- 2014.10.29(Wed)@新代田 FEVER
- 2014.10.31(Fri)@博多 Kieth Flack
- 2014.11.02(Sun)@広島 BoRDER
- 2014.11.03(Mon)@京都 GATTACA
- 2014.11.09(Sun)@北浦和 KYARA
- 2014.12.13(Sat)@沼津 ExtraBoxTUTERS
- 2014.12.14(Sun)@横浜 F.A.D
- 2014.12.20(Sat)@八戸 ROXX
- 2014.12.21(Sun)@石巻BLUE RESISTANCE
- 2015.01.11(Sun)@横須賀 かぼちゃ屋
- 2015.01.17(Sat)@千葉 LOOK
- 2015.01.18(Sun)@水戸 LIGHT HOUSE
- 2015.01.23(Fri)@神戸 太陽と虎
- 2015.01.24(Sat)@松山 double-u studio
- 2015.01.25(Sun)@大分 club Spot
- 2015.02.07(Sat)@柳ヶ瀬 ants
- 2015.02.08(Sun)@滋賀 B-FLAT
- 2015.02.14(Sat)@前橋 DYVER
- 2015.02.15(Sun)@長野 INDIA live the SKY
- 2015.02.20(Fri)@仙台 MACANA
- 2015.02.21(Sat)@酒田 MUSIC FACTORY
- 2015.02.22(Sun)@宇都宮 HELLO DOLLY
- 2015.02.28(Sat)@十三 FANDANGO
- 2015.03.01(Sun)@名古屋 APOLLO BASE
- 2015.03.08(Sun)@恵比寿 LIQUIDROOM
--最初にライヴ見た時からずっと訊きたかったんですけど、HAYATOさんは、なぜ歌おう思ったんですか。
「……歌おうと思ったっていうよりは、英語で歌詞を書いたのが最初で。10代の頃にやってたバンドで、ヴォーカルから『歌詞を書いてくれ』って言われて」
--帰国子女ですよね。
「そうです。高校の時にアメリカに住んでて。だから俺は英語で書くんだけど、歌いたいって言ってる人がうまく喋れなかったり、発音できない、ニュアンスが伝わらないとか。それでヤキモキして、もうその人をクビにして、そこから俺がヴォーカルをやりだしたんですね。そういうきっかけでズルズルと。だから極論を言うと別に歌いたかったわけじゃないんですよ」
--先に、言葉があった?
「うん。なんか詞を英語で書いて、言葉が、言いたいことが出てくるっていうのが先かな。けど、それは誰かが代弁してくれて良かったんですよ。他のヴォーカルで良かった。で、ちゃんとできないんだったら俺がやってもいい? みたいな感覚で歌い始めただけで。だから人前で歌いたいとか、真ん中に立ちたいタイプじゃないんですよ。コンプレックスの塊みたいな人間なんで、ほんと人前に立つのは苦手というか。散々やっといて、っていう話ですけど(苦笑)」
--でも、最初から歌詞が書けたっていうのは興味深いです。普段から自分の中で思考することがあったわけですよね。
「基本、めっちゃ根暗なんで(笑)。バンドマンってだいたいそうじゃないですか。そんな明るい奴なんて数えるくらいで。あと俺は、いろんなもの見たり聴いたり、住む環境が変わったことで、ちょっと考えることが若干ひねくれたのかな。若さ特有のネガティヴ・パワーみたいなのが結構たまってて。それを言葉に書くことで吐き出せる、みたいなところはあったと思う」
--もう少し掘り下げてもいいですか。そのネガティヴ・パワーとは。
「……たぶん中学生ぐらいまでは素直に育ったと思うんですけど。でも中学がめっちゃ勉強厳しくて。ザ・私立!みたい学校で、勉強に付いていくのもキツくて。太ってたし、スポーツもそんなにできるわけでもないし。『あれ?自分って普通、っていうか普通以下だ』って気づいてからは、どんどん悪いほう、ネガティヴなほうに考えちゃって。何か人より秀でるものがあれば『俺は俺だ!』って言えたと思うんですけど、それが何もなかった。太ってて見た目も良くない、勉強できない、スポーツできない……」
