Suspended 4th 2nd Mini Album [STORMED]

発売日: 2024年11月20日(水) Code: PZCA-110 / Price: 2,750円(税込)

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STORMED

RELEASE

Suspended 4th STORMED TOUR

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オールスタンディング
(税込・入場時別途ドリンク代・整理番号付き)
4,500yen

U-22割引チケット
(税込・入場時別途ドリンク代・整理番号付き)
3,000yen

- Guideline -

■ U-22割引チケット注意事項
  • ※割引チケット対象は公演当日、22歳以下の方が対象です。
  • ※一般チケットとの連番購入は出来ません。連番購入を希望の場合、一般チケットをご購入ください。
  • ※入場時に学生証、保険証など年齢を証明出来るものの提示が必要です(コピー不可)。忘れた場合は 一般料金との差額をいただきます。
  • ※小学生は、保険証など年齢確認ができる身分証を必ずご提示ください。
■ 全公演共通
  • ※お一人様2枚まで  ※6歳以上有料
  • ※チケットは全て電子チケットとなります。

Interview Vol.01

―― 1stフルアルバム『Travel The Galaxy』リリースから2年以上経ちました。あの作品を起点に本格的な快進撃が始まると思っていたのですが、その後ドラマー交代劇が続きました。ドラマーというバンドの地盤が不安定な中で、曲作りをはじめとする活動もなかなか思うようにいかなかったところもあったのではないでしょうか。

ワシヤマ そうですね。バンドの安定感が定まっていない状態で、どんな曲を書いたらいいんだろうというのは結構悩みでもありました。今まではサスフォーの曲のスタイルとして全員の個性が出るような形を意識して作っていたので、ドラマーの席が空いている状態で曲を作るとなると正直しんどかったし、定まりきらない時期だったなという感じですかね。

フクダ みんなでとりあえず練習はするけど、「どうしたらいいんだろう?」みたいに先が見えない状態が続いて。でも、最近Matt(吉村建太郎)が叩いてくれるようになってからは、本当の意味で修行の日々が始まった気がしています(笑)。サスフォーって過去をさかのぼってみても、あまり練習が好きじゃないドラマーばかりが在籍していたんですけ、それがMattは真逆で、本当に練習の鬼みたいなドラマーなんですよね。なので、彼がサポートをやってくれるようになってからは今までのサスフォーから一新されて、とにかくリハに入りまくり、練習しまくり修行しまくりみたいな日々を送っております。

―― もちろん曲作りにも影響を及ぼすとは思いますが、リズム隊のパートナーとして考えると関係値を築き上げることも大きく作用しますし。

フクダ そういう意味では、今までと聴いている場所が変わったというか。デニスは良くも悪くもドラマーっぽくないドラマーだったので、リズムの軸として当てにするというよりもむしろ無視していないと置いていかれてしまうみたいな感じだったんですよね。で、逆に(平)陸は本当に曲に忠実に叩いて、ドラマーとしての仕事を全うしてくれて、ベーシスト的には非常にやりやすかったドラマー。Mattはなんていうんでしょうね、その2人の良さみたいなところを持ち合わせつつも、ちゃんとドラマーでいてくれるというか。デニスみたいなユーモアもありつつ、陸みたいにドラマーとしてのジョブも全うしてくれる部分もあって、寄り添ってくれるドラマーなのカナ。だからベーシスト的には今までで一番やりやすいドラマーだなと感じています。

吉村 ありがとうございます(笑)。

―― サワダさんはこの2年を振り返ってみていかがですか?

サワダ むうくん(フクダ)が言ってくれたとおり、めっちゃ練習するようになりましたね。デニス時代は自分が気持ちよく弾ければいいっていうスタンスでギターと向き合っていたんですけど、いろんなドラマーとやる中で周りの音を聴いて音楽をするようになったというか。聴いた音に対して自分が瞬発的に何かをするには、結局練習をしていないとできないので、自然と練習量も増えるわけです。そう考えると、前のサスフォーよりもバンドとしての力が高まっていった2年だったなと。でも、メンバーチェンジって何回やっても慣れないしかなりしんどいので、そういう意味でも目まぐるしくてカオスのような2年間だったなと思います。

