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―― 前作『STORMED』が昨年11月にリリースされ、その後12月には吉村さんの加入が正式発表されました。反響っていかがでしたか?
ワシヤマ 建ちゃん的にはどうでした?
吉村 そうだなあ……ここ最近のライブを観てくれていた人たちは「そうなるだろうね」って感じだっただろうし、そうじゃない人からしても「合ってるんじゃない?」みたいな感想をもらって。先輩方からも「今までで一番合ってるんじゃないかな」とは言われます。実際、音楽的なところはもちろんだけど、人間的なところでもすごく居心地がいいなというのはありますね。
―― じゃあ、加入発表以降のライブではお客さん含む周りの雰囲気もちょっと違う?
吉村 自分的にはサポートをしていたときから地続きな感じがしているんですけど、正式メンバーになったことでお客さんの反応はちょっと違うのかな。それこそ「メンバー3人+手伝っている人」という見え方ではなくなったんだなというのも、ライブをしていて感じますし。
ワシヤマ やっぱり正式メンバーっていうのはサポートとは見え方も全然違うんだなっていうのは、僕も反応を見ていて感じました。それこそ、見え方的にもちょっと壁がある感じがあったような気がするけど、加入発表後は周りがすごく歓迎してくれている感が伝わってきたし、僕自身「この4人でSuspended 4thです」と胸を張って言えるような感覚が強まったし。特に、演奏的にもドラムソロを振りやすくなったとか、そういうところは具体的に変わった部分かな。サポートドラマーにドラムソロを振るのと正式メンバーに振るのとでは、やっぱり演奏に対する受け入れ方が違うなっていうのをすごく感じます。
―― ああ、そこでも違うんですね。
ワシヤマ 逆に自分がお客さん側だったとして、やっぱりそれは違うように感じるし。内容は変わらないけど、正式メンバーとしてやっているか否かっていうのは、観る側的にはすごく重要なんだなって最近感じます。
―― フクダさんやサワダさんは、吉村さんが加入してそれまでとの違いや変化を感じることはありますか?
フクダ 建ちゃんが正規メンバーになったタイミングの前後からお客さんの層が入れ替わったというか、若いお客さんが増えてきたんです。まず、メンバーが入場してきたタイミングにお客さんのヤジというか、メンバーの名前をデカい声で叫ばれたりするじゃないですか。そこで最近、最初に名前を呼ばれるのが建ちゃんなんですよ。そういうところで、ちゃんとサスフォーのドラマーとして認識されてきているのかなとすごく感じていて。演奏面に関しても「ここはこういう感じにしてほしい」という的確な指示や意見をくれるので、今までのドラマーよりも圧倒的にやりやすいし、一緒に弾いていて楽しいドラマーだなと思ってます。
サワダ 建ちゃんってサスフォーの歴代メンバーの中で一番陽キャで、今までになかったタイプなんですよ。なので、バンド内がかなり明るくなりました(笑)。あと、2月16日に『STORMED』ツアーのファイナルが東京であったんですけど、もちろんお客さんが盛り上がってくれてすごくよかったんですけど、特に印象に残ったのが……ステージ裏がすごく盛り上がってくれたこと。例えばマネージャーやスタッフ、PAさんやローディーさん、ゲストで入ってくれた方たちとか、みんなが「よかった!」と言ってくれて。そういうライブって、サスフォーをやっていて初めてだったんじゃないかなってくらい。そういう場面でも、改めて建ちゃんが入ってくれてよかったなと感じます。
―― メンバーや周りの皆さん、お客さんまで吉村さんや今のサスフォーからポジティブな空気を受け取っているってことですものね。
ワシヤマ そう考えると、やっぱりバンドって人が作ってるんだなって感じますよね。
―― そんな新体制になってから初めてリリースされるミニアルバム『SLEEPLESS』ですが、制作自体は『STORMED』同様昨年前半にレコーディングされたもの。結果論かもしれませんが、『STORMED』同様に1stフルアルバム『Travel The Galaxy』としっかり差別化のできた内容になりましたね。
ワシヤマ そこは曲作りの段階から強く意識していたことで。特に、『STORMED』も『SLEEPLESS』も曲を作った時期がバラバラだったりドラマーも3人出現したりと、曲の雰囲気含めてバラエティに富んだ形にできたかなと思います。
