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--7曲目の「One Last Time」。音は迷いのないメロディック・パンクで、歌詞がすごく強烈です。
「うん。これはシングルの「Never Walk Alone」の世界観に、もうちょっとの辛辣さ、あとはパンクロックのアティテュードを混ぜて書いてみた。子供たちに言ってやりたいことだし、同世代にも向けてるし。これもたぶん、今回のアルバムのキーになる曲じゃないかな」
--ここでサビに“Last Time”っていう言葉を持ってきたのは?
「……そうだなぁ。TOSHI-LOWじゃないけど、今日が最後なんだっていう想いは、俺にもあるの。いつでも。これで80歳まで生きたら笑いもんだけれど(笑)。でも、毎回これが最後だっていう想い、その切迫感はいつでも持ってる。恥ずかしいけれども、けっこう本気で思ってる」
--そこを歌にするのは初のことで。いくらでも深読みできるんですよ。新境地の「Roll The Dice」を楽しそうに鳴らした直後だから、もうこういうパンクロックをやるのは最後だよ、っていう解釈もできちゃう。
「あぁ! なるほど。………そうかも(ニヤリ)」
--もっと言うと、このスタイルが好きで、ハイスタからずっと付いてきてくれるファンに向けて『これが君たちに託せる最後のメッセージだ』って言っているようにも思える。考えすぎかな?
「いや、そんなことない。今のそれ、格好良かったから採用してください(笑)。 この年になってくるとね、今まで言わなかったことも、ちゃんと言っとかなきゃいけないって思えてくるの。行動もそう。今までやらなかったこともやるべきだろって。45歳……今年46歳で、いつまでできるんだろうなって考えることもある。周りでも若くして亡くなる人が多いし、自分だっていつ来るかわかんない。もう出し惜しみしてられない。そういった意味では、前のインタビューで石井さんが言ったように、最終章なのかもしれない。すんごい長い、まだまだ続くのか、みたいな最終章になるかもしれないけど(爆笑)」
--次の「Mama, Let Me Come Home」もメロディックですね。勢いと流れに乗って、すごい歌詞をぶっ込んできたなぁと。
「そう。俺、戦争映画が好きで。さっきの『フルメタル・ジャケット』しかり、いろんな映画を見るんだけど。やっぱ今まで見てきた戦争映画って20世紀の戦争でしょ。今の戦争はもっと機械化されてるから時代錯誤なのかもしれないけど、あえて文字に、歌詞にしてみた。もちろん、ISとかのニュース見てると今もこういう風景を想っちゃうんだけど」
--第二次世界大戦の日本兵のイメージもありますね。今の日本の国会を見て、よけいそう思うのかもしれないけど。
「うーん、特に日本兵だっていうことではないんだけども。でも今、それこそ日本は安保法制で揺れていて、そこは俺、ステージでもよく言うの。『安保がいいか悪いか、それは人それぞれ考えるところ。でも俺が言いたいのは、もし戦争に舵を切ることになったら死ぬのは俺じゃなくてキミたちの子供なんだよ』って。ライヴの場所ではまず楽しんでくれればいい。その後も美味しいもの食べて、笑顔で帰ってくれればいいんだけど。でも今この国で何が審議されているのか、どういうことが起こっているのか、そこにも目を向けて考えなきゃいけないよと。そういうことを考えなかった成れの果て、っていう曲かな」
--テーマは「Dance,Sing,then think」と同じだけど、伝え方は一番強烈な手法ですね。“たとえば俺はこう思う”っていう歌詞では全然ない。
「そうそう。自分でも、ゲッ、って思うもんね。そうね、この7〜8曲目あたりはすごくメッセージ性が強いと思う」
--そこから、これまたびっくりのナンバー「Yellow Trash Blues」です。これも、箱モノギターから自然に生まれたことが想像できますが。
「そう。「I Don’t Care」ができたから調子に乗ってもう一曲作った(笑)。イメージは、ストレイ・キャッツの「ストレイ・キャット・ストラット」っていうブルージーな曲。KEN BANDでも時々遊びでやってたの。こういう雰囲気の曲があったらいいよなっていうのがスタートで」
--健さんとブルースって、あんまり結びつかないんですけど。リスナーとしてはさほど遠いものじゃない?
