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-- コロナウイルスの感染拡大を防止する為、緊急事態宣言も出て、家にいる時間も多いと思いますが、最近はどう過ごしてますか?
YAMAKEN 筋トレして、めっちゃ酒を飲んでます(笑)。
KIKUO 僕は(店長を務める)新宿ANTIKNOCKの業務をやってますね。今だとチャリティーTシャツの発送とか、家でやれる細かいことにはなるんですけど。あと、最近になってエアロバイクを買ったので、毎日のように漕いでますよ。
-- どうしても運動不足になりがちですからね。
KIKUO そうっすね。なので、最低限の運動はしつつ、夜はだいたい酒を飲んでます(笑)。
SASAMORI 僕も家でやれる東高円寺二万電圧の業務をやってはいるんですけど、ほぼほぼ暇を持て余してますね。(ドラム用)練習パッドを持ってないんで、ずっと膝を叩いてるか、筋トレして、酒を飲んで寝るみたいな(笑)。
-- せっかくの機会なので、ライヴハウスの現状について話を聞かせてください。営業の自粛がずっと続いてる状態なんですよね。
KIKUO ANTIKNOCKは3月の時点で7、8本ぐらい延期になって、4月1日から5月31日まで営業自粛と決めて発表しました。だから、4月と5月の2ヶ月は何もない状態ですね。
SASAMORI 二万電圧も営業は自粛していて、僕自体も出勤は1ヶ月以上してないんですよ。ずっと守っていきたい箱って思ってるんですけど、正解があるわけでもないし、試行錯誤してる状況ですね。
-- 自粛期間が始まってから、老舗のライヴハウスが閉店するというニュースもありましたし、厳しい状況かと想像します。KIKUOさんは店長ですし、考えることも多いですよね。
KIKUO どこもキツいと思うんですけど、まず固定費ですよね。家賃がどうしても必要だし、最低限そこを捻出しないといけない。ただ、現状ではそれも無理っていう。ウチは場所も新宿なんで、ここで「いくらです」とはさすがに言えないんですけど(笑)、そこそこいい金額だったりもして。
-- ターミナル駅から徒歩圏内ですからね。
KIKUO だから、その家賃も少し待ってもらえるようにお願いしたり、助成金や無担保融資の手続きを進めてます。その為に、去年から今年にかけての売上データベースを全部作り直したり、専用の書類を作ったり。みんなそうなんでしょうけど、バタバタしてますね。
-- ただ、手続きもたいへんだと聞きました。申請前に面談が必要だけど、面談自体が何ヶ月先になるようなこともあるようですね。
KIKUO そういった面談等は僕じゃなくてオーナーが行ってるんですけど、ドラクエみたいだと言ってましたよ(笑)。まずはこの窓口で、次はあそこの窓口へ行って、またその次は、みたいなことの繰り返しらしく。ウチは早く着手した方だとは思うんですけど、それでも1週間以上は待たされる状況だったようです。
-- 今、クラウドファンディングであったり、公的なモノ以外の支援の輪も広がっていますよね。
KIKUO それぞれの考え方だと思うんですけど、ウチとしてはクラウドファンディングのようなモノをやるつもりはなくて。ライヴハウスは怖い場所でカッコいいことをやってると思ってるし、なんかこう、そこまで助けは求めたくないし、大丈夫だと突っ張っていたいんですよ。今だとチャリティーTシャツをいろんな方が買ってくれて助かってますし、とりあえず年内は持ちこたえられるんじゃないかなという風には思ってます。
-- 今回の事態は見通しがはっきりしないのが辛いところだと思います。
KIKUO ホントにどうなるかわからないし、何とも言えない部分もありますけど、バンドだってたいへんじゃないですか。それこそ、仕事がなくなった人もいるだろうし、(コロナウイルスが)終息したとしても一定期間はイベントを打つリスクを背負えないバンドも増えると思う。だから、ライヴハウスっていう居場所だけは何とか残したいという気持ちがあるし、やれることは全部やってみようっていう。
-- 富山SoulPowerが一時撤退を発表した際のメッセージからも感じましたけど、ライヴハウスからは意地を感じます。
KIKUO そうだと思います。ANTIKNOCKはDRADNATSもホームとしてやってきたし、はるか先輩のバンドの気持ちも含めて、そのイメージを崩したくない。大事な居場所だから、負けたくないという想いが強いです。
-- 今、何か支援ができるとすれば、チャリティーTシャツを購入することぐらいですか?
KIKUO そうですね。デザインがお気に召したのであれば、それだけで十分です。で、またライヴができるようになったとき、余裕がある人はいつも以上にお酒を飲んだり、バンドの物販を買ってもらえたら嬉しいなと。そんな中で「寄付をしたい」みたいな連絡をもらったりもするけど、それはできないと思ってて。みんな、無理できない状況じゃないですか。気持ちはホントに嬉しいですけどね。今は「ライヴハウスは強い場所だ」と証明する時期なのかなって考えてます。
-- また、エンターテイメント業界はYouTube等を使ってオンラインでの収益化を模索してますけど、バンドマンはそれよりも支援に目を向けてるような感じもしてます。
YAMAKEN もちろん、すごくいいことだと思うんですよ、ライヴハウスの為に何かをやったりとか。ただ、これは震災のときと感覚的にはまったく同じところがあって。1年や2年で元の状況に戻らないと考えたとき、生活ありきでバンドが存在するわけだから、身を削って何かをやる必要はないと思ってるんです。だから、10年とか20年っていう長期的なスパンで考えて、支援みたいなモノをし続けられるのかがいちばんの問題だし。震災のときだって、みんな一斉に音楽イベントを始めて、一斉にやめたじゃないですか。
-- そこはいちばんの課題ですよね。
YAMAKEN それが嫌だなと思って、オレ的にはまだじっとしてるんですよ。自分たちのペースで継続できる何かを見つけなきゃいけないから。
-- 継続と言えば、DRADNATSはANCHORと共に「地元の人たちに楽しんでもらいたい」というテーマを掲げ、宮城県石巻でLANDMARK FESTIVALを2011年からずっと続けてますよね。
YAMAKEN まさにLANDMARK FESTIVALはそういうことなんです。ただ、今年は10回目の予定だったんですけど、コロナの影響で難しいかもしれません。
-- そういった状況の中、新作『Hang On The Faith』を予定通りにリリースする運びになりました。バンドとしては身動きがとれないこともあるし、リリースを延期するような考えはなかったんですか?
