『出演バンドの共鳴しまくってるその空気を味わって欲しい!』(KENJI / RAZORS EDGE)
・アメリカ村のライブハウスを舞台に昨年、産声を上げたライブサーキット「STORMY DUDES FESTA」。主催者であるRAZORS EDGEのKENJI RAZORS(Vo)のもと、他では絶対に揃うことのない顔ぶれが一堂に会し、世界でいちばんアメ村が熱く沸きあがるライブイベント。今回は、6月14日が迫る中、主催者であるRAZORS EDGEのKENJIとTAKA(G)、そしてEDGE OF SPIRITのSHO(Vo)による緊急座談会を開催。大成功のうちに終わった昨年を振り返りつつ、今年の抱負などを語ってもらった。春夏秋冬、全国各地でロックフェスは開催されるが、「なぜ音楽を、バンドをやるのか?」の一点にこれだけのバンドが共鳴するフェスは絶対に他にはない。さぁ、楽しむ準備をしようぜ!
‐‐そもそもKENJIさんが最初にこのイベントをやろうと思ったきっかけは?
KENJI「自分らはもともと“なにくそ!”っていう精神でバンドをやり始めて、いろんな人に知ってもらいたくてイベントに出させてもらったり、PIZZA OF DEATHにも拾ってもらってCDも出し続けてきたんですけど、誰かのイベントに出してもらうのを繰り返してると、他人についていかないと何もできないようになってしまうんですよ。それよりも自分らが築いた価値観で新しいものを作りたい。自分達が持ってるハードコア、パンクのネットワークを大事にしたイベントをやりたいと思ったのがきっかけですね。自分が出て行くばかりじゃなく、“出たい”って言われるイベントせなあかんし、面白いバンドを誘って自分達でやる方が今後につながるなって」
TAKA「でも、はじめは“何を言い出したんや”と思いましたよ(笑)。イベンターも入れずに自分らでやるとか、出演バンドの大筋のメンツを聞いた時には“ちゃんと成立するんかな”って。ワンマンで何千人を集めるバンドじゃなく、ライブハウスでガンガンにやってるバンドがずらっと並んでたから(苦笑)」
KENJI「そうやね(笑) これまでいろんなイベンターさんにお世話になってきたんですけど、まずは自分達でやってみて、手に負えないぐらい大きなイベントになったらイベンターさんにお願いしようという覚悟のもとにやってて。で、“まだまだやな”って思うので今年も自分達でやってます。大きなフェスやイベントでいうとフジロックやRISING SUN ROCK FESTIVALにも出させてもらったりもしたし、被災地でYOUR FESTIVALをMEANINGとF.I.Bと開催したり、そういう経験を踏まえて自分達で出来る事をやろうと。あと、うちのドラム(KRASH)が3年前にライブハウスPangeaをオープンさせたし、SHO君もその前後にAvenue A(現BRONZE)のオーナーをやってたり、Palmのトシ君は火影(ほかげ)をやってたり、バンドマンがオーナーや店長をやってるライブハウスがアメ村に3つあって、そのつながりを使って何かをやれたら、リアルなストリート感が出るかなっていう考えもありましたね」
SHO「最初にKENJI君が発案したのが一昨年の暮れぐらいですね」
『打ち上げの雰囲気の良さがいいイベントの証拠』(SHO / EDGE OF SPIRIT)
‐‐昨年、第一回を開催した手ごたえは?
