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--ツネさんの体調のこともあって、敢えて『AIR JAM 2013』開催には動かなかったんですね。
難波 そう。ツネちゃんはもう乗り越えて、すごい強いなあと思うけど、今年は一回ツネちゃん休んでっていう。
横山 俺もやるべきじゃないと思ったし。そんなにルーティーンにすることないよってナンちゃんには言ったのね。2011年やって、2012年やって、2013年もやらなきゃなって言ってやるのは俺は違うと思って。例えばHi-STANDARDなしの『AIR JAM』を新しい『AIR JAM』の在り方としてナンちゃんが考えるべきことかもしれないけど、とりあえずハイスタありきの『AIR JAM』は一回お休みしてもいいんじゃないかなって。そこで得られるものもあると思うし。
難波 『AIR JAM』はね、普通のフェスとは違うから。
横山 うん。俺がDVDの中でも言ってるけど、「続けるための今年にはしたくない」って。
--続けることが目的じゃない、と。
横山 そう。続けるっていうのも、“毎年続ける”のが続けることじゃなくて。今はHi-STANDARDをちゃんと元気に存在させて、しかるべき時に、やりたい時に『AIR JAM』とかツアーとか、もしかしたら新譜なのかもしれないけど、そういうことが続けるってことなんじゃないかと思って。
難波 そう。まずは3人でスタジオ入るだけでいいのよ。俺たちはファンのことをすごく大切にするから、ファンとも長くやっていきたいのよ。
横山 そうね。それは『AIR JAM』とかね、ハイスタの再始動を喜んでくれるヤツを見たらわかるもんね? 一緒に大きくなってきたんだから。俺たちが20代半ばで、それから活動休止の期間も含めて、ずっと一緒に歳を取ってきてさ。だからこそ、この先もまた行きたいよね。
--本当にそうですね。僕らの青春にはいつもハイスタがいてくれてますから。
難波 俺たちはいろんなことを乗り越えてきて、まだ乗り越える過程でもあって。
横山 本当にね、プチ奇跡のバンドですよ(笑)。あの、Hi-STANDARDがストップしたのが2000年で、その時は俺の精神疾患が――すべての原因じゃないけど――ひとつのきっかけだったの。一回バンドを止めたいって俺が申し出て、そのまま活動休止になっていった。それは誰にも予想してなかったことでね。このまま永遠に続くものだと思っていたことが、ある日突然俺に病気が襲ってきて。で、東北の震災も、俺たちと全く一緒に語るつもりはないけど、突然地震と津波と放射能が襲ってきたわけで。そこからどう這い上がろうかっていうことでしょう? まだすべての問題を克服したわけじゃないけど、ハイスタは11年かけて這い上がってきた。でも、休止した2000年に戻るつもりはないのね。あそこに戻るんじゃなくて、新しいものを作っていくつもりで。“新しいハイスタ”を。それが、仮に被災した人とか震災で心に傷を負った人たちへのメッセージになればいいなと思って。起きてしまったことは仕様がない、だから新しいものを作っていこうって。
恒岡 うん。急に世界が良くなるわけじゃないからね。諦めないで続けていくことが大切で。
難波 希望を持って生きていくしかないもんね。
--その意味でいえば、Hi-STANDARDは本当に大きな希望になってくれたと思います。11年ぶりの復活~横浜『AIR JAM 2011』、そして東北『AIR JAM 2012』という流れはハイスタが僕らに与えてくれた最大最高のドラマだと思うし。
難波 そこをリアルに見せられるハイスタって、すごいなって思うよ。
--バンドに纏わる強烈なドラマ性、さらに音楽的にも圧倒的で、今のハイスタは最強なんじゃないかと思って。
難波 そう言ってくれると嬉しいけどね。
横山 音楽は、少なくとも俺は『GROWING UP』作ったときから、俺の弾くギターはこれだ! 作りたい曲はこれだ!っていうふうな手応えあったから。
難波 思ったよね? 最強なの作ったなあって。
横山 うん。もちろん好きな曲だけど、でも最早特別なものじゃないというか。特別なことをしてるわけじゃなくて。ただ、バンドの在り方とかは、(語気を強めて)ものすごく特別だと思う、Hi-STANDARDは。11年間止まってたこととかも、今なら全部をイエス!って言わせられるというか。
難波 ホントだね。
--そうですね。では、目標であった東北『AIR JAM 2012』を成し遂げたことで、何か達成感みたいなものは得られました?
