だろうなと思ったんですけど、本当にそうでしたね。
CHUN2 そうそう。こいつ寝る前にエロチャンネル絶対見るんですよ。


戸川 だって、そこだけ無料なんですよ、無料のエロスって聞いたら見るじゃないですか。でも、「また見てるのかよ」って。
CHUN2 だって、全員いるのに一人で見入ってるんですよ。哲学者みたいな顔して。それがなんだかムカついて(笑)。
戸川 僕は今回の旅でCHUN2が本当にゲイなんじゃないかって(笑)。何かあると僕にスキンシップを求めてくるんですよ。「戸川のア○ルが恋しい」って(笑)。
CHUN2 なぜかプロレスやるとバックの取り合いになっちゃって。そういう謎の遊びが流行りましたね。
戸川 ゲイって言うよりは中学生の修学旅行。でも、一番ホモだと思ったのは祐亮ですね。 小坂 なんでですか?! そんなところ見せてないじゃないですか。
戸川 そうだ。朝起きて、吾郎ちゃんがトイレに行った時の話、してよ。
中津川 ああ。朝起きて大きいほうしようと思って、便座に座ったんですよ。そしたら水が便器からあふれそうになってて、うわーってなって。
(全員 爆笑)
中津川 なんなんだって見たら詰まってて。誰が詰まらせたのかわからなかったんですけど、怒りながらとりあえず水を汲み出しましたよ。
――えっと、それは水だけだったんですか?
中津川 ええ、幸いなことに。 [ ↗ ]
CHUN2 俺は「裕亮!」って怒鳴り声で目が覚めたんですけど、祐亮が最後に入った後、トイレが詰まったって話になってて、トイレに行ったら吾郎ちゃんがキレながら水を汲み出してて。トイレに手を突っ込んで水を汲み出してる後姿を見て、この人すげえと思いましたね。
中津川 そういうところタフになりますよね。やるしかないと言うか、スタジオのトイレだっていうのもあったから、やっぱり借りてるじゃないですか。これはやばい、あふれたらどうしようと思って、それを考えたらもう突っ込むしかないってなりましたね。最終的には流れたんですけど。
CHUN2 原因はキッチンペーパーを流したからだったんですけどね。
高本 しかも、そういうことをしたのが祐亮だったっていう。
戸川 でも、後でCHUN2と俺で、「祐亮、マジでウンコしたの?」って聞いたら、「俺、しょんべんしかしてません」って。
高本 え、本当に?!
中津川 祐亮じゃないんじゃないかって説もあって。
戸川 僕らの中では真犯人は謎のままなんです。
高本 そうなの?
祐亮 俺、しょんべんしかしてませんよ。
戸川 カムバックのニューヨーク七不思議のひとつです(笑)。


友達もできたんですよ。 2メートルぐらいあるイラン人で、イシカワって言うんですけどね(CHUN2)
CHUN2 そういう意味では、日本でツアーしている時と同じだった(笑)。
高本 そういうふうにできたのがいい思い出なんじゃないかな。メンバーだけで行ってよかったと思います。行っちゃったらレコーディングするしかないですからね。それを楽しめたことは、これからの自信にもなるだろうし、どんなことでもとりあえず行動しちゃえばいいって今回、全員が感じただろうし。
――チャンスがあったらまた行ってみたいですか?
高本 魅力的ですよね。ニューヨークには音楽がいっぱいあるし。
戸川 今度はライヴをやってみたいですよね。
CHUN2 友達もできたんですよ。毎日、同じデリに行って、ビールとかコーヒーとか買ってたんですけど、そこで2メートルぐらいあるイラン人が「おまえら日本人か?」って、3日目ぐらいに尋ねてきて、「そうだよ」って答えたら、日本のことをいろいろ聞いてきたんですけど、話の途中に、なぜか日本語で「バカ?」って言うんですよ。だから、「ノー・バカ。ノー・バカ」って(笑)。そいつと仲良くなって。イシカワって言うんですけどね。
高本 いや、イシカワって僕達が呼んでただけで。
CHUN2 日本に住んでたことがあるらしいです。「どこに?」って聞いたら、「タカサキ」って。 [ ↗ ]
高本 でも携帯のストラップには「ナゴヤ」って書いてあって(笑)。日本語はバカと日本の地名を少しだけ知ってたみたいで、でも、「タカサキ、ナゴヤ、あなたイシカワ?」って言われたとき、イシカワがまさか石川県だとは思わなかったら、ああ、こいつイシカワっていうんだって(笑)。
CHUN2 そのイシカワが俺達が帰国する日、スタジオを引き払って、荷物を持って出てきたらちょうどゴミを捨てに出てきたんですよ。「俺達もう帰るから」って言ったら、「マジか? もう行っちゃうのか?」って。見たらちょっと涙目になってて、うわ、やばい。「また会おう」って、今回はそういう悲しい思い出もあります。
戸川 なんて言いながら、CHUN2はそのデリの店員の女の子をナンパしようとしてたんですけどね。
CHUN2 ナンパって言うか、声をかけようと思って、ネットでキザなキメゼリフを調べたんですよ。で、「今日もおまえの髪、きれいだね」ってそのまま言ってみたんですけど。
高本 「ネクスト・プリーズ」って(笑)。
CHUN2 完全無視されちゃって(苦笑)。


戸川 あの子は韓国人? 俺はインド人の女の子を好きになっちゃいました。ホテルの場所がわからなくなったとき、すごく親切に教えてくれたんですよ。
――へえ。
戸川 「私もよくわからないけど、きっとこの辺だから」って一緒に探してくれたんです。
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高本 あ、地下鉄の駅を下りたところでね。彼女、親切だったね。
CHUN2 なんで地下鉄かって言うと、深夜だったんですけど、どこからかの帰り道、タクシーが捕まらなかったんですよ。やっと一台捕まえたと思ったら、「何人か?」って聞かれて、高本がなぜか「イレブン」って言っちゃって(笑)。 [ ↗ ]
戸川 本当は5人だったんですけどね。
高本 頭がぶっとんじゃったんだよね。
CHUN2 「そりゃダメだ」ってブーって行っちゃって、しかたないから地下鉄に乗って、なんとなくこの辺だろうって駅で下りたんですけど、結局、わからなくて。そしたらその子が見事、見つけてくれてね。たっくんだけですよ。ニューヨークで恋したの。後10日あれば何とかなったかもしれないって言ってたもんね。
戸川 うん。彼女、すごくかわいかった。
インタビュー◎山口智男