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『横山健の別に危なくないコラム』

Vol.95

「ライブ」

この夏はいろんなライブをした。まず…皆さん一番気になっているのは7年振りの ROCK IN JAPAN FESTIVAL での Ken Band はどうだったか、だろう。ライブそのものより、「何を感じて、どういう気持ちでどういう言葉を発したか。あのフェスに対していま何を思うか」ということだと思う。

気になっているというよりは…心配してくれてるのに近いとは思うが(猛爆)

まずとても端的な感想から言うと、めちゃめちゃ楽しかった。

オレ自身も事前の心配事はあったが、しっかり考える時間があったからか、あのステージ上ではなんの違和感やストレスも感じなかった。激しいロックンロールしか存在していなかった。また来年以降も是非参加させてもらいたい、素直にそう思った。

とはいえ…ステージ上で、オレは「くだらねぇ」と発言した。これ実は、なにがくだらないと感じたんだか、自分でもわからない。なにか違和感やストレスを感じての発言では全くない。

モッシュ/ダイブの是非、誰が煽っただとかそんな類のこと、このフェスに長い間距離を置いてた自分の思考…全部くだらないっちゃーくだらない。

めっちゃくだらなくて、どれもがとてもとても大事なことだ。

ちゃんとわかってる。

あの日は誰を汚すつもりも、悪く言うつもりも、裏切るつもりもなかった(もちろん自分も)。

ステージに出る前もそう誓ったし、終わって何日も経った今でも、それはしなかったと言える。

ただなぜか、ステージ上で口走った言葉は「くだらねぇ」っていう言葉だった。

最近自分でも、ステージ上で何を口走るかわからない。

自分に正直であろうとすると、なんとなくボンヤリと抱えてたモヤモヤとかがその姿を露わにする、言語化できるほどハッキリと正体を捕まえていなかったことが言語化されて出てくる、そういうことが多い。

大体いつも出番前に Ken Band のメンバーには「オレ、今日はなにも喋らないから(キリッ」って言うのだが…メンバー間ではもはやネタと化してはいるが(猛爆)、いつも出番前はそんな気分なのだ。そしてステージに出ると、めちゃめちゃいろんなことを喋っている。

Fuji Rock のステージ上でも「音楽と政治」について、出番前はまさか口にするとは思っていなかったことを、思いっきり話した。話をしている自分と、心の中で「ダメずらダメずら!」って思ってる自分もいるのだ(ちなみに Fuji Rock のステージも最高だった)。

ステージ上とは、正直であろうとするとそういう魔物が出現する場所なのだ。…これはちょっとカッコ良くいい過ぎたかもしれない…オレはステージ上でコントロールが効かない人間なんです、というだけかもしれないのだが。

大きなステージ上でそういう発言をすると、言葉尻だけ捕らえられて、しっぺ返しを喰らう。でもまぁそれもいいのだ。元から全員に分かってもらおうとか、オレを好きになるはずもない人にまで好かれようなんて思ってない。何万人が目の前にいようと、自分の意図が誤解や曲解されて後々何を言われようと「たった数人の良き理解者」だけいてくれればいいのだ。オレ、ビビってねぇし。

ただ信じて欲しいのは、オレのことを好きで来てくれた人、音楽や存在に触れに来てくれた人を汚すつもりは全くないということ。

今までも、これからも、ない。

主だった報告は以上!

 

Fuji Rock ステージに出る直前。こんなに和んでるんですよ。Photo by Teppei Kishida
「Fuji Rock ステージに出る直前。こんなに和んでるんですよ。Photo by Teppei Kishida」

 

それから「Rumble Of The Month 」、最高だった。

5月の Vol. 1はスカパラを招いて豊洲 PIT で開催、これは前回のコラムで書いたので割愛するが…6月のVol. 2は Crossfaith と渋谷 O-East で激突。若い奴の中でもこんなに貪欲でハングリーなバンドいないんじゃないか?っていうくらいの連中だ。がっぷり四つに組むのはオレ達も相当な気力と体力を要した。それがとても心地良かった。心地良かった末に、オレは「クロスフェイスダンス」を編み出してしまった。詳しくはオレのツイッターで。

7月の Vol.3 は恵比寿リキッドルームでサンボマスターと激突。これもすごかった。サンボの3人のグルーブ、山口くんの早口言葉ともラップとも恫喝とも受け取れるようなステイトメントの数々…喰らった。喰らった末に Ken Band の1曲目で鉄柵が壊れw、山口くんを招いて「上を向いて歩こう(スキヤキ)」を演ってた。

