5.27(金) 京都 磔磔
OPEN 18:30 . START 19:00 / ADV 4,000yen(taxin)
1. KARMA
2. KOKORO-DOROBOW
3. KARMA (Instrumental)
4. KOKORO-DOROBOW (Instrumental)
1. ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン
2. 97.9hz/3. BIGHEAD/4. INVERSION
5. Sky/6. Vanessa
7. ストラトキャスター・シーサイド
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Guest: WOMCADOLE
―― いま、ちょうどレコーディングをしているそうで。
ワシヤマ まさしく。
―― アルバム?
ワシヤマ アルバムですね。
サワダ フルアルバム!
フクダ ファーストフルアルバムですよ。
―― おお~。
サワダ やっとだね。何年かかった?
フクダ 2年半ぐらい?
サワダ よくぞ待ってくれました、PIZZA OF DEATH RECORDS様!
ワシヤマ たしかに(笑)。
―― バンド結成から考えるとどれぐらいですか?
サワダ 10年経つんじゃない?
フクダ いや、8年ぐらい。
ワシヤマ 現体制になって4、5年ぐらい?
―― コロナを経て、いろいろ状況が変わったところでフルアルバムに臨むっていうのはタイミング的によかったかもしれないですね。
ワシヤマ ああ、そうッスね。俺らもアルバムを出せる状況を待ち望んでた感じッスね。コロナ禍にアルバムを出してもなかなか響かないっていうのは横目で見てたので。いま、ようやくチャンスが巡ってきた感じですね。
―― 今回、オフィシャルインタビューをするのは『GIANT STAMP』のリリースタイミングの2019年夏以来なので、あの作品のリリース後ぐらいから振り返ってもらいたいんですけど、あの頃のことってまだ覚えてますか?
ワシヤマ 覚えてないですね(笑)。
サワダ 『GIANT STAMP』を出したあとって何があったんだっけ? マジで覚えてない(笑)。
ワシヤマ ああ、「GIANTSTAMP TOUR Ⅱ TURBO」(2020年1月~2月)をやって、そのあとにコロナだ。
サワダ あと、スペースシャワー列伝(2020年2月から3月まで開催予定だった「スペースシャワー列伝 JAPAN TOUR 2020」)に呼んでもらって、ツアーを回ってる途中にコロナで中止って感じでしたね。
―― その前にも、『GIANT STAMP』のリリース以降、あちこちから声がかかったと思うんですけど、自分たちに波がきた実感ってありましたか?
ワシヤマ 対バンの相手が変わったのが一番実感としてはあったかもしれない。
―― すごい先輩バンドとやるようになりましたもんね。Nothing’s Carved In Stoneとかthe band apartとか。
フクダ たしかに。
サワダ ダメ元だったもんね。「ワンチャン……! ワンチャンあるのかなぁ……!?」みたいな感じで声をかけてもらったら、ほぼほぼ快諾。しかも、ナッシングスに関してはその後、逆にツアーに呼んでもらったりして。
―― しかも、2019年9月に行われたレコ発ツアー「GIANTSTAMP Tour」のチケットは即日完売。東名阪だけではありますけど、会場のキャパは置いといてツアー全箇所即日ソールドするって話はコロナ前でもなかなか聞かなかったですよね。それはバンドに対する期待度の高さのあらわれだったと思うし、本人たちとしても驚きだったのかなと。
ワシヤマ たしかに手応えはあったかもしれないですね。コロナ禍の今よりも自分たちがやったことに対して何かが返ってくる感じはありましたね。今は何をやっても前ほど返ってこないので。
―― コロナ禍前は動けば動いた分だけ返ってきた。
ワシヤマ そういう意味では、『GIANT STAMP』を出したあとは手応えを感じられてたかもしれないですね。
サワダ うん、ちょっと調子に乗ってたもんね。
―― そうなんだ(笑)。
デニス あの頃の映像を見返すのがとっても恥ずかしい。
ワシヤマ そうね!
サワダ 態度とかさ、口調とかさ、「おらぁ!」みたいな(笑)。集合写真も「俺らだけサングラスだぜ」みたいな感じで変な尖り方してて、いま見ると「ダセえなあ……」って。
デニス コロナ禍にならないで、あのまま突き進んでたら大変なことになってたんじゃないかっていう。
サワダ そっちの世界線も見たかったかもしれない。でも、コロナ禍になって一旦自分たちの状況を冷静に見れたし、ポジティブに考えるとこれでよかったのかなと。
―― コロナのおかけで賢者モードになれた。
サワダ そうですね(笑)。
―― コロナじゃなかったら鼻が伸び切ってたかもしれない。
サワダ そうでしょうね! たぶん、完全に天狗と化してた。
ワシヤマ でも、2019年はそれでよかったのかもね。今それをやってたら「おいおい……」って感じだけど、当時はライブをやれることが当たり前という状況によくも悪くも乗っかれてた。
―― ナッシングスとかバンアパのような自分たちの上の世代のバンドと共演したことで何か得るものはありましたか?
