『コラムパーク』
「オレンジ」
平成が終わり、令和を迎える時、多くのサラリーマンたちはなかなか経験できない10連休のゴールデンウィークを過ごしていた。私もその中の一人である。
どちらかというと身を削り、会社の為に残業代もつけずに働け、そういう美学が日本には根付いている中、政府は働き方改革という制度で休むことを会社に強制させ始めた。
よくよく考えてみれば小学生の頃からか。「皆勤賞」という制度。一度も休まないことを褒めたたえる制度。休むことは良くないことであるという風習。
そう考えるとその頃からどうやら洗脳に近い教育を施されてきていたのではないか。
その中で有休を取れ、これは命令だ、と言われてもなかなかそれを正に自身で受け取れない人は多いのではないか。
そういう考えに至った時、自分の中の芯の無さに気が付く。
急に休みをもらったって何をしていいのかわからない。
欲というものを忘れてしまったのか、いや、考えないように、どこかで諦めて殺してきた感情だから、なかなか呼び起こすことができないからか。
どちらにせよ、きっとAIR JAM 2000のビデオを高校のバス遠足のモニターで流して、走るバスの中で騒ぎまくってた頃の自分は、それを認めてはくれないだろう。
そしてその事をきっとしょうがないと納得させるのが今の自分だろう。
4月の29日、飲み屋で友人と騒いでいい具合に酔っぱらって帰りの為の代行の車を待つ私は、思わずコンビニでハイブリーチを買った。家に帰ってその酒の勢いで髪の色を抜き、気が付くとオレンジ頭の某死神代行主人公のような頭になっていた。実に10年以上久しくしていなかった行為だ。
なんでこんなことをしたのか、未だに覚えていない。
でもワクワクする、眠れなくなるほどに。
サラリーマンになりもう二度とすることはないと思っていたオレンジ頭。
そんなことはない。こんな簡単にできてしまうんだ。
縛り付けているのは大人という偏見なんだ。
元号は令和になった。私の頭はオレンジ色。
娘も嫁さんも呆れているけど、もはや遅い。
私の頭はオレンジ色。
今はもう、黒に戻して会社に行き始めたけれど、もう大丈夫な気がする。
縛られない楽しみを少し思い出せたから。
休みの楽しみが生めるようになったから。
今度の休みは何をしようか。
だから働ける。
頑張れる。サラリーマン。
痛風サラブレッド 33歳 会社員
2019.05.24