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SLANG

SLANG

KO(Vo)
SAKUMA(Ba)
KO-HEI(Dr)
KENTA(Gt)

Who ?

「何もしないお前に何がわかる 何もしないお前の何が変わる」。
2001年に発表されたサード・アルバムの収録曲である。これ以外はすべて英語タイトルなので、ボーカリストKOがこの日本語に込めた想いの強さは容易に想像できるだろう。口だけ、ポーズ、無関心。それらを一発で喝破する言葉の裏には、「少なくとも俺はやっている」という枕詞が存在する。88年からスラングを始動させ、ライブハウス経営とレーベル運営を担い、「SAPPORO CITY HARDCORE」ブランドを築きあげてきた男の、俺はやる、やってきた、という自負心である。

もともと独立独歩で有言実行、「やる」と言ったらやる男だったが、その心意気が「やりきる」覚悟に変わったのは08年の傑作『THE IMMORTAL SIN』からのことだ。ちょうどバンド結成20年目。気力も体力も残された時間を意識せざるを得なかったという。以降、メッセージはいよいよ明瞭になり、アートワークにも反戦・反核の意志がはっきりと刻まれ、今まで当たり前すぎて言わなかった政治的発言も遠慮なく筆にした。
広島・長崎・チェルノブイリへの言及についてもだ。あらゆる自主規制を取り除き、2010年には続編となる5thアルバムを叩きつけ、昨年2月には初のライヴ盤をリリース。まさに疾風怒濤の数年間だが、その矢先に起こったのが3・11だった。

誰より早く被災地に駆けつけ、「やる」と言ったこと全部を「やってきた」彼の動きについては、今ここで説明するまでもないだろう。普段ハードコアに明るくない方は、他のミュージシャン経由でKOの存在を知り、初めてスラングの名前を耳にしたかもしれない。結果的にバンドの知名度は上がりKOの活動が地方新聞の記事になることもあったのだが、それが彼を喜ばせただろうか? まさか。では、俺はこれだけやったがお前らはやってないと怒らせただろうか? 答えは、どちらでもない。

新作『Glory Outshines Doom』での彼は、驚くべきことに主張も批判もしていない。初めて全曲日本語になった歌詞は、ただ、彼がその目で見てきた情景が描かれている。黒こげた瓦礫。灯のない駅。沈黙の暗がり。夜。雨。冬。あの悲しい目……。もはやメッセージともいえないそれは、比喩も誇張もないぶんゾッとするほど絶望的だ。これほど苛烈な音でありながら、怒りという枠ですら語れない言葉たち。相変わらず重戦車級のヘヴィ・サウンドが息苦しさに拍車をかける。一年以上ずっと東北を奔走してきた男が、俺はこれだけやったと胸を張ることもできない。お前もやってみろと叱咤激励することもできない。これが現実だ。なんて現実か。涙が止まらない。

希望はあるか。東北は今なお途方に暮れている。支援する者さえ絶望を隠せない。その渦中からスラングは音を鳴らす。若気の至りなどはとうに脱ぎ捨てた結成24年目のバンドだが、残酷で無慈悲な現実が今も彼らをハードコアたらしめる。その壮絶さに改めて胴震いがする2012年の大傑作。とにかく今はディスチャージじゃない。過去の名盤を聴くヒマがあればスラングを聴け。


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