ワシヤマ やっぱり、ああいう人たちの音とかライブの運び方はプロだなっていうところをまざまざと見せつけられましたね。自分たちのライブの運び方を反省しました。
サワダ たしかに、若いときに観たときの感じ方と全然違いましたね。
ワシヤマ サタニックに出たときもそれは感じました。それまではストリート(路上ライブ)でやってきたけど、2019年はそこでつくった音やライブの運び方が通用しなくなり始めた年というか。その後にコロナがあったおかげで、そういう部分に関しても冷静に見直せました。
―― あとはメディアでも取り上げられるようになりましたよね。テレビで紹介されたり、フクダさんはベース・マガジンで連載が始まって。
フクダ 本当にいきなりの話で、正直「なんで俺なんかが?」っていう気持ちでしたね(笑)。
ワシヤマ でも、ベーマガの連載が始まってから、<ベーマガ>ってイジられるようになって。やっぱ、人って天狗になると遅刻してもデカい顔するじゃないですか。だから、「気をつけろよ」って(笑)。
―― 実際そういうところがあったわけですね。
フクダ (食い気味に)いや、ないです! まったくないです! でも、ありがたいことです。
―― そして、先ほども話に出た「GIANTSTAMP TOUR Ⅱ TURBO」が2020年2月に終わって、その後の列伝ツアーの途中でコロナがやってくると。ライブができないことを実感していくなかで、バンド内ではどんな話があったんですか?
ワシヤマ 特にバンド内では話してないよね。
デニス うん。
ワシヤマ 俺が勝手に映像をやってるヤツらと一緒にチャンネルを作って「Streaming Musician Summit」っていうイベントを始めて。
―― それが2020年5月。
ワシヤマ たぶん、世界的に見ても音楽業界史上初じゃないですかね。コロナ禍で一番最初に配信ライブをやったのは俺ら、ぐらいのテンションでした。
デニス それぐらい早かったよね。
―― その頃、世の中的には……。
ワシヤマ 人と会うのもNGぐらいの一番キツい頃でしたよね。でも、「これだったらワンチャンやれるんじゃないか」って。あれはデニスの知り合いの社長だったっけ?
デニス はい、その人がもう使ってないっていう工場を貸してくださって。
ワシヤマ そこならソーシャルディスタンスがとれるってなって。本当はそこで配信のテストをやるつもりだったんですけど、「このまま配信イケるじゃん」ってなって配信を始めたらけっこう再生回数いったよね?
デニス けっこういきました。
ワシヤマ 観てくれる人がたくさんいて、本当にみんな音楽に飢えてたんだろうなって。
デニス アレを思い出しました。「タイタニック」で沈んでいく船の中で弦楽四重奏が演奏してたじゃないですか。ああいうふうに、気心知れて仲間たちと世の中の状況に反してでも情熱を持って何かを成し遂げるっていう楽しさを感じましたね。
―― でも、「タイタニック」みたいな悲壮感はなかったんですよね?
デニス いや、ありましたよ。
ワシヤマ けっこうあったよね。俺たちにはこれしかできねえのか、って。
サワダ でも、単純に音を出したのが久しぶりだったから、ワシヤマの表情はうれしそうだったよ?
ワシヤマ だって、ストサミ(Streaming Musician Summit)を発足して、自分で結線して、映像チームを呼んで、それで配信ができたらそりゃうれしくない?
サワダ そう、だからたぶん、ワシヤマはほかのメンバーとは違ううれしさを感じてたような気がします。
―― 環境をゼロから作り上げたわけだし。
ワシヤマ しかも、それをすることになったときに、自分の力だけじゃ関わりが持てなかったような映像の人たちとか、いろんな人たちがばぁ~っと集まってくれて。
―― それこそ、ストリートミュージシャンサミットを始めたときと同じような。
ワシヤマ そうッスそうッス。ただ、これも正直、コロナが8月とか9月に終わるぐらいのテンション感でやってたんですよ。2回目3回目って続けていって、この形を最終的には自分たちのツアーに持っていけたらいいなって。でもあれは体力が必要なことなので、次第にみんなが消耗したまま年を越したって感じでした。自分たちで発信できる状況は作れたんですけど、俺たちができることはライブしかないし、目の前にお客さんがいなくて、演奏が終わった後に歓声もないことに慣れてなくて。そうしていくうちに演奏する側は消耗していくし、チームも消耗していくし、それがしんどかったですね。
―― BASEを通じて、「Streaming Musician Summit」のライブ音源を売ったりもしてましたよね。
ワシヤマ あとはピザが提案してくれたコンピレーションアルバム(2020年3月リリースの『Very Best of PIZZA OF DEATH III』)があったり、バンドとしてギリギリやれてる感を出すことができたというか。
デニス しかも、ピザのライブ盤企画「BECAUSE IT'S 2020」は僕たちが一番手で出させてもらって(2020年11月)。「サスフォーが一番手やりなよ」って言ってもらったことはかなりうれしかったですね。期待されてるんだって感じられたんで。
ワシヤマ そうやってちゃんとレーベルを介した活動もできてましたね。
―― 所属レーベルがピザじゃなかったらどうしてたんですかね。
ワシヤマ ピザじゃなかったら音源出してないよね。
フクダ ないね。
サワダ ピザじゃないレーベルに入ってたとしたら、なんかトチ狂ってそのレーベル辞めてたかもしれないですね。自分たちでやるわ、みたいな。でも、ピザは俺たちと目線を合わせて一緒につくろうっていうテンション感でいてくれるから今もピザに居続けられてるという感じですね。
―― この頃、ワシヤマさん以外の3人は何を考えてましたか?