―― そうか、レコーディング自体は昨年だけど、曲作りはその前から行っているわけですもんね。
ワシヤマ だから、こちらとしては『Travel The Galaxy』以降、2022年とか2023年ぐらいから作っていた曲がやっとリリースされたっていう感じですね。
―― 『SLEEPLESS』収録の6曲を聴いて感じたのは、醸し出す空気や色はそれぞれ違うんですけど、軸にはサスフォーらしさが確実に感じられて、結果今までにない印象を受けること。全体的にもそのバランスが絶妙なんですよ。
ワシヤマ ありがとうございます。『Travel The Galaxy』の頃や『STORMED』よりも、シンプルにBPMが速い曲がこっちのほうには多いのかなっていうか。あとは、フクダくん好みの曲が多いのも特徴ですね(笑)。
フクダ はい(笑)。前のインタビューでもお話したと思うんですけ、『STORMED』は今までにないことにたくさんチャレンジした作品で。でも、今回もわりとチャレンジ的要素は含まれているんですよ。単純に好みの曲が今作のほうが多いかなという感じです。
―― フクダさんの魅力や個性が活きる曲も多い印象を受けますし。
フクダ そうですね。それこそオープニングの「SLEEPLESS」なんて、このタイトルが付く前のデモ段階からずっと推していた曲でしたし。確かこの曲のデモって、2022年11月に上がってきたんですよ。なので、そのときからずっと「これ、ちゃんと仕上げてレコーディングしたいな」と思っていたので、ようやくって感じですね。
ワシヤマ この曲は確か『Travel The Galaxy』を完成させたあと、いろいろな曲を作ってみようってモードのときに書いたんですけど、自分的にはボツだったんです。でも、フクダくんやレーベルの人たちが「これ、いいんじゃない」と言ってくれて渋々取り掛かったというか(笑)。
―― そうだったんですか。この曲はフクダさんのスラップといいタイトなリズムといい、気持ちよく踊れるキラーチューンだと思いますよ。
フクダ ダンサブルですよね。複雑難解なリズムがそんなにないと思うので、初めて聴いてもノリやすいんじゃないかな。
ワシヤマ この曲を作っていた頃って変にリズムを変えないというか、打ち込みでリズムをループさせる縛りを自分に課していたんです。それもあってなのか、自分的に手応えを感じられなかったのかな。だから「え、これでいいんだ?」って思ったんですよ。この曲は建ちゃんにが参加したものなんですけど、結構好きに叩いてもらっていて。ベースと一発でバーンと録ったら、そこでやっと最初の印象から変わったんです。
―― 生の躍動感が加わったことで、曲として化けたと。
ワシヤマ そうですね。それこそフクダくんが言っていたこの曲のよさが、なんとなくわかってきたというか。しかも、それを演奏で伝えてもらえたのがよかったですよね。
サワダ 僕的には「SLEEPLESS」って、今までで一番「バンドで作った」感覚が強くて。最初はワシヤマが作ってくれたワンコーラスのデモから、曲をどう展開させるか悩んでいたんですけど、一応僕がフル尺の展開みたいなものを作って、そこからリズム隊……僕はドラムの打ち込みもできないしベースも弾けないから、全部2人に丸投げし、2番のAメロでのベースとドラムのコンビネーションみたいに「いい感じにやってよ」と雑なリクエストをし(笑)、それに応えてくれた。ガチガチに完成が見えている状態からの制作じゃなく、どうなるかわからないけどやってみようみたいな感じの制作だったから、結果ワシヤマも愛する曲になってよかったなと。だって、最終的には表題曲になっているわけですから。
―― 吉村さん、この曲のレコーディングっていかがでした?
吉村 僕もこういうタイプの音楽がすごく好きなので、レコーディングはめっちゃ楽しかったです。最初にもらったデモがシンプルなものだったから、「(レコーディングは)好きにやっていいよ」って……この曲に限らず、ほかの曲でもそう言ってくれたんですけど、特にこの曲はより自由度が高くて選択肢がたくさんある状態でレコーディングに臨めましたし、むうさん(フクダ)と2人であれこれ試しつつやれましたし、ひたすら楽しかったですね。
フクダ 僕的にはもう建太郎さまさまですよ(笑)。
吉村 いやいや(笑)。
―― ギターに関してはいかがですか?