―― せっかくの機会なので、デニスさん脱退から今回のミニアルバム『STORMED』制作に至るまでの流れを、時系列に沿ってお話いただけたらと思います。

ワシヤマ そうですね、そこから説明しないことにはわかりにくいところも多いと思うので、詳しく話してみます。まず、デニスが抜けたことで新しいドラマーを探そうとしたときに、彼と同じスタイルのドラマーってなかなかいないんだなってところから始まって。同じタイプが見つからないんだったら、先のことを見据えて安定しているドラマー、可能であれば同い年ぐらいの奴と一緒にやりたいなと考えたんです。かつ、僕らが活動する名古屋から距離的にそんなに遠くない人を探したときに、そういえば浜松という街に平陸という奴がいるらしいという話を、いろいろディグっていく中で見つけて。それで普通にSNSを通じて「ドラムやってくれませんか?」って連絡したら、食いついてきてくれたんですよ。で、最初はサポートからと思っていたんですけど、スキル面はもちろん、自分が思い描く曲の再現度的にもすごくマッチしていると思ったので、一旦パーマネントのメンバーとしてやってもらったんですけど、やっぱり浜松から名古屋は当たり前ですけど遠いわけで。そこで足並みが揃わないねってところもあり、サポートに戻ってもらったのが去年の12月のことでした。

―― そうか、3人編成に戻ってからまだ1年も経っていないんですね。

ワシヤマ そうなんですよ。そこから「陸にこだわらず、この際いろんなドラマーとやってみよう」ということで、最初に声をかけたのが箱木駿っていう、地元が一緒で今東京に出ていスタジオワークをメインでやっているドラマー。駿は7〜8年前ぐらい、彼がまだ14歳ぐらいのときに、サスフォーの最初のドラマーが抜けてサポートで叩いてもらった縁もあったんです。で、彼にサポートをお願いしたんですけど、うちだけじゃなくて東京を主戦場にいろんな現場があったし、陸もほかの現場があったりして、なかんか予定を合わせづらくなり。それで「もうひとりぐらいサポートをしてくれる人を探そう」っていうことで、建ちゃんに声をかけてみたんです。建ちゃんはもともとフクダくんが「ベースの日」かなんかのイベントで、一回一緒にやったことがあるんだよね?

フクダ そうですね。

ワシヤマ そういうつながりもあったし、自分もキタニタツヤというアーティストと対バンさせてもらったときに、ちょうど建ちゃんがサポートで叩いていたことも知っていたので、スキル的にも信頼できそうだなということで、フクダくん経由でお願いしたって流れですね。

―― 吉村さんはサスフォーと一緒に活動してみて、ここまでいかがですか?

吉村 最初に一緒にやった仕事がレコーディングだったんですけど、そのレコーディングが……今まで自分は東京でいろんなレコーディングの仕事をしていたんですけど、その中でも一番楽しくて。それ以降もほかの仕事と並行して名古屋に行ったりしていたんですけど、こんな楽しいことはほかにはないってくらい充実しています。

サワダ そこまで言っちゃって大丈夫?(笑)

―― 主にどういうところが楽しいんですか?

吉村 シンプルに、一緒に音を出していて楽しいんです。それが一番ではあるんですけど、それと同じくらいにメンバーがみんないい人なので、一緒にいて普通に楽しいです(笑)。とにかく人として尊敬できるし人ばかりですね。

ワシヤマ その言い方だと、ほかの現場に悪い人がたくさんいるように聞こえるよ?(笑)

吉村 まあ、ほかにもいい人たちもいっぱいいるんですけど、ここが最高だったということです。

―― それくらい日々刺激をもらえていると。

吉村 本当にそのとおりです。

―― 複数のサポートドラマーの力を借りて、なんとかバンドとして転がり始めたところで新作の制作に入ったと。本格的な制作に突入する時点で、曲はある程度出揃っていたんですか?