「……あー、そうか。でも俺、自分ではブルース・ギタリストだと思ってるから。特にギターソロ弾いてる時は、ほんとブルース・ギタリストなのね。ギターの世界の話だけど、ブルースの音使いっていうのがあって。基本的に俺はそれなの。だから、ブルースって自分にとっては当たり前すぎることで。たぶん、すべてのギタリストってブルース弾けないと使いもんになんないと思う。それくらいブルースって基本的なこと」
--なるほど。
「で、これは自分のことをすごく自虐的に歌った曲でもあって。黄色いゴミのブルース、だからね。自分のことを黄色って言い切ってる、ゴミって言っちゃってるところにも何かしらの意味があるんだろうし。でもこの曲は、自然と自分のこと歌いたいなぁと思ってた。自分自身のことを」
--両方ありますよね。負け犬の自虐であり、一匹狼の誇りであり。なんとなくトム・ウェイツっぽさもあったり。
「うんうん。ね、曲調は全然違うけどトム・ウェイツとか、ポーグスのシェーンだったり、あとブライアン・セッツァーもそうだけど、みんなやっぱ詩人だよね。それこそサイモン&ガーファンクルの頃のポール・サイモンとかも、すごくいい詩を書くし。そういうのを見てきて、いつか自分でもこういうことを歌いたいって思った。言い当てることと、含みを持たせること。たとえば20年後に違う文化圏で暮らしてる人がこの歌詞を見ても、ゲッ、って思えるものにしたい。そんな気分もあったな」
--なるほど。シングル曲の「〜Radio」はコラム参照で十分だと思うので、「A Beautiful Song」に行きましょう。びっくりしました。バラードでストリングス!
「ははは。先に言っちゃった! でもこれは、実は一番最初にできた曲で。(DVD化された『横山健〜疾風勁草編』収録の)「Stop The World」よりも実はこっちのほうが先にあった」
--時間軸で考えると『Best Wishes』の世界観に近い? あのアルバムは「If You Love Me」のカバーで終わったけど、もしオリジナル曲を当てはめるのであればこういう感じだった……みたいなイメージですかね。
「うんうん、かもしれない。で、この曲をレコーディングするんだって思い始めた段階で、ストリングスを入れたいって思った。絶対いいものになると思ったし、自分でゾワゾワくるのもわかってた。実際レコーディングも素晴らしくて。ほんとやって良かったな。いつものアルバムだったら、この曲はアコギで歌ってたと思うんだけど、やっぱり新しいことがしたかったから」
--歌詞も興味深いです。今、『Best Wishes』の直後だって聞けば納得できるんだけど。
「うん。でも歌詞はレコーディングの一番最後に書いたものなの。で、これもやっぱり詩的に書きたくて。だから……実話も入ってるんだけど、歌詞は説明すると無粋になっちゃうな。ふふふ」
--震災がどう、愛がどうと一口に言えないストーリーですし。
「そうそう。ほんとはね、これ「even though it isn’t true」っていうタイトルだったの。歌詞にもあるけど、“ウソでもいいから”っていう意味の曲だった。でもジュンちゃんから(モノマネで)『そんなんお前、日本人にわかんねぇよ。まず言いづらいよ』ってダメ出しされて(笑)。でも、この言葉はこの部分に上手くハマってるから、じゃあどうしようかと。それで最後の一文にある“a beautiful song”っていう言葉を曲のタイトルにして、こういうふうなストーリーで締めたら、すごく自分も納得いくなぁと思って。その時に口ずさんだのがこの曲だった……っていうような」
--余韻もあって、いよいよエンディングっていう雰囲気なんだけど。でもこれがラストではないんですね。
「そう。これもジュンちゃんとミナミちゃんが言ってたな。これがラストだと、ラストらしくなりすぎるからって。それで次の曲が来るんだけど」
--ただ……これ、要らなかったんじゃないかって思います。
「(爆笑)……ほんとに?」
--いや、「A Beautiful Song」の余韻がすごくいいから。せめて一分くらい無音の空白を作って、ボーナストラックとして「Pressure Drop」のカバーが来るという設定ならいいんだけど。
「ははははは! まさかの、オフィシャル・インタビューでダメ出し! 甘んじて受けます! 順番が逆だったら良かったのかな?」
--うーん、「Pressure Drop」は置き場所が難しい曲ですよね。
「確かに。スカだし」
--これをカバーしようと思ったのは?