両バンドとも素晴らしかった。なによりもこちらの企画に、こちらの庭に心を開いて入ってきてくれて、彼らのロックンロールを遠慮なく鳴らしてくれたのが嬉しかった。

8月は Vol.4 と Vol.5、憧れのクロマニヨンズを招いて、新木場 STUDIO COAST で2デイズ演った。オレにとってはクロマニヨンズと踏む同じステージ、めちゃめちゃ特別だ。だってオレはヒロト&マーシーで育って、あの人達の背中を追っかけてここまで来たのだから(もうそれはこのコラムを読んでくれてる方なら「はいはい、分かった分かった、知ってる知ってる」っていうことだろうけど…)。そんな特別な末に、「これを自分だけのものにするのはもったいない」と思った。自分で言うのもなんだが…「ヒロト&マーシーと横山健が踏むステージを、若いバンドにも踏ませたい!」って思ったのだ。そこで「1バンドずつ若いバンドに声をかけませんか?」とクロマニヨンズに提案したら快諾してくれて、OKAMOTO’S を誘ってくれた。オレたちは WANIMA に声をかけた。

その経験は彼らの経験や血肉にしてもらって…オレはなにを得たかというと、やっぱり初日にトリを務めてくれたクロマニヨンズの背中からとんでもないものをもらった。オレは何度もクロマニヨンズのライブを観ているけど、この日はちょっといつもより凄かった。オレは袖から観てたのだが、ちょうどメンバーの背中が見えるのだ。4人が気軽なのか全身全霊なのかわからない振りして、当たり前のようにそれまでの全てをその瞬間に詰め込んで、目の前のオーディエンスにぶち当たってる様は、壮絶としか言いようがない。その光景と…自分の中に湧き上がった感情が全てだ。40半ばの男が、「あぁなりたい」と今でもやっぱり思うのだ。

あの人達は「兄貴」なんだ。いっくら自分が力をつけて大きくなったつもりでも、強くなったつもりでも、全然敵わない。自分が「行けた」と思うその分、先を行ってしまう。しばらく会わないと、ある面で自分が「越えられたんじゃないか?」って気がしてくる。ところが会うと全然、なんにも越えられてない。そしてそれがまた妙に嬉しく、清々しかったりするのだ。

「越えよう」なんて考えてるうちは一生越せない。きっとそうしたもんだ。好きも嫌いもなくなって、自分の中から存在感がなくなった時、初めて「越す」と表現できるのかもしれない。でもそれは同時に「無」も意味するから、実は嬉しい話でもない。クロマニヨンズは、やっぱり「クソー、かっけえ!敵わねえなぁ!でもいつか越してぇなぁ!」って思わせてくれる。いつまでもカッコいい兄貴でい続けてくれる。どんなに間が空いても、決して「無」にさせてくれない。そしたらたぶん、一生越せない。それでいいんだと思う。

2日目は自分達が後で演奏するので、途中まで袖の同じ場所から観た。自分の子どもと一緒に観た。クロマニヨンズの「エイトビート」という大好きな曲がある。歌詞も曲も大好きだ。誰かに怒られることを承知で言おう、オレはこの曲からブルーハーツを感じる。もちろん違うのだ。でも高校生の時にブルーハーツを聴いた時と同じように、鼻の奥に涙のにおいがするのだ。

この曲は1日目も演奏しててグッときたのだが、2日目はもっとグッときた。自分の人生が「全肯定された」気になったのだ。高校生の時の自分が降りてきて「いろいろあるだろうけど、そのまま行っていいんだぜ」って言ってくれたような気が本当にしたのだ。自覚的な時間も無自覚な時間もひっくるめて30年くらいたってしまった。そしてヒロト&マーシーが違う仲間達と鳴らす、あの頃と同じ温度の曲を、息子の肩に手をかけながら聴いている。この子達は…オレがブルーハーツの音楽と出会っていなければ、この世にいなかったのだ。もしかして別の人生を歩んで子どもを授かってたかもしれないが、その子どもはこの子達じゃない。そんなオレ達親子の目の前で彼らが演奏している。オレは大袈裟ではなく「運命」とか「人生」とか「命」とか、そういう感覚がよぎった。オレはいよいよ感極まってステージダイブした。

