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札幌 KLUB COUNTER ACTION
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全公演共通ADV3,000yen
―― 今回、凄くいい新作が完成しましたね。これぞDRADNATSのメロディックパンクというモノが集約されてますし、メッセージとしても理不尽な現実を受け止めた上での決意が多く綴られていて。パンクバンドとしても今、歌うべきことが詰まってると思いますよ。
YAMAKEN(Ba/Cho) そう言ってもらえるのは嬉しいっすね。
―― だから、手応えとしても格別なモノがあるんじゃないか、と。
KIKUO(Vo/G) これまで何枚か作品を作ってきて、今回はたしかに力付くで作ったところがないというか。こういう風にしなきゃ、みたいな固定概念がなかったんです。背伸びせず、今のDRADNATSが詰め込めたのかな、って。
SASAMORI(Dr) 毎回、最大限を詰め込むというイメージでやってきたんですけど、今回はそれに加えて、もうひと皮剥けたいな、という気持ちもありました。ドラマーとしてはフレーズやパターン、いろんなことに挑戦しつつ、歌への絡みも強く意識したりして。
YAMAKEN 今回は作ってはみたもののボツにした曲とかも掘り返して、アレンジし直したりもしてて。ようやく過去のモノとも向き合えるようになったな、と思ったり。今まで、ボツになったらそのまま無しにしてたんですよね。
―― しかも、そのボツにした曲の量が結構多いですよね。
YAMAKEN めっちゃ多くて。ボツにしたら、それは一旦忘れてまた新しく作ってたんですけど、改めて聴いてみると「めっちゃ良くない?」みたいなのも結構あったんです。そのときは良くないと感じたのか、その良さを活かしきれてなかったのか、それはわからないんですけど。あと、昔との違いで言えば、ドラマーも替わってて。SASAMORIが入って8年ぐらいも経つし。
―― もう、そんなに経ったんですね。
SASAMORI そうなんですよ。
YAMAKEN この3人としてのDRADNATSが板についたというか、今だったらさらに良くできるんじゃないか、みたいなのもあったり。オレら、来年で結成20周年なんですけど、やってきたモノの集大成に勝手になったみたいな気がしますね。そこを狙ってたわけじゃないけど。
―― これまでの流れだけじゃ説明できない出来栄えだなとも感じてるんですけど、大きなキッカケや出来事があったわけじゃない?
YAMAKEN 出来事か……そういうのは特になかったですね。ただ、ないんだけど……自分たちのやりたいこと、やらなきゃいけないこと、求められてること、そういったのをナチュラルに昇華できるようにはなってると思ってて。振り返ってみれば、DRADTANS節はその都度あったと思うんですけど、それがようやくひとつにまとまったみたいな。
―― 流れを振り返ると、今年7月に発表した配信シングル『Tell Me Now』が4年ぶりの新作にもなって。その間もずっと精力的に活動はしていましたけど、あんまり制作モードに入ってなかったんですか?
YAMAKEN いや、制作自体はやってました。ただ、フルアルバムとなると核になる曲がないと、っていうのがあって。それが意外とできなかった、というのが(新作の発表が)伸びた理由のひとつではあるかもしれないです。実際、そういった存在がなくても(新作を)出せるは出せると思うんですけど、そうはしたくないというか。リリースするタイミングとか、特にオレらは関係ないだろうし、いいモノができたという確信がないと新作は出せない、っていうのは絶対的にあるんですよ。
―― 前作『Hang On The Faith』がコロナ禍に突入した2020年6月に発表したこともあり、リリースツアーが開催できなかったじゃないですか。バンドって、ツアーで作品を再確認したりもするから、その消化不良感みたいなのがあったのかな、と。
YAMAKEN あぁ、それもあったかも。ただ、なかなか良い曲を書けなかったから、今回。これでいいのかな、をひたすら繰り返してましたね。
―― バンドとしてはモヤモヤしたことも感じたり?
SASAMORI 僕はまったくそんなことは感じてなかったんですけど……
YAMAKEN でも、スタジオで「曲ができないな」って言ってたじゃん(笑)。
SASAMORI そうは言ってましたけど、そこまでは感じてなかったというか。ネタ自体はスタジオに持ってきてくれてましたし、そこに僕も「ここはこうしたらどうですかね?」みたいな案を出したりしてて。
YAMAKEN たしかにそれは結構あったな、今回。
―― それは今までよりも曲のネタに余白が多かったから?