ワシヤマ 陸が加入したタイミングぐらいには大体5〜6曲あったんですけど、その中からまず「CULT SPEAKERS」をレコーディングして(2023年12月に配信リリース)。それは陸と一緒にやっていく未来が見据えられたから出したんですけど、その前後に彼がパーマネントからサポートになってしまった。4人で活動する未来が見える状態で音源を出したいなと思っていたから、リリースを一旦止めることにしたんです。

―― 「CULT SPEAKERS」を最初に聴いたときは、「サスフォー第2章の幕開けに相応しい強い曲が届いた、ここからまた攻めが始まる!」と思ったんですが。

ワシヤマ 俺もそう思ってました(笑)。

フクダ しかし、行けずという。

―― 出し渋りがあったものの、それでも曲はどんどん溜まっていくわけですよね。

ワシヤマ なので、曲が増えていく過程で自分たちの未来もある程度見えてきたタイミングだったから、リリースに踏み切ったところもあります。もちろん曲を書く立場としては早く世に出したいなって気持ちはあったんですけど、一方で「無理にリリースしなくてもライブでやれるしな」って思いもあって。新曲に対して、リリース前にはあんまり積極的にライブでやらないバンドが昨今多いと思うんですけど、このレーベルは新曲をやることを許してくれるので、そのおかげで出し渋りに対して自分自身をケアできていたというか。ほかみんなはどう思っているかはわからないですけど、俺はそういう感じです。

サワダ もちろん俺も早く音源を聴いてほしいなって気持ちはありましたよ。いつもワシヤマからデモが送られてくるんですけど、常に完成度が高くてゴールがわかりやすい状態のデモを作ってくれるから、完成したイメージが湧きやすくて。だからなのかリリースする頃には……言い方は悪いけど、飽きちゃうんですよ(笑)。もっと言えば、リリースされた頃にはライブでの演奏も変わっちゃってるみたいなところがあるので、サスフォーが出す音源ってプロトタイプっていうか。音源はその曲のベースであって、そこからライブでどう変化していくのかを楽しんでもらいたいんです。だから、ライブをより濃く楽しんでもらいたいって意味でも、早く音源を出したいとは思ってました。

―― とはいえ、「CULT SPEAKERS」はバンドの次章を占う意味でも、ラウドで勢いの感じられる1曲だったと思います。

サワダ それはたぶん、ALUM SKY STUDIOというスタジオ……僕らはALUMを逆から読んで“ムラ(MULA)”と呼んでいるんですけど、そのスタジオをクラウドファンディングで作らせてもらって、それが完成して稼働し始めたタイミングとも被っていたのもデカいかもしれませんね。

ワシヤマ それまでは自分の家というコンパクトな環境で制作することがメインだったんですけど、「CULT SPEAKERS」からは一回スタジオでデカい音で弾いてそれを録る形に変わった。ダイナミックな環境で、ライブのような音を出せる環境で楽器の音を調整したりしていたので、そういう意味での新しい感じは出たのかな。

―― 全体的に今まで以上の開放感というか、外に広がっていく感がより強まっているのはそういう環境が及ぼしたんですかね。

ワシヤマ そうだと思います。とにかく大きい音を出せるようになったし、以前よりも低音が聴ける環境ですし。従来の制作時よりも大音量でやれたことがこんなにも影響したんだなって、自分でも思いますね。それこそ、今までは手数でどうにかしようとしていた部分も、今の環境だと低音一発で迫力につながるんだなという知見も得られたし。

サワダ ムラの2階にバカデカいスピーカーがあるもんね。

ワシヤマ モニタースピーカーがいわゆる商業スタジオの壁に埋まってる系のスピーカーで。中古で出ていたのを購入して設置したので、相当ローは聴ける感じですね。

―― ちなみにこの曲のリフって、Rage Against The Machine「Guerilla Radio」からの影響が感じられますが。

ワシヤマ ああ、確かにめっちゃ意識しました。

―― ワウを聴かせたバッキングのフレーズにも、オマージュ感がありますよね。

ワシヤマ 一番好きなのが90年代付近のロックなので、そういうサウンドを出したいなという思いが今回は特に強くて。『Travel The Galaxy』のときからプロデューサーで入ってもらっていた告井さんとも、「90年代っぽいものを作ろうぜ!」というところで意気投合したのもありましたしね。以前はデニスのドラムだと60年代が香ってしまって、そこがカオスになっていたところでもあったんですけど、「CULT SPEAKERS」からはシンプルなビートでお願いできるドラマーを迎えることができたので、自分が狙っているサウンドの理想に近づいてきたなと思っています。

interview by 西廣智一
Vol.02へ続く...