それでTシャツは破れてあばらも痛めたのだが、最高の気分だった。

マズいな…スカパラもそうだけど、クロマニヨンズについて書き始めると、想いが止まらない(汗)それは当然のことなのだが、今回はこれくらいにしておく。

この「Rumble Of The Month」…とても刺激的で楽しかったので、またいつか同じような趣旨でやってみようと思う(めちゃめちゃ稚拙な文章の持って行き方で我ながら笑ってしまうがw)。

この夏は京都大作戦もめっちゃ楽しかったし、ワイルドバンチフェスも最高だった(あーワイルドバンチで打ち上がった花火、キレイだったずら…)。

この二つのフェスは、Ken Band のことをとても大事に扱ってくれる。大事に扱ってくれないフェスがあるとか、あのフェスはこのバンドを大事に扱ってないとかそういう話では全くなく….なにか「誠実さ」みたいなものを感じるのだ。主催者からも、オーディエンスからも。「オーディエンスなんて毎年違うんだから」とも言われそうな気がするが、これがおもしろいことに、フェスによってオーディエンスの雰囲気、ステージに伝わる熱など、かなり違うのだ。
来年もこの二つには「必ず」ラインナップしたい!

Ken Band はこれからもツアーを続けていく。しばらく行ってない街、レコ発で行ったけどやっぱりもう一回行きたい街、そういうところを周っていきながら、少しずつ次のことを考え始めるだろう。新曲を作って、数曲仕上がったらシングルなのか、アルバムなのか、全然わからないけど、そろそろまた何かやりたくなるんだと思う。

年末には Air Jam がある。その頃は Hi-Standard タイムなので Ken Band としての表立った活動は少しスローダウンせざるを得ないが、その分練習スタジオで何かを進める作業だったり、ツアーのことを考えたりしようと思っている。

夏に会った人達、新しく出会った人達、また今年中に会おう!

 

 

「さよならホテル」

東京スカパラダイスオーケストラ(スカパラ兄つぁん)とのコラボシングル第2弾がリリースとなった。そのタイトル曲が「さよならホテル」だ。

実はこの曲、「道なき道、反骨の。」がスタジオで練られていた時、すでにあった曲なのだ。もうちょっと詳しく話すと、最初にコラボシングルを出そうとなった時、道なき道とこの曲が候補になってたのだ。

歌詞のない状態でスタジオでみんなで2曲聴いて、「こっちで行こう!」となったのが後の「道なき道、反骨の。」なのだが、オレはこっちのほうもめっちゃ好きになってしまった。どうしてもメロディーが頭をぐるぐると回ってしまうのだ。道なき道を練習しながらも「…あっちも素敵ですよね…いいですよね…」と未練がましいことを言っていたら、なんとこっちの曲もレコーディングさせてくれることになった!そんな経緯のある曲だ(猛爆)

道なき道…は、スカパラ兄つぁん達も「健に歌わせるなら」という気持ちで仕上げてくれた曲なんだと思う。メロディーの抑揚や楽器のアレンジにも、それは顕著に表れていると思う。ビート感も「パンクロック」を無意識のうちに含んでいる。歌詞も当然そうだ。谷中さん(谷中兄つぁん)はオレの歩んできた道と、彼ら自身、スカパラ兄つぁん達自身が歩んできた道を、共通するアティチュードの表明と、長い人生の旅路に例えて歌詞にしてくれた。この歌詞の世界観が描き出しているのはスカパラと健の「果てしなき必然の邂逅」なのだ。それだけではなく、若い人達に生き方をそっと教えるような、そんな大きな優しさをも含んでいる。オレがもし書いていたらもっと説教くさくなったところだと思うが(汗)、谷中兄つぁんはどうしようもないほど絶望的なポジティブさをもって書き上げた。ものすごく力強い歌詞だ。当たり前のように「これしかないでしょ!」って思う素晴らしいものだった。あの歌詞とメロディーを歌えるのはオレしかいない。オレより上手く歌える人はいっぱいいるだろうが(そういう人のほうが多いだろうが汗)、それでも「道なき道」はオレにしか歌いこなすことはできない。

ところが「さよならホテル」のほうは…歌詞なしで一聴してわかったのだが、曲が良すぎてオレでは歌えないと思った。誰が歌っても良い曲になる…もっというと、上手いシンガーが歌う方が良い曲になる…そういうタイプの曲だった。それでモジモジしていたのだが…口をついて出てくる言葉は「…でもあっちも素敵ですよね」だった(猛爆)それを微笑ましく思ってくれたのか、「見つかっちゃったもんはしょうがねぇ」って思ったのかは定かではないが、もう一回オレに歌わせてくれる機会を作ってくれたのだ。…なんでも言ってみるもんである。
道なき道と同様、川上さん(川上兄つぁん)による珠玉のメロディー。最初聴いた時の感覚を言葉にするなら「こんな曲、世の中にあって欲しい!」って思ったくらいの美しさというか…、大袈裟ではなく、本当にそう思った。