--そのどれかの評価しかないですもんね、中学時代って。
「そう。そうなると、もう音楽聴くしかなくて。もともと家族みんな音楽好きで、親父はビートルズ狂だったりするけど、大きいのは兄貴の影響ですね。ブルーハーツが大好きで。小6の時に初めてコンサートに連れてってもらって、まぁ解散前の野音でしたけど、それ見てから俺もブルーハーツばっかり聴くようになっちゃって。で、中3の時にギター買ってもらったのが始まりですね」
--ビートルズやブルーハーツから始まり、なぜHAYATOさんはハードコアに向かったんでしょう。
「当時はハイスタを筆頭にパンクが流行ってて、ちょうど海外に住むことになるんですよ。あっちのスケートビデオ、サーフビデオ、MTVとか見てて。で、ギターを教えてくれる友達もいたし『こういう音楽知ってる?』『俺こんなの知ってるぜ』みたいな感じで広がっていって。そこから、だんだん激しいものを聴くようになったんですね。で、一回興味持ったら、俺はもう行くとこまで行くタイプなんですよ。グラインドコア、ブラックメタルに行って、デスコアも聴いて。もう何言ってるかわかんないし聴いてて気持ち悪い、みたいなところまで(笑)。そこまで行ってからちょっと戻って、このへんが一番気持ち良くて好きだなぁと思ったのが、ハードコアだった」
--どんなところが自分に合っていたと思います?
「なんか、古いものを聴いても新鮮に感じたのが大きかった。当時はミクスチャーとかも流行ってたけど、俺はそれよりも80'Sのハードコアのほうが斬新だったし、新鮮に思えたし。たぶん、作り上げられてないもの、未完成なものっていうのが、すごくキラキラして見えたんだと思いますね。あとはその人たちの若い頃のエネルギー。それが当時の自分にすごくハマったというか。歌詞も直球じゃないですか。『そんな言葉で書いちゃうんだ! 子供じゃん!』みたいな(笑)。そこが俺には格好良かったし、これやりたいかも、って思えたんですね」
--前回マイナー・スレットのカバーがあったけど、80'Sで好きなバンドって、いくつか挙がりますか。
「一番、音楽も見た目もファッション性も込みで全部好きなのはブラック・フラッグ。俺の中でブラック・フラッグとマイナー・スレットは、一番ベタな入り口でありながら、一番自分のコアなところだったりしますね。まぁMEANINGのメンバーは別にそういうの通ってないし、聴いてきたものもバラバラだから、そういうルーツが見えないことでちょっと薄っぺらく感じちゃうのかもしれないですけど」
--それはないでしょう。サウンドは別として、HAYATOくんの歌に私はハードコアを感じますよ。
「……太字でお願いします(笑)。嬉しいです、それは」
--で、ハードコアに惹かれる人って二通りあると思っていて。ひとつは、より強いもの、タフでストロングなものに憧れるタイプ。もうひとつは、追い詰められて死にそうな断末魔の叫びに共振するタイプ。自分の暗さや弱さゆえにハードコアに行き着く、というか。
「あぁ、それで言うと後者ですね。俺、その、強いものに憧れる人って違和感あるんですね。否定するわけじゃないけど、それを俺の『好き』と一緒にしないで、って思っちゃう。男臭え、強え、カッコイイみたいなタフガイのハードコアって……お下劣な話ですけど、外人のAVを見てるみたいな」
--まぁ、なんとなく伝わります(笑)。
「パンパンパン!って……ほんっとエロくねぇ(爆笑)。もちろんね、腕力の強さと音が比例するのもいいんだけど、俺はそこに深い情景だったりは感じなくて。ハードコア・ミュージックとして単純に格好いいとは思うけど、音楽より先にあるものが感じられない。だから最近のUSのタフガイ系、あんまり掘ってないですね。だけどFORWORDが新譜を出すとなったら、やっぱこの人たちは今どう思ってるんだ、今この2014年の日本で何を考えてるんだろうって、すごく興味が出てくるし、実際すごく刺激も受けますしすね。だからハードコアっていう大きな括りだと2つは一緒になっちゃうけど、俺の中では、そこは真逆というか」
