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RAZORS EDGE 6th Album [RAW CARD] JKT画像

RAZORS EDGE 6th Album [RAW CARD] Release: 2015.10.07  / Code: PZCA-75 / Price: 2,190yen(without tax)

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Track // 01. A.P.T.N / 02. RAW CARD / 03. BLURRED ZEAL / 04. AMERICAN DOG / 05. WE UNITE / 06. CRAZY CONFUSE / 07. START TODAY / 08. FAITH / 09. CREATE ONE / 10. GET THE PUNK OUT / 11. KILLED BY MOSH / 12. THARASH IT UP / 13. YELLOW MINORITY / 14. MACHINE / 15. NINJAH MOSH / 16. 素晴らしいPUNK / 17. WE ARE RAZORS

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RAZORS EDGE RAW CARD TOUR 2015-2016

ツアーファイナル 2016.02.28(日)心斎橋BIGCAT

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RAZORS EDGE 6th Album [RAW CARD] ALBUM REVIEW

Review.02 石井恵梨子

スラッシュ・ハードコアの快感を、ものすごいアドレナリンが猛スビードで押し寄せて日常の景色など何もかも吹っ飛んでいくような興奮、と定義すれば、まさしくレイザーズ・エッジはそのド真ん中を走り続けているバンドである。この音楽を浴びている間だけは無敵になれる、最強になれると考えるファンは多いだろうし、今や不動となったメンバー4人が誰よりその自負を持っているはずだ。

ただ、それぞれに仕事を持ち、父親の顔さえ持っているメンバーたちは、みんなと同じような日常を生きる常識人である。面白くないことも、我慢や苦悩もあって当然。では、そんな日常をブッ壊すためにバンドをやっているのか、レイザーズは憂さ晴らしなのかというと、これもまた違う気がする。

現体制なって10年、バンド自体は19年。もうみんないいオトナで、十分わかっているのだと思う。日常=つまんない、では決してないことを。仕事は考え方次第で面白くなるし、生活には喜びも愛情もたっぷりある。世の中を見れば腹の立つことは多いが、知らねえと背を向けていては何も変わらない。体力も気力も知力も充実している今、彼らの日常はとても「詰まった」ものになっているのだろう。知らないくせにこれだけ書けるのは、『RAW CARD』の音が、そういった感覚とぴったりイコールになっているからだ。

前作までのレイザーズ作品は、いかにライヴハウスで一体になれるか、全員で楽しめるかというポジティヴな面が強調されていたが、今回はもっとパーソナルだ。閉じているという意味ではない(僕の根っこが明るいから曲が明るいんです、と笑うKENJIは今まで閉じた作品など作ったことがない)。ただ、みんなのためでなく、あくまで自分たちの足元から発信しようという前提があったのではないか。自分たちの好み、自分たちの見た景色、自分なりの意思表示と音楽観。5年7ヶ月ぶりというスパンも関係しているのか、改めてレイザーズ・エッジの根幹に立ち返ったような激しさと楽しさと放埒さが溢れかえっている。最も明るく響き渡る16曲目が「素晴らしいPUNK」というロックンロール・ナンバーで、続くラストが「WE ARE RAZORS」というのも、ラモーンズばりの威風堂々。小賢しい変化球アピールなど今さら不要、ただ自分たちの今の姿を出せばよいという自信を感じさせる。

そして歌詞。日本語が多く、政治的な主張も増えているのは大きなトピックだが、それは驚くべき変化というより、今この日本で生きている人間なら当然感じていること、ましてやパンクスを自負するなら叫ばずにいられないことだろう。次のテーマは反戦・反核にしましょう、ではない。ニュースを見ていて口をつく言葉が「アンポンタン!」で「嘘つき!アチョー!」なのだ。可笑しさと鋭さのギリギリを突く言葉選びはもちろんのこと、普通の会話と英単語を音にどう乗せていくかというセンスも秀逸。もう、これはKENJI RAZORSの人柄だろう。

そう、改めて感じるのはKENJI RAZORSという人間の面白さなのだ。くそったれ、ボケ、こざかしいわ、と連発しながらこんなに楽しそうに見えるシンガーは他にいない。また考えてみれば、信じられない猛スピードの中に身を置く興奮が、彼にとってはもう人生の半分以上を占める「日常」なのだ。それでいて、会ってみれば常識人。なんかこれってすっごく変なことじゃないだろうか。20年目を目前に届いた『RAW CARD』。これぞレーザーズ節といえる楽曲が満載のアルバムを前にして、なぜか急に背筋が寒くなった私である。

Review By 石井 恵梨子

RAZORS EDGE 6th Album [RAW CARD] RELEASE INTERVIEW


-- ところで、20年もリーダーとしてバンドを引っ張ってきて疲れることはなかったの?