YAMAKEN というより、SASAMORIの成長じゃないですかね。
SASAMORI 成長なのかな……僕も加入して8年が経って、前よりも案が出しやすくなったというか。後から加入したから、というのは無くなって、どんどん意見を伝えていこうとは思ってるんですよね。
YAMAKEN お前は彼女か!(笑)
一同 ハハハハ(笑)。
―― まあ、そういう気の遣い方っぽいですよね(笑)。
SASAMORI いや、自分で言うのも変なんですけど、結構引っ込み思案なところもあって、仲良くなるまで時間がかかるタイプなんですよね(笑)。
YAMAKEN かかりすぎだろ(笑)。
―― ハハハハ(笑)。そのあたりは徐々にできるようになった、みたいな?
SASAMORI 思い返せば、コロナ禍の存在が大きかったのかも。バンドとしてどうやっていこう、次への一歩をどう踏み出そう、みたいな考えをバンド内でキャッチボールする機会が多かったし、それがいいキッカケになったのかもしれません。
―― コロナ禍も開けて、周りのバンドはどんどん新作を発表していったじゃないですか。そこで焦るようなことはなかったですか?
KIKUO どこかでこう、僕はそうだったし、メンバーもそうだったと思うんですけど、何かを発信しなきゃ、という気持ちは絶対にあって。とにかく早くフルアルバムを作らなきゃ、みたいな感覚だけだったら、露骨に焦ってたかもしれないです。でも、今はいろんな選択肢があるじゃないですか。今回、僕らは初めて配信シングルを発表したんですけど、それは世の中的にはもう当たり前のことになってて。それこそ、若いバンドとかアルバムっていう単位で考えてないし、配信シングルとMVをメインにしてたり。
―― 多いですよね、近年。
KIKUO そういう状況もわかってたし、(横山)健さんから「配信もひとつの手じゃない?」ってアドバイスをもらったりもして、焦りというよりワクワクもしてましたね。
―― ただ、バンドの動きを見せる為の配信シングルを単発で出すんじゃなくて、フルアルバムへ繋がるというのが良かったり?
YAMAKEN そこは大前提でしたね。やっぱり、フルアルバムは出したいし。
―― 実際、制作を進めていく中で全体像が見えてきたのはいつぐらいだったんですか?
YAMAKEN レコーディングしたのが今年4月だったんで、去年の年末ぐらいはほぼほぼ出来上がってたと思います。歌詞は結構ギリギリでしたけど。
―― これがあればイケるんじゃないか、みたいな手応えがあった曲というと?
KIKUO 僕は「Yes Or No」っすね。試行錯誤して、メロディーを変えたり、いろんなことを試したんですけど、まとまってきたときに「ひとつ締まるモノができたな」って感じたのを憶えてます。
SASAMORI ライヴでも結構やってるんですけど、まずは「Brand New Day」。あと、「I Need Your Smile,Here By My Side」は今までのDRADNATSの良さだけじゃなく、新しいビート感、メロディー、展開が詰まった曲だなと思ってて。その2曲はいい手応えがありましたね。
YAMAKEN そうだな……でも、やっぱり「Stay」かな。個人的なところで言うと、何回もボツになってた「Hiding Place」をようやく収録できるというのも大きくて。
―― 「Hiding Place」は過去の今回のバージョンを比べると、アレンジや雰囲気は違う?
YAMAKEN そこまでは変えてないんですけど、ちょっとシンプルにはしたかもしれないです、コーラスワークとか。
―― この曲、映画のワンシーンみたいな感じがして好きなんですよね。「Yes Or No」もそうですけど、シリアスなムード以上に熱っぽさもあって。
YAMAKEN あっ、嬉しいな。
―― 「Stay」は新作の看板的存在ではありますよね。熱量も凄まじいし。
YAMAKEN これはもう、ザ・オレらじゃないですか。新作の中でもキッカケになる存在だと思います。いわゆるメロディックパンクのいいところが詰まってます、みたいな。こういう曲があれば、ちゃんとフルアルバムを支えてくれるだろうな、って思いましたね。あと、前作の核になる曲「I’ll Find The Answer」がちょっと暗い系だったんで、明るい核みたいなのが欲しいなとは思ってたんですよ。
KIKUO それは言ってたね。だから、歌い出しに使うコードのセレクトだったりもこだわったし。YAMAKENも言ってましたけど、ザ・DRADNATS、まさにメロディックパンクな曲なんで、そういう曲だからこその難しさもあったし。
YAMAKEN あったね〜!