ワシヤマ サワダ氏が得意そうなフレーズを入れてはいたんですけど、ある種サワダ氏的にはひと皮剥けるタイミングでもあったのかな。例えば、カッティング以外にもエフェクターを使って面白いことができないかなとトライしてもらいました。
―― オープニングのカオティックなプレイが特に印象的ですよね。
ワシヤマ あそこはまさにサワダ氏のアイデアです。こうやってサワダ氏が編曲することって、意外にもこれが初めてなんですよ。
サワダ そういう意味でも、この曲はみんなで作った感覚が強いんです。
―― この曲の制作時点では吉村さんが正式加入していませんが、すでにこの頃からバンドとしての4人の空気感みたいなものが生まれ始めていたのかもしれませんね。
サワダ だから、建ちゃんが正式加入してから初めて出す音源の、オープニングにふさわしい1曲だと思います。
interview by 西廣智一
Vol.02へ続く...
―― 2曲目の「FREEDOM」はいつ頃書いたものなんですか?
ワシヤマ これは確か2024年1月に取り組み始めたのかな。前作でも携わってもらった江口亮さんにプロデュースしていただいて、江口さんが紹介してくれた諸石和馬さんという、Shiggy Jr.やKNOSISで叩いていたり、以前はNAMBA69で活動していたドラマーに叩いてもらいました。
―― サウンドやアレンジにおいてテーマみたいなものってありましたか?
ワシヤマ この曲に関しては、自分は結構受け身のスタンスで取り組んでいて。せっかくプロデューサーがいる状態で制作できるので、江口さんから見た「サスフォーがやっていたらカッコいいなと思うもの」を一緒に作ってみました。だから、ほかの人から見たサスフォーのイメージを具現化できたらなっていうテーマで取り組んでいるのかな。
―― なるほど。だからなのか、コードの使い方や進行が今までのサスフォーにない感じがあるんですよ。
ワシヤマ 全然自分の手癖の中にはない、江口さんのアイデアがたくさんあったりするので、コードに関しても「自分はやっぱりギタリスト的アプローチのコードが多いんだな」っていうことに気づかされました。例えば普段からストリングスとか扱っている人だからこその、ギター2本で再現できる新しいコード感みたいなものにはすごく触れられましたし。
―― Bメロのちょっと不穏な感じとか、かなり印象的ですものね。
ワシヤマ あれはそれこそ江口さんが適当に弾いたコードに、「じゃあ歌って」みたいな感じでトライさせられたセクションなんですよ(笑)。ああいう音楽的に尖ったサウンドは難しかったですけど、普段からポップス含め幅広く手掛けている江口さんだけあって面白い感じになっているんじゃないかと思います。
―― サワダさん、この曲のギターっていかがですか?
サワダ めちゃくちゃ苦労しました(笑)。 何せ自分のバックグラウンドに一切ない感じのフレーズ……きちんと1音ずつ、丁寧に弾く感じだったので、最初にデモが送られてきたときから「マジかーっ!」って思いましたし。なので、今回の一連のレコーディングで一番練習した曲ですね。案の定、レコーディング当日も苦しみながら録っていた記憶がありますけど、終わってみたら江口さんから「すごく的確なギターを弾くよね」って褒めてもらえたので、結果的には自分のレベルアップにつながるいいセッションだったなと思います。
―― ベースに関してはいかがでしょう?