ワシヤマ あ、フクダくんが何考えてたか聞いたことないな。フクダくんがコロナ禍のミュージックシーンに対して何を思ってたのか、俺も気になるな。
フクダ あ~。ミュージックシーンに対して何かっていうのは正直あんまりなくて、「なるようにしかならんなあ」としか思ってなかった。だから、バンドがあまり動いてないからこそ自分にできることをやろうと思って、音楽というよりはSNSとかYouTubeを通じて自分が上がっていければいいなあって。そうすれば自ずとバンドにもいい影響が出てくるし、そうやっていち個人としてバンドに貢献できることをやってたって感じですね。
サワダ そういうの言ってよぉ!
一同 (笑)。
サワダ 普段からありがたいと思ってるけどね。熱いよね。
ワシヤマ 熱いね。やっぱ、ベーシストって内に秘めた熱さがあるよね(笑)。
フクダ あはは。そうやってコロナ禍でネット上での個人の活動が増えたからこそ、サスフォーのファンクラブの配信をするときに自分がメインになってオペレーションしたり、動画編集ができるようになりました。
ワシヤマ だから、サスフォーとしては2ウェイあった感じだよね。ストサミとフクダくんの配信。
―― フクダさんのYouTubeチャンネルはけっこう再生回数を稼いでる動画がありますよね。
フクダ チャンネル登録者に対してけっこう再生回数が多かった時期はありましたね。真面目にやってましたね。
サワダ 素晴らしい。
―― では、サワダさんはどんなことを考えていましたか?
サワダ コロナになって観客を入れてライブを見せることができなくなったけど、「音楽が死ぬわけではないな」って冷静に思ってて。さっき話してたみたいに、ワシヤマが用意してくれた場所から発信することもできるし、CDという媒体を発売することもできるし、それに対してお客さんがアクションを起こしてくれる。そうやって自分たちがアウトプットしたものに対して反応はあるし、表現する場所が変わるだけだなって感じでした。
―― 必ずしもストリートである必要はない。
サワダ ライブハウスでやってたときに路上でやってる先輩とたまたま会って、そんな場所もあるんだってことで自分たちもストリートでやり始めたのと同じように、インターネットでの配信も場所を作ればできるじゃんって気づいて始めたので、世間的にはいろいろ揉めたりもしたけど、個人的には「そんなに騒ぐほどのことじゃねえだろ」って気持ちでした。
―― デニスさんは?
デニス 2020年4月から受動喫煙防止法が全面施行されて、タバコが吸える喫茶店の数がガクッと減ってしまったんですね。で、コロナの状況もあったし、僕の好きだった世界がどんどん壊れていく様子をただただ呆然と眺めていました。
―― なんか別の角度からきたな!(笑)
ワシヤマ あんまし音楽関係ない(笑)。
デニス 「いろいろ間に合わなかったんだ、僕は」って感じでガクッときて、「生きるってなんだろう……?」って頭がいっぱいだったんで、音楽とかどうでもよかったです。
サワダ デニスはわりと悲観してたんだね。
デニス でも、「自分がやりたいことは何があっても、誰に何と言われようとやらないといけない」っていう決心はつきましたね。誰かから「ライブはやるな」って言われても俺はやるっていう。
―― 音楽に対する覚悟はしますよね。
ワシヤマ まあ、そういう考えは前からぼんやりとはあったんですけど、こういう状況になったことで自分たちの考えをより研ぎ澄ませないといけないなって、特に2020年は思ってましたね。
Vol.02へ続く...
Interview by 阿刀大志
―― 前回のインタビューでは、ストリートで成長させるために曲をつくってるっていう話をしていたんですけど、ストリートですらライブができない状況になると「曲をつくるってなんだ?」みたいな。
ワシヤマ 本当に。俺はストサミをやったことでそのことをすごく思いました。結局、俺らがやってることって、ストリートでもライブハウスでもお客さんがいる前で何かを演奏して、それに対して反応があるのが気持ちいいっていう職業じゃないですか。それがなくなってしまったことで、「バンドでつくる音楽ってなんだろう」っていうのは今でも悩んでます。だから、デニスじゃないけど、自分がアガる音楽をつくりたいって決心できた感じはあります。
―― なるほど。
ワシヤマ コロナ禍に「もういい」って曲を書いたんですけど、あれは誰目線なのかはわからないけど言いたいことは書けた気がするんですよ。でも、ライブで演奏するイメージではまったく書いてなかったし、音楽的にやりたいことがやれるようになってきてるというか、今まで悩んでたことがかなり晴れてきてますね。
―― 曲を書くモチベーションが変化してきてる。
ワシヤマ 自分のために書くようになってきてる気はします。ストリートありきとか、お客さんありきじゃない方向に向かってきてるし、自分が弾きたいことをやるようになってる。
―― ちなみに、デニスさんはネガティブな状況を打破できたんですか?