難波 達成感とかはね、あんま感じたことはないかな。また始まったなっていう感覚だから。
--次にやるべきことが始まったという。
横山 うん。毎年じゃなくても、また次もやりたいなってことに切り替わってたと思うから。そんなに達成感はなかったな。
恒岡 決して『AIR JAM 2012』で終わったわけではないんだよね。
難波 キープ・ゴーインだよね。
恒岡 やるべきことがあるっていうか、もう単純に3人で、Hi-STANDARDとして音を出したいってのがいちばん素直な気持ちで。
--誰かにけしかけられるでもなく。
難波 もうTOSHI-LOWに言われなくてもね。
横山 そうだね(笑)。
難波 自分たちでは、どうなったらバランスが崩れるかっていうことはもう経験してるからわかってるんだよね。だから、そこは各々の活動を重視しつつ、尊重しつつも、新しい形のHi-STANDARDっていうのを自分たちのバランスで進めていきたい。そこはもう俺たちを信じてくださいって言うしかなくて。
横山 そうだね。40代になった3人の歩く速度でね。また新曲だって作ってみたいし、また次の『AIR JAM』もやってみたいし、単独ツアーだってやってみたいし……今はまだ夢を語ってるだけだけど。
難波 アジアが仲悪いんだったらアジアツアーとか行ってみたいし。架け橋になれるんだったら。まだまだやれることはあると思うしね。
横山 うん。たしかに自分たちがやってきたこと、残してきたことを思うとデカイなと思うけど、重要なのはこれからで。前回の『AIR JAM 2011』のDVDも、(発売元の)PIZZA OF DEATHの社長として言うと気持ち悪いけど(笑)、すごい売れたの。すごく良く受け止めてもらえて。
難波 今回もね、アマゾンの予約チャートでAKB48を抜いてね(取材当日)。いいじゃない、たまにはパンクロックが一位になったって! そんな日本いいじゃない?
横山 捨てたもんじゃないなと思ったね。ハイスタのパワーっていうか、日本中にいる不満ためてるヤツらのパワーを感じたというか。
--確かに。今回は東日本大震災の復興という使命感、大義名分があって動き出したハイスタですけど、これからはもっと気軽に動いて行こうと?
横山 もちろん。気楽な感じと、自分らが勝手に課してる使命みたいなものを俺は同居させていきたいと思っていて。それは絶対可能だと思うし、気楽にやりたいことをやって、そこに使命感とか人の気持ちを背負ってやっていきたいな。
難波 いきなり「東北ライブハウス大作戦」ツアーとかもやっちゃうかもしれないし。
恒岡 うん、いろんなイメージがありますね。
横山 月に1、2回だけどもスタジオに集まって、思い出話したり、ちょっと古い曲やったり、まったく関係ないことジャムったり。そんな時間を設けるようにしてて。
難波 4時間の練習のうち、家族の話とかしてて3時間経っちゃったりね。
横山 そう(笑)。
恒岡 スタジオに入る時は、ほとんど3人だけなんですけど、たまにスタッフがいる時があって。スタジオの外にいて、僕らずっとしゃべってたから「どおりで音が鳴ってないと思いましたよ」って(笑)。
一同 はっははははは。
--ツネさんは今3人でスタジオに入って、純粋に楽しいっていう感覚はありますか?
恒岡 ものすごくありますね。言い切ってしまいましたけど(笑)、Hi-STANDARDはもちろん、自分自身が参加してるバンドでもそうですし。すごく自然な感じでできてて、ホント楽しいですね。
--なんか、いちハイスタファンとしてすごく嬉しいエピソードを聞かせてもらいました。一方で難波さんは「NO MORE FUCKIN' NUKES 2013」を主催して、“反原発”という強烈なメッセージを掲げていて。
難波 そうだね。ああやって集まれるのはすごいことだと思うんだよね。恒正彦とKen Bandも出てくれて。
横山 Hi-STANDARDとしてじゃなく、それぞれのバンドで出るっていうことも最近あって。そん時には、だいたいヤイヤイ言われるわけね。Twitterとかでも、せっかく3人いるんだからHi-STANDARDでいいんじゃないかと思います、とか(笑)。まぁ、それが普通の人の気持ちなんだろうね。でも、そこをHi-STANDARDと、3人それぞれのバンドをごっちゃにしないことで新しい俺たち3人の関係にどんどんなっていってて。ずいぶんいろんなことが整頓されてきたと思う。
難波 そこもね、みんなが思う以上にすごいんですよ。それぞれが各バンドでやれちゃうのって。
恒岡 それこそ2000年にハイスタが活動休止したあとも、ナンちゃんにしろ、健くんにしろ、あと自分もですけど、ずっと音楽を続けていたっていうことがすごく大きくて。活動休止したけども、音楽をずっと続けていたからこそまた集まれたというか。
難波 ホントだよね。それぞれに新しい仲間もいて、そのみんながまた仲良くなってる感じとか、最高だよね。
--すべてが見事に繋がってますよね。もう東北『AIR JAM 2012』すらも序章として、今のいいコンディションのまま先に進んでいっていただけたらと思います。
難波 そうだね。とにかくこのDVDは、変な言い方だけど当日以上のものが感じられるのかなって思う。当日行ってた人が観ても、新鮮で楽しめると思うよ。
INTERVIEW BY 奥村明裕
copyright ©PIZZA OF DEATH RECORDS.