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--去年のP.D.F SUMMER BASHでは、ハードコア以外にも、Ken Yokoyama、MEANING、RAZORS EDGEといったバンドにオファーしてますよね。
Makoto はい、ごく自然な流れでして。アメリカ・ツアーでペンシルヴァニアに行った時に、(EAST COAST)TSUNAMI FEST(注:毎年9月に行われるアメリカ東海岸を代表するパンク、ハードコアのビッグ・フェス)というのに呼んでもらって。3日間連続で、パンク、ハードコア、メタルっぽいハードコアとか、けっこうゴチャ混ぜなんです。スゴい数のバンドが出てて、フロアでは鋲ジャンのカップルが、昔のパンクスの、くるくる回るダンスというかステップをスゲぇ楽しそうにサークルの中でやってたり。マーフィーズ・ロウも出てたし、メロディックなパンクのバンドも出てて。当然ゴリゴリの僕らみたいなハードコア・バンドもたくさん出てて。そんな状況って、喰らっちゃいますよね。普通にナチュラルにみんな遊んでるんで。「これ面白いな」と思って現場で体感して、スゲぇカッコいいと思ったんですよ。細かくジャンル分けしないで、大きくハードコア、パンク、ロック~みたいな感じで括ってあったので、ヤラレちゃったんですよ。それで日本に持って帰ってやろうと思って。
--それで、PIZZA OF DEATHからリリースすることになったきっかけは何だったんですか?
Makoto 特に共演させてもらった時とかも、自分も裏方スタッフの一人としてバタバタしてるので、ゆっくりしゃべるタイミングもなかったんですけど、僕の記憶が正しければ、ある日コストコで変な形のラジカセをぼけ~っと眺めてた時に、(横山)健君から電話かかってきて、何てことない世間話をしてたんですが、確かその時に「SANDどう、うちから?」みたいな感じでさらっと言ってくれたのがそれだったかと。
--で、その話を受けて。
Makoto いやあ、面白いなと思いましたよ。びっくりしましたけど。
--自分でイベントを手がけたり、海外との繋がりも積極的にやってるんですけど、最初のきっかけは何だったんですか?
Makoto 確かSMASHさんとかからの誘いで、スナップケース、マッドボールなどのハードコアの海外アーティストのフロントアクトみたいな感じで出たりはしてたんですけど、自分たちで呼んでみようか?ってなって、誰呼びたいかってなった時に、「MERAUDER(注:1990年結成、NYの極悪メタリック・ハードコア・バンド)、イイな」って思って。SENTA君としゃべって企画し、いけたんでオーーーッ!て、アガって。
--MERAUDER、マッドボール、スカーヘッド……と毎年続けて呼んでるからスゴいですよね。
Makoto MERAUDER、マッドボール、スカーヘッド、NEXT STEP UP、NASTY。今年はVEHEMENT SERENADE(注:アース・クライシスのVo、元Sworn Enemyのメンバーからなるバンド)でした。
--やっぱりニューヨーク・ハードコアはこの辺が好きだったんですか?
Makoto そうすね。好きでした。
--で、海外からバンドを呼びつつも、自分たちも海外を攻めてますよね。
Makoto はい。最初は2008年にEDGE OF SPIRITがカナダ・ツアーに一緒に行こうって言ってくれて。それまでに韓国は何回か呼ばれて行ってたんすけど。カナダツアー回った後、最後にアメリカに渡って、ブルックリンでEVERYDAY DOLLARSとちょっとやったりもしました。まあ喰らいましたね。USの中堅バンドとかがアメリカツアー終わってからカナダに来てて、そういうバンドと一緒にやる機会があったんです。もうビックリするくらい、デカくて、鍛えまくってて。そのバンドのヤツとしゃべると、「1年8ヶ月家に帰ってねえや。ハハ!」とか言ってたんですよ。こんな僕の知らないバンドでも1年8ヶ月家に帰んなくて、毎日ライヴやってるって言ってて。リハが終わってから、ベンチプレスを機材車から出して組み立てて、大汗かいて「フンッ!フンッ!」つってやり始めるわけですよ。喰らいましたね。こりゃ勝てねぇわけだ(笑)と思って。俺からしたら、無名のバンドですよ。アメリカ人は狂ってるなと思いましたね。
--そこから、もっとアメリカを攻めようとは思いました?
Makoto そうすね。体、鍛えようと思いましたね。三日坊主で終わるんすけど(笑)。
--それで2010年にはBLACK N BLUE BOWL(注:マッドボールのフレディとカズン・ジョー主宰、毎年5月にNYのウェブスター・ホールで行われる一大ハードコア・イベント)という大舞台に出てるわけですけど。
Makoto あれ、ビックリしたんすよ、本当に。フレディにひと言で言われましたからね。「おまえ、出ろよ」って。「イエース」とか言っといて、そん時は社交辞令だと思ってたら、翌年、本当に呼ばれたっすね(笑)。
--あの大きな舞台はヤバかったですね。
Makoto 負けない気持ちで頑張ったんすけどね。あの時は全力を出したんすけど、今思えばもっとなぁって思いますよね。リベンジかまさないとダメなんです。
--2011年にはTSUNAMI FESTに出演してますね。
Makoto さっき言ってた、ハードコアとかロックというひと括りで3日間ぶっ続けで、これも喰らっちゃいましたね。それもあって、難波(章浩)君とか(横山)健君、壬生狼とかと一緒にやったら面白いだろうなと思って。
--2012年にはNUMBとアメリカに行って。
Makoto オハイオですよ。CREEP OUTのOZKの仲間がやってるハードコアイベントなんですが、ホントいい意味で、ろくでもなかったすよ。ただのヤンキー祭でしたね(笑)。クソ面白かったです。
--またアメリカには行くんですか?