KENJI「興行的にもまだまだだし自己満足ではダメだけど、終わってから“面白そうやったね”とか“次は出たい”っていう声が聞けて、ある程度の面白さは提示して他にないものをひとつ作れたかなっていう実感はありますね」
TAKA「去年は3会場だったんですけど、お客さんの雰囲気も含めて、いつものライブとはまた違った高揚感は全体的にありましたよね。MILKCOWとか、自分も初めて見るバンドをたくさんの人が見に来てて、主催側としては“良かった”っていう安心感もあったし」
SHO「主催側はめっちゃ大変やったでしょう?当日の夕方ぐらいのRAZORSの4人の顔なんて、見てられんかったもん。“疲れてんなぁ〜”って(笑)。40代後半の人みたいな顔してた(笑)」
KENJI&TAKA「アハハハハハ!!」
KENJI「でもね、打ち上げが始まった瞬間、もう全部“良かったなー!”しかなかったね!」
SHO「打ち上げの雰囲気の良さは、近年まれにみるものがありましたよね。あれがいいイベントの証拠ですよ。僕なんかは去年出てたメンツの中ではいちばん知り合いが少ないぐらいで、ほとんどの方とほぼ初対面でしたけど、めっちゃ楽しかったですよ」
KENJI「うん。打ち上げの雰囲気がいいんで、そこでお互いの話をしたり、イベントに誘ったり誘われたりもあって」
『精神的な部分で近いバンドとは刺激を与えあったりしてきました』(KENJI / RAZORS EDGE)
‐‐今年も多彩な出演バンドがそろっていますね。
KENJI「RAZORS EDGEを結成して18年ですけど、自分自身もこれまで活動してきた中で同じジャンルだけでやってきたわけじゃないし、音楽スタイルは違っても気の合う人や精神的な部分で近いバンドとは仲良くなったり影響を受けたりしてきましたからね。どパンクな人間性が最高なOi-SKALL MATESもそうやし、赤犬は去年初めて一緒にやったんですけど、スタイルは昭和歌謡なんやろうけど…、ハートがパンクよね!(笑)」
SHO「うん。僕なんてファンダンゴで見る赤犬のイメージしかないんで、フジロックに出てるのが違和感あるぐらい(笑)」
KENJI「今回の出演者でいちばん付き合いが古いのは、SLIGHT SLAPPERSかな。結成後早い時期から対バンもしててイベントも呼んだり呼ばれたり、なおかつ現存してるバンド(笑)。付き合いが新しいのは、大阪の若手のDay tripper、SPARK!!SOUND!!SHOW!!かな」
SHO「僕はPalmはずっと一緒にやってますね。SLANGも15〜6年の付き合いかな。ほぼ初対面に近いバンドも多いですけど、LOSTAGEは当日券を買って観に行くぐらい好きですし、そういうバンドと自分が同じフライヤーに載ってるだけでも面白いですよね」
KENJI「今回出演するmanchester school≡のハルロヲ(Vo,G)は、RAZORSも聴いてくれてたし、SLIGHT SLAPPERSも好きでCOMEBACK MY DAUGHTERSも好きで、そのどっちもが出るイベントに出られることをすごく喜んでる。でもこの2つのバンドはこのフェス全体からみると、ジャンル的には両極端なところに位置してるんですよね。でもどっちのバンドからも受けた影響を自分のバンドに反映させてて、それが僕は面白いと思うし、逆に美しいと思うんですよね」
SHO「ちょっと真面目な話をすると、僕らみたいなジャンルの音楽が好きなお客さんて、大きく2つに分かれると思うんです。ある一つのバンドを追っかけ続ける人と、こういう音楽が好きだからこのバンドが好き、こっちのバンドも似てて好きとか、カルチャーとして好きな人。僕はどっちかっていうとこのイベントをきっかけに後者を増やしたいと思ってて。音だけを聴いて必然性がなくても、たとえばKENJI君を中心に多種多様なこれだけのバンドが集まってて、バンド同士はつながってる。これでお客さん同士がつながれたらもっと楽しいスゴいことが起きる気がするんですね。特定の目当てのバンドを見に来てくれて全然構わないんですけど、そこから好きな音楽の枠が広がるきっかけになればいいなと思うし、“このバンドがおすすめです”っていうより、イベント自体がおすすめかなぁと思いますね」
TAKA「まとめるねぇ(笑)」
SHO「僕、アタマいいんで(笑)」
‐‐(笑)KENJIさんが出演バンドを選ぶ基準は?