--その違いって、なんでしょうね。
「うーん………思ったことをちゃんとストレートに言ってる人が、俺は好きですかね。腕っぷしが強いのって、突き詰めれば何?そこは音楽と切り離していいんじゃない?って話だし。あと、なんとなく賢そうなニュアンスを漂わせても、うーん、ってなっちゃう。たとえばツイッターとかでも『これ誰かのこと言ってるんだろうけど、そこは書かないんだ』ていうの、あるじゃないですか。『結局言わないなら、書かなくていいじゃん』みたいな。俺も実際そういう書き方したことありますけど、よくよく考えたら誰も得しないですよね。だったらちゃんと名指しで言えよって。もちろん名指しで書けば反論も返ってくるし怒られたりするけど、でも、自分はこうだと思ったらそれを曲げない覚悟が必要だし、言ったことに責任持てないんだったら言わないほうがいいし。そういうのをはっきり言える人に惹かれますね」
--それは、当然自分自身に返ってくる言葉ですよね。覚悟決めて歌詞を書いているのか、ちゃんと自分で責任持てるのかっていう。
「はい。そこは、だいぶ変わったと思います。だんだん大人になってきて、自我が出てきて。ただ音出してるのが楽しいっていうところから、もっと自分の言葉に責任持つようになって。自分の言葉にどういう影響があるのかっていうことを考えだしてから変わりましたね」
--それはいつ頃ですか。
「ファースト出して、ツアー終わってからですかね。ちゃんとヴォーカルでいなきゃな、っていう自覚が出てきて。前は5人がバーッと出ていって、みんな並列のゴレンジャーで居てくれればいいと思ってたけど。でも真ん中に立ってる以上、俺が赤レンジャーじゃなきゃいけないんだっていう感覚が出てきて。昔はそれこそ喋ることがない時は喋らなかったし、横の二人がとっ散らかったこと喋って、そのまま終わるってこともあったんですよ(笑)。そういう失敗を繰り返しているうちに、だんだん、出なきゃいけないところは俺が出ていかなきゃいけなんだって気づいてきて。矢面に立つ、というか。そういうことに気づいてから書く言葉にも自信が出てきましたね」
--HAYATOさんの歌詞って、自分の言葉にすごく自覚的な人のものだと思います。ヴォーカリストによっては、まず響きが重要で意味は二の次っていう場合もあるんだけど。
「あぁ、一応響きも気にしてケツは韻を踏んだりするんですけど。でも、いくら韻踏んでも意味がなかったら嫌だし。だから最近はまず日本語で書いて、それを英語に戻してますね。で、こういう英語のほうが難しくないなって思えるものを選ぶ」
--聴き取りやすいですよね。たぶん中学生くらいで習う英語がメイン。
「あぁ、ほんとそういう感じです。メンバーもわかる、たぶんみんなが知ってるはずの英語。でも海外のハードコアもそうですよね。そこまで難しい言葉で歌ってない。難しい英語って使おうと思えばいくらでも使えるし、英訳を人に頼むバンドもいっぱいいるじゃないですか。それを見てると『……こんな単語どっから出てくんだよ?』っていうのも目につくし、案の定、発音もできてなくて。そうなると、もう自分の言葉じゃないんじゃないの?って気がしちゃうんですね。だから俺は、自分の知らない言葉は使わないようにしようと思ってて。なるべく馴染みのいい、覚えやすい言葉で、なおかつ意味がちゃんとわかるもの。辞書調べて難しそうに言ったところで、それは自分の言葉じゃないよなっていう。そういうことは意識するようになりましたね」
INTERVIEW BY 石橋恵梨子
Vol.2 へ続く
--最初は真ん中に立ちたいタイプじゃなかったHAYATOさんですが、今、MEANINGを続けていて感覚は変わりましたか。
「……基本はやっぱり、ライヴの時以外は別に目立ちたくない(笑)。ほんと普通に生活して、ライヴの時だけ格好つけられれば、っていうか格好がつけば、それでいいですね。普段から派手に生活して仲間と一緒にワーワーやるのは全然求めてないし。仕事を地味に続けて、週末にライヴやった時にパーッと輝ければ。それを続けることがMEANINGの目標だと俺は思っていて」
--これ、文字にするとただのストレス発散だと思われません?