KIKUO 新作をリリースしてツアーへ行く、っていうずっとやってきた流れができないかもしれないと思ったとき、延期も頭にはよぎったんですよ。ライヴハウスの業務で、振替公演の対応に追われてたり、今だったら6月前半にイベントを予定してるバンドから「やっていいのか、やっちゃいけないのか、はっきりして欲しい」という連絡がきてて。ウチとしては、緊急事態宣言が解除されても、世の中的な許可が下りないと難しいなと考えてるんです。やっぱり、お客さんにもバンドにも無理をさせるわけにはいかないから。日々、そういった動向を気にしてると、麻痺ってたというか、リリースとかも後ろへスライドしていくのが当たり前なのかなっていう価値観になっていたところもあって。
-- 実際、そういった動きはありますからね。
KIKUO ただ、YAMAKENを中心にみんなで話し合ったとき、「こういうときだからこそ、予定通りに出したいよね」となって。その後の動きは変わってしまうだろうけど、まずは新曲を聴いてもらいたいし、ポジティブに進めていくことが大事なんじゃないかと。
YAMAKEN オレらもコロナウイルスが感染拡大し始めて、少なからずライヴを飛ばしたし。仕方がないことかもしれないけど、これ以上、お客さんをガッカリさせたくなかったんです。緊急事態宣言が出て、CDショップも営業を自粛するようになって、たしかにそのタイミングで出すことがバンドやレーベルにとってプラスかと言えば、そうじゃないんだろうけど……新作の発売日はもう発表してたし、それを延期したらガッカリさせることなるじゃないですか。だから、そこは無理してでも出したいっていう気持ちでしたね。
-- そのあたりの判断について、周りのバンドマンと連絡をとったり?
YAMAKEN いや、オレはあえてしなかったです。もちろん、ツアーに関してとか、みんなどうしてるのか話を聞いた方がいいのかなと思ったりもしたけど、別に正解も不正解もないわけで。そこはメンバーで話し合って、レーベルと相談して決めるべきなのかなと思いましたね。
-- 様々な状況を実感しつつも、バンドはバンドなりの決断をするべきでしょうし。
KIKUO そうですね。やっぱり、バンドとしてベストな選択は何だろうと考えれば、絶対に延期せず出すことですから。SNSなんか見てても、リリースを含めて、延期ばっかりじゃないですか。どうしようもないこともあるけど、そういうニュースを発信しなくていいのなら、しないにこしたことはないから。
-- ライヴができなくなって2ヶ月ほど。考える時間も増えたと思いますが、何か改めて気づくようなことはありましたか?
YAMAKEN 何だろう……結婚はしとくべきだったかなと思いました。
一同 ハハハハ(笑)。
YAMAKEN 普段、外に出てるじゃないですか。仕事へ行ったり、ライヴで人前に立ったりもして、そういう中でひとりの時間はいいなと思ってたんですけど、強烈な孤独感があって。マジで猫を飼おうかと考えてますよ(笑)。
-- ニューヨークじゃペットブームにもなったらしいですからね(笑)。
YAMAKEN あと、意外と曲ができないっていう。前だったら、仕事をして、家に帰ってきて、そこから限られた時間でやってたじゃないですか。でも、その時間が増えたからといってたくさん作れるわけじゃないんだなって。
-- それは刺激がないから?
YAMAKEN たぶん、そうっすね。生活の中で思ったこと、感じたことが曲になってるんだろうなと改めて思いましたよ。
-- そうなると、ここ2ヶ月ぐらいの間、DRADNATSとしての時が止まってるような。
YAMAKEN ただ、空いてるということもあって、週に1回だけスタジオには入ってるんです。だから、止まってるという感覚はなくて。新曲の練習が中心ではありますけど。
SASAMORI 当たり前の日常が幸せだったんだなと痛感しますね。ライヴ、リリース、ツアーって、いつもだったらポジティブなイメージだけで取り組めるのに、妙なことを考え始めてしまったり、萎縮したり。めちゃめちゃ寂しいなと思います。
YAMAKEN それと、サーバーの生ビールの凄さを改めて感じましたよ!
一同 ハハハハ(笑)。
YAMAKEN やっぱ、あれは美味い! 炭火の焼き鳥とかも、あれは凄い! 家じゃ無理っすもん。
-- KIKUOさんもおもいっきり頷いてますね(笑)。
KIKUO ANTIKNOCKのビール樽だって、そろそろ賞味期限が危ないぐらいの勢いですから。みんな、それぐらい飲んでないっすよね、あの神々しい生ビールは。
YAMAKEN バンドのことで言えば、スタジオで感じる爆音がマジで気持ちよくて。それも家じゃ鳴らせないし。ライヴしたいなって思いますね、ホント。
Vol.02へ続く...
Interview By ヤコウリュウジ
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-- 少しばかり、前作『ONE HiT TO THE BODY』からの流れを振り返らせてください。新体制として1枚目のリリースとなり、「ようやく始まる」といったことをインタビューでも話されてましたよね。新宿ANTIKNOCKで行ったツアーファイナルもパンパンになり、いいムードだと見えたんですが、あの時期はどう感じていましたか?
YAMAKEN (バンドが)良くなっていくというより、やっと形になったみたいな感覚でしたね。
KIKUO たしかに、SASAMORIが加入して、DRADNATSというバンドはこの3人でやっていくんだというところに着地できた感じはありました。ただ、いつもそうなんですけど、あのツアーでも挑戦したこと、するべきことがあって。そのすべてを乗り越えたわけじゃないという事実もあり、達成感もあったとは思うけど「こうやっていかなきゃいけないな」と見えた部分もあったり。早く次のスタートを切りたいとも考えてました。
-- SASAMORIさんとしては初めてのリリースツアーでしたし、感じることも多かったかと思います。
SASAMORI めちゃくちゃありましたね。自分たちで運転して、いろんな土地へ行って、持ち時間も長めなライヴをやらせてもらって。まだまだやるべきことがあるなとも気づきながら、「これがバンドなんだ!」と凄く充実してましたよ。で、ツアーファイナルはワンマンだったんですけど、ワンマン自体もオレは初めてだったんです。ライヴの運び方やモチベーションの保ち方、難しくて悔しさもあったけど、めちゃくちゃ楽しくて。またすぐにツアーをやりたいと思いましたね。
-- ツアーを終えた時期って、Hi-STANDARDの再始動からAIR JAMまでの流れが落ち着いたタイミングでもあったじゃないですか。メロディックパンクを鳴らしてるバンドとして、刺激を受けたり、活を入れられることもあったのかなと。
YAMAKEN やっぱり、ありましたよ。自分たちのツアーを終えて、次の新作へ取り掛かるときに「個人的にもバンド的にも、ひとつ上のモノにならないといい作品は作れない」という話をメンバーでしましたし。ハイスタが復活したことによって、メロディックの士気がグッと上がったじゃないですか。周りのバンドもさらに気合いを入れ始めたし。そういった姿を見て、自分たちに足りない部分について話し合うことも多かったですね。
-- どういった部分に注目しましたか?
