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Ken Yokoyama 3rd EP [I Won’t Turn Off My Radio

Ken Yokoyama 3rd EP [I Won’t Turn Off My Radio
Ken Yokoyama 3rd EP [I Won’t Turn Off My Radio] Release: 2015.07.08  / Code: PZCA-71 / Price: 1,200yen(without tax)
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Ken Yokoyama [DEAD AT BUDOKAN Returns] 2016年3月10日(木)日本武道館 特設サイト

Ken Yokoyama 6th Album [SENTIMENTAL TRASH] リリース特設サイト


ken yokoyama [I Won’t Turn Off My Radio] Release Interview

Interview Vol.02 / Ken Yokoyama 熟考する人生とロックンロール

30年ギター弾いてるけど、今までにない感覚----

--今回のシングル『I Won’t Turn Off My Radio』。特に表題曲は、もともとの横山健らしさと、今のロックンロールへの興味がうまく交じり合った一曲ですよね。

「うん。これは昨年の秋に作ったんだけど、曲自体はすごくシンプルなコードの組み立てで。サビもね、実際は4つ使ってるけど、弾き語りでやるならコード2つだけで歌えちゃう曲。でもそういうシンプルな……ロックンロール欲っていうのかな? そういうのが出てきちゃった曲だと思う」

--パンク・アティテュードは常にあるとして、そこに入ってきたロックンロール欲は、自分をどのように変えるものでした?

「難しいな……。まずね、自分のパンク・アティテュードっていうのは、ジョー・ストラマーの真似をしてるわけじゃないの。やっぱり東京で生まれた40代の男として等身大のことを、なるべく歪められることなく出す。それが結果的にインディペンデントで、ユニークであれば理想だけど、ともかくそれが俺のパンク精神だと思っていて。だからパンクパンクと言いつつ、別にオリジナル・パンクの人たちの思想を借りてるわけでは全然ない。たまたま似てるなって思うだけで。でね、話したことはないんだけど、たぶんエルヴィスも似てるんだと思うの」

--ほう(笑)。

「なんでクラッシュがああいう音を鳴らしたか、ピストルズがああいう音を鳴らしたかを、好きだったら考えるでしょ? で、ピストルズ、クラッシュ、ダムドあたりのアティテュードをパンクと呼ぶようにはなったけれども、ビートルズだって、その前のエルヴィスだって、ジョニー・キャッシュだって同じようなものは持ってたと思う。パンクっていう言葉は、ある年代に、わかりやすくひとつの形に落とし込まれたもの。でもいつの時代も尖ってる人はいて、そこに影響を受けてさらに尖ったものを作る人たちがいた。その単純な構図を、ロックンロールを聴くことによってすごく考えるようになったかな」

--なるほど。パンク・アティテュードは突き詰めれば自分自身に行き着く。でもロックンロールを見つめることは、先人の音楽と、そこにあった生き方を想像することになる。

「そうそう。なんでこの人はこうしたのかってね。エルヴィスが50年代にギター持ってテレビに出て、腰をクネクネさせることがどれだけ卑猥だったか」

--下半身は絶対テレビに映せなかったそうですね。それぐらい衝撃的で問題視されたのがエルヴィスだった。

「そう。どれだけタブーだったのか。ほんとに型破りだったんだと思う。だから袖にフリフリつけてラスベガスで歌ってたオジサンじゃないんだよ(笑)。そこを汲み取りたいし、そこから派生したフォロワーや文化にも魅力を感じる。……これ俺が話すよりも、音楽ライターさんが原稿で歴史を説明してくれたほうがよっぽどわかりやすいかもね。自分でも説明つかないの。俺のロックンロールとは、っていう感覚」

--でも、楽しいでしょうね。そこは想像できる。

「そう! もう今までにない感覚なの。45年間生きてきて30年ギター弾いてるけど『うわっ、俺はなんでここに気付かなかったんだ!』って思うことがほんとに多い。それはこの箱モノギターを持ってから感じたこと。でもこのギターにハタチの時に出会ってたら今の俺はいなかったわけだし、もっとベタなロカビリーおじさんになってたかもしれない。そしたら自分の魅力は発揮できなかっただろうから、これはこれでいいんだな……っていう自問自答をね、夜な夜な換気扇の下でタバコを吸いながらやってる(笑)」

--あの、不躾なこと言っていいですか? ギタリストって単純ですよね。

「あはははははは!」

--モノ言うパンクスとしての横山健、ピザオブデス代表の横山健は、今の世の中とか自分のポジションを確認しながら常にいろいろ考えている。でもギタリスト横山健っていうのは……。