「いや、でもそうです。誤解されそうだけど、極論を言うとMEANINGは究極の趣味なんですね。もちろん生き甲斐だし、人生そのものを賭けてるし、そのへんで『いや、俺は本気でやってっから』って言ってるバンドの奴より本気でやってる自信がある。だけど仕事では絶対なくて。『じゃあ何?』って言われたら、やっぱり『究極の趣味』って答えるしかないんですね。人生を賭けてはいるけど『これこそが俺の人生だ』とは言えない。それはバンドで食ってるわけじゃないし、普通にバンドやってる時間よりも仕事してる時間のほうが長いわけで、このバンドだけが俺の人生とは言いたくないんです。言うと嘘になっちゃうし。MEANINGを始めた頃にみんなが言ってたのは、『バンドで食えればまぁいいけど、そうなるためだけにバンドを頑張るのは止めよう』ってことで。ほんと、バンドだけで食いたいと思ってたらこういう音楽やってないだろうし、そっちに意識が行っちゃうと、たぶんみんなの向き合い方も変わってくると思う」
--「やらなければいけないもの」にしないってことですよね。生活のためとか、金のため、スタッフのため、とか。
「そうですね。みんながやりたいからやる、っていう当たり前のことだけでいい。嫌になったら『明日辞めよう』でいいし。もちろんカネが入ってきたら『おぉ、ラッキー!』って言うけど、でもまぁ明日も仕事すると。そういうスタンスでやっていこうって話はけっこう昔からしてましたね」
--なるほど。その究極の趣味の場で、HAYATOくんはなぜあんなに人格が変わるんでしょう。
「……そんな変わりますかね? よく言われるんすけど、そんなに変わって見えます?」
--うん。少なくとも今はすごく好青年です(笑)。
「いや、ステージ上でもそんな……(笑)。でも自分の中では、そこまで切り替えてるつもりはないんですけど。しいて言うなら、スイッチみたいなものが人にはあるじゃないですか。そのスイッチが、ダイヤル式で回していくものか、パチッとON/OFFにするのかっていう違いで。俺はもうON/OFFのスイッチしかないんでしょうね。ステージ出ていくまでは今喋ってるような感じで、出ていった瞬間にパチッと入る、でもステージ降りたらすぐOFFになるっていう」
--初めてMEANINGを見た横山健さんは「こいつは人を殺しちゃうんじゃないかと思った」そうで。こういう形容は褒め言葉になりますか。
「あ、めちゃめちゃ嬉しいですね。あのライヴはほんと、年に一度のホームランみたいなもので」
--殺人鬼のようにも見える、あそこで出してる感情って実際はどんなニュアンスに近いんですか。
「……これ答えになってるかわかんないですけど、ずっと昔から、いわゆるホームって言われる環境、自分たちのことを好きなお客さんばっかりがいるライヴって俺めっちゃ苦手なんですよ」
--アウェイが好き?