YAMAKEN オレだったらさらにいい曲、カッコいい曲を書かなきゃいけないし、KIKUOだったら歌の部分、SASAMORIだったらドラムのスキルとか。そういった個々の能力をすべて上げていって。そして、バンドとしてまとまったときにはそれらがひとつになり、めちゃくちゃクオリティが高くてスリリングなライヴをやるっていう。
-- それそれがスキルアップしていかないと、自分たちが胸を張れるカッコいいバンドにはなれないという。
YAMAKEN そういう感じかな。もちろん、そのときの現状がダサいと感じてたっていうわけではないんですけど。オレらにしかできないことを残していくにあたり、そういう技術的な部分はもうちょっと上げていかないとなって。
-- 新作へ向けて動き出したとき、感触としてはいかがでした?
YAMAKEN やっぱり、今までの曲作りとはちょっと違う部分があって。前作の場合、前ドラマーがいた時期の新曲もあったから、全部が全部、SASAMORIがドラムを考えたっていうわけじゃないんです。でも、今回はイチからSASAMORIが関わったんで、オレも新鮮で楽しかったし、「こういう感じになるんだ!?」っていう驚きもあったりして。
-- SASAMORIさんは力強いタイプのドラマーですよね。そういったところでイマジネーションが変わったところもあったり?
YAMAKEN 結構ありましたね。
KIKUO 僕からすると、(YAMAKENの)引き出しが増えたなっていう印象があって。パワーとビートで押し切れる曲も増えたし、前作にもあったんですけど、ロックな曲も違和感なく作り上げていける感じだった。そういうところは、確実にSASAMORIが入ってからの部分なのかなって。
-- SASAMORIさんご自身はどう感じてました?
SASAMORI 自分自身の慣れもあるのかもしれないですけど、前作のときとはだいぶ違いましたね。あのときは、もともとあった新曲をオレなりにアレンジするときも悩んだし、難しかったんです。それが今回だと凄くナチュラルにできて。フレーズもビート感もハマりやすくなったというか。
-- イメージする先が、曲作りを担うYAMAKENさんとSASAMORIさんでリンクしてたような。
SASAMORI そうかもしれないです。とは言っても、YAMAKENさんはKIKUOさんの歌だったり、僕のドラムを活かす曲作りをしてくれるから、馴染みやすいし、自分の引き出しを開けやすかったところも大きいとは思ってて。ドラマーとして余計なストレスがなかったし、楽しく制作に取り組めました。
-- ちなみに、DRADNATSは今年で結成15周年になりますよね。以前、YAMAKENさんは「アニバーサリーイヤーは成功したバンドの特権だ」と話されてましたけど、そういった節目は意識しましたか?
YAMAKEN 全然してないです(笑)。まあ、15周年か……いや、まったくですね。
-- 今回、DRADNATSとしてはリリースのペースが早かったじゃないですか。だから、そういう意識をしたのかなと。
YAMAKEN ペースが早かったのはアニバーサリーとかじゃなく、SASAMORIが入ってツアーもまわって、次をどうするか考えたとき、「これまでよりも短いスパンでリリースしよう!」というテンション感になったんですよ。それをレーベルにも相談したら「いい曲ができたらすぐ出そう」と言ってくれて。そこから曲をガンガン作り始めた結果だから、まったく関係ないですね、アニバーサリーは。
-- そこまで言い切られると、ちょっと寂しいですけどね(笑)。
YAMAKEN ハハハハ(笑)。でも、周りからそう言われないと気づかないぐらいっすよ。
KIKUO オレも何も意識してませんね。
SASAMORI アニバーサリーイヤーか……DRADNATS自体はずっと知ってましたけど、オレはまだ入って4年とかだし、どうなんですかね?(笑)
YAMAKEN そもそも、バンドって続けてたらエラいんですかね?(笑)
-- まあ、続けることだけが目的になったらまた違うんでしょうけど(笑)、続けてきたという結果は素晴らしいじゃないですか。当然、浮き沈みがある中、15年もやってきたわけで。いやらしい考え方をすれば、みんなが注目してくれるタイミングにはなるから、それを使って自分たちを押し出すようなこともできると思うんです。
YAMAKEN もちろん、それはそれでいいと思うんですけど……オレらはな〜。
KIKUO ここまできたら「逆にアニバーサリーイベントとかやらないんだ!?」って思われたいっすよね(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
-- また、新作のタイトルは日本語訳すれば「信念にしがみつく、手放さない」といった意味合いになってて、DRADNATSらしい言葉だなと思うんですけど、相変わらずアーティスト写真はふざけてますよね(笑)。振り返れば、ブルーマンのように真っ青に顔を塗りたくったり、ボクシングのタイトルマッチの調印式をモチーフにしたりしてますけど。
YAMAKEN ナマハゲとかもやりましたね(笑)。
KIKUO もう、戻れないんじゃないですか(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
YAMAKEN でも、ホントにそれ! だって、曲作りよりも揉めますからね、アーティスト写真は。
-- 今さら、シュッとした写真を撮るのは照れたりも?
YAMAKEN そういうのも撮ったことはあるっちゃあるんですけど、オレらは絵にならないんですよね、まったく。埋もれるっていうか、みんな同じようなのを撮ってるじゃないですか。
SASAMORI たしかに!
YAMAKEN ウチの場合、「次はどうするんだろう?」って思われるし、それには応えたいなと(笑)。
-- そういうところでシャレをきかせるのもDRADNATSらしいと思うところも?