KIKUO 何々っぽいね、って言われる可能性もデカい。そうならない為に他のバンドと違う節だったり、異なるテイストを入れないと作品の核になる曲にならないだろうし。そういう難しい部分をちゃんとクリアして仕上がった曲だと思ってます。
―― 時系列的には少し遡る話にはなるんですけど、最初の配信シングルのタイトル曲として「Tell Me Now」を選んだのはどうしてだったんですか?
YAMAKEN まず、いい曲だったし、あえて2ビートじゃなくてミディアムテンポの曲でいくのも面白いかなと思ったんですよ。
―― いい曲ですよね。切なさも感じるけど、温かい美メロにコーラスワーク、DRADNATSの真骨頂もしっかり詰まってるし。間奏的なところに歌が入ってきたり、隙間なく高揚させてくれるけど、メロディーに抑揚があるから平坦な曲にもなってなくて。
YAMAKEN 嬉しいな。いい曲っすよね。
―― 配信では、カップリングとしてF.I.Bのカバー「Stroy」を収録しましたね。
YAMAKEN PIZZAのスタッフからリクエストもあったんですけど、配信シングルは2曲ずつだけど、そのうち1曲はフルアルバムに収録しないとなったとき、カバーもいいね、という話になって。で、前からF.I.Bをカバーするっていうアイデアはあったんですよね。ただ、向こうはギターが2本だし、結構難しいから、やってはいなくて。今回はそこを改めてやってみよう、と。
―― 近しいバンドのカバーって珍しいかな、と。
YAMAKEN たしかにみんなやらないっすよね。
―― 海外だとよくありますけどね。YouTubeにもそういったライヴ動画がたくさんアップされてたりもしますし。
YAMAKEN そうそう、普通にあるじゃないですか。まあ、オレらの場合はいちばん近場にそういうことをやってる人たちがいましたからね。Ken BandがNo Use For A Nameをやったり。だから、抵抗みたいなのはなかったです。
―― ギター1本で表現する難しさについては?
KIKUO もう、できないことがあるというのは最初からわかりきってたんで、限界を探るのは早かったかもしないです。あと、そこも込みで曲はセレクトしてて。「Story」だったら、ギター1本でもライヴでやれるかな、みたいな。とは言え、「Story」で良かったなと思ってます。お客さんとシンガロングして、共有できる曲でもあるし。
―― 9月に発表した配信シングルのタイトル曲は「I Need Your Smile,Here By My Side」でした。「Get Me Back」のアンサーソングという立ち位置も面白いなと思ったんですけど、元々そういったアイデアからスタートしたんですか?
YAMAKEN たしか、この曲を作ったときはすでに「Get Me Back」が世に出てて。ちょっと雰囲気が似てるから止めよう、って1回なったんです。でも、めちゃめちゃいい曲だから、これはフルアルバムに入れたいよなとなったとき、似てるんだったらアンサーソングにすればストーリー性もあるし、と。そういうことでKIKUOに歌詞を書いてもらいました。
―― 「Get Me Back」はDRADNATSにはめずらしいフィクションのラブソングでしたよね。
KIKUO そうですね。「Get Me Back」は男性目線で好きな女性に思ってること、行動することがテーマだったんで、その逆の女性目線でそういう人に愛されてる側が思ってること、肩肘張らなくても伝わってるよ、というのが書ければいいかな、と思ったんですよね。
―― 歌詞を読み比べると、男性側の想いがちょっとすれ違ってる切なさみたいなのもあったりして。
KIKUO そうっすね(笑)。ずっと上手くいってるわけじゃない、っていうのもあって。人間と人間なんで、そういう距離感が生まれてしまうこともある、っていう生々しさもいいのかな、と。当たり障りのないことを書いても嘘くさいだけですから。
―― SASAMORIさんは制作の中でピンときた曲として挙げてましたよね。
SASAMORI 凄くいい曲だな、って。しかも、ただのメロディックパンクに収まってないんですよ。サビの落として聴かせる感じとか。
interview by ヤコウリュウジ
Vol.02へ続く...
―― 新作にはいろんなタイプの曲が収録されてますけど、先ほども挙がった「Brand New Day」はドキドキするイントロだったり、小気味よく畳み掛ける歌だったり、もう1曲目しか似合わないんじゃないか、という仕上がりですよね。そういったイメージもありましたか?