KENJI「何やろう?せっかく音楽をやってるんだから、音楽だけで食えてるかとかじゃなく、音楽に自分自身を捧げているか否か?ってところが大事で。ある盛り上がってるシーンがあって、そこに仲間入りしたいだけでやってるようなバンドはいらない。誰でも、音楽を始めたピュアなきっかけがあると思うしそれに対して“捧げてるか?”ってところ。その一点こそがロックであり、パンクでありハードコアだろうと。やってる音楽のジャンルは関係ないと思ってる」
『もっと!もっと!”って。まだまだこんなもんじゃない!』(TAKA / RAZORS EDGE)
‐‐KENJIさん自身がもともと音楽をやるきっかけは何だったんですか?
KENJI「若い頃、心斎橋のCLUB QUATTROでバイトしてて、“このまま音楽関係の仕事につけたらいけたらいいなぁ”とか思ってたチャラい兄ちゃんやったんですけど(笑)、一緒に働いてた女の子がバンドをやってて、“ベースがいないからやって”って言われて。それが22、23歳の頃で、それまでは高校の文化祭でコピーバンドをやったぐらいでした」
‐‐ちなみに初めて買ったレコードは?
KENJI「初めて買ったレコードはGASTUNKとかXとか。中学生の頃ですね。でも自分がバンドをやるきっかけになったのは、大学で大阪に出てきてから観たコンクリート・オクトパスとか大阪のバンドですね。ライブハウスで見た時に、“わっ、俺もやりたい!これなら俺、楽しめるかも!”って思ったんですよね。もちろんAC/DCとかメタリカとかも好きで聴いてたけど、そういうバンドだけを聴いてたら“バンドをやろう”なんて思わなかったと思う」
SHO「わかります。僕も一番最初のきっかけは、地元の同級生の家がとんかつ屋さんで、そこで見たライブのフライヤーやったんですよ。野球部をやめて情熱を注げるものが欲しいと思ってた中途半端な不良やったんですけど(笑)、その同級生の店でとんかつを揚げてるお兄ちゃんがバンドマンで、バンドってチャラいヤツか、オタクしかやらんと思ってたんですけど、ド不良がバンドやって、しかもライブに行ったらスポットライト浴びてワーワー言われててカッコよかったんですね。それがジョン・ホームズで、僕は当時18歳でした。もう、すぐにバンドをやろうと思って、一緒にライブを観に行った奴らとバンドを組んで、それからずっと今に至ってます」
TAKA「ほぉ〜」
SHO「ただ生まれて初めて行ったライブは、小学校2年生の時に今はなき大阪球場で見た渡辺美里(笑)。「My Revolution」が聴きたくて」
KENJI「俺も中学の時に聴いてた (笑)。それにしてもあの頃は今みたいにインターネットもYouTubeもないし、ライブ自体が凄い体験やったよね。それまでレコードでしか聴いてなかったものを目の前で、動いて叫んでるのを見た時はかなりの衝撃でした。そういう時に俺とかSHO君みたいに“俺もやっていいんや”って思うかどうかがバンドマンかリスナーかの分かれ道なんでしょうね」
SHO「“あんなふうになりたい!”って思いましたから」
KENJI「そうそう。ステージアクションもすごいし!ブレイクで跳ぶとかたまらんかった!自分も跳びたいがためにバンドを始めたようなもんですし、今も相変わらず跳んでますから(笑)」
TAKA「僕は兄貴の影響もあって、最初に買ったのはラモーンズのカセットテープ。ラジオで聴いたのをメモ書きして、“これください”って買いに行ったのが「Do you remember rock’n’roll radio?」ですね。中3の時に初めて、明石市民会館であったブルーハーツのライブに行ったんですけど、始まった瞬間にもうワーッて興奮してステージに向かってダーッて通路を走ってしまって(笑)。警備員さんに追い出されて、“お願いやから聴かせてくれ!”って頼んで、警備員に両脇を抱えられて「ダンスナンバー」と「リンダリンダ」を聴きました(笑)」
『人の人生を左右することができるんですよね、音楽って』EDGE OF SPIRIT : SHO
‐‐今3人は、かつて“ああなりたい”って目指した人になれてるわけですよね?