曲調もスカパラ兄つぁん達の歌モノでいえばこれがドンズバ!っていうくらいのスカ、気持ち良いバックビート。オレにとってはとても新鮮で、心地良い。

歌詞は当然谷中兄つぁんによるもの。めっちゃ大人のラブソングだ。最初に文字としてみた時は、オレも「ラブソングだなぁ」としかわからなかった。文字だけ追うと「ホテル」とか「湿った花束」なんてワードが入っているので、半勃起モン、あ、いや、ラブソングなのだと思う(猛爆)

でもまぁ一概にラブソングとも括れないような…人生の出会いと別れであったり、旅立ちであったり、それの暗喩としてのホテルであったりもする(と、兄つぁんからは説明を受けたような気がする猛爆)。例えば、バンドマンはツアーを多くするので、当然日本中のビジネスホテルを転々とする。そういう「賭けるもの、背負うものがある男達の旅路のロマン」の象徴としても捉えられるのではないか。とはいえ、そこに必ず「愛」が入り込んでくる、それが谷中兄つぁん独特の感性と美学なんだ、とオレは考えている。とても文学的で、叙情的で、深い歌詞だと思う。

余談ではあるが、実はこの曲の歌詞にはもう1パターン、全く違った内容の歌詞も書いてあった。そっちの方が基本姿勢が明確で、「道なき道」の延長線上とも言えるものだった。当然そっちの方が歌いやすいだろうし、聴く人も「スカパラと健のコラボ」ならイメージしやすいものだろうと思った。でもみんなで、前作と全く違った世界観を持つ「さよならホテル」を選んだ。そこもまたチャレンジするのだ。

さて、今回のシングルのパッケージ(CD)なのだが、4曲入りだ。当然「さよならホテル」がメインの曲なのだが、他の3曲にもとても特徴があるので紹介させてもらいたい。
2曲目も同じ曲なのだが、なんと「Ken Band バージョン」なのだ。Ken Band バージョンはまったく違うストーリーを英詞で書き下ろして「Sayonara Hotel」というタイトル表記にしてある。スカパラ兄つぁんの「さよならホテル」という完全な新曲の作品に、別バンドによるその曲のカバーが収録されている…これは作品や CD は星の数ほどあれど、かなり珍しいパターンなのではないか?

歌詞もそのまま日本語で、あるいはスカパラバージョンをそのまま英訳しても良かったのだけれど、やっぱり新しい詞をのせたほうが作品として刺激的になるのでは?と考えた。谷中さんの歌詞は、ラブソングと解釈するなら「大人のラブソング」…だからオレは「若いラブソング」を書いた。一つの楽曲に対して二つのラブストーリーが存在するというのも、とてもおもしろいことなのでは?と思うのだが…、自己満も入ってはくるがそう思うのだ。

きっかけはスカパラの加藤くんが発したスタジオでのなにげない一言だったと記憶している。加藤くんが「…この曲、健さんの弾き語りとかでも聴いてみたいなぁ」とかそんなようなことをボソッとつぶやいたのだ。それが「Ken Band バージョンもあってもいいよね!」とか話が膨らみ…話の盛り上がりを聞いていた、スカパラの担当の方を見ると、若干表情がこわばっていた。「健さんにそんな無茶言っても…Ken Band はピザオブデスのバンドだし…」みたいな感じで、正直困ったのだろう(猛爆)そこでオレは「でもオレが社長なんで、やるとなったらトップダウンで決められます!(キリッ」というと、みんな「おーっ!」と歓声をあげた。そして数日後に正式に「本当にやりませんか?」と打診があり、「もちろんです!」という流れだ。レーベルの垣根を越えての、Ken Band のスカパラの作品への参加なのだ。

あともう一つ、オレには憧れがあった。1つの曲を複数のバンドで共有すること。これにすごく憧れがあった。

結局 Ken Band バージョンはスカパラの曲の「ただの英詞カバー」なのだが、同じ作品に収録されることで「ただの英詞カバー」以上の意味を持てる。

憧れにグッと迫れた気がするのだ。

3曲目、4曲目にもカバーの意識、憧れに迫ろうという姿勢がグッと現れている。

3曲目には、今度はスカパラ兄つぁんプラス、オレがボーカルで「Punk Rock Dream」のライブバージョンが収録された。これは 2016 年の「京都大作戦」でのスカパラのライブにて演奏されたバージョンだ。この日は Ken Band でも出演したのだが、自分たちの出演前にオレだけ少しスカパラのステージに参加、「道なき道、反骨の。」と「Punk Rock Dream」を演った。