YAMAKEN たしかにこれは1曲目だな、と思って作ってはいましたね。この曲に関しては結構シンプルに作りたくて。でも、ただ単純にシンプルな形にするとベタな感じにもなっちゃうから、そこを上手くあんまり日本人が使わないようなビート感でまとめてみた、という。リズムが裏取りなんで、邦楽好きには斬新に聴こえるだろうし、洋楽好きには刺さるんじゃないかな、みたいなイメージもありました。
―― 歌詞としても、日本語訳で言うと《さあ、新しい 1 日の始まりだ》から始まり、《前昨日までの嫌な事は忘れて、前向きな気持ちに入れ替えよう》や《新しい 1 日を始めよう》といった言葉が並びます。幕開けにふさわしいというか、今のバンドのムードが出てるのかな、と。
YAMAKEN 出てると思います。
KIKUO あと、すでにライヴでやってる曲ではあるので、いつもライヴに来てくれてる人には「あっ、あの曲だ!」ってなるだろうし、オープニング的な歌詞が似合うのかな、とも考えましたね。
―― 歌詞にあるような「前を向いて歩き出さなきゃいけない」や「今を生きなきゃいけない」みたいな現状打破をすべきだ、という感覚はバンドとして持ってます?
YAMAKEN そうですね。ただ、全部がポジティブな意味でもない気がしてます、今のオレらにとっては。半ば、意地みたいなところもあるし。そんなに人様を感動させられるような、キラキラした部分だけではないというか。(バンドの状況が)右肩上がりなのか、と言われれば、そんなこともないし。だからこそ、ネガティブな部分も含んだ上で前向きなことを言ってるような。それでも行くしかないでしょ、って。
―― 自分たち自身に活を入れるような。
YAMAKEN 活もあるし、諦めもあったり。
―― えっ、諦めもあるんですか?
YAMAKEN いや、もうやるしかなくない、みたいな(笑)。バンドをやめたいとか、そういうんじゃなくて、どうせやるしかないんだから、っていう。
KIKUO それはそうだね(笑)。
―― たしかに諦めると言えば聞こえは悪いけど、要は決断のひとつでもあるし。
YAMAKEN まあ、腹を括ってるみたいな感じですかね、カッコよく言えば。
―― あえて、カッコ悪く言うと?
YAMAKEN 四の五の言ってもこれしかやることないし、みたいな(笑)。
―― ハハハハ(笑)。そういうムードって、他の曲の歌詞にも出てますよね。だから、やっぱりDRADNATSの歌詞は生々しいなと今回も感じましたよ。
YAMAKEN 生々しいっすね、ウチのKIKUOさんは。
KIKUO ハハハハ(笑)。
―― KIKUOさん的に「胸の内をさらけ出して書かなきゃ」みたいな気持ちはあるんですか?
KIKUO あぁ、どうなんだろうな……自然に書けるときもあるし、曲によるかもしれないです。僕は日本語で書いたモノを英訳してもらってて、今回はKen BandのMinamiさんにお願いをしたんですけど、いろいろとアドバイスを貰ったりもして。聴いてくれるのは日本人が多いわけだから、もっとシンプルに書いた方がいいんじゃないの、とか。そうやって背中を押してもらって素直に書けた歌詞もあれば、訳がわからなくなって苦しんだ歌詞もあったり(笑)。
―― いちばん苦しんだ歌詞を挙げると?
KIKUO ちょうど訳がわからなくなったときに書いたのが「Stay」だったんですよ。
YAMAKEN へぇ〜!
―― まだまだ燃え続ける、諦めないといった言葉が並ぶ曲ですけど、迷ったからこそ心の底にあるメッセージが出てきたのかもしれないですね。
KIKUO 最初に浮かんだのが歌詞にもある《Stay burnnig》って響きだったんですけど、そういう表現は実際にあるけどダサい、ってMinamiさんに言われて(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
KIKUO じゃあ、違う表現がいいかなと考え、3回か4回は書き直したと思います。でも、やっぱり《Stay burnnig》という言葉がしっくりきてて。改めてMinamiさんに相談したら「ダサいとは言っちゃったけど、しっかり存在する表現だしね」ってことで落ち着いたんですよね。
―― また、気になった曲が「Living On The Edge」なんです。イントロが1分ぐらいあって、インストに歌を加えた曲なのかなとも感じたです。
YAMAKEN インストっていうことは考えてなくて、オレが目立ちたかった、っていう(笑)。
KIKUO ハハハハ(笑)。
YAMAKEN いちばん最初の入りはそこでしたね。ただ、そのままじゃマズいからカッコいいギターリフがあって、メロディーも始まる、っていう。メロディックパンクバンドは、みんなこういうベースの和音始まりにチャレンジしがちなんですよ。で、ハイスタとNOFXの存在の大きさに打ちひしがれる(笑)。
―― 前作『Hang On The Faith』にもありましたけど、こういうシリアスなトーンも似合いますよね。
YAMAKEN そう言ってもらってありがたいんですけど、ようやく似合うようになった感じもあって。間違いなく、昔だったら無理だろうし。振り返れば、シリアスなところはチャレンジしてきたんですけど、たぶんHawaiian6にしかなってなくて。
―― もっと和な感じみたいな?