Interview Vol.02

―― 90年代というキーワードが出てきましたが、今回の『STORMED』には「CULT SPEAKERS」以外にもそのテイストを漂わせる楽曲が多いですよね。

ワシヤマ それこそ「STORMED」っていうタイトルトラックも、Arctic Monkeysの「Brainstorm」を過去形にするっていうところから始まってますし。

サワダ へーっ、そうなんだ!

フクダ 我々も初耳ですな(笑)。

ワシヤマ この曲も江口亮さんっていう、いきものがかりとかLiSAさんとかやっているプロデューサーが付いてくれていまして。江口さんも結構90年代の音楽が好きで、告井さんがUSだとしたら江口さんはUK寄りなイメージなのかな。江口さんとの会話の中で「Arctic Monkeysみたいな曲を作れば?」と軽い感じで提案してもらって、自分なりのArctic Monkeysの解釈をやってみた感じですね。

サワダ ただ、結果的にアクモンじゃなくなっているところが、サスフォーって面白いですよね。

―― 本当にそのとおりで。Arctic Monkeysをはじめとする、あの頃のUKロック的な香りは感じつつ、そこにサスフォーらしいテクニカルな要素や爽快感の強いメロディが加わることで、完全にオリジナルなものへと昇華されていますしね。

ワシヤマ そう感じてもらえてめっちゃうれしいです。今の若い人たちで90年代のUKっぽいバンドを目指している人たちってあまりいないので、実は今求められている音なのかなと思って。そういう匂いを察知して突いてみました。

―― ドラムもかなり豪快ですが、これはどなたが叩いたものなんですか?

ワシヤマ UZMKのDUTTCHさんです。「日本でめちゃめちゃ音のいいドラマーがいる」と江口さんから聞いていて、それでLiSAさんのレコーディングでDUTTCHさんが叩いていることを教えてもらったんですけど、本当に迫力がすごすぎて。「これ、一緒にやったら俺ら演奏で負けるんじゃね?」みたいなところからもインスピレーションを受けて、ただアクモンっぽくやってもヘナヘナなギターじゃDUTTCHさんのドラムに合わないなっていうところもあり、骨太なサウンドで16分のリフっていうのが決まってようやくサスフォーっぽくなったのかな。そういう意味では当初狙ったサウンドとは少し違うのかもしれないけど、テイストとしてそういうのもありますって感じですかね。

―― このタイトルトラック同様、オープニングを飾る「HARD GRAVITY」もすごく豪快な1曲です。スピード感がありつつも、サビで一気に開けて壮大になるアレンジもすごくいいですね。

ワシヤマ 「HARD GRAVITY」は確か「CULT SPEAKRS」を書く前にできていた曲なんです。これも曲の雰囲気的にドラムはめっちゃ90年代っぽく叩いてほしいなと思って、さっき出てきた駿に「デイヴ・グロールみたいに叩いて」ってお願いして。それも相まって、曲の構成が活きるビートになったなと思うんです。しかも、この曲ってほぼスラップを弾いてないよね?

フクダ 1回もないね。

ワシヤマ たぶんサスフォー的にはこのテンポ感、この雰囲気でスラップがないというのも新しいなと思って。デニスが抜けて最初に書いた曲なんですけど、こういう方向性でも強みを出せるようにしたいなという思いからこの曲が生まれました。実は「HARD GRAVITY」を初めてレーベルに聴かせたとき、自分的には「今までのサスフォーっぽくないんじゃね?」と思って「あんまりいいのができなかったんだけど聴いてください」って感じでは渡した覚えがあるんですよ。ただ、意外といい反応をもらえたというか。

サワダ そのときに言っていたことなんですけど、ELLEGARDENの『ELEVEN FIRE CRACKERS』味があると思ったんよ。あのアルバムを聴いときの衝撃に似ているなと感じて。確かに今までと違うけど、そんなの関係ないぐらいいいなって思ったな。キャッチーでカッコいいし、オープニングにもってこいの曲だと思ったし。