聴いてもらえればわかるのだが…スカパラバージョンの「Punk Rock Dream」は、例のギターによるイントロはなく、その代わりにホーンによる別のイントロが演奏されている。これが本当に華やかで良いのだ…。「100%スカパラ節」なのだ。自分の曲をこうやってリアレンジしてもらって、また曲に新たな息吹をもたらしてもらったんだと思う。

またスカパラバージョンは、実は Ken Band よりも少し演奏が速い。BPM 自体も速いのだが、むしろビート感が性急と表現したほうが良いかもしれない…。これがまたグッとくるポイントなのだ。「性急」とは本来せっかちとか落ち着きがないという意味だが、パンクロックにとって性急であることはむしろ命題であって、それこそがパンクロックである証なのだ。しかし…パンクロックを自負する Ken Band よりもビートが性急とは、これは異常事態と言わざるを得ない。テクニック的にスカパラ兄つぁん達が遅く、あるいはゆっくりやれないわけないので、これも化学反応なのだろう…。自画自賛にもなってしまうが、素晴らしい瞬間を収められたバージョンだと思う。

4曲目には「星降る夜に」。当コラムでも何度か話題にしているこの曲、2006年にスカパラが甲本ヒロトさんをボーカルに迎えてリリースされた曲だ。オレはこの曲が大好きで…今年に入りスカパラ兄つぁん達とのコラボが進む中で、Ken Band でこっそり練習し、ライブで披露するようになった。初めて人前で演奏したのは、今年5月の豊洲 PIT でのスカパラ兄つぁん達との対バンの時だった。兄つぁん達も喜んでくれて、その後日本各地の Ken Band のライブでも演るようにもなった。

今回収録されたのはフジテレビ「Love Music」という音楽番組にスカパラ兄つぁん達と出演させてもらった際に演奏したバージョンだ。なんと最近では珍しい「テレビでの演奏」が収録されたのだ!(オレが知らないだけであるケースなのかもしれないが…)

Ken Band では演っていたが…実はスカパラ兄つぁん達と一緒にこの曲を演奏したのは、この時が初めてなのだ。当日の本番前に数回リハーサルで演奏できたが、なにしろこれは初演日のバージョンだ。緊張と興奮が詰まっている。

オレはこの日収録されたバージョンが送られてきた日、もう夜中だったのだが…嬉しすぎて、数時間かけて30回くらいリピートして聴いた。それくらいの想いが詰まっている。

この曲に関して言えば…フジテレビの別の音楽番組でインタビューされた際に自分の口をついて出た言葉が一番気持ちと近いので、それを思い出して書きたい。インタビューしてくれた方が「この曲をヒロトさんの背中を追いかけてきた健さんが歌って…」と言ってくれたので、「こういう素晴らしい曲は歌い継がれていけばいいんです」と答えた。

そうなのだ、歌い継がれていけばいいのだ。

スカとパンクロックを愛する連中の、優しいアンセムになればいいのだ。

スカパラ兄つぁん達が書いた曲で、最初に歌ったのはヒロトさん。そのオリジナルバージョンが一番カッコ良いに決まっている。

でも憧れてるだけじゃつまらない。もっとそれに迫っていかないと…むしろ迫ろうとすればするほど、憧れはもっと強くなり、もっとドキドキすることが待っている。

オレもこの先、この「星降る夜に」をズーッと歌っていく(もちろん「道なき道、反骨の。」も「さよならホテル」も歌っていくが!)。

ヒロトさんの背中を追いかけた健が歌い継ぐように、健に憧れるヤツが歌い継いでいけば、こんな素敵なことはないのになぁと思うのだ。

ヒロトさんの背中を追いかけたガキが横山健になり、その横山健に憧れたそのへんのどっかの鼻垂らしたような坊主が、横山健を尊敬と愛情を以ってブッ潰しにくるのだ。そうやってロックンロールの歴史は更新されていくのだ。