YAMAKEN なんて言えばいいかな、シリアスな美メロって歌謡曲寄りになりがちなんですよ。そこに対して自分たちなりの打ち出し方がようやくできるようになってきた、みたいな。ここ5、6年ぐらいじゃないかな、できるようになったの。個人的な感覚ではあるんですけど。
―― KIKUOさんも同じようながあったり?
KIKUO そうっすね。話が最初に戻っちゃうんですけど、シリアスさも背伸びせずにやれるようになった、という感じだと思うんです。
YAMAKEN それだね。
KIKUO メロディーだったり、歌い方だったり、全部をひっくるめて、昔だったらあえて寄せてたり、背伸びしてるところがあっただろうし。時を経て、気張らずにそういうこともできるようになった、っていう。
YAMAKEN 昔だったら、泣きメロを作ろうとか、そういう思考だったと思うし。
―― 今の状態なら違和感なく、自然体でこういう曲にも臨める、という。
SASAMORI そうですね。僕は何の違和感もなくできました。
―― 今回、SASAMORIさんのドラムでいちばん好きなのが「Yes Or No」だったんですよ。躍動っぷりが気持ちよすぎて。
SASAMORI 嬉しいです。今回もクリックは使わずにレコーディングをしてて。その良さも出たのかな、って思います。あと、その曲は僕の好きなビート感も結構詰まってるというか、ナチュラルにできた曲のひとつでもあって。伸び伸びしてるところも出せたのかな。って。
―― あと、「Go On」はバランス感が凄くいいですよね。歌とコーラスの掛け合いもあり、結構な勢いでガーッと攻めていくんですけど、サビでは伸びやかなメロディーが広がっていく。しかも、そこで盛り上げすぎないから流れも自然で、コントラストをはっきりさせたパーツを組み合わせました、みたいな曲にもなってないし。あんまりこういったパターンの曲ってやってなかったような気もしました。
YAMAKEN たしかにやってないですね。もし、やってたとしても、完成度が低かったんじゃないかな。こういう曲はドラマーがSASAMORIになったからできた、というのは間違いないっすね。そうじゃないとあのビート感が作れなかった気がしてます。前半パートがあんなにカッコよくならないと思う、たぶん。
―― そこはSASAMORIさんの得意技という。
SASAMORI あのBPMはそうですね。
YAMAKEN 昔にはなかった武器のひとつですね、そこは。
―― 最後を締め括る曲として位置するのが「Wish The Sun」。曲調として新しいニュアンスも感じましたが、遺言というか、遺した子供への手紙みたいな曲ですよね。
YAMAKEN もうそろそろ死にますね、オレらも(笑)。
―― まだまだしぶとく進んでもらいたいんですけど(笑)、新作全体として高ぶった気持ちを歌ってる中、最後にこうくるのか、とは感じて。
YAMAKEN そこ、KIKUOさん的にどうなの?
KIKUO たしかに今までっぽくはないですよね。かと言って、カッコつけてるわけでもなくて。曲順はみんなで話し合うから、すんなりとこれがいいとなったわけでもないんですけど、今回はそれぞれ曲毎のキャラクターがはっきりしてるじゃないですか。そういった中で自然とこの曲で締め括る流れになったのかな、と思ってます。曲の雰囲気としては違和感もないし。
―― 日本語訳ですと《この手紙を読む頃には、君はもう立派な大人になってるね》という言葉から始まっていますけど、こういった遺言めいた内容が出てきた理由は何だったんですか?
