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Bands

KUZIRA

KUZIRA

Ba/Vo 熊野 和也
Vo/Gt 末武 竜之介
Dr シャー:D

Who ?

PIZZA OF DEATHからリリースされる作品、そしてメロディックパンクに日頃から触れている方は特に、「待ってました!」と両手を挙げてしまうだろう。2020年にリリースされた『The Very Best of PIZZA OF DEATH III』に参加して突き抜けたメロディセンスを見せつけ、さらにはメロディックパンクのニューカマーとして異例中の異例とも言える「THE KINGS PLACE」(J-WAVE)パーソナリティーへの抜擢など、結成から4年とは思えぬスピードで耳目を集めているKUZIRA。彼らが、満を持してのファーストフルアルバム『Superspin』をPIZZA OF DEATH RECORDSよりリリースする。2017年に岐阜県で結成され、メンバーの脱退を経て、2021年3月より末武 竜之介(Vo&G)、熊野和也(Ba&Vo)、シャー(Dr)の体制へ。そこから間髪入れずに叩き込む、今こそ最高潮であると示す一撃が今作だ。

全曲を通して輝いているのは、メロディックパンクを背骨にしながら、しかしメロディックパンクの定型を突き破っていく奔放なソングライティングである。たとえば今作の8曲目“Together Forever”。アコギの弾き語りからシンガロングパートに雪崩れ込んで跳ねたビートに乗ったかと思うと、超唐突にスカパートへ移行。さらにクライマックスではテンポを落として、ダビーなリズムで曲を閉める。唐突に唐突を重ねていく膨大な情報量の楽曲なのだが、それを2分でまとめ上げる身体能力に、彼らの非凡さと、面白さと、耳馴染みがいいのに新しいメロディックパンクの形が垣間見えるのだ。さらには10曲目の“Change”。往年のクラシックロックを思わせるギターフレーズと<Na Na Na>のユニゾンがイントロから飛び出したかと思えば、小気味いいスカのヴァースで跳ね、サビではテンポをハーフにしてどっしりとしたメロディを聴かせる。予兆なく矢継ぎ早な展開が繰り返されるのにツギハギ感はなく、セクションの接着が超スムーズ。音楽の上下幅は激しいのに、メロディ一発ですべてを一直線に撚ってしまう。「普通なら」「これまでなら」といった予想の斜め上を悠々と飛んでいく、まさにド級のニューカマーと言っていい。

メロディックパンクは(一見)シンプルな構造であるがゆえに、年々「定型とマナーが固定化した音楽」という印象を持たれることが多くなっていった。90年代に日本で巻き起こったパンク/ミクスチャームーヴメントがあまりに巨大だったことも関与して、いつしかそれが型になり、無意識のうちに音楽的マナーが刷り込まれていった。サビを中心にしてメロディを物語化していく構造も含め、非常に日本的なジャンルとして型が形成されていったと言ってもいいだろう。その中にあってKUZIRAの面白い部分は、その音楽の中に洋/邦、ポピュラー/アンポピュラー、メインストリーム/アンダーグラウンドといった線引きが一切存在していないところだ。線を超える、壁を壊す、といった言葉はあらゆる音楽の中で放たれてきたわけだが、このバンドはそもそも「線を引かない」。年代もジャンルも関係なくあらゆる音楽が同じ場所で聴けるようになった世代、SNSという新たなストリートの中で音楽が混ざるようになった時代を体感してきた世代ということも大きいのだろう。メロディックパンク、ポップパンクがそもそも内包してきた「ユースの解放宣言」という本質的なアイデンティティと歴史へのリスペクトだけを持って(彼らがCDでのリリースにこだわってきたのも、現場至上主義の賜物だ)、あまりに軽やかに音楽そのものを乗りこなし、喰らい尽くし、デカい口を開けて歌いたくなるグッドメロディで網羅していく。生き抜く信念はあっても従来のマナーはない、型なしではなく型破りーーそんな気持ちのいい行儀の悪さで、KUZIRAが新たな王道を作り上げるだろう。


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