デニス 人間のやることって所詮人間のやることなんだなって俯瞰で見るようになって、細かいいざこざとかどうでもいいから、早くこの場所から関係ない場所に行きたいなって。だから、悲観ではないんですけど……。
―― 達観?
デニス そんな感じですね。僕は音楽をやることとタバコが吸える喫茶店に行くことが好きなんだなっていうことが明確になったので、コロナ前のただがむしゃらに生きてるだけだった状態よりもスッキリして、今はとてもポジティブです。
―― 雑念が消えて、自分の好きなものだけが残っていく。それが音楽とタバコだった(笑)。
デニス はい、そうです。
―― ちなみに、その割合って何対何ぐらいですか?
デニス 喫茶店が7です。
一同 あはは!
―― 喫茶店デカいな!
デニス だから、音楽をやれない時期を経て、いまやれてることに「ありがとう」っていう気持ちがありますよね。「ああ、今日もなんかいい思い出になりそうだな」って温かい気持ちでいます。「ああ、みんなも楽しそうに活動してるな」って。うれしくなっちゃいますね。
サワダ 結成40年目ぐらいの感じだな。
―― もうすぐ死ぬのかなっていう。
サワダ そういう感じですよねえ!? 解散しようとしてる?(笑)
デニス それぐらいいろいろ考えましたよ。
サワダ たしかにね。ついつい自分と問答しちゃう年だったね、2020年。自分とは、音楽とは。
ワシヤマ でも、フクダくんと俺は違ってた。問答する前に動くっていう。
―― いいバランスだったのかも。
デニス いいバランスですね。
ワシヤマ これでたとえばフクダくんだけYouTubeをやってて、俺らが問答してたらバンドのバランスは崩れてたと思う。考えてる人と行動する人が2対2っていうのがよかったね。
サワダ 仲良くしてたわけではないけど、勝手に絆的なものが深まったんじゃないかなっていう気がしますね。
デニス 会えない時間が愛を育てる。
―― あはは!
ワシヤマ いいね(笑)。
―― ツラいこともたくさんあったけど、早い段階でいろいろ考えることができたのはよかったですね。
ワシヤマ ほかのアーティストの新譜を聴いててもそういうのを経てるんだろうなって感じるんで、俺らも負けたくないですよね。最近、いい曲がたくさんリリースされてるから。
―― たとえば?
ワシヤマ もう、Vaundyがすごすぎて。自分たちよりも新しい存在をコロナ禍であまり見てこなかったから、ああやって爆進してるルーキーを見ると、「俺らはもうルーキーじゃねえな」っていう変な焦りが出てきて心地いいです。
―― サスフォーはコロナ禍で一気にルーキーじゃなくなっちゃいましたもんね。
ワシヤマ そうそうそう。だから、今みたいに新人感みたいなものに助けられない感じがいいですよね。ストイックになれるというか。チヤホヤのされ方がもう違うから。
デニス ある意味、そういう期間が短くて済んだね。
ワシヤマ 俺らはそれでいいと思う。ずっと新人っていう枠にとらわれたくないし、早いうちに次のステップに進めたらなって。
―― その他の活動に関していうと、2021年には中止にはなったものの京都大作戦から声がかかったり。
サワダ そうですね。フェスからはけっこう声をかけてもらいましたね。僕、アラバキにめっちゃ出たかった。
ワシヤマ 出たかったねえ!
―― アラバキなんだ。
サワダ 一番楽しみにしてました。出てるアーティストが自分に刺さる人たちばかりで。たとえば、The Birthdayとか、ELLEGARDENとか、客として行きたいって思うフェスにアーティストとして参加することをすごく楽しみにしてたので、しょうがないんですけど、中止になったのは未だに根に持ってます。
―― あはは!
サワダ 2年連続で呼んでもらってたんですけど、今回はオファーがなかったっぽいんで、来年呼ばれるようになれたらいいですね。アラバキに出るのは目標のひとつです。
―― あとは、SiMとかマンウィズからも対バンの声がかかって。
ワシヤマ それに関してはフクダくんがワンステップ上がった感じだよね。
フクダ もう本当に。バンドの名前が徐々に広まっていくにつれて関わる人が増えて、自分にとって画面の向こうにいた人たちと実際に対面する機会も増えてきて、SiMとかマンウィズとかホルモンとか僕が中学生の頃に聴いてたような人たちとつながって、友達みたいな感じでご飯に誘ってもらったりする関係になれたのが信じられないです。
ワシヤマ 専門学生の頃に髪の毛を固めてスラップしてた福田裕務(フクダの本名)に見せてやりたい。
フクダ いや~、俺、高校生の頃なんてホルモンの「上原~FUTOSHI~」って曲のベースソロをどんだけ速く弾くかしか考えてなかったし、SiMのSINさんも僕のプレイにすごく影響を与えた人なので、そういう人たちと一緒にやれて……。
ワシヤマ フェスじゃなくて、ちゃんと向こうからお呼ばれしてるっていうのがありがたいなって思いますね。
―― しかも、マンウィズから声がかかったのは大阪城ホールでの対バンですよ。
ワシヤマ 飛び級も飛び級ですよ(笑)。
フクダ 本当に。
ワシヤマ アガってましたね~!
―― 飲み込まれた?