その時、その坊主の唇に「星降る夜に」があったら…オレは喜んでブッ潰されよう。

そしてそいつの歌声は、誰かが大変な一日を生き抜くための大事な燃料に、あるいは誰かの些細な一瞬に寄り添う大事な風景になるのだ。

…ちょっと壮大になってしまったが(汗)、この曲を歌えた喜びが、こうして形に残せることになった感謝が、オレの気持ちを壮大にさせるのだ。スカパラ兄つぁんが悪いのだ(猛爆)

先述のクロマニヨンズもそうなのだが、スカパラ兄つぁんにもらったものは大きい。なんだか最近、オレ異様に優しいのだが、たぶんスカパラ兄つぁん達の姿勢に触発されてそうなってるところもある。あの人達の心を開いた姿勢にいろんなことを気付かされた。

兄つぁん達の縁で知り合った人、見れた風景も多い。例えば…兄つぁん達とよくテレビに出させてもらうのだが、…「またこの人達の世話になりたい」とテレビの人にも思うようになった。それは日本各地にあるライブハウスの人達…そういった人達に対して感じるものと近い。数年前の自分からは想像もできなかったところに来ているのだが…考えてみれば、結局は「人」なのだ。テレビはテレビなので依然そうそう無邪気に、手軽に関われるメディアではないのは変わらないのだが…結局は「人」なのだ。テレビ業界の人にも「あぁ、またこの人達に誘われて、面倒かけたいなぁ」と思う人達がオレにも出てきたのだ。

そういった気持ちにさせてもらったのも、スカパラ兄つぁんにいろんな場所に連れてってもらったからで、兄つぁんの縁だ。

こういったことは大切にしないと、兄つぁん達の顔に泥を塗ることにもなる。

つくづく…スカパラ兄つぁんには頭が上がらないずら。

この「さよならホテル」でとりあえずコラボは終了なのだが、オレはすでに次のチャンスをうかがっている。

狙ってればいずれ必ず、一緒に音を重ねるチャンスはやってくるのだ。

狙うもなにも…そういえばオレはスカパラのリーダーに就任したのだ。これからもどんどん参加していかなければいけない立場なのだ(非公式ではあるがw)。

なぜリーダーに就任(非公式ではあるが)したかというと…8月6日に、山中湖畔でスカパラ主催のフェス「スカ・ジャンボリー Vol.6」が開催されて、オレもゲストとして参加した。この日はいろんなゲストミュージシャンが招待されていて、それぞれにスカパラと3曲ほど演奏するスタイルだった。チャラン・ポ・ランタン、片平里菜さん、Reiさん、Mannish Boys、The Birthday のチバ君、上原ひろみさん…そして、さかなクンにオレだ。濃い。濃すぎる。ちなみにスカパラはスカパラだけで、第一部として1時間のショウをビシッとやって、ゲストとの共演は第二部、という構成だ。

オレが最後のゲストだったのだが…結局、スカパラ兄つぁん達はオレの出番が回ってくるまで、3時間半ほどステージに立ち続けていたわけだ。炎天下で各ゲストと本気のセッションをひたすら繰り広げたわけで…オレの出番が回ってきてステージに出て行くと…オレが知っている兄つぁん達の顔じゃなかった。猛烈なセッションを延々繰り広げたために、全員魂が抜け落ちた表情になっていたのだ(猛爆)本当なら谷中兄つぁんに主導権を取ってもらって会話しつつやっていこうという感じだったのだが、どう見てもそれどころではなくなっている様子なのだ(猛爆)危険を察知したオレはステージの進行を仕切り始めた(猛爆)関係各所に感謝の言葉を述べたり(猛爆)参加ゲストミュージシャン達に拍手を求めたり(自分もただのゲストのくせに猛爆)でも本気であの瞬間はスカパラのメインを張ってたんだと思う。

それが評価されてのリーダー就任(非公式ではあるがw)なのだ(キリッ

ふざけ半分で話してはいるが、今年はそれくらいスカパラに入り込んだし、一緒に演奏する時には自分が「ゲスト」だとは思わないでやっている。そういう気持ちにさせてくれた兄つぁん達にも周りのチームの方々にも感謝しかない。

東京スカパラダイスオーケストラの非公式リーダーとして、今後もなにか話があった時は、ライブでもレコーディングでも、万難を排して駆けつける。

 

大好きなスカパラ兄つぁん、チームスカパラの皆さんと。リーダー(非公式)としてこれからもよろしくずらー!
「大好きなスカパラ兄つぁん、チームスカパラの皆さんと。リーダー(非公式)としてこれからもよろしくずらー!」

 

2016.09.08

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