フクダ この曲も『STORMED』に収録された一部の楽曲同様、僕が普段あまりやらないようなフレーズが多かったので、新鮮な気持ちで取り組めました。あと、プロデューサーが入っているだけあって、今までサスフォーであまりやってこなかった表現がふんだんに盛り込まれていて。初っ端のベースみたいに、一度録ったベースを逆再生にして使うなんて考えたこともなかったので、面白かったです。
―― 2番Aメロの16分弾きもかなり印象的です。
フクダ あれは大変でした。プレイを維持するために筋トレもしましたし(笑)でも、カッコいいですよね。あえてフレーズをめちゃくちゃ動かすんじゃなくて、1音でステイして16分で弾き続けるっていうあの発想自体は、僕もいろいろとインスピレーションもらったりしたので好きなポイントです。ただ、ライブで安定して弾けるかは不安ですけど(笑)。
―― 冒頭の2曲だけでかなりやられた感があるのに、さらに3曲目の「DYNAMIX」もその2曲を超えてきますし。
フクダ これも変な楽曲ですね(笑)。
ワシヤマ これは俺の中では、今回のミニアルバム2枚の中で、一番振り切った感の強い曲で。
―― 冒頭からフルスロット感が伝わってきますよ。
ワシヤマ ありがとうございます。これは絶対に建ちゃんに叩いてもらいたいと思っていた1曲なんです。2023年の年末に、どうしても「今年最後の曲を書こう」という謎のモチベーションが湧いてきて書いた曲ですね。ほぼ走り書きみたいな感じだったので、最初は録るまでには至らないかなって感じだったのに、曲が固まり始めるにつれて「これはちゃんと練習してから録りたいな」って気持ちに変わっていって。そういう意味でもバンド的な1曲なんじゃないかなと思います。
―― おっしゃるように、今作の中でもっともバンド感というか、4人の息が合っている感が求められる印象もありますし。だって、冒頭でミスったらそこで終わりですものね。
ワシヤマ おっしゃるように、本当に息が合っていないと演奏できな曲なんですよ。しかも、ちょっと聴きとりづらい音選びをしているので、アタック感があんまりないギターというか。マニアックな話になりますけど、あれはPLASMA Pedalというエフェクターを使っていて、ファズなんだけどゲートがかかってるしオクターブもかかっているみたいな音で、一聴すると何を聴いているかわからないような音を最初にぶち込んでいるんですよ。
―― なるほど。イントロのギターはユニゾンで弾いているんですか?
ワシヤマ そうです。音源ではユニゾンで、バッキングは全部自分が弾いてるんですけど、基本的に2本ずっと鳴っている感じです。
―― そこにベースが加わっていと。
ワシヤマ これもかなり無茶振りした記憶があるんですけど……。
フクダ かなり無茶振りされました(笑)。この曲に関しては、自ら無茶な方向に舵を切っていったというか、デモを聴いた段階で「このベースラインしかねえだろ」みたいなイメージが湧いてきて。そのインスピレーションの元になった楽曲が……BULL ZEICHEN 88というIKUOさんがやっていたバンドの「虹」という、IKUOさんがひたすら16分で、それこそうちの「ストラトキャスター・シーサイド」のイントロみたいなサムピングのオルタネイトで弾き続ける、本当に筋トレみたいな楽曲なんです。今回「DYNAMIX」のサビを聴いた瞬間に「これはあのフレーズをぶち込むしかない!」と思って、IKUOさんに直接連絡して「『虹』のフレーズをパクっていいですか?」って直談判しに行って(笑)。で、「OK!」って2つ返事で快諾してくださったので、無理やりぶち込んだという感じですね。それをやってしまったがゆえ、ライブでワシヤマがちょっとでもイントロのギターを速く弾くと僕が弾けなくなるっていう事態が起きてます(笑)。
―― ドラムもほかのパートとバトルしてる感が伝わるようなドラミングですよね。
吉村 この曲は、聴いて感じる速さと自分たちが演奏するときの速さが、まったく違って感じられるんです。みんなずっと16分音符を弾いてるから、僕もそのドラムという土台でそこをずっと意識して叩き続けないといけなくて。でも、みんなめちゃくちゃうまいから、最終的にはいい感じに仕上がったんじゃないかと思います。
ワシヤマ ちょうど建ちゃんが名古屋に引っ越してきたタイミングに録ったんですよ。なので、僕ら的にも「やるぞ!」っていう思いがこの演奏にこめられていたんじゃないかな。あと、それで言うと歌詞的にも……インタビューの最初でサワダ氏やフクダくんが言ってたみたいに、お客さんの層が変わっていくにつれて、周りの人にもっと楽しんでもらいたいという気持ちでこういう歌詞を書いてみました。
―― 歌詞の話はインタビューの後半で触れようと思っていたんですけど、この曲を筆頭に特に次の「Set Me Wonder」とか「CENTRAL HELL」とか、歌詞が詩人かというくらいに覚醒しているなと感じたんですよ。
ワシヤマ おお、嬉しいです。そのときに思ったことはちゃんと言おうというテーマでこのあたりの曲を書いていて、特に「DYNAMIX」は制作的に一番最後に書いた歌詞。なので、今挙げていただいた3曲含めて、今回の制作における集大成じゃないですけど、自分が赤裸々に表現するとどうなるか、そういうトライを経ての歌詞だったりするんです。最近のMCでは素直に思ったことを言ったりするんですけど、そのテンションで書いた歌詞なので、共感してくれたらライブに来て一緒に歌ってほしい……そういう思い出いますね。
―― サワダさん、この曲のギターに関してはいかがでしょう?
