配信限定シングル 「もういい」1月20日(水) 0時00分 各配信プラットフォームにて配信開始

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Suspended 4th アーティスト写真

Suspended 4th (通称: サスフォー) PIZZA OF DEATH RECORDSのオムニバス「The Very Best Of PIZZA OF DEATH」に新曲を提供して以来10ヶ月ぶりとなる新曲は、その名も「もういい」。

冒頭、ジャーンと4音の息を合わせてから一気呵成に雪崩れ込むアンサンブルのイカツさよ。

激しいリフとスラップの応酬に対し、フリーフォームだからこそ生き物のような躍動感を曲に与えていくドラム。

Washiyama (Vo&G) は「音で会話してる感じ。どこに飲みに行く?って話して、楽しく飲んで、シメに美味いラーメン食えたら最高だねって。そういう音楽だと思います」とサスフォーの音楽を語っているが、音の阿吽こそがコミュニケーションだと捉える視座から生まれる音楽の事件性、ロックを含めたポップミュージックのセオリーからことごとく逸脱する展開の意外性は、サスフォーの音楽が内包するジャズ、オルタナティヴロック、パンクロックの(音楽性ではなく)精神性そのものと直結している。

さらに、サスフォーがライヴハウスではなくストリートライヴを主戦場にしてきたことも、上記した精神性に紐づくものだ。

ライヴハウスという空間とはつまり、自分達の音楽で盛り上がったり感動したりすることを目的にする人々と対峙するということ。

そうなれば、自分達の音楽は必然的に人を煽動したり一種の宗教的なものを帯びたりしてしまう。

しかしこの「もういい」で歌い鳴らされている通り、サスフォーが志すのは、一切の型やセオリーからの逸脱である。

もっと言えば、自分や人をひとつの型に収めないことによって、お互いに寛容であろうとする姿勢である。

だからこそ、意味や形が限定される「言葉」よりも「音」を信じるし、物理的に閉じた場所で自分達の音楽が一種の煽動になってしまうことを拒絶し、何もかもが無作為に混ざり続けるストリートの自由と寛容さにこそリアルを感じているバンドなのだ。

そういう意味で、今作「もういい」で歌われていることは彼らの本質的な部分がストレートに表れたものだと言えるだろう。

2020年のコロナ禍でより一層顕在化したと言える、主義主張に名前をつけるだけで反発し合い、バラバラになっていくばかりの世界。アイデンティティを取り上げられた人々同士の傷つけ合いとマウント地獄……サスフォーが定型の社会に加担することよりも自分達だけの場所を拓くことを志してきたのは、今の社会の違和感を早くから嗅ぎ取っていたからだ。もういい、と吐き捨てて人の渦からイチ抜ける宣誓のような歌。

それに伴って、より一層アブストラクトで獰猛な展開を見せるようになった楽曲。

従来の言葉や型になどリアルはない、そう訴え続けるバンドが己の矜持をそのまま外への中指としてぶっ放したのが「もういい」だと言える。

半端じゃないテクニック、音楽的知識の膨大さ……もちろん、それらもサスフォーを語る上で重要だ。

しかしそれ以上にこのバンドの背骨になっているのは、人を傷つけず寛容でいるための精神性なのだ。

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