ワシヤマ 飲み込まれなかった。むしろ飲み込まれたかったですね(笑)。自分が中高の頃にブイブイ言わせてた人たちと一緒にやれてる実感は城ホールでやっと湧いてきましたね。SiMはもう、夢すぎてどういう状況だったかあんまり思い出せない(笑)
―― へぇ~(笑)
フクダ 「楽屋にSiMおるやん! 弁当食っとるで!」みたいな(笑)。
サワダ しかも、小箱だったからね。楽屋が縦に狭くて、合コンみたいに対面で向き合って、けっこうヤバい状況だったよね。
フクダ すごかった、本当に。
ワシヤマ MAN WITH A MISSIONもそんな感じだったよね、普通に狼でね。そういう2021年でしたね。
―― 2021年は配信3部作として久しぶりに楽曲を発表し始めた年でもありました。ようやく曲づくりをはじめたきっかけはなんだったんですか?
ワシヤマ めっちゃヌルっとだったよね?
デニス うん。
ワシヤマ ピザと俺とでいろいろやり取りしてる中で、「そろそろやる? スタジオ用意してるよ?」「あ、そうなんですね。やります」って感じで話を進めてたんですけど、肝心の曲がメンバーがアガるような曲じゃないとダメだからってことで、曲をメンバーに聴かせるところから始めました。だから、メンバーと話し合ってみんなで「やるぜ!」ってなったわけではなくて、「曲できたからやりません?」っていう感じだったね。
サワダ&デニス うん。
―― じゃあ、ワシヤマさんが引っ張る感じで。
ワシヤマ 俺が引っ張るというより、曲が引っ張ってくれるんだろうなって感じでした。だから俺は曲の原型だけつくって「じゃあ、あとはよろしく」っていう、ストリートのときと同じようなノリでそれぞれが自分の武器を磨いていくっていう。それが「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」になりました。1週間ぐらいで練習してもらって。
―― でも、前はレコーディング当日に曲を渡してたんですよね?
デニス その頃よりは成長した。
―― (笑)。
サワダ ちゃんとプロらしくなってきた(笑)。
ワシヤマ 俺が曲に偶発性を求めなくなったのがこの曲からなんですよ。ロジカルにつくったし、あとは「こういうものを渡せばきっとこういうものにしてくれるだろう」っていう信頼を試したというか。
サワダ 俺は「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」がけっこう好きなんですよね。これを聴けばSuspended 4thのなんたるかがわかります、みたいな名刺代わりの曲。これが出る前までは「ストラトキャスター・シーサイド」がその役割を果たしていたんですけど、もう1曲増えたなって。
デニス これが久しぶりのスタジオレコーディングで、僕はフェスとかライブよりもレコーディングが好きなんでとっても楽しかったですね。
―― 3人のテンション的にレコーディングに臨む意識って変わりました?
サワダ 単純に曲が好きだったんで楽しく演奏したって感じでしたね。「得意なことやって」っていうオーダーだったので、「やりまーす!」みたいな。で、気づいたらできてた、カッコいい、みたいな。
―― 感慨にふけるというよりも、目の前の曲に集中するっていう。
デニス 僕はそれだけでしたね。
ワシヤマ あと、あれッスね。4人でスタジオに入るっていうことが初めてだったんですよね。「もういい」までは俺とデニスが先にスタジオに入って曲の根幹をつくって、それをフクダくんに投げて、最終的にサワダにぶっ壊してもらうっていうやり方だったのが、「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」ではみんなでスタジオに入ってベーシックを一発録りするところから始めて、チームでつくるようなやり方をしました。
―― やっとオーソドックスな録り方に。
ワシヤマ そう、そしてオーソドックスな録り方が自分たちには向いてないこともここで発覚して。
―― そうなんだ!(笑)
ワシヤマ 俺はエンジニアも自分でやったんで。
―― ああ、録りもミックスもワシヤマさん自らやったんですね。
サワダ 「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」は今までの制作のなかで一番忙しそうだったかも。
ワシヤマ この曲を経て、どういう形で曲をつくるのがいいのか考え始めました。で、その次に出したのが「HEY DUDE」か。これも一発録りをしつつ、ベースとドラムでベーシックを録って、ギター録って、歌うっていうオーソドックスな形でできました。この曲でスタジオワークが染み付き始めました。
デニス やっと少しずつ慣れてきましたね。
Vol.03へ続く...
Interview by 阿刀大志
―― いろいろな経験や苦悩を経て、今回の「KARMA」のリリースに至るわけですね。久々のCDリリースです。
サワダ うれしい!