YAMAKEN そうっすね。それはそうかもしれないです。
-- 新曲に関して、制作自体の進行はいかがでしたか?
YAMAKEN ウチは曲作りが早いっていうか、あんまりやめないタイプ。できない時期もありますけど、オレが超量産型だし。ただ、ペースとしては今までよりも遅いっちゃ遅いかもしれないですね。というのも、さっき話をした個々のスキルアップをしてく為、バンド全体で入るスタジオの数を減らしたんです。その分、各々が自分自身の為に時間も使うようにしたから。
-- そうなると、バンドとしていい緊張感が生まれますよね。サボってたら追いつけなくなる可能性すらあるし。
YAMAKEN そうっすね。オレはそこまでプレッシャーはなかったけど、メンバー的にどうなんだろう?
KIKUO 僕はスタジオの回数を減らしてる分、ちゃんと結果を出さなきゃなっていう気持ちが強かったです。歌をスキルアップさせる為、ボイトレに通ったり、個人練をしてたんですけど、何かしらの変化は生み出さないといけない。今もその気持ちは継続してますね。
SASAMORI オレも個人練を増やしたんですけど、ただ増やすんじゃなくて、いろんなことを試しながらやってました。例えば、今までもやってたっちゃやってたけど、そこまでしっかり取り組んでなかったクリックを使う練習を増やしたり。あとは、ツアーやフェスで知り合った先輩ドラマーから「こういうこともやった方がいいよ」みたいなアドバイスをもらって、それを実践していったりしてましたね。
-- そういった前へ踏み込んだ気持ちがそうさせたのか、新作は凄くエネルギッシュな仕上がりですよね。ハイクオリティな感じで攻めてくるのかなと想像もしてたんですけど、ザラッとして温度が伝わる内容になってて。サウンドとしてもヴォーカルとしても整えすぎない質感だから、ライヴ感も伝わってきます。
YAMAKEN そこ、超こだわったんですよ! 事前にエンジニアさんと話をして、クリックは使わない、(データの)貼り付けもなし、ヴォーカルの(修正)エディットもなるべくなしでやりましょうと。だから、そういう音になったのかなって。
-- だから、DRADNATSらしさ満載だし、聴いててアガる1枚だなと。ライヴで観てるDRADNATS、ファンの脳裏に焼き付いてるDRADNATSがそのまま収録されてると思います。バンドもよりまとまって、自分たちそのままをさらけ出す自信が出てきたのかなとも感じました。
YAMAKEN そう感じてもらえると嬉しいっすね。やった甲斐があるし。
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-- キャリアを重ねてきて、こういったリアルなところへ踏み込んだのはバンドが生きてる感じがします。
KIKUO 今回はひたすら生々しさをパッケージしたみたいな感じになった気がしてますね。今までよりも(レコーディングで)パワーを使った記憶もありますし。
YAMAKEN いや〜、凄かった。
KIKUO メンバー全員、凄かったんじゃないですかね。クリックを使ってないので、せーので録った上に重ねていくんですけど、やっぱりこう、僕も生々しいビート感を聴きながら歌っていくわけじゃないですか。だから、歌自体も自ずから生々しくなっていくし、今までにはなかった引き出しを開けるキッカケにもなった。(新作を)作りながら、いろんなモノが生まれていった気もするぐらいでしたね。
-- メンバーの中だと、SASAMORIさんはいちばんキャリアが浅いじゃないですか。そういったレコーディングはプレッシャーもあったんじゃないですか?
SASAMORI そうですね。ただ、正直な話をすると、個人的にはやりやすい部分もあったんです。前作のレコーディングの際、まずぶつかったのがクリックの壁。その経験もあったから、新作へ向けてはクリックの練習を増やしたんですけど、それでも体に馴染んでるのは生のビートではあるし。プレッシャーはありつつも、ライヴをしてるような気持ちが半分ぐらいはあった気がして、前向きにやれました。
-- 萎縮することなく、伸び伸びとやれたんですね。
SASAMORI あと、勝手な興味かもしれないですけど、クリックを使わずにレコーディングをしたらどうなるのかなっていうのも気になってたんです。ずっと好きな昔のメロディックパンク、ハイスタとかもそうですけど、ホントに生々しい音をしてるじゃないですか。そこに現代っぽさが加わったらどうなるんだろうって。そういうチャレンジできる機会にもなった結果、自分が思う理想の音に近づけたようにも感じてますね。
-- 実際、こういった生々しいアプローチって、DRADNATSに合ってると思うんです。それこそ、歌詞もそうじゃないですか。全部が全部そうではないけど、基本的にはフラストレーションを抱えた今があって、その先に光を見てるというリアルな視点ですし。
KIKUO 歌詞も引き続きそうなってますしね。やっぱ、ホントに嘘偽りなく書きたいという気持ちがあるから。新作で言えば、悲観的な歌詞もちょっとあるんですけど、綺麗事だけで生きていけるわけはないし、そこが根本的なスタンスになってますから。
-- そういったメッセージがいちばん色濃く出ているのは「I'll Find The Answer」かなと思いました。
KIKUO そうっすね。YAMAKENを中心に曲ができて、軽くスタジオで録ったときにパッと(歌詞の)イメージが浮かぶ曲が多いんですけど、この曲は特にピンときましたね。シンプルに「何が正解なのか?」っていう部分に対して、「頑張ってれば、きっと見つかるよ」なんてちゃんちゃらおかしいっていう(笑)。前向きに考えてみたからといって、簡単に見つかるもんじゃないし。そういう現実的なところを書いてみました。
-- サウンドとしても、メロディックパンクの真骨頂かなと。
YAMAKEN やってやった感はありますね。これよりいい曲が書けるなら書いてみろ、って思ってますもん(笑)。
-- ハハハハ(笑)。DRADNATSの長所が詰め込まれてますよね。KIKUOさんの張り裂けそうな歌からガツンと始まって、リズムも力強く突き進むし、ちょっと憂いを帯びたコーラスもあって、わかりやすくバンドの良さが伝わる1曲だと思います。
YAMAKEN うん、これは完全にそうなりましたね。制作してる中でもいい手応えがありました。
-- 他に手応えが良かった曲を挙げるとするならば?