サワダ 自分の色をどんな感じで落とし込んだらいいかっていうのを、すごく悩んだ曲です。それこそデニスがいた時代みたいな、自分がギターを追加する前に全部やり尽くされているような感覚で。悩んだ挙句、エフェクターボードを1回全部バラして組み直すところから始まるレコーディングになってしまいました(苦笑)。最終的に組み直したエフェクターボードから得たインスピレーション、なんとかひねり出したフレーズがEメロの強烈なギター。だからこれは演奏よりもアイディア面ですごく苦労したという記憶が、僕の中にはあります。そういう意味では、思い入れが強い曲ですね。
―― こうしてお話を聞くと、1曲1曲にいろんな向き合い方、それぞれの大変さがあるんですね。
サワダ ワシヤマからのメッセージをキャッチしながら自分と向き合う時間というか、常にそういう感覚ですよね。
―― 4曲目の「Set Me Wonder」は色気の強い楽曲ですよね。
ワシヤマ ありがとうございます。これはあんまりギターを歪ませないというテーマで、前作に登場した箱木駿がドラムを叩いています。なので、この曲を含めた後半3曲は1発録りみたいな感じで、ほぼパンチインをしてません。
―― イントロのベースからがっつり心を掴まれます。
フクダ イエーイ!(笑)
ワシヤマ いいですよね、これ。でも、フクダくんは大変だったよね。やったことない感じというか。
フクダ 本当は録り直したいです(笑)。今ならもうちょっとうまく弾けるなっていう、ちょっと悔いが残る音源ですけどね。というのも、建ちゃんがサポートをやり出したぐらいにレコーディングが始まったんですけど、その頃ってサスフォーに新たなリズムの解釈が持ち込まれ始めて、そこに頑張って順応しようとしている過渡期だったんです。まだ完全に慣れきれていない状態でレコーディングを迎えてしまったので、今改めてこう聴き直すと「うわっ、今ならもっと弾けるのに」と思ってしまうんです。これが当時の最善だったと割り切っているんですけどね。
―― なるほど。
フクダ 特にこの曲はベースがキモな楽曲で。途中に長めのベースソロが入ってくるんですけど、デモにはあのパートは入っていない状態だったんです。ワシヤマのフラッシュアイデアじゃないですけど、「ここでソロ弾いてみたら?」みたいな意見があって、1日かけて頑張ってひねり出したソロですね。今まで僕はスラップでベースソロを弾くことが多かったんですけど、この曲みたいに指引きでベースソロって……一応「もういい」って楽曲のときにはやってはいるんですけど、そのときとは楽曲の雰囲気が全然違うし。ちょっとシティポップっぽいようなテイスト合うベースソロを乗せるにはどうすればいいのか、めちゃめちゃいろんな曲をコピーしてアイディアをもらって、ひねり出しました。
―― あの中間のソロパートはめちゃめちゃセクシーでしたよ。
フクダ まさにセクシーがテーマで、僕の中の内なるセクシーを全開に出しました(笑)。
―― サワダのギターもファンキーさが伝わるプレイかな、という印象があります。
サワダ 思い返してみると、このミニアルバム収録曲って苦労ばかりしていた記憶が強くて(苦笑)。この曲もかなり難しかったですね。というのも、今までのサスフォーにない跳ねてるフィールを表現するのに苦労して。そういう意味では、この曲もすごく勉強になりました。