ワシヤマ 『GIANT STAMP』をつくってた頃のテンションを取り戻すための配信曲が3つあって、そこで「イケんじゃね?」っていうことでCDシングルをやらせてもらうことになったと思ってます。でも、俺的にはいまだにこの「KARMA」って曲が不安なんですよね。
サワダ それ、ずっと言ってるね。
ワシヤマ なんか……周りの人が「いい曲だね」って言ってくることがないし、言ってくるとしてもみんな一斉に「いいです!」って言ってくるから逆に疑っちゃって。「本当かよ?」みたいな。
―― どうすりゃいいんだ(笑)。
サワダ 一番最初のデモを聴かせてもらったときに、みんな口を揃えて「これはいい曲だ」って言ってたもんね。
ワシヤマ でも、「本当?」って。
サワダ 録りながらも「本当?」って。今も言うしね。不思議だよね。
―― なんなんですか、それは。
ワシヤマ まあ、でもこれは別に悪いことではないと思ってて。というのも、「ストラトキャスター・シーサイド」を出したときも同じような感じだったんですよ。4人のなかでは「これはギャグソングだよ」って言ってたのに、周りの人から「いや、カッコいい曲だよ」って言われたからMVとかもカッコいい感じで出したら今のところ一番聴かれる曲になって。そのときの形を信じてるってわけじゃないけど、最後まで疑っとくほうがいいかなって。
一同 (笑)。
サワダ 験担ぎ(笑)。
ワシヤマ でも、そう思ってるのは2、3割ぐらいで、本心では「そんなにイケてんのかなあ?」っていう疑いがあるというか。もちろんクオリティは高いしやりたいことはやれてるから、そういう意味では自分でもいいとは思ってるんですけど、久しぶりにフィジカルでリリースして「これが人に届くんかな?」っていう不安があって。
―― 元々、人に届くかどうかとか気にする人でしたっけ?
ワシヤマ してましたけど、人からは気にしてるように見られないとは思ってました(笑)。でも、実際はすごく気になりますね。
サワダ 口には出さんけど気にしてるよね。作り手側の反応も気にするし、リスナーの反応も全部気にしてるから大変そうです。ほかのメンバーはそこまで悩んでないし、曲を聴かせてもらったときにシンプルにいいと思ったから、普通に期待してもらってもいいと思うけどね。
ワシヤマ でも、それは内々の反応だし、しかも3人は演奏もしてるから本当の意味でリスナーの耳ではないじゃん。
サワダ まあ、そうだね。
ワシヤマ ね? そういうふうに考えちゃうんだよ(笑)。
―― 面倒くせえなあ!(笑)
サワダ 面倒くさい男なんですよ!
ワシヤマ ピザの人もいいって言ってくれるけど、そりゃあまあ、付き合いも長くなってきてるしなあって。だから、誰も信じられないッスよ!
―― あはは! 純粋なリスナーのことしか信じられない。
ワシヤマ 俺はずっとそうやってきたし、より純粋なリスナーを求めた結果ストリートにたどり着いちゃったわけで。
―― ああ、なるほどね。
ワシヤマ そういう経験を久しぶりに味わえてるっていうのは良くも悪くもって感じですね。
―― じゃあ、極端な話、ストリートでやるまでは信じられない。
ワシヤマ これは俺だけの話なんですけど、自分がライブをやるってなったときにチケットを買って会場まで来てくれたお客さんはその時点で一定のハードルを越えてるわけじゃないですか。そうすると、ライブをしてても「本当かな?」「この反応って本当に楽しんでくれてるのかな?」って思っちゃう。でも、ストリートは超無色で透明なお客さんをいかに染め上げるかというところから始められるんですよ。そういうお客さんを自分の音楽、自分たちの演奏で振り向かせることに魅力を感じてると思うんですよね。
―― ああ、それは理解できます。では、曲についてお聞きしたいと思います。「KARMA」はRAGE AGAINST THE MACHINEっぽいなと思ったんですけど、意識しましたか?
ワシヤマ ああ、意識はしてます。もう、それはずっとどの曲に対しても意識してます。
―― この曲のインストを聴いたときに、最初は「ツェッペリンかな?」と思ったんですけど、途中で「いや、これはレイジだ」と思ったんですよね。
ワシヤマ ああ、それは「HEY DUDE」と「ブレイクアウト・ジャンキーブルースメン」でメンバーの意識が変わったところもあって。今までやろうとしてたのは60~70年代ぐらいのサウンド感だったんですけど、ここでやっと80~90年代に差し掛かってきて。フェスを経たことで変わったんですよね。例えば、デニスのキックはバスドラに穴が開いてないからタイトに鳴らない、とか。
デニス そこはいまだに苦戦してますね。
ワシヤマ その手法って60年代とか70年代のものなんですけど、今はだいぶ90年代に近づいてきてます。ベースも低音がぼやけてるんですけど、これまでは「古臭くていい」っていうことになってたんですよ。でも、フェスでやるにはもっとソリッドにしないと聞こえてこない。
フクダ そう、聞こえてこない。
ワシヤマ 特に彼はスラップをするから。
フクダ うん、だから前までの音作りだと音が飛んでいかないんですよね。芯がないというか。そういうこともフェスを経たことでわかりましたね。
ワシヤマ で、ギターはギターでファズやらなにやら使ってすごく60年代ぽい音を出してたんですけど、これも届かない。それで、レイジとかミクスチャーロックが流行ってた時代の音って古臭くもあり、モダナイズされてる感じがあるので、一度そこを目指すのがいいのかなっていうことで、それを確立できてきたのが「HEY DUDE」とか「KARMA」なので、ご名答って感じですね。
―― 僕は歌詞の面からもレイジっぽい空気を感じていて。
ワシヤマ まあ、思うことはいろいろありますよね。レイジほど思想的ではないし、もうちょっとカジュアルではあるんですけど、一揆感というか、団結感は求めるようにはなったかもしれないですね。
―― でも、共有は拒んでますよね。
ワシヤマ ああ、それは拒んでます。団結っていうのはみんなが同じ方向を向くということじゃなくて、言葉にはしづらいんですけど、みんな言いたいことを自由に言うっていう、そういう意味での団結。誰かと一緒にということではなくて、別の場所だとしてもそれぞれがそれぞれに思うということもある意味団結かなって。あと、各々が社会に貢献してる状態って団結ですけど、貢献する方法はみんなそれぞれにある。俺が思う団結っていうのはそういう状態です。萎えてる人がいるならそういう人たちに自分のやれることを見つけてもらいたい。今はそういう歌詞が多いですね。
―― <世界に溢れた仕組みに 汚れた爪痕を描け>なんて歌うの初めてですよね。このフレーズに限らず、ワシヤマさんが歌いたかったことがこういうサウンドまで引き寄せてきたのかなと思って。
ワシヤマ ああ、たしかに。やっぱり、そういうことを伝えようと思うと歌詞だけでは足りないし、いい音楽に乗せたいっていう欲が出てくるので、それがサウンドにつながってるのかもしれないですね。
―― 3人はこの曲を受け取ったとき、どう思いましたか?