TAKA「うん…でも“もっと!もっと!”っていうのがあるんでしょうね。まだまだこんなもんじゃないというか…」
KENJI「“もっと!”って思うからやめれないんですよね」
SHO「僕ね、自分がお客さんだった時は、今いるお客さんよりもっとすごい顔をしてライブを見てたと思うんですよ。僕は18歳の時にさっき言ったライブを見て人生が変わったけど、自分のライブを見て、聴きに来てる彼らの人生を変えたかなと思うと、まだまだやと思う。前にkamomekamomeの向(達郎)君がMCで、“俺は歌で人を殺せると思ってる”って言ってたんですね。実際に音楽で人は死なないけど、死のうと思ってたヤツが音楽を聴いて“生きよう”って思いとどまることはある。人の人生を左右することができるんですよね、音楽って」
KENJI「生まれ変わらせることはできるよね」
SHO「向君は“それを信じてやってる”って。僕も同じ気持ちなんです。さっき
TAKA君が言ってた“もっともっと!”っていうのは来てるお客さんの数じゃなくて、その“思い”のほうですよね。お客さんが3人でも、3人全員の人生が変わるライブをやりたいし、300人おっても1人も人生変わらへんかったら僕の中では全然面白くない。僕のライブを見て“ああいうふうになりたい!”って思ってほしいですね」
TAKA「俺が初めてSHO君のライブを見たのはベイサイドジェニーやったけど、当時より今のほうが強烈な顔してるよ(笑)。グッとくるわ」
‐‐(笑)私たち聴衆がフロアから発してる気持ちや思いは、ステージにも伝わってるんですね。
『この時代に生きててラッキーやと思ってくだい!(笑)』(KENJI / RAZORS EDGE)
‐‐今回、初めて聴きに来るお客さんもいるでしょうね。
KENJI「うん。1組でも多く見てほしいし、新しい発見をしてほしいですね」
SHO「僕らもそれを期待してます。“このバンドこんなカッコイイんや!”とか“呑んでみたらめっちゃええ奴やった”とか(笑)」
KENJI「もうね、1組でも2組でも興味のあるバンドがあったら、チケット買わなアホやと思いますよ(笑)。出るバンドが共鳴しまくってますから!その空気を味わってほしいし、10年後にこのイベントのチラシを見た人に“すごいバンドが集まってたんやなぁ!”って思わす自信はある。だから今、皆はこの時代に生きててラッキーやと思え!と。いや、思ってください、と(笑)」
SHO「ライブのMCでもよく言うんですけど、18年前に僕の人生が変わったように、このイベントに来て、いくつもの夜をつなげてほしいんですね。このイベントで新しいバンドを知って、この先もっといいライブを見て忘れられへん夜がこれからもいっぱい出来てくると思うんですけど、“これがいつから始まったんやっけ?”ってふと思った時に、いちばん最初の始まりの夜がこのイベントであってほしい。僕はハッキリと思い出せる夜がありますし、自分がバンドマンになった夜、KENJI君やTAKA君と出会った夜も思い出せる。そういう夜を作るのは自分自身なんですよね。そのための材料は僕らが揃えるんで」
TAKA「うん。自分らももう始まってるんで、このイベントが来てくれる人にとっても何かのきっかけになったらいいなと思いますね」
KENJI「ちょっと気が早いけど、来年以降のことも考えてて、会場を増やすやり方もあれば、自分としては呼んだバンドをできるだけたくさん見てほしいから会場を減らすかもしれないし、ライブサーキットじゃなくなるかもしれない。けど、このイベントの核になってる面白さはなくさないでやっていきたい!というわけで、とにかく今年、絶対に伝説になる一日になるから、初めての人も、去年も来てくれた人も、全国からぜひ来てください!!」
インタビュアー : 梶原有紀子
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