「うん。そうじゃない人にどんだけ届くか。たとえば後ろで腕組んで見てる人がだんだんノッてきたり、終わった後にガッツポーズしてたりするのを見ると、ほんと嬉しくて。それは俺たちを好きな人が100人手を上げてくれるよりも、俺の中では価値のあることなんですね。いつも来てくれる人に失礼かもしれないけど、その人たちと『よしよし、わかってくれてるな』って確認しあうだけじゃたぶん面白くない。だからワンマンとか自分たちの企画だと、なーんか燃えきらない。テンションは上がるんだけど、なかなかスイッチ入るまでに時間かかりますね」
--HAYATOさんにとって、ライヴは「ユニティの場所」ではないと。
「たぶん、最終的にそうなってくれればいい。別にひとつになんなくてもいいですけど、考えてることが伝わってくれればいいなと思っていて。始まった時はそんなの伝わらないじゃないですか。俺も何も言ってないんだし。だけどライヴの限られた時間の中で『これでどうだ!』とか『僕の考え方はこうなんですけど、いかがですか』とか、いろんな言い方で自分を伝えていって。結果的に知らない人たちにも届いたって思えた瞬間、バンドやってる意味があるなって思えるんですね。やってて良かったって一番思える瞬間」
--つまり、ライヴは「本気でやる自己紹介の場」ってことですか。
「あぁ! ほんとそんな感じです。明確なテーマっていうのは確かにないんですね。反原発とか、戦争反対とか、そういう明確な何かじゃなくて、結局は『自分はこういう考え方を持って、ここに立っています』ってその都度その都度伝えたいんだと思う。で、アウェイとか地方であればあるほど『俺たちが東京のMEANINGだ、よく覚えとけ!』って言ってますね。まぁ言ったあとの楽屋でYUちゃんに『お前……あの出来でよくそんなこと言えたな』って言われたりするんですけど(笑)」
--でも、あなたは誰なのか、それがわかって初めて感動ってするもので。「怒ってるなぁ」とか「悲しいことがあったんだな」が歌詞から聞こえてきても「そりゃ大変ですね」って思うだけですよ。結局は「その人が誰なのか」が伝わってこないと、何を歌おうが感動なんてしない。
「あぁ、そうですよね。それができるのが本当に格好いいバンドだと思う。ジャパニーズ・ハードコア見てるとよくあるけど、なんかフッと、みんなの心が動く瞬間が見えたりするじゃないですか。MEANINGのライヴでもそれがたまにあって。ほんとに震えちゃう感覚。たまらないですよね。たぶん、いい曲をいいクオリティで演奏してるいいバンドっていうだけじゃ、それは起こらない光景だと思うし」
--なるほど。ライヴに関しては納得です。となるとMEANING主催の企画ってどういう感覚で続けています? トラックのステージで野外イベント開催するとか「Spooky Zoo」のすさまじい組み合わせとか。
「あれ、めちゃくちゃすぎて自分でもワケわかんないことになってますけど(笑)。やっぱそこは、単純にやりたいからやってる、面白いことやりたいからやってるだけですね。『Spooky Zoo』もいい加減、これ以上誰を呼べばいいんだって感じですけど(苦笑)、みんなが知ってる感じの、見たことある組み合わせになるんだったら、もう俺がやる必要ないと思うし」
--ヴォーカリストのHAYATOさんと、プロデューサーとしてのHAYATOさんって、また違う面白さですよね。シンガーとして説得力があれば、別に次々と面白い企画を思いつかなくてもいいわけで。
「あぁ。それは自分が退屈したくないからですね。人に任せて何かわかんないこと起きるのも嫌だし、あと人に任せた結果つまんなかったって言いたくなくて。自分でやってつまんなかったらそれは自分の責任じゃないですか。そうならないように一生懸命やるからバタバタしちゃうんですけど」
--なるほど。
「で、これメンバーにも言ってますけど、俺が面白いこと思いつかなくなったらたぶんMEANINGは終わりだと思う。俺がいなくても、残りの4人で誰か違うヴォーカル入れれば、たぶんライヴは格好いいしバンドも続くと思う。けど、今みたいな動きは絶対できないし、なんか面白いことやってるMEANINGっていうイメージは絶対作れない。その自負はあるんですね。たぶん俺『MEANINGのヴォーカルだ、俺だからできてるんだ』っていうよりかは『MEANINGマネージメントを俺がやってるから、MEANINGは面白いんだぜ』っていう感覚が強いかもしれないですね」
--マネージャー視点で見ると、MEANINGってどんなバンドですか。