サワダ まず、オープニングが好きですね。ボーカルだけから始まって、ギターが入ってきて、ベースが唸って、ドラムがインして、バンドインしてリフが入って、っていうのがいい。サビも開放感があるし、ライブでやりたいって思える曲です。ライブでやったときのお客さんの反応がこうだったらいいなって明確にイメージできる曲なので、どんどんやっていきたいです。
―― フクダさんはどうですか?
フクダ 同意見って感じです(笑)。全部言ってくれました(笑)。
―― さっきワシヤマさんも言ってましたけど、音は全体的にソリッドになってるけど、ベースは暴れ倒してますよね。
ワシヤマ タッピングしてるやん!
フクダ そう、今回は僕の武器であるスラップを封印したんですよね。これまでそこにちょっと頼りすぎてたし、聴いてる人にも飽きられはじめてるんじゃねえかなと思って方向転換しようって。それで生まれたのがタッピングで。
ワシヤマ 基本的にベーマガ視点なんだよね。ベーマガに載ったときにタブ譜が書けるかどうかっていう。
フクダ そうだねえ。
ワシヤマ 「この曲、タブ譜書けるところないね」ってなったら終わりだもんね。
フクダ 終わりだねえ。やっぱ、ベースキッズが聴いたときにコピーしたくなるようなベースラインじゃないとダメだなっていうのもあるし、毎曲何かを入れないとダメだなとも思ってて。何かないと自分でも納得できなくて。
―― キッズの想いを背負うのはまだまだ早いんじゃないかっていう気もするんですけど。
フクダ いや、でも大事なんですよ。で、コピーしたくなるベースラインをっていうことでタッピングが生まれて、サスフォーの曲って毎度弾くのが難しいんですけど、今回は特に難しくなっちゃって、自分で自分の首を締めてますね。
―― デニスさんは?
デニス この曲は暗い音色で始まってて、熱いところもあるけど常に低温感があると思うんですよ。フツフツとした怒りみたいな。そこが普段の僕とすごくマッチするなと思って、そういう思いでドラムを叩きました。
サワダ それぐらい気持ち的にはどっしりしてた感じ?
デニス そうですね。曲が持ってるエネルギーに応えようって。タッピングみたいなオシャレなことをしなくても僕のドラムは僕だから、そういうことは考えなくてもよかったですね。
フクダ かっけーなあ。
デニス ギターもカッコいいし、ベースは今回もすごいし、ドラムもいつも通りすごいってことでいいんでしょうかねえ。
―― あはは!
サワダ 楽器に関してはいつも最後に入れるの俺じゃん? 「どうしてくれるんだ!」っていつも思ってるぐらいすごいよ。ドラムとベースが最強過ぎる。
―― ドラムとベースの隙間にギターを入れる作業になるんですよね?
サワダ でも隙間がないからぶっ壊す、みたいな。2人がつくってきたすげえもんに対して、「ここ壊そう」みたいな。
デニス でも、楽器隊はみんなすごいんですけど、やっぱり一般的なリスナーにとってはそんなことどうでもいいんですよね。
サワダ たしかに。
デニス そういう意味では、ボーカルが立ってる曲がこのタイミングでできたっていうのはサスフォーにとってすごく重要な意味を持つんじゃないかと思ってます。
サワダ うん、ボーカルもカッコいいっていうところが一番のお気に入りポイントかも。
―― 伝えたいという気持ちをビシバシ感じます。
サワダ フロントマンとしての覚悟を感じますよね。
―― ごまかさずに全部請け負うっていう。
ワシヤマ そういうのも対バンとかで受けた刺激が生んだというか。先輩のバンドを見てるとすごく責任感を持ってステージに立ってるし、自分たちもそれっぽいことをやってみようと思ったけど、結局それっぽいことにしかならなくて。
―― なるほど。
ワシヤマ だから、音楽をやる、ステージに立つっていう覚悟が決まってこの曲ができたっていうイメージはあります。そういう覚悟を持つと歌も変わるッスね。「KARMA」ができてから歌うのが楽しいんですよ。だから、今回みたいな歌を見せる曲をフィジカルで出せるというのは個人的にはすごくありがたいし、メンバーがこうやって言ってくれるのもうれしい。だからこそすごく不安なんスよね(笑)。
―― じゃあ、MVが出るまではずっと不安ですね。
ワシヤマ 今つくってる曲も不安ですね。「本当に大丈夫かな?」って。
サワダ でも、かっけーよなあ?