「やっぱね、もともと曲が好きだったのもあるし、あと、ロックンロールを自分の中で掘り返してるうちに、スカもいいんじゃないかって思い始めて。それで突然メンバーに『あの、僕、スカやりたいんですけど』ってメールしたの。したらミナミちゃんは『……モノによりますかね』って(笑)。もちろん僕以上に、あの人も勇気がいったと思う。KEMURIが今は復活してて、これだけ元気にやってる中で。俺たちは関係ないって言えちゃうけども、ミナミちゃんはそこに目を背けるわけにはいかなくて。こうやって自分がスカを弾くことになるのは、相当の勇気が必要だったはずだし」
--ですね。リスナーとして好きなのはクラッシュ・バージョンですか。
「いや、俺は実はスペシャルズ・バージョン。そっちのイメージなの。でもジュンちゃんとミナミちゃんはクラッシュ・バージョンを想像してて、その2つを合わせた感じ。でもこの曲、聴きどころいっぱいあるんだよ?」
--要らないとか言ってすいません(笑)。ただ、全員が絶賛するわけじゃない、賛否両論は避けられないアルバムだというのも事実だと思うんです。
「うん。でもそれで上等。今までの作品もそうだったし。今回は特に、まず自分が興奮することが第一だし、ほんと大変だったけど、すごく楽しいチャレンジだったし、いい糧になったと思う」
--求められることに応えるより、冒険して挑戦することのほうが大変ですよね。それができるのは、実は今までより攻めているからで。
「うん。そう。まさか『FOUR』作ってた頃の自分がのちのちこんなアルバム作るとは、夢にも思ってなかったから」
--しかも、たった5年で。だから本当は音楽性や嗜好が変わったというより、横山健という人間があの頃からずいぶん遠い場所に居るんだろうなと。
「うん。そうだね。『Best Wishes』出してからの動きも大きかったと思う。映画作ってもらって、本も出さしてもらって、あとは写真集も出してもらって。横山健という人間の、音楽以外のところ、人間そのものっていうところを露出させてもらって。それがあったから考えられたし、挑戦できた。今回の音楽的なチャレンジはもちろん、Mステに出たことも含めて、全部がひとつの流れになってるなぁって自分で思えるから」
--3月には武道館も決まっていると聞きました。これもMステほどではないにせよ、大きな話題になりそうですね。
「うん。まぁ武道館はね、俺らが最初にやった(2008年の)後に、オールスタンディングが事実上できなくなってたの。消防法の担当が変わったらしくて、それがまた変わるのを待つしかなかった。で、ようやくできるタイミングが来たから、なるべく早く日程取ってやろうって。それで決まったのがちょうど今回のツアーが終わる頃のタイミングだったのかな」
--2008年の「DEAD AT BUDOKAN」でも、ついに横山健が武道館だって騒ぐ元キッズの熱はあったけど。今の健さんは、もっと違う意味での熱量や期待を背負って立つことになるでしょうね。
「………今はまだそこ考えたくないかなぁ(苦笑)。そっかぁ。でも……それを望んでたはずだし、自分でやりたくてやってることだし。こうなったらほんと、背負う勇気を持っていかないとね。Mステ出るって決めた時点でそれは覚悟したはずなんだけど、あらためて今、そういう勇気が必要だなって自分に言い聞かせてる。で、武道館の頃にはね、もしそういった期待があるんだったら、それも全部背負えるぐらいの気持ちになってないとね」
INTERVIEW BY 石井恵梨子