YAMAKEN 全体的に良かったんですけど、オレの中だとこの「I'll Find The Answer」が突出してる感覚があって。だから、ちょっと違う観点かもしないですけど、いろんな曲を作ってきたDRADNATSの歴史において新しいチャレンジになった「Memories」は印象深いかな。あんなにたくさんコーラスが合間に入ってくる曲はあんまり聴いたことがないし、それをDRADNATSとして落とし込めたのは楽しかったし、嬉しかったんです。長く続けてきて、新しい発見にもなりました。
-- 新作の最後を締めくくる曲ですけど、スケール感があって、またここから始まりを告げるような曲ですよね。ラストは言葉じゃなくて「AHH〜♪」でひらすら押してくじゃないですか。凄く耳に残るフレーズでしたが、あれは当初からのアイデア?
YAMAKEN でしたね。この曲はあの部分がありきで作り始めたんです。しかも、オレとKIKUOがまったく違うメロディーを歌うっていう、合唱コンクールみたいな感じにしたかったから(笑)。
-- KIKUOさんの中で印象深い曲というと?
KIKUO 全体的に手応えは良かったけど、ウチっぽくない雰囲気を感じながら作っていったら、しっかりDRADNATSっぽくなるんだなと思ったのが「Feel Again, Feel Inside」でしたね。
-- 緊張感のあるイントロもそうですし、シリアスなムードをまとってて。
KIKUO 張り詰めた感じや展開も含めて、ハッとした曲だったなと。
-- この曲の歌詞は普通に読み取ればラブソングなんでしょうけど、違った関係性としても解釈できますよね。
KIKUO そうですね。この先には求めてる道がないと感じつつも、最後には新しいスタートを切る意思表示につながっていて。そういう意味では、いろんなモノに照らし合わせることができるのかなと。
-- 個人的にはバンドとファンの関係性として考えても面白いなと思いました。
KIKUO やっぱり、単色じゃなく、様々な色でとらえられる歌詞が書きたいと思ってますね。
-- では、SASAMORIさんはどうですか?
SASAMORI 全部がそうなんですけど……KIKUOさんと一緒で「Feel Again, Feel Inside」かな。あんまりやったことがないノリだったし、イケイケでもなく、家だからと言ってしんみりと聴かせるわけでもない、絶妙なテンション感がある曲じゃないですか。だから、作っているときも楽しかったんです。それに、ライヴを想定した練習してても、この曲は実際にステージに立ってみないとわからない部分があると感じてて。
YAMAKEN わかる! 弾いてて、いちばんカッコつけられる曲かもしれないし。
KIKUO 全パートに見どころもありますしね。
-- 他にも気になる曲がたくさんあるので伺っていきますが、まず「Just Go Your Way」。冒頭を飾るにふさわしい、テンションを一気にアゲてくれる曲ですよね。
YAMAKEN 「行け、行け、行けー!」みたいな(笑)。
-- もうちょっと余裕を持たせてもいいんじゃないかと思うぐらいの濃厚さもあって。
KIKUO これがすでにライヴで披露してる曲ですね。だから、もはや新曲っぽい感じもないんですけど、まあイケイケな曲ですよね(笑)。
-- 今回、カバー曲も収録されてます。映画『トイ・ストーリー』からピックアップしたのは意外でした。
YAMAKEN そうっすね。カバー曲はみんなで選ぶんですけど、ちょうど『トイ・ストーリー』が公開されてた時期っていうのもあり(笑)。
-- あっ、そんなシンプルな答えが(笑)。
YAMAKEN でも、これにしてめっちゃ良かったと思ってて。DRADNATS史上、いちばんキーが低い曲になったんです。これって、オレがずっと避けてきたことだったんですよ。KIKUOのいい声って、高音でガッと張ったときの声だし、低い声だとのぺっとするのかなって。それが、ここ2年のスキルアップの成果があったのか、低い声もまた良くて。DRADNATSの新しい可能性が広がった曲になったから。
-- そうなると、KIKUOさん的にはチャレンジな気持ちが?
KIKUO ありましたね。最初、この曲にしようと決まって原曲を改めて聴いたとき、「これ、どうしよう……」って思いましたから(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
KIKUO どうやって歌えばいいのか、全然わかんなかったんですよ。
YAMAKEN 原曲だと、あんまりメロディーを歌ってないもんね。
KIKUO そうそう、ニュアンスで歌ってる感じが強いから、そういうのやったことねえなって。でも、チャレンジしながらやっていったら、いい形になりました。
-- それに、ここまでロックンロールなアレンジをする曲って、今までなかったですよね。
YAMAKEN そうなんですよ。それもずっとやりたかったことだったんで、いい感じになりましたね。
-- DRADNATSはこういうアプローチも似合うなと思いましたよ。
YAMAKEN ホントっすか!? オレらも歳をとったからかな(笑)。
-- ハイトーンに振り切らない歌の魅力だと、「Trust In Me」もそうなのかなと。
KIKUO そうっすね。たしかに、ガーッとハイトーンで雰囲気を作るっていうだけでもないですし。
-- これはYAMAKENさんの声との調和を考えた結果?
YAMAKEN いや、そういうわけでもなくて。この曲はイントロから作ったんですけど、オレの中ではRADWIMPSの「前前前世」のイメージがあって。まあ、全然伝わらないと思うけど(笑)。
-- はい、まったくわからないです(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
-- 前作でもありましたよね、そういう曲。My Chemical Romanceの「Welcome To The Black Parade」をイメージしたと言われても、まったく意味がわからなかった記憶があります。
YAMAKEN 「Get Me Back」が「Welcome To The Black Parade」のイメージっていう(笑)。ちなみに「Memories」はZARDの「心を開いて」なんですよ。
-- クイズ王レベルの難問ですよ、それ(笑)。
YAMAKEN もし、わかった人がいたら、ぜひ連絡が欲しいですね(笑)。
-- 話を戻すと、「前前前世」のイメージがあったから、歌は張るところは張るけど、っていうアプローチになったんですね。
YAMAKEN そうですね。
KIKUO この曲、仮歌を入れたとき、「今のままの自分じゃ歌えないな」って思ったことを憶えてます。雰囲気が出せなかったんですよ。YAMAKENと「本番のレコーディングではちょっと歌い方を変えないとな」と話したし、今までとちょっと違う課題があった曲でした。
Vol.04へ続く...