いやぁ、もう疲れたよ(笑)! 2008年から2009年辺り、割りとバンドの調子が良かった時期があったじゃない? CDも売れて、グッズもたくさん売れて。でも、その後急にグッズの売り上げが落ちて「デザインが良くないのかな?」とか、「バンドが良くないからだ」とか、「年取ってきたからだ」とか(笑)、そういうことを考えるのが一時期すごく嫌になって、レイザーズのTシャツをデザインしたくなくなったんだよね。だって、一週間ぐらい頑張って描いた絵のTシャツが全然売れないんだよ? ……でも、調子いい時はツアー中にホテルでちょちょっと書いたやつを入稿してそれがすげぇ売れたりして、まあ、そういう手抜きをしてたから売れなくなったんだと思うけど(苦笑)。でも、あの頃はあの頃でバンドの事務仕事から曲作りから、デザインまで忙しくて。自分一人で全部やるのはいかんなと。事務関係は今は分担でやるようにしたんだけど結局、未だにデザインだけは一人でやってるんだけどね(笑)。

-- でも、一時期ケンジコは大阪を離れて東京に住んでる時もあったけど、一人でやってるのと周りにメンバーがいるのとでは違うんじゃない?

うん、今は全然違う。前はメンバーが何考えてんのか分からない時もあったからね。メールとか電話だけじゃ分からないし。

-- ケンジコって「俺についてこい!」って感じのリーダーではないじゃない? それでこれだけ長くバンドが続いてるのは面白いよね。

俺は本当に良い曲を書いて、「この人と一緒に音楽やりてぇ!」って思わせなくちゃダメだっていう強迫観念をもってバンドをしてるから。俺は別に人間的に大したヤツでもないし、そうするとバンドとして物を創るのが楽しくないと一緒にバンドをやってる意味はないわけじゃない? ミサイルなんか、前は一緒に酒飲んでるだけですげぇ楽しかったけど今は全く一緒に飲まないし(笑)、あいつと俺が今、何でつながってるかって言ったら、俺が書く曲だからね。それがないといつまでもつながってくれないだろうから、そういう恐怖感はある。

-- へー! その恐怖感がこれまでケンジコを駆り立ててきたの?

バンドを結成した時からそういう思いはずっとあるかも。もし俺が自分で曲を書かないメンバーだとしたら、曲を書くやつがどんなに良い奴でも、どんなにいいMCしてても、書く曲がダサくなったら絶対に一緒にいるの嫌だもんね(笑)。自分でもそう思うからこそ、そんな気持ちでバンドをやってるのかも。

-- だとすると、リリースがなかった期間のストレスは大きかったんじゃない?

でも、「俺はこれで鍛えられてるな」って思いながら続けてた。「音源を出せないなら何をしなきゃいけないのか」とか考えてさ。たぶん、「SONIC」を出してから2年、後の2012年とかにレーベルから「アルバム出せ!」って言われてたら出せたとは思うけど、そんなに良い作品にはならなかったと思う。

-- それはなんで?

今回のアルバムのクオリティが高いっていうのもあるんだけど、何がしたいのか分からないようなものができてた気がする。

-- その感覚ってなんだろう。当時は自信を失ってた?

曲はずっと作ってたんだけど、さっきも話したように震災後はそれを出せるほど自分の中で整理がついてなかった。歌詞が全く書けなかった。どんな歌詞を書いても誰かがいい感じにツイートしたような歌詞になりそうだったし、自分でもしょうもないと思うような歌詞になりそうな感じもあったし。でも、今はそんな風に思わないんだよね。自分が作った歌詞にストレスがない。

-- 震災後の状態からどうやって「よしやるか!」っていうモードに切り替わったの?

