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CONTRAST
CD Journal
——改めて知りたいんですけど、世の中で起こっている惨劇、虐げられる子供たちのことを、KOさんがずっと歌い続けている理由って何でしょうか。
KO なんだろう? 普通に子供好きだしね。自分にも子供いるし、ウチの親に言わせれば妹の存在が大きくて。妹はもう9コ10コくらい年離れてて、ほんと小学校の頃はおんぶして妹を公園に連れてったりしてて……なんか話ズレてる気がするけど(笑)。 でも子供が普通に好きだからかなぁ。あとは、やっぱ無関心っていうか「こんなこと起きてんのにお前らこっちで笑ってんの?」っていう感覚はすごくあるか な。別にその、笑ってる奴の髪の毛捕まえて「これ見ろ!」っていうつもりはないけど、実際に起きてることをそのまま「ほら」って見せるみたいな、そういう 感覚はある。
——悲劇と向き合い続けるのって、キツくないですか。
KO キツい。おかしくなってくる。さいきん俺アタマおかしいもん。昔からだけど(笑)。でもほんとに病んでくる。そういう時は髑髏屋とか行って……髑髏屋って壬生狼のヴォーカルの近藤ヒロシがやってる居酒屋なんだけど、そこで全然関係ない野球の話とかされて「そういうのほんとウザいんだけど」とか言って、だいたい口喧嘩になるっていう(笑)。
——シャレにならない時もあるんじゃないですか。正視に耐えない、ギリギリのところと向き合い続けてるわけだから。
KO そう。でもここ一年は逆に震災で……もちろん震災でもすごい落ちたけど、支援することで逆に夢中になれて、それは良かったのかな?って部分もある。自分が救われたっていうか。忙しくなったし、自分の悩みとかそういうことよりも、まず先にこれやらなきゃっていうものがあったから。俺普段そういうドキュメントとかばっか見てるしね。まぁバラエティも見てんだよ? ダウンタウンとか。
一同 (笑)。
——KOさんのこういう性格、思想っていうのは、メンバー全員が共有してるものなんですか。
KIYO 基本的にでも、みんな納得する部分あるよね。実際動いてるし、それだけ説得力があるから。
SAKUMA 俺らも震災の時、何かしてあげたいけど何したらいいのかわからないとこがあったんですよね。で、実際目の前で動いてくれて、カウンターアクションに荷物が いっぱい届いてたのも知ってるし、それを俺も一緒にトラックに積んだりして、札幌のみんなでやったんで。そういうのは共有できてるかなって。
KIYO けっこうね、あぁ…って思うんだけど、やり方わかんない人がいっぱいいるんですよ。そこでKOちゃんきっかけになってやり始めた人、やれた人、いっぱいいると思うから。
——隣で見ていて、何が彼を突き動かしてるんだと思いますか。
KIYO 性格じゃないですか? ほんと性格だと思う。
KOHEY何かしたいと思ったらやる、っていう性格ですよね。それから始まったことじゃないですか、カウンターアクションも、全部。
KIYO 自分で言ってたけどね、おせっかいなの(笑)。いいおせっかい。KOちゃんはおせっかいだから。
——わかりました。では最後、今回のアルバムをピザ・オブ・デスから出す経緯についても教えてもらえますか。
KO あのね、俺がスラングでギター弾いてた頃からその話はあったの。数年後から俺のとことも流通会社が同じだったし。ハウリング・ブルの小杉社長に「お前もレーベルちゃんとやっていけよ。今度ハイスタのアレで流通を立ち上げるぞ」って当時誘われて。もともと健ちゃんとも仲良かったけど、そこで改めて流通を紹介されて。その頃から健ちゃんは「オレにやれることあったら言って。KOちゃんが出したいっていうなら、いつでも力になるよ」ってずっと言ってくれてて。で、俺がヴォーカルになる前、じゃあ次はピザからやろうかって感じで実際に曲作りもした時もあったんだけど。
——へぇ。もう10年以上前にそんな話が。
KO うん。でもそこでバンドが(ヴォーカル脱退などで)バーンとなっちゃって、俺がヴォーカルやることになって。それで作った最初の『SKILLED RHYTHM KILLS』はね、あまりにも俺のスキルがなさすぎて。
KIYO 『スキル~』のスキルが(笑)。