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-- 「Try Again」から「Start Over」にかけての中盤は、一気に畳み掛ける流れとなってますよね。
YAMAKEN そうっすね。このへんはグイグイにいってます。ただ、これまでと違うところがひとつだけあって、「Try Again」はオレが作ったんじゃないんですよ。
-- これまで、DRADNATSのコンポーザーと言えばYAMAKENさんでしたよね。
YAMAKEN それが、この曲だけはKIKUOが作ってて。今回、それが非常に売りのひとつではありますね。ついに重い腰を上げたっす、ウチの天才が(笑)。
-- それはどういった経緯があったんですか?
YAMAKEN 最初はフワッとそういう話をしたぐらいだったんですけど。
KIKUO 特に締め切りを設けたわけでもなく、「何か(アイデアが)浮かんだら作ってみれば?」ぐらいのノリでしたね。だから、自分の中でも何かあればやってみようかなぐらいだったんですけど、それが実際に形になったっていう。
-- どういった形でバンドへ持ち込んだんですか?
KIKUO メロディーとコードをまとめて、6割ぐらいの完成度というか。それを2人の前で弾き語って、バンドでアレンジをしていきました。僕がガチガチに全部を作り込んだっていうわけではないですね。
-- 曲としては疾走感と抑揚が上手く噛み合ってるなと思いました。手応えとしてはどうだったんですか?
KIKUO この曲って、自分の歌い心地がいい流れで作っていった結果、みんなからいいと言われてるところよりも少し低く歌ってるんです。そういう意味ではどうなのかなって感じることもあったんですけど、レコーディングをしてみたら「こうなるのか!?」っていう驚きがあり。こういった経験があんまりなかったんで、いまだに不思議な感覚がありますね。
-- バンドとしては「ついにきた!」みたいな?
YAMAKEN ですね! そりゃ、(曲を)作れる人が1人よりも2人の方がいいじゃないですか。
-- ということは、今後SASAMORIさんが作るようなことも?
YAMAKEN ちなみに、作ってみればっていうのは、KIKUOだけじゃなくて、SASAMORIにも言ったんですよ。で、実際に作ってきて、KIKUOのギターを使って弾き語ってくれたんですけど、1ミリもメロディーがわからなくてそのまま却下されました(笑)。
-- 別にSASAMORIさんはファストコアの曲を作ってきたわけじゃないんですよね?
YAMAKEN 普通のメロディックパンクみたいな感じではあったんですけど、歌が下手すぎて、何をやってるのかわからない(笑)。
SASAMORI いや、人前でギターを弾くにも慣れてないし、人生でいちばん緊張したかもしれないです(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
YAMAKEN なんでメンバーの前で緊張してるんだよ!(笑)
-- もしかしたら、再現性に問題があっただけで、曲自体は良かった可能性もあったり?
YAMAKEN それはあると思います。もう、どんな曲だったのか憶えてないですけど(笑)。
-- 新作へ向けて、メンバーそれぞれがスキルアップするっていう話があったじゃないですか。それがクリエイティブなところでも前へ進めたっていう。
YAMAKEN そうですね。やっぱり、やってる本人たちが飽きたら終わりだし。もちろん、ライヴは楽しいから、それに飽きるっていうことはないですけど、バンドにはそれ以外の部分もあるわけで。モチベーションを保ちながら、お互いに高め合っていかないといいモノは生まれないでしょうしね。
-- 「No Looking Back」、「Crazy Now」、「Start Over」の3曲は聴けばケツを蹴り上げられるような怒りの3連投というか。サウンドとしてもメッセージとしても強烈だなと感じました。
YAMAKEN まあ、売れてないバンド、キレがちですからね(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
-- こういった感情をぶちまける曲もDRADNATSには欠かせない要素な気もします。
YAMAKEN 狙ってそこを出してるわけでもないんですけど、出ちゃうんでしょうね。
-- ドラマーとしては怒涛の勢いで突き進む曲は楽しさがあるのかなと。SASAMORIさんのスタイルにも合ってるでしょうし。
SASAMORI やっぱり、楽しいですね。
YAMAKEN それに、SASAMORIがいるからこそ、こういう曲を入れられるっていうのがありますしね。うん、それは間違いなく。
-- そして、問題作なのがシリーズ曲でもある「#SUMMER DAYS 3」だなと思ってまして。
YAMAKEN 今回は歌入りです。ついに歌いました。
-- これまで「#Summer Days」(『MY MIND IS MADE UP』収録)、「#Summer Days 2」(『ONE HiT TO THE BODY』収録)とインストで発表してきて、ついに歌が入ったと驚きつつも、中身がまったくない歌詞ですよね(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
-- いや、このインタビューでも話してもらいましたけど、DRADNATSって日々の生活で感じるリアルな部分を綴っているじゃないですか。それが「3曲目だから歌ってみた」みたいなことをそのまま書いてて。
YAMAKEN それ、オレが(KIKUOに)言ったんですよ。普段、歌いたいように書いていいって言ってて、歌詞には口を出さないですんですけど、この曲は「3曲目だから歌っちゃいました」みたいなのにしてくれって。
KIKUO 「サマーデイズ」っていう言葉を言い出してる当人ですし、そこに対する愛はYAMAKENが断然持ってるから、「どういう歌詞が合うのかな?」って話したんですよね。そうしたら、そういうラフな感じでみんながシンガロングできるようにしようとなって。
-- インストでやるのは飽きたみたいなところも?
YAMAKEN いや、たしか「今回は歌を入れましょう」ってレーベルから要請があって(笑)、「じゃあ、そうしましょう」ってなった……いや、「ライヴでやれるようにしましょう」か。
KIKUO あ〜、そうだ。
YAMAKEN そうだった気がするな。
-- たしかに、ゆったりとしたレゲエ調の曲ですし、ライヴの中で大きな緩急をつける存在になりますよね。それと、踏み込むときは踏み込むけど、抜くときはおもいっきり抜くっていう振り切り方もDRADNATSらしいなって。
YAMAKEN そうっすね。それは年々、強くなってきてるかも。聴いてて飽きないようにしたいし、やってても飽きないようにしたい。だから、ふざけるときはふざけるし、踏み込むときは踏み込むっていうのは考えてますね。
-- ラストに向けてさらに駆け出すような「Full Of Hope」は切ないメロディーと歌声がたまらないんですけど、歌詞はこれまでにないぐらい女々しいなと。
YAMAKEN いや〜、今回のね、これも売りのひとつですよ!