KIKUO 歌詞としてはテーマになってるアニメがあるんですよ、『ヴァイオレット・エヴァーガーデン』っていう。その中に先に逝ってしまうお母さんが未来の娘へ宛てた手紙の件があって。
YAMAKEN あれ、泣けるよね。
KIKUO 僕の中でナンバーワンな話なんですけど、たしかに遺言っぽいですよね。
―― あぁ、そういうことだったんですね。
KIKUO だから、サブタイトル的には「Letter」みたいなところもあり。切なさはあると思うんですけど、どこか前向きな部分もあって。悪い状態がずっと続くわけじゃないよ、っていう。
―― 制作を通して、いちばん化けた曲だったり、難航した曲を挙げるとすると?
SASAMORI 化けたっていうところで、みんなそう感じたのは「Tell Me Now」じゃないですかね、やっぱり。
YAMAKEN たしかにそうかも。
SASAMORI いろいろと試行錯誤して、プリプロしてみて、またアレンジしてみて、いい感じだな、ってなったし。
YAMAKEN ただ、難航と言えるほどの曲はそんなになかったんじゃないかな。細かいところを言えば、歌いまわしやコーラスの部分とか、いつも以上に要求したところがあったんです。だから、そういったことに関してはそれぞれ難しく思っただろうけど、曲として「これ、上手くいかないね?」っていうのはなかったんじゃないかな。歌録りで何がいちばん苦戦したっけ?
KIKUO えっと……どれだろうな。
―― そう考え込むぐらい、スムーズにいったような?
KIKUO いや、やっぱり良し悪しはあって。「Hiding Place」は特別なことをやってるわけじゃないんですけど、メロディーにDRADNATS節を出す為に力強く歌うっていうことが必要だなと感じて。そういったところを出すのは毎回のように苦戦はしてますね。でも……そうだな、最初にも少し話題に挙がった「Yes Or No」は制作中にどんどん進化していって、録り終わってから聴いたとき、さらに進んだ感じがありました。
YAMAKEN だから、いちばん苦労した曲をあえて挙げるとすれば「Yes Or No」なのかな。オレら、プリプロを何回もやるんですけど、イントロがいいからそれ以外の部分を何回も作り直したりしたから。
interview by ヤコウリュウジ
Vol.03へ続く...
―― 全体を通した印象として、妙に狙いすました感がないですよね。
YAMAKEN それはホントにそうかもしれない。
―― フルアルバムとなると、野球のピッチャーで例えればストレートだけじゃなくて、チェンジアップやスライダーとか、あえて外してみた、みたいなこともやったりするじゃないですか。
YAMAKEN はいはい、よくありますね。
―― DRADNATSも振り返れば、遊び心のある曲を収録したり、いろんなことをやってきたと思うんですけど、今回は基本的にどれもが渾身のストレート。で、それぞれスピードも回転もコースも違うから、単調になってない。いろんなモノを味わえるけど、みんな真正面から挑んでる感じが伝わってきて凄く好きな作品なんです。
YAMAKEN それは嬉しいっすね。
―― いい反響がありそうな予感もしますけど。
YAMAKEN どうっすかね〜。
―― 自分らのやるべきことをやっていくだけど、そういう期待はもうしないようなところもあったり?
YAMAKEN いやいや、ありますけど……う〜ん、期待感か。メロディックパンクが好きな人は絶対に刺さる自信はある。ただ、仮にメロディックパンクはまったくわからないけど聴いてみよう、という人にとってどう聴こえるのかな、って。やっぱり、そこらへんはわかんないんで、今の若い子の感覚とか。オレらはずっと音楽が好きで、パンクロックが好きでやってきて、そういう人らには絶対に良いと言われるし。もちろん、もっとこういうのが聴きたい、みたいなことはあるんでしょうけど。でも、そうじゃない人たちって、これを聴いて何を思うんだろうな、とか。
―― でも、そこを狙ったり、媚びるようなことはやりたくないですよね。
YAMAKEN というか、やり方がわかんないんですよ(笑)。だって、急にオレらがWANIMAみたいな曲を作っても何もならないだろうし、きっと。極論ですけどね、それは。
―― DRADNATSにおいてメインのソングライティングはYAMAKENさんが手掛けてますけど、最近のトレンドを追ったり、若い子たちがどんな音楽を聴いてるのかチェックしたりしてます?