―― 曲ごとに違った側面があるからこそ、求められるプレイもどんどん変わっていくと。
サワダ 全部違いますね。なので、サスフォーの曲はいろいろ弾けないと対応できないという。だから、サスフォーをコピーしてくれるキッズたちがたくさんいるけど、「みんな頑張れ! 一緒に練習してうまくなろうな!」っていう気持ちです(笑)。
―― 「DYNAMIX」同様、この曲も歌詞が冴え渡ってます。言葉遣いや並びが、僕にはキャッチーに思えて。このサウンドにぴったりだと思いました。
ワシヤマ ありがとうございます! あんまり具体性のない話になったらいいなっていうテーマで。ワシヤマ ある種、歌詞に気を取られてバックの音が聴こえなくなるぐらい、印象的なワードをポンポン入れてみました。
―― 途中で入ってくるコーラス含めて、全体的に色気がにじみ出ています。
ワシヤマ それこそエンジニアの方がサンプルを入れてくれたり、もともと自分が入れていたサンプルもあったりして。実は演奏的には不安が残る状態のレコーディングだったので、あえてそういう形で間を埋めた結果、音源はこういう形に落ち着きました。これからライブで演奏する際にはそういうサンプル音は入らないので。 どうやって間が埋まってるかも楽しみにしてもらえたらなと思います。
interview by 西廣智一
Vol.03へ続く...
―― 5曲目「CENTRAL HELL」でそれまでの空気が一変。終盤に向けて熱が一気に上がります。この曲もイントロから不穏さがにじみ出ていて、タイトル通りの曲だなって思いました。
ワシヤマ 「CENTRAL HELL」は東京に向けて書きました。名古屋の田舎の人から見た東京のイメージ、俺にとっては地獄ですという。
―― 〈奴隷のよう また船ノって〉という印象なんですね(笑)。
ワシヤマ はい(笑)。僕はあんまり経験したことないですけど、東京の通勤ラッシュ……みんなあんなにパンパンの電車によく乗ってられるなっていうイメージですね。そういうところで頑張っている人たちが、この曲を聴いてくれたらいいなぁっていう。ただ電車に揺られているわけではなく、ちょっとイラついていてほしい、ギラついていてほしいなという反骨精神的なもの、あえて煽るような形でみんなが元気になってくれたらいいなと思って、このテーマでちょっと不穏な感じにしてみました。
―― そういう曲なのに、サビがちょっと二段構えみたいな構成で、すごくキャッチーなんですよね。
ワシヤマ それこそ一緒に歌ってくれたらいいなっていう気持ちが強くて、できるだけは難しくない、耳馴染みのいいメロディを狙ったつもりです。
―― ギターの音も個人的にすごく好みです。
ワシヤマ これも1発録りだったんですけど、それこそインターとか間奏のギターフレーズとかソロっぽいのとか自分が弾いているんですけど、事前にフレーズを作り込まずにその場のノリで弾いたもの、ちょっとインプロっぽい部分もあるのかなっていう。ギタリストの方が聴いていて楽しいサウンドを目指しました。
―― Bメロと呼んでいいのかわからないですけ、あのパートでのユニゾンで音階がどんどん上がっていくフレーズなんて、楽器を弾いたことがある人ならコピーしたくなりますものね。
ワシヤマ それこそこの曲はサビ以外、ほぼコードを鳴らさないぐらいリフ、リフっていう感じで作ったので、ぜひギタリストにコピーしてほしいです。
―― サワダさんはこの曲のギターってどうでした?