―― それこそFOO FIGHTERSのように、オルタナから王道なクラシックロックへと進化していく感も伝わる1曲だなと思いましたよ。

ワシヤマ うんうん。それまでクラシックロックをやっていた奴らが、オルタナが攻めてきたことでそこに対抗しようとしているような。自分らなりのクラシックロックをやっていた奴らがオルタナをやるとこうなるんだぜという意味でも、すごくバンドっぽい1曲ですね。

―― 個人的にこの曲ですごく引っかかったのが、歌詞の中にある〈この星で置き去りの 空を見上げる者〉というフレーズ。前作『Travel The Galaxy』のオープニングナンバー「トラベル・ザ・ギャラクシー」では銀河を飛び回っていたのに、続く今作では〈この星で置き去り〉になってしまっているのが興味深いなと。

ワシヤマ あははは! ありがとうございます。「HARD GRAVITY」の歌詞について指摘されたのが初めてで、めちゃめちゃうれしいです。メンバーからはあまり歌詞のことは言われないので。でも、そういう思想もあるっちゃああるので、推していきたいなって部分ではあるんですけどね。

サワダ ちょっと曲は変わっちゃうんですけど、俺は「Mantaray」の歌詞がすごく好きで。愛に満ち溢れているじゃないですか。今までにないタイプだったので、すげえいいと思います。

ワシヤマ ありがとうございます(笑)。そうですね、「HARD GRAVITY」も「Mantaray」も歌詞のテイストを今までの感じからちょっと変えていこうかなと思ったところもあったので、実際にそういう歌詞になっているかな。逆に「CULT SPEAKERS」は「トラベル・ザ・ギャラクシー」的な、あのときと同じようなマインドで書いたんですけどね。ちょうどコロナの影響もあって内向きな歌詞を書いていたところから、今はもうちょっと外に出てみようかなっていう気持ちですね。

―― 歌詞に関しては今挙げたような楽曲のみならず、従来のテイストから表現の幅が広がり始めている印象もあります。

ワシヤマ 特に今作を作っていて、せっかくいいビートで歌える機会が増えたので、改めて歌詞を大事にしようと思うようになったんですよ。今まではサウンドの一部として言葉を連ねていたところもあったし、ぶっちゃけ歌詞の意味なんてなんでもいいやって気持ちでいたんですけど、最近は歌詞の世界観も交えて音楽していきたいなという余裕も少しずつ出てきた気がします。

―― で、その「Mantaray」ですがめちゃめちゃドキッとする1曲でした。これはやられたなと。

ワシヤマ すみません、やっちゃいました(笑)。

―― このトラッドフォーク調のテイストはかなり斬新でした。

サワダ 実は伏線があって。サスフォーを始めた超初期に作った曲に、アコギ2本のインストがあったんです。だから、俺とワシヤマ的には原点回帰的な曲でもあるんだよね。

ワシヤマ そうだね。それに、俺がこういうサウンドを結構好きというのも大きかったかな。20代に入ってからジェイコブ・コリアーっていうアーティストが好きで、毎年Spotifyで自分が聴いているアーティストの上位にいるんですけど、ああいうアイリッシュな世界観というかストーリーが見える系の曲がすごく好きなので、それ系の曲をやるならやっぱりビートがカッコいい感じじゃないとできないなと思って。そこで、この曲を建ちゃんに叩いてもらったんです。

―― こういうフォーキーなテイストだともう少しテンポ感がゆったりなイメージがありますが、「Mantaray」は意外とアップテンポですよね。

ワシヤマ そうですね。アコギ中心だからといってバラードにするのは嫌だなと思って。それだと大味すぎるし、もうちょっとシュッとしていて踊れるテンポで、だけどちょっとだけバラードのような雰囲気もあるものにしたいなということで、この形になりました。

―― あと、〈Oh〜〉というコーラスもいい味を出していますよね。

ワシヤマ それこそこの曲は(10月下旬の取材時点では)まだライブではやったことがないんですけど、音源を聴いてもらってからみんなで歌えたらなというのもあって。そういう、ちょっとハッピーな空気を作れたらなっていう1曲ですね。

―― なるほど。フクダさん的にはこういうタイプをベースでプレイする際、どういうことを意識しましたか?