KO あまりにも俺が下手すぎた。当時は俺もヴォーカルなんて上手くなるもんじゃないとも思ってたし、個人練習するとか何か努力するっていう発想もなかったぐら いで。で、健ちゃんは会えばいつでも「力になるよ、次どう?」って話してくれるんだけど、俺はちょっと恥ずかしいっていうか、「いや、人のとこからはでき ない」って言ってて。でも今のメンバーになった時から意識が変わったのかな。俺も個人練習するようになって歌い方も変えられたし、『SKILL~』の時よりは声も出せるようになって。それで『IMMORTAL SIN』作ったんだけど……あれが08年か。その頃はなんか、健ちゃんとはそんな会ってなくて。年に一回電話するくらいで。彼も北海道ずっと来てなかったし、初めてKEN BANDが北海道来たのが2010年だったのかな。俺らが前作の『LIFE MADE~』を出すか出さないかぐらいの時。そっからまたしょっちゅう会うようになって。だから10年くらいのタイムラグがそこでなくなって、それで、ようやくタイミングが来たというか。
——具体的にはどんな話をしたんですか。
KO や、もう、去年8月と11月に被災地まわるツアー誘ってくれて、8月にも同じ事言ってくれて。んで、11月にまた会った時に「なんか曲もバラバラあって、次イケそうかも」って言ったら「…やっちゃう?」「…やっちゃいますか」(笑)。ただそれだけなんだよね。
SAKUMA あれって東北で決まったんでしたっけ。
KO 大船渡で会った瞬間に。KEN BANDの“We Are Fuckin’One”ツアーの時に「内容的に今までより面白くなんじゃねぇかなぁ」「じゃあ…やっちゃう?」っていう。もちろんウチもピザから出すつもりで曲作ってたわけじゃないんだけど、これは俺と健ちゃんの中ではずっとあった話。お互い何かあったら何かするよ、っていうただの友達の約束みたいなもんがお互いの中にずっとあったんだね。
——今までストレート・アップでやり続けてきた歴史、プライドみたいなものに足を引っ張られる感覚はなかったですか。
KO いや、それよりね、ちょっと勉強してみようかなって。俺、健ちゃんには数年間会ってなかったけど、ピザのスタッフとはよく会うの。しょっちゅうどっかで誰 かには会ってて、ピザの人間の仕事ぶりは傍で見てきたし。俺も自分で店やレーベルやって従業員も使ってるけど、そういうの好きなスタッフにはいつも「ピザ から学べ」って言ってるんですよ。ピザ・オブ・デスだけじゃなく、ハワイアンとかブラフマンとか、ああいうチームの仕事の出来っぷりを。それを学べと俺は 常々言ってるし、ウチの奴も憧れてるのね。その、スタッフとしての在り方みたいな。だけど俺らは立地的にもアレだし、北海道の中でも孤立無援だから。カウ ンターアクションっつうのは、北海道の業界とかテレビなんかとはもう絡みがないし。で、もっと俺自身も東京発信でやってる大きい世界を勉強したいっていう のが純粋にあった。自分とこが......っていう感覚なかったって言ったらウソになるけど。
——なるほど。
KO だから全部流れ、タイミングかなぁ。あと、今まで声かけてくれたレーベルでピザが唯一やってなかったとこなの。H.G.とか三枚同時(H.G.FACT/MCR COMPANY/BLOOD SUCKER RECORDS) で7インチ出した時も、ずっと前から約束してたことだったし。唯一ピザとはやってなくて、でもいつか必ずやるとはずっと言ってて。健ちゃんには、ピザから 出すまではバンド解散できないし、いつか納得できる作品ができたら必ずやるって言ってたから。で、今こういうタイミングで決まったけど……要は震災あんま関係ないんだよね。この地球上で唯一SLANGを長年に渡ってさそってくれてたのが健ちゃん(笑)。まあ「震災!震災!」ってアルバムなりこの流れなりが言われるのは最初からわかってたけど、そう映ることが逆に次のネックになって来るだろうぐらいの覚悟は最初からしてるよ。
KIYO タイミングだよね。縁というか。
——でもこのアルバムはピザから出るべきだと思います。今この時期に、より大きな話題になるべき作品。
KO 前作や、前々作のことを健ちゃんが去年8月の時点でそう言ってくれたのは嬉しかったかな。「今こそスラング聞くべきだと思うんだよね」 みたいなことを。で、俺らも活動を広げたいっていうと語弊があるんだけど、バンドとしても会社やレーベルの経営者としても、俺自身がもっといろんな経験し て成長したいなっていうのもあって。ただ、やると決めるにあたって一応俺も「今までで最もえげつないよ?」って確認しといた(笑)。