KIKUO ハハハハ(笑)。
YAMAKEN ホントに最高! こんなに生々しい歌詞を書く人、他に知らないっすもん。絶対にプライベートで何かあったでしょって思うから(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
KIKUO 出ちゃいましたね、心の悲鳴が(笑)。
-- よりもよって悲鳴ですか(笑)。まあ、日本語訳すれば冒頭に「終わりなのはわかってる」と書きつつも、その後はずっとプロポーズみたいな言葉が続いてますしね。
KIKUO 完全に傷んじゃってますよね。
-- でも、ここまで胸の内をさらけ出すのは凄いと思いますよ。なかなかできることじゃないし。
YAMAKEN それはオレもそう思う。
KIKUO ひとつは英語詞だから書ける、というのはあると思うんですけど、この曲ができたときにそういうイメージが湧いたのも事実だったりして。ただ、ホントにちょっと悲しいっていうか、女々しい部分に振り切っちゃったのはありますね。
-- SASAMORIさんから見て、KIKUOさんはこういう部分があるタイプだと思います?
SASAMORI いや、というよりも男らしいイメージですよ。
-- じゃあ、メンバーすらも気がつかない、心の内面がこぼれ落ちたようあ。
YAMAKEN そうなんでしょうね。歌詞って、そういうのが知れるいい機会だったりもするし。「あっ、KIKUOは女でくらうんだ!?」みたいな(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
KIKUO 実際、(メンバーから)言われましたもんね、「何かあったでしょ?」って(笑)。まあ、それはホントに御名答なんですけど、歌詞自体は悩まずにバーっと書けました。
-- マイナスな感情というか、そういったことを曲にして区切りをつけたり、昇華できるのはミュージシャンの特権みたいなところもありますし。
KIKUO そうっすね。そこで発散と表現したら言い方がおかしいかもしれないですけど、新しい引き出しにもなったかなとは感じてて。振り返っても、ここまでどんよりとした歌詞は初めてな気がするし。
YAMAKEN 絶対にできないと思うんですけど、ぜひアンサーソングが欲しいっすよね(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
-- それ、相手がミュージシャンに限定されると思うんですけど(笑)。
YAMAKEN いやいや、オレも相手は誰だか全然知らないんですけど、歌詞だけでも書いてくれれば曲は書きたいなって思います(笑)。
-- 面白がってるだけじゃないですよね?(笑)
KIKUO でも、オレも聴いてみたい(笑)。
YAMAKEN でしょ?
KIKUO 引きずってるわけじゃないんで、そういう意味でも聴いてみたいなって思いますよ。
Vol.05へ続く...
Interview By ヤコウリュウジ
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-- いろいろと曲について話を伺ってきましたが、今まで以上に無理がないし、自分たちそのままをさらけ出して「これ、カッコいいでしょ?」と胸を張れる作品になったなと感じます。
KIKUO そうっすね。違和感みたいなモノがある曲はひとつもないですし。
-- こういった新作が完成すると、いつもならライヴについて伺うんですけど、現状それが難しいじゃないですか。先行きが不透明すぎて、いつライヴが再開できるかわからないし。だから、ファンに対しては新作を聴き込んで欲しいとしか言えないんですけど、そうするに値する内容だと思ってます。改めてにはなりますが、現状で感じてる手応えについてどうですか?
KIKUO 生々しくて、隠すことができない部分も入っちゃってるぐらいし、何か呼吸してるモノがそのまま全部パッケージされてる感覚なんですよ。生きたモノが録れた内容になってるから、ある意味、想像しやすいかなとも思ってて。僕らのことを知ってる人は引き続き楽しんでもらえるだろうし、新作で初めて知ってくれた人にとってもパッと耳に入ってきやすいと考えてて。もちろん、良し悪しはその人次第でしょうけど、その判断がはっきりしやすいモノになってのかなって思ってます。
SASAMORI 何だろうな……前作と違うところは、自分が加入してからの全部というか、新しいDRADNATSになって、あるべき姿とまでは言えないかもしれないけど、凄くナチュラルな作品になったと感じてるんです。どう伝えればいいのか難しいところもあるんですけど、何かに追われてる感じはなかったし、自然体で臨めたところがあって。当然、「これをやらなきゃ」とか「あそこにも手を伸ばすべきだ」みたいなのは感じてたけど、そういったモノに押しつぶされるようなことはなかったし。自分が思ってる、メロディックパンクバンドの理想に近づけた1枚になったと感じてますね。
-- やっぱり、イチから自分が携わった新作ということで喜びもひとしおでしょうし。
SASAMORI そうですね。個人的なことで言えば、ドラムの音だったり、レコーディングのやり方だったりも含め、凄く充実してました。
-- では、YAMAKENさんはいかがですか?
YAMAKEN これ、(フルアルバムとして)5枚目じゃないですか。DRADNATSに15年の歴史がある中で、誰かから「DRADNATSって、どんなバンド?」と聞かれたとき、この新作を渡せばいい1枚になってると思います。もちろん、過去にもいろんな作品を出してきて、みんなが好きな曲もあるだろうし、それこそ(横山)健さんにプロデュースしてもらったモノもあるけど、今回の新作は「DRADNATSはこうなんです」と胸を張る存在だなって。曲にしても、音にしても、歌詞にしても、今のDRADNATSが全部入ってますよ。
-- わかりやすくバンドを伝える1枚が完成したという。ちなみに、ツアーに関してはどう考えてますか?