「とっ散らかりまくってますよ(笑)。ほんとに。人のバンド見ると、みんなまとまってていいなぁって思う。たまに『ウチのバンド大変だよ〜』とか聞くじゃないですか。『え、それの何が大変なの?勝負する?』って思うくらい」
--なんの勝負だ(笑)。
「ちょっと話ズレますけど、今回、FC FIVEの歌詞とか曲調を引用しまくった曲があるんですね。俺はあのバンドが本当に好きで。めっちゃオープンだけどちゃんとハードコアしてて、地元を大事にするローカル・ヒーローでありながら世界にもちゃんと出ていって。外にも出るけど核はブレないっていう、もう俺の理想の活動だったんですね。俺から見れば、あの人たちは4人ともハードコアで、だからこそハードコア・バンドになってたというイメージなんです。俺らもそうなりたかったし、昔は『俺たちハードコア・バンドです』とか言ってた時期もあるけど、やっぱり俺ら風情がハードコアとか言っちゃうと本気でやってる人たちに失礼なんですよ。俺らが言うべきことじゃない」
--うーん、まぁサウンドは純粋なハードコアではないけど。
「そう。MEANINGは、みんながこのバンドが大好きって言えるようなルーツがひとつもなくて。別にハードコアに興味ない人もいるし、ルーツに全然ないわっていう人もいる。それがわかった時点で、俺らは絶対FC FIVEにはなれないんですよ。憧れを抱いてたけど、なれない。それで肩を落とした時期もあったんですけど、今思うと、これだけバラバラでとっ散らかってる5人が、絶妙なラインでなんとかまとまってる。だからこそMEANINGの価値というか、輝く理由があるのかなって。たぶんね、みんながみんなハードコア大好きで、同じようなルーツ持って同じ動きをするバンドだったら、たぶんMEANINGの良さって全然違うものになってたし、少なくともここに居ないと思うんですよ。そんなふうに思った時に、あぁ、この5人で良かったなって肯定できて」
--うん。そうですよね。
「だからマネージャーとしては、とっ散らかっててめっちゃ大変ですけど、この5人じゃないとできないことが今できてるから。だから、いいメンバーでやってるんだなって気がしますね」
INTERVIEW BY 石橋恵梨子
Vol.3 へ続く
--ミニアルバム『150』の話になりますが、今回の歌詞、核となるものは2つくらいしかなくて。
「はい。そうっすね、今回」
--ひとつは、自分自身を誇りに思うこと。自分と自分の仲間たちを全力で信じるし守ること。つまり個人としてどうありたいかが書いてある。
「うん。これは昔から変わってないんですけど、自分の半径何十メートルぐらいの話しか俺にはできる器がなくて。MEANINGを始めたのが21とかで、何もわかってないクセに、原発反対だ、戦争反対だってことを書いたとしても、たぶん紙の上の表現でしかないんですね」
--それこそ他人の言葉ですよね。
「そうなんです。もちろんディスチャージも大好きだし、デスサイドとかめちゃくちゃ聴いてたし、そういう意識は頭の中にあるんだけど、それは俺が書いた言葉じゃない。書ける言葉でもないんですよ。そういうことは昔から考えてたし、まずは自分のこと、自分の半径何メートル内のことを書こうと。そこすらちゃんとできなかったら、その先のことを言われてもなぁって話だから」
--その自分を「誇りに思う」っていう言い回しが、今回はいくつか出てきますね。
「はい。10年続けてやっと、ちょっと自分の肩を叩いてあげられたかな、みたいな(笑)。まぁ別に何かを成し得たわけじゃないんですけど」
--最初にコンプレックスの塊だったと話してくれましたよね。たぶん、自分のことが大好きな人って、いちいち誇りとか考えないんです。自分はすでに肯定されているわけだから。
「あぁ、いちいちしなくていいと……うん……確かに(笑)。そうですね。俺はほんとにコンプレックスがあったし、10年も何かを一生懸命続けたり、何か上手くできたことって今までなくて。なかったんだけど、なんか初めて自分の人生の中でちゃんと一生懸命向き合って、かつ、ちゃんと続けてるものだなっていう感覚があって。やっともう一人の自分と『あぁ、よくやったね』『頑張ったな』って握手できたみたいな。ちょうど10年っていう節目もあって、こういう歌詞が出てきたんですね」
--コンプレックスの塊で根暗だったという自分は、今もいますか。
「あ、基本は暗いっす(笑)。地味だし暗いし、家では静かに本読んだりしてますね。騒ぐタイプじゃない」
--でも、そういう自分を変えたいんだ、っていうことは歌ってなくて。