——ははは。容赦ないですよ、と。
KO ほんっとえげつない! でも「全然大丈夫。ウチは自主制作レーベルだからそんなん関係ない」って言ってくれて。そうだよねぇって。
——次がピザだと聞けば、拒否反応があるハードコア・リスナーもいるかもしれませんね。
KO けど、古くから付き合いのある人たちは、俺がギターだった時にピザから出すって話があったことも知ってるから。忘れてっかも知れないけど(笑)。ほんと今回は震災があってこういう流れになっちゃったし、この流れについても賛否両論あるんだろうけどね。いずれにしても俺はいつもそういうこと言われる運命だから(笑)。ピ ザってよく見てみると、意外にしっかりとロックの基盤のあるバンドばっかリリースしてると思うんだけど、やっぱポップなイメージがあるのはナゼ?って俺な りに考えててね。最近結論が出たんだよね。あれはね......単純にみんなピザって呼ぶからだと思う(笑)。俺たちDEATH部門だから(笑)。あとピ ザはあくまでもレーベルであって流通じゃないから。そこら辺ごっちゃになってる人も多いと思うんだけど。
——そっか、スラングは第一回のエアジャム出てましたね。
KO そうそう。だからアンダーグラウンド・ハードコアって言っても、本当に好きな連中はだいたいわかってんの。そういえば俺、札幌の飲み屋で女が言ってたの聞いたことあるもん。「スラングのCDにピザのロゴが載るのかぁー」とか言ってて(笑)。「えぇ? お前、誰?」みたいな。
KIYO それ前も言ってたよね(笑)。
KO びっくりした。俺のこと知ってて言ってるのかわかんないけど。そのわりに「おまえさっき挨拶のひとつもなかったよね?」みたいな(笑)。
SAKUMA でもスラングだからできることですよね、これは。俺はすごいそう思う。
KO だからなんか言われても全然……まぁ言われたら腹立つけど、そういうの全然どうでもいい。そういう奴ってどうせ聴いてないし(笑)。CDとか買ってもないくせに言いたがる連中だから。でさ、こういう活動してるのにこういうことしたら台無しだ、みたいなことは昔から言われるの。昔のほうが言われたけど。「なんでメロコアとやんの?」みたいな(笑)。そんなの散々言われてきたから。「別に?」って感じ。ほんとそれぐらい。
——売れたいという気持ちとは違うところで、スラングをより広げたい、より届けたいという気持ちはありますか。
KO うん。広げたいとは常に思ってる。それはずっと思ってる。みんな言うでしょ。売れること否定する人にかぎって言うけど(笑)。好きな言葉じゃないけど売れたいって言葉でも良い。俺たち売り物作って売り出してんだから。今は曲を作ったりする時にそういう邪念が一切ないだけで。できあがったものに関しては全然、閉 じ込めておく意味がわかんない。メッセージがあればあるほど俺は外に打って出るべきだと思うけどね。自分たちの世界だけでやってないで。そこで初めて気が つくこともたくさんあるはずだし、そういうこと書いてんだから余計ね。まあ売れたいだけの人もそれは同じなんだろうけど(笑)。 今なら海外のハードコアバンドがやったりしてるように過去作も新作もフリーダウンロードにしても良いし、Youtubeに全部上げちゃったりね。広げるっ て概念で行けば手段はたくさんあるんだけど、今は選択肢がありすぎるから....。けっきょく無料だって行ってんのに振り向いてもくれない。なんかメッ セージぶつけたつもりでもスッと沈んでっちゃう。目の前で。こんな今だからこそ広げたいって意味での売り物の価値ってすごい重要になってると思うんだけど ね。これは自分とこのレーベルの話も含めてだけど。もう俺たちなんか『HEY!HEY!HEY!』に出ていいって言われたら出るよ?
一同 ははははは!
KO 浜ちゃんに突っ込まれたいもん。口パクだったら嫌だけど(笑)。
SAKUMA テレビで見てる人ヒヤヒヤするでしょうね(笑)。
KO 真剣に口パクやってんだけど微妙にズレてるとか(笑)。けどイメージとか関係ないもん。もうインタビューとか、何かあるなら俺どんなものだって応えてくよ。今までもやってきたしね。作ったり歌詞書いたりすることに関していまは一切の妥協がないから、作った商品はもうどんなところに置かれてもいい。セブンイレブンで売ってもらってもいいくらい(笑)。マジでね。
インタビュー@石井恵梨子