伝えたいことが出てきたことと、今回のアルバムの1曲目と2曲目が出来たことが大きいかな。メンバーからも「キタんちゃいます? この2曲を推していくしかないでしょ!」って言われて、曲に押されていった感じはあった。そこから、これまでにプリプロしてきた曲の中からどれを入れて何曲のアルバムにしようかっていう風に組み立てていったんだよね。

-- 起爆剤になったのはあの2曲だったんだね。

そんなにめちゃくちゃ良い曲ってわけじゃないんだけどね(笑)! でも、誰が聴いても「クソレイザーズじゃん!」って言わせる自信はあった。

-- 「レイザーズを取り戻した!」って感じ?

あ~、その感じはあったね。「GLOW IN THE DARK」とか昔みたいなテンションの曲をずっと作りたいと思ってたんだけど、そのレベルにポンと到達できたのが「RAW CARD」。でも、もうちょい良い曲書かなあかんなとは思うけどね。

-- 正直だなぁ(笑)。まあ、たしかに今作にずば抜けた曲があるかって言われたらそうではないと思う。だけど、作品としての全体的なクオリティはすごく高い。

うん。本当にムダがなくて、「この曲なければいいのに」っていうのもない。最初から最後まで楽しく聴けて、「もう1回聴こう」って気持ちになれる。「THRASH'EM ALL!!」(1stアルバム)って全曲一緒みたいな潔さがあったじゃん? あれに近い空気感が今回もあるよね。

-- ああ、それは思った。あのアルバムと似たような尖り方をしてるよね。

今回は1stとピザデビューの2nd(「RAZORS RISING!!!!」)の間だと思ってる。ピザから初めてリリースする時にこのアルバムを出せてたらもっと売れてたよ(笑)。

-- あっはっはっ! ところで、今回はきっちゃんと一緒に作った曲がチラホラあるみたいだけど。

ここ何作かは、自分で打ち込みとギターで作ったデモ音源を元にスタジオでみんなと合わせるやり方をしてたんだけど、今回は弾き語りで出来たものからドラムと2人で何曲か作ってみたんだよね。今までは時間がかかるからそういうやり方は嫌だったんだけど、宅録のデモから作るのにも時間がかかるようになってきてさ。それだったらスタジオでパッと合わせた時のいい感じを拾って作ったほうが曲自体も良くなりそうだなと思って。そういう作り方をしたのが、「WE UNITE」と「素晴らしいパンク」と「START TODAY」。

-- どれもメロディが強い曲っていうのが面白いよね。きっちゃんと一緒に作ったって聞くとチョッパヤな曲になりそうなイメージだけど。

そうそう。「WE UNITE」は、広島土砂災害のチャリティライブで初めて弾き語りをやったんだけど、その練習をしてるときにできた曲なんだよね。それで、「この曲はすげぇ良いからバンドでも使おう」と思ってきっちゃんを呼んで作った。

-- 1、2曲目もそうだけど、今回はキーになる曲が多いよね。

うん、今回はけっこう多いかも。だから逆に飛び抜けた曲がないって印象になるのかも。

-- ああ、どれも平均点が高過ぎて。

頭から8曲目ぐらいまでの曲順なんて特に自信満々だからね。「良い曲から順番に入れてけ!」みたいな(笑)。

-- 後半も好きだけどな。

実は後半の方がレイザーズらしいんだよね。今までやってきたことの集大成みたいな。

-- ひとつ気付いたのは、「いかにもレイザーズだな」って感じる曲ほど、タイトルに“NINJAH” とか“PUNK”とか“THRASH”っていう、レイザーズっぽいワードが入ってるという。

あはは! そういう言葉って何回も使わない方がいいんだけどね(笑)。

-- でも、それもレイザーズらしさだと思う。あと、リフでいうと、「THRASH IT UP」が好き。

このリフは独特ないなたさがあるよね。

-- ケンジコ自身も「まだこんなリフが出てくるか」って言ってたけど。

この5年7ヶ月の間に4、50曲は作ってると思うんだけど、その中から勝ち残ったリフとメロディだから。アンガス・ヤング(AC/DCのギタリスト)も俺のリフの作り方を見習って欲しいよね! あっはっは!

