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ember

Official Interview / Vol.02

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--Tuyoshi、Utchieとメンツが固まって、すぐに手応えはつかめました?

Minami いや、そのスタジオもあくまでレコーディングに向けてのものだったから。曲を覚えて、少ない時間で要領よくやるって感じだったんで。UtchieにはEGG BRAINのライヴで東京に来るタイミングで一日残ってもらったりして、スタジオ入って。12曲ありましたから、ぶっちゃけ大変でしたね(苦笑)。レコーディングしながら詰めていったんで。Ken BandとEGG BRAINの空いてる時間にしかできないし。エンジニアをアンドリュー(Dr/FUCK YOU HEROES、BBQ CHICKENS)がやってくれたんで、すごく楽しくやれましたね。

--自分がメインとなるバンドでのレコーディングというのは、やはりこれまでの経験とは違った興奮とかはありました?

Minami それはありましたね。初めてですからね、全曲自分が作詞作曲って。あと、試したかったっていうのもありますよね。

--試したかった?

Minami “自分自身がどれだけできんのか?”っていう。なんだかんだKEMURIで10年やって、Ken Bandで6年やって。ずっと作曲はしてきましたけど、自分の作品がどれだけ世の中に通用するか、それを試したかったっていうのがあって。

--その意味では、すごく大きな一歩を踏み出されたんですね。

Minami そうですね。まぁそんな大げさなもんじゃないですけど、これをやらないと、結局脇役というか……いや、全然今のポジションに不満はないんですよ。Ken Bandでの立ち位置とか、本当に楽しいし。でも、こういうのを一個、残しておかなきゃなって。もう43になるわけですけど、これから先のことを考えると、どうやって自分の音楽人生を終えるのかってことまで考えてしまうんですよ。何歳までできるんだろう?とか、Ken Bandの後の自分はどうなんだろう?とか。もし自分が音楽中心の生活をしなくなった時に、こういった作品を残せたのは振り返った時に大きだろうなって。

--自分の存在証明になるべきものというか。

Minami うん。それにみんなに付き合ってもらった感じですね。

--なるほど。1stアルバムそのものに対しては、どんなものにしたいとか、テーマはあったんですか?

Minami 自分の中では、大きな意味での“ロックンロール”っていうか。ロックンロールっていうと、リーゼントして革ジャン羽織ってって感じだけど、本当はもっと幅広いはずで。

--要するに、ロックンロールのフィーリングを慣らしたかったというか。

Minami そうですね。それをもっとポップに表現できたらなと思って。なんていうか、8割くらいの感じで聴いてもらえるアルバムを作りたかったんですよね。KEMURIとかKenさんの作品みたいに、誰かの人生に大きな影響を及ぼすようなものは作れないって自分でわかってるから、ちょっと流すくらいの感覚で聴いてもらえるようなものが作りたくて。それが自分の中でのロックンロールだったりするんですよね。

--実際、車のドライブなんかで聴くのがいちばん気持ちいいアルバムなんじゃないかと思いました。

Minami ホント、それくらいで聴いてもらえると。本来そうなんじゃないの?ってところがあるんですよね。もちろんパンク/ハードコアってなると絶対メッセージ性とかは必要だけど、自分ではこのバンドはパンクだと思ってないし。音楽的にはパンクに影響されてますけどね。世の中に対して言いたいこととかはありますけど、このバンドにそれは必要ないと思っていて。だから、歌詞も全然深いこと言ってないし。

--だいたいがラブ・ソングか、あるいは失恋ソングか。

Minami はい。さっき言った、80'sのビルボードとか、アメリカのロックの世界観っていうと、恋愛の歌だったりするんで。それを敢えてやったっていうか。

--今回の12曲っていうのは、これまでずっと書き溜めてきたものから選りすぐったもので?

Minami パーツを集めて、構成して12曲にした感じですね。変な話、この1回しか作るチャンスはないかもしれないから、ちゃんとフル・アルバムで、10曲以上は入れたかったんで。

--『New Neigbors』っていうタイトルは、最後に付けたんですか?

Minami はい。これは後付けで、最初ジャケットから決まったんですよ。なんかアメリカの風景が欲しくて、それを絵にしてもらって。バンドも新しいしから、“新しい隣人”っていうのを後付けで決めました。

--ちなみにバンド名のemberには、どんな意味があるんですか?