フクダ 正直、僕の手札にまったくないテイストで。僕がまったく通ってきていない、ベースを始めてからあまり聴いてこなかったタイプの音楽ジャンルなので、何を弾けばいいんだろうみたいに正解がなかなか掴めなくて。ただ、さっきサワダが言ったように、ワシヤマが作るデモってほぼほぼ「このまま出しちゃえばいいじゃん」ってくらいのクオリティなので、ワシヤマが最初に打ち込んでくれたベースラインをもとに、ちょっとだけ自分の色を加えているっていう感じで完成させました。なので、ワシヤマが「こういうふうに弾いてほしい」という原型のイメージを重視して、この曲は弾いてますね。

―― 吉村さんにとってはこの曲がサスフォーでの初仕事になるわけですが、実際のレコーディングはいかがでしたか?

吉村 この曲は確かむうさんと一緒に録ったと思うんですけど、結構すんなり終わった記憶があって。

フクダ そうだね。ベースは時間がかかったけど(笑)。

サワダ 録り終わったあと、録った音を聴いて踊ってた記憶がある(笑)。そういうドラムのバイブスがレコーディングからも伝わってきたよね。

ワシヤマ 確かに(笑)。

吉村 それくらい楽しくて快適な思い出があります。

サワダ ALUM SKY STUDIOでレコーディングしたのもあって、みんなで合宿しているような感覚で作業を進められたのも大きかったのかな。和気藹々と、半分遊びみたいな感じで。

ワシヤマ あと、この曲ができたときにみんなで「この曲の世界観に行きたい」って話をしていて。レコーディング前にも「この曲って何っぽい?」って話をみんなでしたんですけど、そこでフクダくんがモンハンの……。

フクダ 集会所で樽のカップに入ったビールを飲んでる感じ、って言ったんだよね。古き良きオンラインゲームの集会所BGMという印象が脳裏に過ぎって、懐かしい気持ちにもなり。正直、今回のミニアルバムで僕は「Mantaray」が一番好きなんですよ。ノスタルジックな気持ちになりますし。

ワシヤマ そういう意味でも我々の世代だと結構刺さる人が多いと思うし、俺らが思い描いている世界に一緒に行けるんじゃないかな。

interview by 西廣智一
Vol.03へ続く...

Interview Vol.03

―― 「Mantaray」から「Future knows」への流れもまた絶妙で。「Future knows」は個人的に一番ハマった曲です。

ワシヤマ え、うれしいです。

―― ちょっとサイケでニューウェイヴっぽさもありながら、サビになるとキャッチーでポップな側面が強まる。すごくいいなと思います。

ワシヤマ この曲、サウンドはもちろんなんですけど歌詞にも注目してほしくて。これはギターのエフェクターについて歌っている曲で、自分がエフェクターや機材に関して思っている楽しさを表現できたかなと。何かしら仕事をしていると、その中で必要な道具や機材と出会うじゃないですか。その大切な道具に対しても、普段周りの人たちに感じているような気持ちを照らし合わせられる部分もあるのかなと。そういうところに注目してもらいたいなと思って、力を入れて作った1曲です。エフェクターについて歌っているだけに、サウンド的にもディレイの発信が結構多かったり、歌にも深めなリバーブがかかっていたりするので、そういうところも意識しながら聴いてほしいですね。

―― この曲のベースラインはかなりメロディアスですよね。

フクダ そうですね。これもまたスラップがまったくない楽曲で。今回のアルバムにはスラップを使わない曲がぼちぼちあるので、僕的には今までのイメージからひと皮剥けた、挑戦的な作品になったかなと思います。事実、そういうチャレンジは今年の僕のテーマでもあったので。ただの脳筋スラップ野郎じゃないんだぞという(笑)。ただの脳筋スラップ野郎からまたもうひとつランクアップした側面を見せたかったのが、今回のレコーディングで挑戦したことでもありました。

―― ちなみに、この曲のドラマーは?