サワダ これは僕、得意でした(笑)。デカいフレーズのほうが自分らしく弾けるし、たぶんワシヤマもそこを意識して書いてくれたんだろうなって感じて。この曲はまだライブでやったことがないから、披露するのが今から楽しみですし、お客さんもどんなノリになるのか気になりますね。
フクダ 逆に僕は、コード進行が今までとちょっと毛色が違う気がして、最後まで掴めないままレコーディングが終了した曲でした。正直これをライブで披露するとき、どういう反応が来るのか楽しみであり、不安でもありといった感じで。でもイントロの、ちょっとテクニカルなQueenみたいなリズムはお客さんになんとか再現してほしいです(笑)。
―― ライブであのイントロを聴いた瞬間、確実にアガると思いますよ。
フクダ 「あ、きたきた!」ってなりますよね。それぐらい印象的なリズムだと思うので、ぜひみんなで足踏みと手拍子をしてほしいです。
―― そして最後の「BURNIN' SQUAD」。最初にギターのノイズが聴こえてきた瞬間から、「くるぞ、くるぞ!」っていう期待感が伝わってくる録音です。
ワシヤマ これも1発録りなので、それこそエフェクターを踏む音とかそういう生感も楽しんでもらいたいですね。この曲は具体的なリファレンスとして、Rage Against The Machine的なリフがあってビートがイケててみたいな、そういうものが作れたらなっていう。それこそ2A後のリフレインするワードとか、ああいうのはRage Against The Machineからインスピレーションを受けて作った感じです。
―― あのリフレインはライブですごく映えますよね。
ワシヤマ 音源としては未発表曲なんですけ、すでにライブではやっていて。音源化されていないからそりゃ歌えないよな、っていうもどかしさもあるので、この音源が世に放たれてみんな聴いてくれるようになったら、ようやく一緒に歌えるのかなと思います。
―― ギターリフとのユニゾンで生み出される、ベースのグルーヴィさも格別です。
フクダ リフがとにかくシンプルにカッコいいですよね。「INVERSION」と似た系統の、わかりやすくてぶちアガる、みんなが好きなリフっていう感じで。結構ヘヴィめのサウンドで、リズム的にもどっしり構えて弾くイメージでなので、メタル出身者としては弾いていて非常に楽しい楽曲です。あと、2番でもスラップを入れたりしているので、僕のエゴもちゃんと盛り込まれていますし。これもフレーズ自体はそこまで難しくないので、ノリ方さえ掴めてしまえば軽音部の子もコピーできるんじゃないかな。カバー動画が上がるのが、今から楽しみな1曲ですね。
―― サワダさんはどうでしょう。リフが印象的な曲ゆえ、ギターにおけるこだわりも強かったのかなと思いますが。
サワダ この曲は『STORMED』に入っている楽曲と同じタイミングで録ったので、エフェクトの使い方の発想とかはちょっと似ていて。今作の楽曲の中では一番“『STORMED』の続編”っていう感じがするアレンジになっているんじゃないかな。さっきワシヤマも言ってましたけど、現時点でライブ定番曲になっていて、もうすでにアレンジも結構変わってきている。この曲に関しては、先にライブで楽しんでいた人にとっては音源でプロトタイプを楽しめる形になっているのかな。逆に、『SLEEPLESS』を聴いて初めてライブに遊びに来てくれる人には、「おお、サスフォーのライブってこんなふうに曲が成長するんだ!」という楽しみ方ができると思います。
―― 今回も前作同様、インスト盤が付くわけですよね。
ワシヤマ そうですね。今回俺的には歌詞にフックのあるワードをたくさん入れたつもりなので、歌を聴いていると聴き逃しちゃうようなギターギミックだったりドラムのフィルだったりベースのスラップだったり、そういうのを吟味する形で使っていただければ、という気持ちでございます。あとは、一緒に歌ってほしいですね。これは次回作ではもっと歌いやすいものを作ろうっていう、ある種の宣言でもあるんですけど、インスト盤って要はカラオケなので、楽器をやらない人はぜひ自分の歌を乗せてほしくて。まあ演奏が演奏だから乗せづらいとは思うんですけど(笑)、今後はインスト盤を使って「歌ってみた」がバンバン上がるような感じで曲を作りたいなと思っているところです。
―― あとは、アルバムジャケットですよ。前回のインタビューでサワダさんがおっしゃっていた「2枚が対になって、2枚とも欲しくなるような仕掛け」のお話の謎が解けました。