Minami バンド名を何にしようかなって辞書を捲ってたら「ember」って出てきて。これカッコいいなと思って、意味を見たら“残り火”ってあって。焚き火が終わったあとの、炭がまだ燃えているような感じ。それが、自分はもう旬じゃないし、すごい燃えてるわけじゃないけど、まだ火は消えてないってところで後付けで決めて。

--ちょっと自虐的でありつつ、強い意志を感じさせるネーミングですね。聴かせてもらって、ちょっとギターでコピったりしてみたんですけど、結構簡単というか(笑)。失礼ながら、すごくシンプルですよね。

Minami そうなんですよ。すごくシンプルで。

--ここまでシンプルでありつつ、ありきたりではない、洗練されたものに仕上がっているところが純粋にスゴいなと思って。

Minami なんか、今のバンドってみんな上手いし、テクニカルじゃないですか? それを、40を過ぎたオッサンがやってもなあと思って(笑)。歳相応のロックっがやりたいというか。これしかできません!っていう感じのロックが好きだったりもするんですよね。比較に挙げるのもアレですけど、AC/DCとかラモーンズとか、「この人たち、これしかできないでしょう?」っていう説得力があるというか。アレもできます、コレもできますより、そっちの方がカッコいいと思うので。やっぱり、歌があっての曲かなと思うし。

--いちばん大切にしているものは、やはりメロディですか?

Minami はい。それは昔からありますね。曲もメロディから作っていきますし、アコギ一本でも成立するような曲が理想ですね。

--今作に、「An Angel to Me」っていうアコギメインのバラードもありますね。

Minami はい(照笑)。いちばん最後に作った曲なんですけど、あれが本っ当に苦労して! ああいう曲は二度とやりたくないですね(笑)。

--いや、めちゃめちゃいい曲じゃないですか!

Minami 結果オーライですけど、最後まで正解が見えなかったというか。もう入れなくてもいいかなと思ったんだけど、KTR(PIZZA OF DEATHスタッフ)が入れたほうがいいって言うから。

--それはKTRグッジョブですね。

Minami はい(笑)。「My Princess And Me」もそうですけど、いわゆるポップパンクバンドと差別化するには、こういう曲を入れなきゃなと思って。当初からロックバンドをやるつもりで曲は作っていたので。1曲目(「Lie To Me」)だけ聴くと、なんかNew Found Gloryっぽいバンドなのかなって思うかも知れないですけど。

--たしかに。今の日本のロック/パンクシーンにemberみたいなバンドって、他にいないかもしれないですね。

Minami いないんじゃないですか? 日本人って、やっぱり歌詞が深いとか切ないものの方が好きだから、そういう部分はないので(笑)。

--ロック/パンクシーンの状況とかは、何かしら意識はされました? 

Minami どこかしらしてましたね。それこそ、さっき言ってた歳相応というか、周りと同じことをやって勝負しようとしても、「このオッサン、イタイな」ってなっちゃうから。

--となると、トレンドとかに合わせるよりも、自分のコアみたいなものを出す方が武器になると。

Minami そうですね。なんか、ちゃんと素人受けするものが作りたかったというか。

--「玄人受け」じゃなくて?

Minami うん、バンドをやってない人にも受けるというか。実際、ギターを弾いてる人がこれ聴いたら、ちょっとつまんないと思うんですよ。やってることがシンプルだから。でも、そこじゃないのかなって思ったりして。ちゃんと素人受けするもの、そこは意識してましたね。

--そういう意識が、地に足のついた客観性になっているんでしょうね。アルバム全編にわたってテンションが落ちないし、クオリティコントロールみたいなものが行き届いているなと思いました。

Minami ありがとうございます。これからどんどん落ちていくかもしれないですけど。アイデア使い切っちゃったから(笑)。

--いやいや、ネタはまだたくさんあるじゃないですか?

Minami ありますよ。でも、歌詞を書くのがホント苦手で。それがいちばん大変でしたね。初めてだから。Kenさんの歌詞を英語にしたりとかはしてますけど、イチから12曲分書くのは本当に大変でした。

--歌詞を書くのは、どういうところからインスピレーションを得るんですか?

Minami 実体験とかではないですね。そこまで恋愛してないので(笑)。必ず男女のことじゃなくて、何かを恋愛に置き換えたりして。

--「An Angel To Me」はラブソングですけど。

Minami そういう感じですね。身近にあるものからインスパイアされて。僕の場合は、日本語を英語に訳すって作業じゃないから。

--あ、最初から英語で書いていくんですもんね。

Minami そうそう。歌い回しとか、歌いやすさとかも考えて。普通に書くなら1時間くらいで書けると思いますけど、やっぱりキレイなラインにしたいというか。英語ができても詩人じゃないので(笑)、単語を探してて2日かかっちゃったりすることもありましたね。

--なるほど。こうして第一作を完成させたことで、もっと作りたいって意欲は出てきたんじゃないですか?

Minami どうだろう? マイペースに作っていきたいとは思ってますけど。 

--Minamiさんの中でemberの未来図というか、今後についてどんなイメージを思い描いてますか?

Minami そうですね……ある程度、長い時間できるようにって思ってはいて。そのうち欲が出ちゃうかもしれないですけど。

--欲は出しまくってほしいですけども。

Minami ははははは。あくまでもKen Bandをやりつつ、ですからね。いい具合にやっていければいいと思いますけど。この反応で2枚目があるかどうか決まるので、みなさんよろしくお願いします!(笑)

Interview by 奥村明裕
Photo by Teppei Kishida
vol.03に続く...

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