ワシヤマ これも「HARD GRAVITY」を叩いてくれた駿がやっています。「HARD GRAVITY」もそうだったんですけど、16分の軽快さが駿には合うなと思って。あと、「HARD GRAVITY」とこの曲の演奏は一発録りなんですよね。その中で「ライブでも再現できるようなエフェクターの使い方をしようってことで、あんまり大袈裟にならず等身大のままで今のサスフォー、今の俺とサワダ氏ができるエフェクターの使い方集みたいなやり方で、それをいい感じの16分でまとめてくれたのが駿なんです。

サワダ この曲も「HARD GRAVITY」も、今まであまり使ってこなかったかなり深めのリバーブを多用していて、そこが僕の中では大きな変化というか。今まではドライな音を好んで使っていたんですけど、こういうウェットで空間を広げるようなイメージのサウンドメイクをするようなったことで、曲に広がりを与えられるようになったのかなと。そういう意味では、むうくんと同じように僕も挑戦のレコーディングだったかもしれないです。

―― そこから、「SLIDE DOWN」で新作は豪快に締めくくられます。

ワシヤマ この曲はとにかくサワダ氏にカッコいいギターを弾いてもらうことがコンセプトで。これも駿に叩いてもらったんですけど、『Travel The Galaxy』とかでやろうとしていたけどうまく表現できなかった一発の緊張感とかヒリヒリ感みたいな、そういう感触を今回は一発録りで形にできたのかな。「ガレージロックっぽいものをやるなら、ちょっと雑にやるのがいいっしょ?」みたいなテーマで、クリックも聴かないで録ったのかな?

サワダ どうだったっけ?

ワシヤマ 確か聴いてない気がする。聴いて録ったテイクもあったんだけど、最終的にクリックを使ってないテイクを採用した覚えがある。

サワダ ああそうか。どれがカッコよくなるか、いろいろ試したんだよね。

ワシヤマ そうそう。それは本当に自分の狙い通りだなと。とにかくストレスフリーに大きく演奏できるように曲を書いつもりだったので。で、実はこの曲では自分は演奏では参加していなくて、トラック的にはギター1本だけなんですよ。だから、ボーカルを録るときもハンドマイクで歌っていて。そこも含めて疾走感を表現したかった曲です。

―― ギター2本のアンサンブルで厚みを出すよりも、勢いづいた1本でグイグイ引っ張る印象が強いですものね。

ワシヤマ 既存のサスフォーを聴いてきた人からすると、左側のスピーカーやイヤホンからギターがずっと流れないという違和感が残ったまま終わると思うんですけど、そういう今後のサスフォーの展望が若干ちらつく演出を最後の曲で表現したかったんですよ。かつ、バンド側としてもクリックを使わないとかレコーディングでもパンチインをしないとか、そういう雑さみたいなところとも向き合ってみようと思って。ある種その日の日記じゃないですけど、今日はこういう演奏でしたっていうところを重視していきたかったし、そこを重視するにあたってそれまでにどういう気持ちでいればいいのかっていう、そういうことも今回は学べたかなと思っています。一発録りでパンチインもしないコンセプトでレコーディングするってことは、それまでにしっかり練習して、曲の世界観もじっくり解釈する必要がある。その上で生まれるそのメンバーなりの正解というのも出てくると思っていて。今までは自分が正解として作ったデモに近づける録り方をしていたんですけど、そういう意味では今回はこちらが予期しないアクシデントもたくさん入った作品になったんじゃないかなと思います。

―― それこそがバンドの面白さですものね。

ワシヤマ そうそう。自分が好きなバンドってみんなそうだったよなってことを、このレコーディングを通して再確認できましたし、そこが今回大きな原動力になりましたね。

―― なおかつ、今作はそういった楽曲群をインストバージョンで楽しめるのもいいですよね。

ワシヤマ これもまたピザからの提案なんですけど、今回のインストに関してはある種の粗探しをしてもらえると面白いんじゃないかなと思っていて。この演奏でこういうセクションが成り立つんだっていう。結構雑な部分が多いよね?

フクダ 多いです!