YAMAKEN 昔はしてたかもしれないです。でも、最近はあんまりしてないかな。普通に暮らしてて耳に入ってきた曲は「メロディーはどうなってるのかな?」みたく分析はしますけど……今はそれすらもあんまり頑張らなくなってきて。日本の音楽って独自の文化があると思うけど、そういうのが減ってきたなと感じたりもしてるから。
―― あぁ、なるほど。
YAMAKEN 傾向として欧米っぽくなってる、というか。
―― 例えば、KIKUOさんは新宿ANTIKNOCKというライヴハウスの店長なわけで、若いバンドのライヴを観る機会も多いですよね。そういうところから刺激を受けたり、感じることがあったりします?
KIKUO どんどん「ジャンルって何?」みたいなところはあるな、と感じてはいて。ウチがちょっと変わってるライヴハウスだからかもしれないんですけど、ギターロックのバンドでもミクスチャーっぽい要素が若干入ってたり。もちろん、Mrs. GREEN APPLEみたいなことを頑張ってやろうとしてるロックバンドもいますけど、30分のライヴで日本語詞の曲も英語詞の曲もあるようなジャンルレス感が当たり前なんですよね。
―― 今に始まったことじゃないですけど、YouTubeやサブスクもあるし、固定概念にとらわれずにいろんなモノを取り入れるバンドは増えましたよね。DRADNATSの中だとSASAMORIさんがいちばん歳下になりますが、そこで若者の感覚を持ち込もうとしたりは?
SASAMORI えっ、僕がですか?
YAMAKEN いちばん知らないんじゃない?(笑)
一同 ハハハハ(笑)。
SASAMORI そういうところもあるので(笑)、いろいろとApple Musicで聴いたりもしてて。やっぱり、僕は歌心の部分が足りてないから、歌を主軸にしてて人気があるバンドをチェックしてます。最近だとリーガルリリーとか、参考にしてるまではいかないんですけど、めちゃめちゃ聴いてますね。
―― そういったところで、YAMAKENさんが最近いちばん聴いてるのは?
YAMAKEN aespaですかね、K-POPの。バンド系は全然聴いてないかも。ただ、結構ベテランのアーティストも今、いろいろとサブスク解禁してるじゃないですか。この間、チャゲアスを改めて聴いたんですけど、クッソ曲が良くて。そういうのは聴いてますね、昔の曲はすげえな、って。
―― それこそ、日本の1970年代のシティポップが世界的に再評価されて、ニューヨークのクラブが「フライディ・チャイナタウン」でめっちゃ盛り上がったりしてますよね。
YAMAKEN みたいっすね。シンプルに曲だけ聴いても凄いし、音的な観点でも無駄な音がないんですよ。あれはちょっと凄すぎるし、超勉強になりますね。
―― KIKUOさんはどのへんを聴いてますか?
KIKUO 結構、ポップスを聴いてますね。王道なところで言えば来日ライヴにも行った1975、最近だとThe Regrettesとか。あと、YAMAKENが言った通り、最近はレジェンドなアーティストがどんどんサブスクに上がってるんで、それはめちゃめちゃ聴いちゃいますね。
―― そういう意味では、もちろん自分たちのやりたいことはバチッとあるけど、柔軟にいい刺激は受け取ってるんですね。
YAMAKEN そうですね。意外とメロディックパンクは聴かないっすよ、オレ。いちばん聴くのはずっと変わらずクラシックですし。
―― そして、12月からはツアーも始まります。前作『Hang On The Faith』はコロナ禍での発表だったころもあり、6年以上ぶりのリリースツアーという。
YAMAKEN もちろん、気合いは入りますよね。ただ、これはちょっと悩みなんですけど、フルアルバムを出してのツアーだから、要は新曲を多くやるわけで……歌詞が覚えられないんですよね(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
YAMAKEN いや、マジで悩んでて。みんな、どうしてるんだろう、って。
―― 歌詞以外の部分、演奏面はどうなんですか?