「ものすっごく単純(笑)。確かに。モノ極める人って単純なのよ」

さぁ、どこまで存在意義はあるんでしょうか----

--曲調の変化については納得ですけど、歌いたいこと、伝えたい主張っていう意味ではどうでしょう。たとえば一曲目の「Dance, Sing, Then Think」は、昨年の取材でも話していたことですよね。

「そうそう。だいたい歌詞って物事の本質がどこにあるかわからないまま書いて、後から気づくことが多いんだけど。でもまず今回は、自分が今まで取材やステージで言ってきたことをそのまま書きゃいいんじゃないかと。それはひとつあったかな」

--ただ、鋭い主張もなるべくユーモラスに伝える、っていうことは意識したんじゃないかと。

「確かに。伝わり方もあるし自分でも残したい形はあるから、お説教みたいな曲にはしたくなくて。一曲目は確かにそうかもしれない。すっごい真面目に考えてることをちょっとユーモラスに書いた曲。やっぱり『Best Wishes』はヘヴィだったし、そういう明るさを俺自身が欲していたんだと思う。別にそこまでポップに見られたいとも思わないんだけど。でもまあ、シリアスの一歩手前で、まだジョーク言える余裕もあるぐらいの精神状態で」

--次の「~Radio」は、さっき言ったロックンロールの歴史と、自分の現在と、最初に話したロックシーンの現状がいろいろ詰まっている歌詞で。

「そう。ここには自分のノスタルジーがすごく入ってる。僕、ラジオっ子で、AMもFMもよく聴いたし、毎週ヒットチャート記録してたぐらい。そういう自分の風景と、あとは自分とラジオという存在を重ねあわせて、さぁ、どこまで存在意義はあるんでしょうか、っていうことを擬人化して書いてみたり」

--はっきりと“ずいぶんボロボロになったな”とか“いつまでも人に必要とされるのは難しい”って書いてますけど。

「はい(苦笑)。それもね、この2年半のライブで感じたことのひとつ。日の丸を掲げてギョッとされるのと同じくらい、自分の年齢を考えた。世の中では本当に責任ある世代だけども、音楽家としてはだいぶ古くなってきてるんだなっていう。実際ね、必要とされるかどうかは結果論で、意外と必要とされてないんじゃないかって思うこともあるし」

--コラムでも最近は自虐的に書いてますよね。それは、今までずっと一線を走り続けてこれたから感じることだとも思いますが。

「うーん……でも振り返ってみると一線じゃない。二線かもよ? 一線っていうのは、北野武さんとかのライン。俺はあくまでもライブハウスとか、パンク/ラウド系の一線であって。それってすごく小さなことなの。そこを最近は考えてるのかもしれない。これはさっきの、ロック自体がすごく小さいものになったっていう話にも繋がるんだけど。だから自虐になるのかな」

やってやるよ、やれること全部----

--でも諦めてないですよね? 表向きはネタにしつつ『いやいや、やってやるでしょう』って気持ちが裏にはあるはずで。

「うん。やるよ? それはもう、やれるチャンスがあるならとことんやるし。やってやるよ。やれること全部、思いついたこと全部やってやろうって思う。だから実は、昔よりもモチベーション高いかもしんない。特に自分は若いうちにいい時期を過ごしたわけだから、こうやって40半ばにもなって……鳴らす音楽スタイルも感性も凝り固まってしまったと思う。今の10代20代の子が新しく鳴らすような音は、俺にはまず鳴らせない。で、それを甘んじて受け入れるのが普通なのかもしれないけど、俺はどうやったらそいつらの視界に入ってやろうか考えてる(笑)。どうやったら若い子たちの隙間に、自分のこのキャラのまま入っていけるかなぁって」

--入りたいですか、10代20代の隙間に。

「入りたい入りたい! 入りたいよ(笑)。入りたいと思わなかったら、少なくとも人前に出ていかないと思う。音楽はやってるかもしれないけど、こんなにツアーしたりフェスに出たり、インタビュー受けて自分の考えを発信してもらうなんてこと、やってないと思う。もっと細々と作品出して横山健アーカイヴみたいなものを作ってるかもしれない」