YAMAKEN そこなんですよね。もちろん、ツアー自体は組んであります。ただ……たぶん、無理かもしれないなっていう現状があって。
-- 来たる日がいつなのか、はっきりしたことはわかりませんが、今の過ごし方が大事にはなってきますよね。
YAMAKEN やっぱり、ライヴがいざできるとなったとき、みんな久々に(DRADNATSを)観ることになるわけじゃないですか。そのとき、とんでもないバンドになってるなと思われたいですよね。
-- ファンとしてはずっとライヴへ行けないフラストレーションを抱えてて、ようやくライヴハウスへ行ける、DRADNATSのライヴが観れるとなるわけで、期待感は相当高まっているでしょうけど、バンドとしてはそれを超えるモノを提示したいと。
YAMAKEN だから、いかにスキルアップしていくかですよね。
SASAMORI そこは欠かせないっすよね。
YAMAKEN まあ、ライヴをやらないとライヴ感みたいなモノが上がってこないのは当たり前なんで、そういう部分は無理だけど、どれだけひとりの時間で突き詰めていたのか。自粛が開けて、いざライヴハウスでライヴができるようになったとき、そこが出始めると思うし。今の時間の使い方について、それぞれ考えるべきかなって。
-- そう考えると、自粛が開けたタイミングって残酷かもしれない。
YAMAKEN 超残酷だと思いますよ。
-- ただただ無駄に時間を過ごしてたバンドと前へ進もうとしてたバンドの差が出ますよね。
YAMAKEN すっごい出ると思いますね。まあ、最初の2ヶ月とか3ヶ月は「久しぶりのライヴだ!」っていうテンションになるから、そのときはまだそこまでじゃないかもしれないけど、少し経ってちょっと落ち着いたとき、如実に表れるんじゃないかな。そこでしっかりと生き残れるようにしたいですよね。
SASAMORI こういう状況になり、オンライン飲み会とかでいろんな人と話す機会が増えてるんですよ。で、最近ドラマーが集まるオンライン飲み会があったんですけど、そこで「次にライヴをやるとき、みんな下手になってるよね」みたいな話があって。絶対にそうなっちゃいけないし、いつになるかわからないけど、いつきてもいいようにスキルアップしなきゃいけないって凄く感じましたね。
-- この現実にあらがう気持ちは大事だと思います。
SASAMORI その為に、窮屈な毎日だけど、そこで気を抜かずに今やれることを探すっていう。曲がより活きるパターンも考えるのもそうだし、さらに上手くなるように練習をしなくちゃいけない。もしかしたら、次の機会が通常のライヴじゃない可能性もあるわけだから。
-- というのは、どういうことですか?
SASAMORI 例えば、お客さんを入れない形でのライヴ配信かもしれないし。そうなると、音はライン録りになるから技術的なところの差が如実に出ると思うんです。自分のことをプレイヤーって言うのはおこがましいかもしれないけど、どんな環境にも対応できるよう、いちプレイヤーとしてスキルアップしとかないとなって。
-- そう言えば、SASAMORIさんがTwitter上でラップを披露してるMC SASA名義の活動は続くんですか?
YAMAKEN 続きますよ(笑)。
-- 本人が答える前にYAMAKENさんが断言するっていう(笑)。
SASAMORI (YAMAKENは)プロデューサーなんで(笑)。
YAMAKEN 本当のヒップホップの人が反応するまで続けます(笑)。
-- 初めて観たときはかなり驚いたんですけど、やってる本人としてはどうですか?
SASAMORI 相当楽しみながらやってますね。こういうときこそというか、ドラマーとしてのSASAMORIって言葉で表現できないじゃないですか。でも、あの(ラップの)リリックって、ちゃんと自分で書いてるんですよ。
-- あっ、そうなんですね。
YAMAKEN 曲はオレが作って、リリックはSASAMORIなんです。
SASAMORI 緊急事態宣言が出て1ヶ月ちょっと、いろんなことの自粛だったり、ライヴハウスを取り巻く状況だったり、ライヴをやりたいけどやれないことだったり、モヤモヤしてる気持ちを書き出せるから、そのいい機会になってて。楽しみつつ、ふざけながら、リリックは真面目に書いてるんです。それに、日々の生活の中でMC SASAっていう新しい要素が生まれたから、いつも気が抜けないっていうか。オレ、「自粛期間だから、ずっと家にいなさい」って言われたら、ホントにもう、ベッドの上だけで1日過ごせるんですよ。そういう風にダラけられる人だから、いい緊張感を保つ存在にもなってますね。
-- もしかしたら、MC SASAが大ブレイクする可能性もありますし。
KIKUO 何か起きるかわからないですからね。
YAMAKEN いや、それはないな(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
-- では、KIKUOさんはどう考えていますか?
KIKUO 来たるべきときの為に準備するっていう感じですけど、体力や技術はもちろんのこと、心のスタミナもつけなきゃいけない時期かなと思ってて。そういう意味では「はいどうぞ。やっていいですよ」となったとき、今まで持ってた器よりもさらに大きな器にしたいし、強い自分で臨めるようにしたい。
-- DRADNATSは震災を受け、ANCHORと共にLANDMARK FESTIVALを立ち上げてずっと続けてきた経験があるじゃないですか。困難に直面して、そこから立ち上がり、より強くなったことを見てきた、体験してきたバンドだと思うんです。だから、来たるべき日にも備えられるのかなと。
YAMAKEN そう思います。ここからというか……何て言えばいいんだろうな。こういうときって、下手に無理せず、やれることをやり続けるしかないんですよ。最初にも少し話しましたけど、何かしらの支援についてもメンバーとよく話すんです。「オレらにできることはあるかな?」って。でも、今はまだそのときじゃないっていうか、継続できる何かと見つけてからだと考えてるし。
-- 個人としてもバンドとして、瞬間的な何かじゃなく、継続できるモノを探して取り組んでいくのが大切。
YAMAKEN だと思うんですよね。震災のときもそうでしたけど、バンドで悩んでるヤツ、たくさんいるはず。自分たちは何もしてないって思いつめちゃたりとか。そういうのは悪いわけじゃないし。それこそ、すぐに支援しないのは悪だみたいなことは絶対にないから。
-- 打ち上げ花火みたいになってもしようがないですしね。
YAMAKEN ホントにそうなんですよ。
-- DRADNATSとしては、こういったタイミングのリリースにはなりましたけど、いい作品が完成した手応えがあって、心は折れず、しっかりと前を向いてるという。
YAMAKEN 向いてますね。まあ、コロナが終息するか、その前にアル中で体がぶっ壊れるか、みたくはなってますけど(笑)。
一同 ハハハハ(笑)。
-- この新作がみんなに届けば、何かが変わると表現したら大げさかもしれませんが、目指してるところへ近づく自信もある?
YAMAKEN もちろん、あります。ただ、ちょっと心配なのは(新作を)聴いたらライヴへ行きたくなっちゃうかなっていうことぐらい。それって、あんまりプラスに働かないのかなと思ったりもして。行きたいのに行けないわけだから。
-- いやいや、そんなことはないですよ。抱えてるフラストレーションのガス抜きというか、むしろ解消してくれる存在になると思います。
YAMAKEN そうなって欲しいですね。だからこそ、予定通りにリリースすることを決めましたから。
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