YAMAKEN そこは大丈夫なんですよね、なぜか。でも、ホントに6年ぶりなんで、初めてライヴでやる曲、観てもらう曲が多いわけじゃないですか。そのリアクションは毎回楽しみだし、実際にライヴでやってみて、「この曲はこうなるんだ!?」みたいなこともあるし。
SASAMORI いいフルアルバムができましたし、ツアーは高まりますね。前作以降、遠征のライヴはしてましたけど、1週間出っぱなしとか、そういうスケジュールはなくて。ツアーらしいツアーは久しぶりだから、体調の整え方とか忘れてるところもあるんでしょうけど(笑)、そういったこともツアーならではの醍醐味として楽しみたいです。ちょっと最初の話に戻っちゃうんですけど、新作まで4年も空いたのって、前作のリリースツアーができなかったから、というのが大きかったのかな、って。今、ツアーのことを考えたら改めてそう感じたんです。ツアーをしてない分、前作の曲をちゃんと消化する為、より自分たちのモノのする為、新曲が多めのライヴをやってたりもしたから。今回、そこをリリースツアーとしてしっかりやれるのが嬉しいです。
KIKUO 何年バンドをやってても、新曲を初めてやる瞬間は特別なモノだったりして。やっぱ、緊張感もあるし、リリースツアーでしか味わえないモノがあるんです。
―― ちなみに最近のライヴの調子はいかがですか?
YAMAKEN いい感じっすよ。ただ、ちょっと波はあるんですけど(笑)。
SASAMORI そうっすね(笑)。
YAMAKEN でも、あんまりそういうのを気にしてないかもしれないです、最近は。クオリティ云々っていうより、お客さんに伝えること、観てもらうこと、その場の雰囲気で変わったりもするじゃないですか。毎回、会場がパンパンでガチャガチャ盛り上がるタイプのバンドでもないし、お客さんが少ないときも全然あって。そういうときに昔はただただガムシャラにやってたと思うんですけど、今はその雰囲気を踏まえて考えられるようにもなってるんです。「お客さんが盛り上がんなかったから、今日のライヴはダメだ」みたいな次元じゃないというか。
―― そういう意味では曲作りもライヴへのスタンスもどんどんナチュラルになってるんですね。
YAMAKEN それはあるかもしれないっす。頑張ってないわけじゃないですけど……何か、気取ってもカッコよくならないね、って。そのままの方がカッコよくなりそうな感じがしてるし。それが観てる人に上手く伝わっていけば、ゆっくりと人気も出てくるんじゃないか、と思うんですけどね。
―― 冒頭にも話に挙がりましたけど、来年は結成20周年という節目になります。これまでアニバーサリー的なことはやってこなかったですけど、20周年ともなれば期待が高まります。
YAMAKEN いや……やろうかな、ぐらいの話はしてて。
―― 遂に!
YAMAKEN まあ……でもな、って感じもあって(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
YAMAKEN いろいろね、イメージはしてるんですけど、「こういうのをやろうかな」ぐらいの。
―― 来年3月2日の新代田FEVERがツアーファイナルになりますが、いい形でツアーを回れれば、自然な流れでそのままアニバーサリーイヤーへ繋がるような?
YAMAKEN そうなるでしょうね、この感じだと。最近、20周年を迎えるバンドも多いじゃないですか、周りに。そういうヤツらからも「バンドを続けてこれたことへの感謝としてやってもいいんじゃない?」ってめっちゃ言われてます。
―― 自分たちで「祝ってくれ!」みたいなことが照れくさいかもしれませんが、待ってるファンも多いですよ。
YAMAKEN まあ、そこでバンドをやめてもいいんだったら楽なんですけど(笑)。
―― なんてことを言うんですか(笑)。
YAMAKEN 21年目もあるからな、と思うと……でも、いいか。やるか。
―― YAMAKENさんはこんな感じですけど、KIKUOさんとしては?
KIKUO 照れっていうわけでもないんですけど、何周年アニバーサリーみたいなのはあんまりピンとこないタイプっすね、僕も。「だから、何?」って思っちゃうところもあるし(笑)。新宿ANTIKNOCKも来年40周年で、それを大々的にやっていこうとなってるんですけど、そうしない方がカッコいいのにな、と感じることもあったり。
YAMAKEN じゃあ、やりません!(笑)。
KIKUO ハハハハ(笑)。でも、言われて思ったのは、ずっと繋がりはあるけど最近なかなか対バンできてないバンドもたくさんいるから、そういう人たちをこぞって呼んで「ここまで20年、やってこれました」という日を作るのは必要なのかなって考えてます。
―― SASAMORIさんは後から加入したわけですけど、20年という重みは感じますよね。
SASAMORI そうですね。バンドに限らず、何かを20年も続けるのってたいへんなことだと思いますよ。20年もやってれば古くからずっと観てくれてる人もいるでしょうし、そういったお礼も意味も込めてアニーバーサリー的なことをやってもいいというか、やった方がいいんじゃないかと思ってますね。
interview by ヤコウリュウジ