--今回のシングルからの横山健は、今までと違うタームに入ったなと思います。何かに対してアゲインストする時期ではない。もうやるべきことが完全に見えているし、ただ自分の生き方を伝えることだけが勝負だっていう。そういう意味では最終章だとも感じたんですよ。
「………どうだろう? まだ自分ではわかんない。たまたま今そういう時期で、この先また変わったり、ワケのわかんない闘いをするかもしれないけど。でもね、自分が残せるものを全力で伝えるっていうのは確かだと思う。誰もが年を取って古くなっていく、引退して死んでいくのはみんな平等なわけだから。だったら若い世代に対して……若い世代っていうよりは、自分に子供がいるっていうことが大きいのかな? この子たちが大人になった時にどういう世の中を残せるか、どういった音楽を残せるか、どういった表現を残せるか。それを考えるのはやっぱり45歳ならではだと思う。3曲目の「Never Walk Alone」なんて、まさにそういう曲で」
--これは、いつか大人になる君へ、っていう手紙のような曲ですね。
「うん。夜中に換気扇の下でタバコ吸っててふと思ったの。俺が今死んだとして……今長男が10歳で次男坊が6歳なんだけど、もし俺が死んだらどう思うかなって。それを書いてみた。その思考には今20代でウケてるバンドが誰だとか、そういうことはまったく関係なくて」
--ただ、親として残せるものを精一杯考えるだけ。
「そう。親として、45歳の男として、君らの人生に僕から言えることはこうだよっていう。で、すごくこだわったのは“Bedroom window”っていう言葉。ただのルームウィンドウじゃなくて、ベッドルーム。部屋から出るんじゃなくて、寝室、自分のちっちゃい部屋から飛び出すんだよっていう」
--あぁ、その違いは大きい。
「これは自分が見た風景で、だからここにもノスタルジーは入ってる。自分が子供の頃に理解できたとは思わないけど、もしかしたら俺が子供の時、大人に言って欲しかったことなのかもしれないし」
--やっぱり表現のスケールは変わりましたよね。今回のサウンドの明るさ、しいて比較すればセカンドやサードに近いんだけど、中身の深さが違う。やっぱりこれは『Best Wishes』以降の音だなって思いますね。
「うん、それは俺も思う。繋がりはすごくあるかな」
--最後に「Smile」のカバーについても訊いておきましょうか。
「うん、このカバー、歌詞の世界観は「Never Walk Alone」とちょっと似てて。すごく優しい曲、辛い時こそ笑わなきゃダメだよっていう優しいポジティヴさに溢れた曲だから。それをパンク・カバーしたら面白いじゃんっていう、そういうきっかけなんだけど。あとはド頭にあのギターを弾きたかったっていうのもある」
--あぁ、なるほど(笑)。
「箱モノのね。あれはグレッチで弾いてるんだけど、とにかく箱モノのギターでやりたかった(笑)。それもデカいね、今回の曲全部。レコーディグは15曲をまとめて録ったんだけど、先にシングル用に作るとかじゃなくて、2年半の間に作った新曲たちを一気に録って振り分けたのね。だからどの曲もマインドは一緒だと思う」
--じゃあ、この4曲がまさにアルパムの伏線。期待してますね。
「はい。楽しみにしててください!」
INTERVIEW BY 石井恵梨子