--そういうアーティストも実際いますよね。ファンクラブ限定に近い活動だけど、そこでお互いが満足できる。たとえば氷室京介さんは、今更フェスに出ないし雑誌のプロモーションも必要ない。でもコンサートは毎回ファンで満員になるし、高い物販も売れるから興業として立派に成立すると。これはまったく不幸ではない話だから。

「あぁー……それはまだやりたくないな。まだ、じゃなくて、俺のやりたいことじゃない。もちろんコアファンに向けての発信って、受け取るアイテムとしてはすごくいいと思うんだけど。でもまだ、広げる作業はしたいな。そこの熱は衰えないし、むしろ昔よりも必要とされてないぶん……っていうとまた自虐的だけとも。旬じゃない……っていうのも自虐ネタっぽいけど(爆笑)。でもね、たとえばSEKAI NO OWARIだとか、どう考えても存在感で負けてるわけでしょう。俺は負けてるなんてこれっぽっちも思わないけど(笑)、一般的にね。明らかに彼らのほうが若い子の感性に引っかかる。そんな中で、2つも3つも上の世代である俺が何をするのかって、それはここからやり甲斐になっていく気がする。それはメロディとかサウンドの話じゃなくて、どんな人間であるかっていうことが重要なんだろうし」

45歳の男として、自分が残せるものを伝えていく----

--今回のシングルからの横山健は、今までと違うタームに入ったなと思います。何かに対してアゲインストする時期ではない。もうやるべきことが完全に見えているし、ただ自分の生き方を伝えることだけが勝負だっていう。そういう意味では最終章だとも感じたんですよ。

「………どうだろう? まだ自分ではわかんない。たまたま今そういう時期で、この先また変わったり、ワケのわかんない闘いをするかもしれないけど。でもね、自分が残せるものを全力で伝えるっていうのは確かだと思う。誰もが年を取って古くなっていく、引退して死んでいくのはみんな平等なわけだから。だったら若い世代に対して……若い世代っていうよりは、自分に子供がいるっていうことが大きいのかな? この子たちが大人になった時にどういう世の中を残せるか、どういった音楽を残せるか、どういった表現を残せるか。それを考えるのはやっぱり45歳ならではだと思う。3曲目の「Never Walk Alone」なんて、まさにそういう曲で」

--これは、いつか大人になる君へ、っていう手紙のような曲ですね。

「うん。夜中に換気扇の下でタバコ吸っててふと思ったの。俺が今死んだとして……今長男が10歳で次男坊が6歳なんだけど、もし俺が死んだらどう思うかなって。それを書いてみた。その思考には今20代でウケてるバンドが誰だとか、そういうことはまったく関係なくて」

--ただ、親として残せるものを精一杯考えるだけ。

「そう。親として、45歳の男として、君らの人生に僕から言えることはこうだよっていう。で、すごくこだわったのは“Bedroom window”っていう言葉。ただのルームウィンドウじゃなくて、ベッドルーム。部屋から出るんじゃなくて、寝室、自分のちっちゃい部屋から飛び出すんだよっていう」

--あぁ、その違いは大きい。

「これは自分が見た風景で、だからここにもノスタルジーは入ってる。自分が子供の頃に理解できたとは思わないけど、もしかしたら俺が子供の時、大人に言って欲しかったことなのかもしれないし」

--やっぱり表現のスケールは変わりましたよね。今回のサウンドの明るさ、しいて比較すればセカンドやサードに近いんだけど、中身の深さが違う。やっぱりこれは『Best Wishes』以降の音だなって思いますね。

「うん、それは俺も思う。繋がりはすごくあるかな」

--最後に「Smile」のカバーについても訊いておきましょうか。

「うん、このカバー、歌詞の世界観は「Never Walk Alone」とちょっと似てて。すごく優しい曲、辛い時こそ笑わなきゃダメだよっていう優しいポジティヴさに溢れた曲だから。それをパンク・カバーしたら面白いじゃんっていう、そういうきっかけなんだけど。あとはド頭にあのギターを弾きたかったっていうのもある」

--あぁ、なるほど(笑)。

「箱モノのね。あれはグレッチで弾いてるんだけど、とにかく箱モノのギターでやりたかった(笑)。それもデカいね、今回の曲全部。レコーディグは15曲をまとめて録ったんだけど、先にシングル用に作るとかじゃなくて、2年半の間に作った新曲たちを一気に録って振り分けたのね。だからどの曲もマインドは一緒だと思う」

--じゃあ、この4曲がまさにアルパムの伏線。期待してますね。

「はい。楽しみにしててください!」

INTERVIEW BY 石井恵梨子