サワダ 確かに(笑)。

フクダ 今までだったら自分が納得いくまで何度も録り直したり、この1カ所だけパンチインしたりしていたんですけど、今回は一発録りでそのままお届けみたいな形なので、本当に今までと緊張感が段違いだったというか(笑)。

ワシヤマ それこそ「SLIDE DOWN」は3〜4テイクぶっ続けで録ったんですけど、サワダ氏の手が終わってましたものね。

サワダ 終わってた(笑)。限界だったもん。ヨレヨレだが、一番気合いが入ってたテイクを使ってもらったのでよかったです。一発録りだからソロも別録りせずに、それまでの流れでソロに突入してラスサビにいくっていう形で収録されているんですけど、駿が叩いてくれた一発録りのテイクは毎テイク違うドラムパターンで挑んでくれたので、一緒にいろいろ挑戦しながら録れた気がしていて。

ワシヤマ なので、そこも含めて楽しんでもらえたらなと。それこそ、インスト盤を聴いて「ここのプレイ、粗いな」と思ったところが、ライブではどうなっているかも確かめてほしいかな。

サワダ そういう聴き方もいいでしょうね(笑)。

ワシヤマ あと、一発録りの曲はサワダ氏と俺が同じブースで録っていて。

サワダ そうね。ルームマイクが立っていて、いろんな音も拾っちゃってるよね。

ワシヤマ それこそペダルを踏むときの音もそのまま入っているので、「ここで切り替えているんだ」みたいなこともよりわかりやすいと思います。

サワダ そういう部分も研究してもらえるとね。

ワシヤマ ペダルの切り替え音が入っているようなテイクって、今の現場では当たり前のようにNGを食らうと思うんですけど、今回に関しては「これは自然現象なので」っていう我々から今の音楽業界へのアンチテーゼというか。「そこも含めて楽器じゃね?」っていうところを聴いてもらいたいですね。

―― そういう意味では、『Travel The Galaxy』のインスト盤とはまた全然違う立ち位置なんですね。

ワシヤマ そうですね。『Travel The Galaxy』のときは自分がいろいろエディットをしていて、音が鳴っていないギターのチャンネルとかカットしていたんですけど、今回はだいぶそこも雑にやってもらったので。むしろ今作はインスト盤のほうこそが不安ですね(笑)。

―― ここまでお話を聞いて、この2年間ただメンバーチェンジを繰り返して時間が流れていただけじゃなかったことが理解できました(笑)。

全員 (笑)。

ワシヤマ 僕らもやっと完成までこぎつけてホッとしているので、これでみんなにも少しは安心してもらえるんじゃないかと思います(笑)。それに、まだまだ続編もありますし。

フクダ 次のやつも早く聴いてほしいよね。

―― えっ、続編ですか?

フクダ はい。本来はフルアルバムを目標として曲作りを進めていたんですけど、出来上がってきた曲にいざ目を通してみたら「これはひとつの作品として出してしまうよりも、2枚に分けたほうがいいのでは」ということになって、ミニアルバムを2枚という形にしたんです。なので、すでに次のやつも録り終わっているので、それが出てようやくここまでの2年の試行錯誤が終わる気がします。

ワシヤマ レコーディングに入るにあたって15曲ぐらい準備できていたんですよ。その中から今回の『STORMED』を出すにあたっては時系列とか考えずに選曲したので、最近録ったものもあればちょっと前に録ったものもある。そういう意味では、本当にこの2年間の過渡期感がそのまま出せているかなと思うんです。次の作品はまたそのストックの中からまた6曲くらい選ぶと思うんですけど、2年前の曲もあれば最近建ちゃんに叩いてもらった曲もあるという。そういうなので、ライブに来てくれている人たちは「ライブでやってるあの曲、『STORMED』に収録されないんだ」と思うかもしれないけど、そこも含めてライブに来て音源を聴いて、さらにウズウズしてもらえると今のサスフォーの楽しみ方としてはアリなんじゃないかなと思います。

サワダ それこそアートワークに関しても2枚が対になって、2枚とも欲しくなるような仕掛けを考えているので、まずは今回の『STORMED』を買っていただいて、あとで「これは次のやつも買うしかないじゃないか!」と両方手に入れてもらえるとうれしいです。

フクダ だから、本当に今後のサスフォーに期待してほしくて。この2年の間に離れてしまった人もいるかもしれないけど、まだまだやれるんだぞ、頑張ってるんだぞということに再び気づいてもらって、今まで以上に期待してほしいなと思います。

interview by 西廣智一