フクダ&デニス かっけーよ。
ワシヤマ 「かっけーよ」っていうのが一番わかんねえんだよ。
―― <カッコいい>って一番シンプルに伝わるじゃないですか(笑)。
ワシヤマ いや、カッコいいとは思うんスよ。でも、かっけーだけじゃダメだろうって。
サワダ ああ~。素晴らしい!
ワシヤマ 今まではカッコいいを手数とか技術とかスキルでねじ伏せてたんですけど、そういうことをせずにカッコいいものをつくるって難しい。これまではいろんな選択肢を全部詰め込めば曲になって、ぐちゃぐちゃだけどまとまってるっていうバランスを保ててたので、そうじゃないやり方で楽曲をつくるのはすごく不安なんですよね。これまでだったらここには絶対こういうフィルを入れてたし、こういう歌を入れてたし、こういうコード進行を入れてたんだけど、そういうのを全部引っこ抜いて、そのリフとかメロディの力を信じるっていうのが不安。
―― 鎧の装飾をどんどん取っていくような感覚?
ワシヤマ ああ、そうです。さっきのフクダくんの話じゃないですけど、絶対に何か入れなきゃいけないっていうサスフォーらしさを考えると、やっぱり足りてねえんじゃねえかなっていう不安をすごく感じてます。
―― まさに過渡期って感じですね。
ワシヤマ そうッスね。そういう時期が一番いい曲できると思ってるんですけどね。
サワダ マジでそうだと思う。
ワシヤマ だから、ずっと過渡期が続けばいいのになって思いつつ、すげえ苦しいですね。俺もほかのメンバーのフレーズも迷いから生じてるんだろうなって思ってます。
サワダ 各々の悩みがあるのはすごく感じる。
ワシヤマ その迷いがなくなったら終わりだよね。これをやればいいっていう何かを見つけて、それをこなすだけになったら終わり。でも、そういう意味では俺、裏方仕事が好きなんですよね。俺はエンジニアとしての才能があると思うし、裏方のほうが向いてるって気づいたんですよ。だから誰かに代わってほしくて。俺の代わりに歌ってくれるヤツがいるならやってほしい。
サワダ 代わるものが違うだろ(笑)。
―― あはは!
ワシヤマ まあ、ある意味、弱音ですよね。
―― すごいなあ。これ、リリースインタビューなのに。
ワシヤマ ずっと弱音吐いてます。
―― ワシヤマさんは明らかに変わりましたね。
サワダ ワシヤマさんは変わりましたねえ。この2年ぐらいで急激に成長してるよね、人間として。特に僕は彼が18歳の頃から見てるんで、「大人になったな」って。
フクダ パパやん。
サワダ そして、そういうのを見て自分もやらないといけないって刺激になってるし、みんなでそういう刺激を受け合うことでどんどんバンドになっていってる感じがします。
―― 現在進行系で化学変化が起きてる。
サワダ だから楽しんでみんなやれてるんじゃないですかね。
―― 『GIANT STAMP』が出る前に、「売れることと自分たちのやりたいことが真逆だから、そこをどうすり合わせるかが課題」って言ってました。
デニス 売れるものってそのときの流行りかどうかとか関係なく、言葉で言い表せない「これは絶対売れる!」っていう要素があったりするじゃないですか。そういう成分が徐々にサスフォーに入ってきてるのを最近感じているので、この先売れなかったら世界が悪いと思えばいいかなと思ってます。
サワダ 俺もデニスの考えに近い。そこまで深く気にしてないというか。
ワシヤマ 俺はストサミをやったことですごく慎重になっちゃってるかもしれないね。数字が目に見えてわかるし。YouTubeもそうだと思うけど。
―― このネタだと弱いんだ、みたいな。
フクダ ああ、ありますね。
ワシヤマ そういうことを考えると、曲で何かを打ち出すっていう、ある種バクチみたいなものに賭けてくれてるっていうプレッシャーに参ってるのかもしれないですね。でも、つくったものに対してゴーって言ってくれる人たちがいるので、それを信じるしかないんですけど。
―― こう言っちゃあ申し訳ないですけど、話聞いてて面白いです。
ワシヤマ や~、葛藤してる人間って面白いですよね(笑)。
―― そうそう(笑)。そりゃ面白い音楽が出てくるよなって。
ワシヤマ これから大冒険が始まってしまうなあって感じがしますね。
サワダ 序章にすぎないけどね。俺はCDを買ってもらいたいですね。せっかくのフィジカルだし、アートワークがあるし、おまけのライブCDもあるし。あと、盤をプレーヤーに入れて、再生ボタンを押して、曲が流れるっていう所作をやってほしい。できればサブスクで聴くまえにCDを再生してほしいですね!
Interview by 阿刀大志