サワダ そうなんですよね。『STORMED』が台風だったじゃないですか。で、『SLEEPLESS』がその余波みたいな、そんな感じのストーリーじゃないけど、デザイナーの人に提案したら、あれが返ってきて。天才だなって思いましたね。
ワシヤマ 普通はCDブックレットの見開きで1枚絵になることはよくあると思うんですけど、2枚買わないと正式な絵が見られないっていうのはちょっと面白いですよね。
―― 全3回にわたり収録曲6曲の解説をしていただきましたが、前作『STORMED』からのプロジェクトがようやく完結しますね。
ワシヤマ そうですね。自分ら的にもこの過渡期と呼ばれる時期をそろそろ抜け出したいなという気持ちでいっぱいなので。でも、この制作期間でたくさんのトライをしてきたからこそ「SLEEPLESS」や「DYNAMIX」みたいな曲も生まれたし、それこそ前作の「Mantaray」みたいに歌をしっかり聴かせる曲にも挑戦できた。いろんな引き出しが増えたいい期間だったなと思いますし、建ちゃんが正式加入して4人体制に戻れたからこそ、ここから黎明期に入っていけたらいいなと思っています。
―― すでに次のフェーズに進んでいるわけですから、満を持して感がありますものね。
ワシヤマ やっとひと安心できるというか、過渡期の楽曲が全部吐き出される楽しみがあるので、じゃあその過渡期を経て我々が今どういうライブをしているのか、ぜひ遊びに来ていただきたいです。それこそ、「BURNIN' SQUAD」を建ちゃんがどうやって叩いているのかとか、そういう楽しみもあると思いますし、我々もいろんな楽しみを提供できる準備が整っているので、現場で体感していただきたいですね。
―― それこそ、『Travel The Galaxy』以前の楽曲を吉村さんがどう叩くのかも気になりますし。
ワシヤマ 建ちゃん的にはプレッシャーもあるのかもしれないけど。
吉村 確かに(笑)。みんなめっちゃうまいからなあ。でも、今のところいい圧だと思ってます。テンションはかかってるけど、プレッシャーではないかな。
ワシヤマ そういう、ある種のドラマじゃないけど、新しいメンバーっていう部分のドラマにもフォーカスしてもらえたらなと思ってます。
―― そう考えると、『STORMED』『SLEEPLESS』の流れは壮大なドキュメントですよね。
ワシヤマ いや、本当に不思議ですよね、人生って。活動休止という選択肢を取らないで、曲を書き続けてよかったなと思いますし、アウトプットしたことで見えてきたことも多いので、この2枚を作って正解だったと実感しています。
サワダ でもさ……話の腰を折っちゃいそうで申し訳ないんだけど、過渡期ソングがまだいくつか残ってるんだよね(笑)。
ワシヤマ あ、そうだった!
サワダ 今後どういう形で世に出すかはまだ決めてないんですけど、そこも含めてお楽しみにという感じです。
―― 最後に、ライブに関してもう少し伺っておきたいのですが。サスフォーとしてのライブの見せ方も以前と比べて、最近はずいぶん変わってきた印象があります。例えば、以前は演奏でお客さんを圧倒させる感じのライブでしたが、あるときからオーディエンスに歌ってもらうような感じに変わってきて。そのへん、先ほどワシヤマさんが「歌ってほしい」と言っていたことにもつながるのかなと思いますが。
サワダ それこそ最近は「軽音部一行で来ました」みたいな感じの若い層も増えていて。もちろん若い子だけじゃなくて、「君のギター好きだよ」と言ってくれる年上の人とか、新しい人たちが増えた印象があるんです。インタビューの最初のほうでも言いましたけど、建ちゃんが正式加入してバンド内に新しい風が吹いているというか、新しいバイブスが生まれて、その相乗効果からみんなで楽しむようなライブに変化していなっていうのは、ライブを重ねるたびに感じています。
―― その層の変化から生まれるお客さんのリアクションが、曲作り的にも少しずつ変化を及ぼしていると。
ワシヤマ 今回のレコーディング中にも気づいたことなんですけど……俺、実はみんなに歌ってほしかったんだなって。「楽器をやってるんだったら歌もやったらいいじゃん」っていうのを体現しているのがギターボーカルだと俺は自負しているので、サスフォーの曲を通してみんなが歌に興味を持ってくれたらなっていうことは最近常に考えていますし、そういう気持ちがやっと前のめりになってきたところなのかな。
―― 2枚のミニアルバムを通じた挑戦とライブを経て、点と点がいろいろつながり始めていると。
ワシヤマ だから、その精度をより強くしていくのが、今後の課題であり目標であるという。それも今の4人だからこそ、絶対にやれると信じていいます。
interview by 西廣智一