「あぁ、確かに。それはそれで、そういう自分が今は好きですね。無理しないで楽しくできる自分のペースが、30代になってわかってきたというか。うん。今の自分の感じは、10年前より全然好きですね」
--なるほど。あともう一個のテーマは場所ですよね。「ここが自分の居場所である」「誰にも奪えない場所だ」っていう歌詞がよく出てくる。
「それは、さっき話した『Spooky Zoo』ですね。イベントのテーマじゃないけど、何か合った曲が欲しいねって話をしてて。で、あのイベントって確かにメンツはめちゃくちゃですけど、呼んだバンドの誰に訊いても『このバンドは知らなかったし、見たことない』『今日初めて見たけどカッコよかった』って言ってくれるんですね。そういう場所を作れたこと自体が嬉しいし。だからこそ、ああいう場所は俺らにしか作れないし、あの場所は誰にも渡さないぞって。あと、あのイベントは今の自分たちがやってる活動を凝縮したもので、今のMEANINGそのものとも言えるから。MEANINGの席は一個しかないよ、ここは絶対どかないよ、っていう感覚もありますね」
--実際いないですよね、こんな音のバンド。
「ラウドなバンドがいくら流行ってても、なんか違うんですよね。『お前らはなんか汚いハードコア臭がする。だから売れないんだ』とか言われて(笑)。まぁ自覚してるし、それがむしろ売りというか。競合してくるバンドはあんまりいないし、もしいたとしても、10年かけて作った場所だから今さらどかないよって。10年かけてみんなに文句言われながら、散々ディスられながら作った場所だから」
--そんなにディスられましたか。
「めっちゃ言われましたよ。あんなのハードコアじゃねぇ、パンクじゃねぇ、メタルでもねぇ、ニュースクールでもない……全部その通りなんですけど(笑)。ブッキングも『次、また何かあったら呼ぶね』って言われたはずが全然声かかんなくて。後から訊いたら『いやぁ、一緒にやらせるバンドが思いつかないんだよね』とか。ほんと、ピザからリリースするまではずっと独りぼっちな感覚が強かったですね。仲間って言えるのはA.O.Wくらいで」
--それを、寂しいと思ってました?
「うーん……寂しいっていうか、ちょっと諦めてた。まぁそういうもんなんだろうなと。でも俺らは自分の曲を好きでやってるし、やるたびに毎回テンション上がるから、別に変える必要も辞める必要もないなって」
--入るシーンがなかったのか、入りたくなかったのか。
「いや、憧れてたニュースクールのシーンには入れないんですよ。少し閉鎖的だったこともあるし、あとはまぁ実力も名前もないから入れなくて当然なんですけどね。だから、憧れが強すぎて、ヒガミ半分でKAWAGUCHIくんと『あそこには行きたくないよね』とか言ってた時期はあります(笑)。バンド名も当時は長い名前が流行ってたんですよ。サイレンス・キルズ・レボリューションとかナーバス・ライト・オブ・サンディみたいな。で、これまたKAWAGUCHIくんと『いっぱいいる中のひとつになっちゃうから、逆に一単語のバンドがいいよね』とか言ってて」
--MEANINGって訳すと「意味」だけど、よくよく辞書を引くと人の行為の裏にある重要性、その背後にある含み、みたいなニュアンスですよね。
「そうそう。そうなんです」
--どこにも属せなかったけど、でも迎合しなかったことが今ではバンドの重要な価値になっていったわけですよね。今のMEANINGは「意味」って訳すよりも「意義」に近いと思います。
「うん。そうですね。10年目のワンマンで自分でも言ったんですけど、そうやって◯◯じゃない、◯◯でもないって言われてきたけど、◯◯じゃないから今の自分たちがあって、そうじゃなければ今ここにいる人たちに会えなかった。そう思うと、遠回りだったとしても、どこにも属せなくて良かった、ハミ出してて良かったなって、すごく思ったんですね」
--その自覚やプライドが、今回は言葉にもはっきり表れている。
「はい。歌詞は今回けっこう書くの苦労したんですけど。あんまり内面をさらけ出すのが苦手で。全部見せるのがほんと苦手なんですよ」
--そうですか? 相当ストレートに聞こえますけど。
「かなり頑張ってストレートに書きましたね。でも、伝わらないと意味がないじゃないですか。上手い言い回しで言葉遊びができる人間じゃないし。だったらもう、これを伝える言葉はこれしかないっていうものにしないとダメだと思って」
--これだけ書き切って何を感じましたか。スッキリした?