Makoto 今年も誘われたんすけど、制作したかったので、「来年にしてくれ」ってたのんで。なので今のところ、来年の暑い時期には行く予定ですね。
--実際に身をもって海外でのハードコアを体験してみて、日本との違いを感じたことは?
Makoto TSUNAMI FESTとか観た時に、「こうゆう風なのが、カッコいいな!」と思いましたね。いわゆる鋲ジャンだったらこうだ、とか、僕らみたいに短パンにTシャツだったらこうだ、とか、そういうの、この人たち、どうでもいいんだろうなって感じて。景色というか情景がCOOLでしたね。右を見ても、左を見ても。グッズグズのクラストのパンクスもいれば、スキンズもいれば、短パンTシャツもいるし。普通にみんなで箱の中ではライヴ、外ではバーベキューしてて、飲んで、食って、吸って、ゲラゲラやってるんで。
--他にアメリカで喰らったことは?
Makoto やっぱりドサ回りとかしてみて、一番喰らったのは、まずちゃんとしたスピーカーがないところでやってみて感じたことで。何で外人はスゲぇ音がデカいとか、アタックが強いとか、あるじゃないですか。ピッキングにしてもタイコにしても。声も太いし。何でなんだろ?ってずっと思ってたんすけど、向こう行って初めてわかったすね。ガキんちょが、まだ全然無名の頃から、例のアメリカ人のあのバカ騒ぎノリで全力で楽しんでやってるんすね。教会のレンタルスペースみたいなところとか、バーのきったねえ端っこの、うんこみたいな割れてるような、小さいスピーカー2個で外音用(笑)みたいなところや、ガレージ、ツレの家の庭なんかで、せーの、ドン!でずっとやってきてるわけで。そりゃブッ叩かないと聴こえないですよね。それをさんざんやり続けてきたから、みんな、僕が呼んだ海外のアーティストもそうすけど、日本のライヴハウスに来ると「何でこんなスゲエ音響設備、揃ってるんだ?」ってみんな言ってきます。で、オーディエンスのノリも「何で海外はあんなえぐいノリなんだろう? スゴいなー」って話を日本でよく仲間たちとするんですが、それでふと向こうでローカルのライヴに来てたお客さんに聞いてみたんです。そしたら「俺の街には面白いものが何もねえんだ、他にやることもねぇ! 仕事もクソだし、日常もクソだ! 俺らにとってライヴで遊ぶことが何より最高の楽しみだし、ストレス発散だね!」って言ってました。日本だと都市などは、ちょっと歩けば、カラオケもあれば、ライヴハウスも死ぬほどあるし、飯屋もあるし、ボーリング、ビリヤード、漫画喫茶、映画館、レストラン、飲み屋、キャバクラ、なんて遊べるところが死ぬほどあるじゃないすか。アメリカのローカルではみんな、「何もねえんだ。今日この日をどれだけ楽しみにしてたか!」「俺が一番楽しむぜ!」って言ってくるんすよ。20人くらいしかいなくても、ハコをめいっぱい使って暴れて。何もなければ面白いことを工夫して、探してやるんだな、と思いました。マンハッタンなんかの都心部は何でもいっぱいありますけど、ちょっと離れただけで、たいして何もないアメリカの廃れた街。どこかで、若い中高生くらいのバンドとやったことがあって、そのバンドには照明担当のメンバーとかいて、スイッチ、たかが4つボタンを押すのに、死ぬほど動きとかスゴいんです(笑)。フルテンションで奇声上げながら(笑)。スイッチおらー!って。
--今回のニュー・アルバム『Spit on authority』ですが、いつから制作の構想はあったんですか?
Makoto ちょうど去年の年末くらいには止めて、一気に作ろうとはメンバー内では言ってたんすよ。それでちょうど同時期に(横山)健さんが言ってくれたので。
--今回はサウンドもシンプルで、削ぎ落とした感じがあって、その分勢いがさらに出てるんですが、制作前に目指したものはありますか?
Makoto アメリカに行った時に、上記にも書いてあるんですが、要は「シンプルだな!」とかメンバーで言って(笑)。何度か共演したSTOUTにも「SAND好きなんだけど曲の展開、すっげぇ複雑じゃね!?」って言われたりもあって。劣悪な環境の会場でマイクがなくて何やってるか客に聴こえねえんだったら、曲をシンプルにするしかねえな、って。でも冷静に考えたら、理にかなってますよね。音響機材が全然そろってないところでずっとやってれば、曲は必然的にシンプルになってきますし、細かいことやったって相当上手くねえと聴こえねえなって、いい意味で開き直って。「今頃気づいたのか、おまえら!」って感じですかね(笑)。
INTERVIEW BY Toshiya Ohno (FLJ)
Part.03に続く...