-- (笑)あとは、ケンジコのボーカリストとしての存在がより前に出てきたと思った。

「SONIC」のツアーからがなって歌うようになって、それから5年以上ライブで培ったものを今回はそのまま出せたかな。

-- なんでライブでの歌い方を変えたの?

喉が枯れないように歌うのが嫌になって。ちゃんとケアしても枯れるときは枯れるし、シャウトしなきゃいけない時にシャウトしてないハードコアの曲なんて生きてないからさ。たとえ明日歌えなくなったとしても、元々自分がやりたかったスタイルを無理してでもやってみようって。それで毎回叫んでたらだんだん枯れないようになってきた。だから、自信満々に歌えてる感じが違いを生んでるのかもしれないね。

-- ここにきて進化を遂げたと。あと、今回は日本語の曲が増えました。

増えたねぇ。さっきも少し話したけど、言いたいことが固まってきたことで「英語じゃ伝わらねぇや」と思って。

-- 詩の内容も「THRASH'EM ALL!!」ではただの悪口だったけど、今は深みが全然違う。

ああ、自分ではそういう自覚はないかも。今も昔も文句だけ言ってる気分。

-- 人間として成長してるってことだよね。

あはは! まあね。前だったら「ボケ!」だけだったものが、そこにちゃんと理由をつけて言えるようになったし。

-- 話を聞いてると今回は本当に自信作なんだね。

そうだね。ウソがないというか、等身大の作品になってると思う。オーバープロデュース感がないんだよね。

-- うんうん、そう思う。そして、その感じはお客さんにも伝わると思う。しかも、今後の展開を期待させる内容にもなってると思う。

ああ、それは間違ってないよ! 今回外した曲をもう一回突き詰めたらこれぐらいの作品は作れそうな気はしてる。

-- ここにきてバンドのモチベーションの高さを感じます。じゃあ、せっかくケンジコ1人に話を聞いてるので、他の3人について解説してもらおうかな。まずはミサイルから。

ミサイルはレイザーズの屋台骨。ベースがめちゃくちゃ上手いのよ。レコーディングで録った音を聴いても、全くと言っていいほど波形がドラムに対してズレてない。こんなに速い音楽をやってるのに大きい会場でも観衆に伝わるのはミサイルがいるからなんだよね。ミサイルに合わせてギターを弾いたり、ドラムのテンポを整えたり、歌を乗せていけば、必然的に聴きやすいサウンドになるっていう。バンドの精神的な部分を担うような頭を使うことは全く出来ないんだけど、あいつがいるからレイザーズが続いてるっていうのはある。

-- なるほど。じゃあ、きっちゃん。

きっちゃんは今、レイザーズで一番クレバーなんじゃないかな。悩んだ時にはまずきっちゃんとタカくんに相談するんだけど、きっちゃんは冷静にビシっと物を言ってくれることが多い。音楽をやることに対してすごく前向きだから、すごく話がしやすいんだよね。

-- タカくんは?

いつ寝てるのか分からないぐらい努力家だから、最近はちょっと疲れてそう。ちゃんと寝て欲しいなと思う。あと、ライブのスケジュールとか移動に関してマネージャー的な動きをしてくれるし、RAZORS EDGEが一番変わったのはタカくんのギターが入ってから。そのお陰で俺が作りたい曲が作れるようになって、どっしりしたサウンドを出せるようになった。しかも、俺が難しいことをやらせようとしても嫌な顔せずに真面目に取り組んで、ものにしてるからね。見習うべきところが多いよ。

-- 今のレイザーズは本当にいいバランスで成り立ってるんだね! 一時期は「この先どうなっちゃうんだろう?」って不安に思うこともあったけど、こうやって話を聞くとこれからもしっかり活動が続いていくんだなってますます思える。

年はとるし、パンクとかハードコアをやってる人たちは「あと何年出来るんだろう?」って思いながらみんなやってると思うんだけど、俺は逆に燃えてくるんだよね。「55歳になってもあんなダイブがやれたらすごいよな」って思ったらやりたくなっちゃう。

-- このインタビューを経て、今までで一番「RAZORS EDGEって良いバンドなんだな」って思ってるかもしれない。

周りの人からしたら、俺のワンマンバンドみたいな感じのイメージだもんね。「なんで3人はあのちんちくりんに付いていってるんだろう?」って(笑)。

Interview By 阿刀大志