「スッキリしましたね。めっちゃスッキリした。気持ちいいし、自分で読み返しても『あぁ、うん、こういうこと思ってんだよな、俺』って思えるし。まぁ2曲目の「Stay Beautiful」とかは、ウチのギターに子供ができたことがきっかけで書けた曲なんですけど。こういうパーソナルな言葉は今じゃないと絶対書けなかったと思う。もちろんこれがパンクの歌詞か、ハードコアの歌詞かって言われたら違うけど、そういうのも、もういいかなって」
--今はすごく肯定的に、自信を持って発信できているのがよくわかります。これで間違ってなかったっていう自覚もあるだろうし。
「はい」
--最初の質問と重複しますけど、なぜ歌ってるんですかって訊かれたら、今、どんなふうに答えますか。
「……なんか、人との距離を縮めるのがすごく苦手だったんですよ、ほんとに。物理的な距離じゃなくて、知り合いであっても、こう心と心を通わせる作業がすごく苦手で。それがこのバンドやりだして、特にこの4~5年ですごく変わってきて。その、心の距離をちょっとずつ詰めることのほうが楽しいというか、その先に見えるものが出てきたのかな。ライヴで演奏して、自分の書いた言葉を発することで……もちろん全部がわかってもらえるとは思わないけど、この部分は伝わったとか、今俺が思ってることを理解してもらえた、って感じることは確かにあって。そこにステージに立つ意義を見つけたし」
--はい。
「最初からわかりあうのは無理だし、わからせるのって難しいじゃないですか。でも今、わかんないけどわかろうと努力してくれてる人とは、いくらでも付き合うよ、っていう感覚ですね。昔は『わかる奴だけわかりゃいいんだよ、あとは死ね!もう帰れ!』みたいな感じだったけど(笑)、今、わかろうとしてくれる人には、わかるまでちゃんと伝えたい。もちろんね、端からわかろうとしない人、後ろ向いて閉じちゃってる人は今までどおり無視でいい。そこに労力割いてる暇はないし。でも、少しでもわかろうとしてくれる人にはどこまでも努力したい。30分なり1時間のライヴでそれをやって、本当に心の距離が縮まっていって、なんか、みんなの心が動く瞬間みたいなのが見えて……。そういうのが見たくて俺は歌ってるんだと思いますね。だからといって物販に立ってる時にお客さんとそういうこと話すかって言ったら、絶対そんな話したくないんだけど(笑)」
--表面的な言葉じゃなくてね。心と心が握手できる瞬間っていうのは、何ものにも代えがたい。
「そう。それができるのがライヴだから。言葉でお互いの気持ちを擦り合わせていくのって、まぁ普通に頑張ればできることですよね。でもそれをステージで、曲とライヴを通して一気にバッとできちゃう。その瞬間は本当に歌ってて良かったなと思うし。まぁこんな音で騒いで歌ってるだけですけど、でも、それで人の心にちょっと寄り添ったりできる、これが要るんだって気持ちが伝わったりすると、その、暗い気持ちで音楽聴いてた頃の自分のコンプレックスが、ちょっとずつ剥がれていく感じがしますね。だから今、楽しい。人前に立ってヴォーカルやってるのが、この1~2年はすごく楽しめてます」
INTERVIEW BY 石橋恵梨子