《1.intro》
――3年半も待った上に『intro』があって、また焦らされるという(笑)。
二人「ははははは!」
健太「歌まだか!っていう(笑)」
――何でイントロを付けたんでしょうか。
中途「10年間やってきたライヴの中で、SEって殆ど使ったことがなくて……前のレコ発の時には一曲使ったりしていたし、その時々で面白がって掛けたりしますけど、決まっているものはないんですよね。このSEが流れてきたら、このバンドが出てくる、みたいな曲が。メンバーの趣味が統一されていないからだと思うんですけど。だから、今回のレコ発のライヴは、イントロとかあったら面白いんじゃないっていうところから作りました。もうライヴでは、ちょこちょこやっているんですよ」
《2.Cast Off Tinsel Lie》
――《Time has come.》、時は来たと自ら宣言するという、久々のアルバムの幕開けに相応しい歌い出しですね。
中途「それ、全然意識してなかったですね!(笑)」
――嘘っ!?(笑)。
中途「僕、これが一曲目に来るとかは考えていなかったし。ちなみに、一年くらい前からライヴでやっています」
健太「今作の中では、一番最初にできた曲です」
――というと、いつくらいに?
健太「『FIGURE』を出して、その間にオムニバスのために2曲作って、それと同じくらいの時期に書いたんですよね。ゴツいメロディックハードコアを書きたいと思って。当然、僕も一曲目の感覚はなかったんですけど、曲順を決めてる時に、確かに、ここ以外に何処にくんねん?って感覚になりましたね」
《3.The Brilliant Future》
健太「結構ひねくれた感覚で作ったんですよね。同時進行で3曲くらいストレートな曲を書いている時にに、1曲くらい王道ではない曲を書きたいと思って。だからこの曲、明確に何処がサビとかもないし」
中途「レコーディングの時の面白かったんが、人によってサビだと思うところのの感覚が違うんで、エンジニアさんに、『サビを聴かせてもらっていいですか?』って言うと、『サビって何処なの?』って言われたっていう(笑)」
――サビらしくしなかったのは、敢えてなんですか?
健太「そうですね。僕の中でしっくりくる形の曲って、Aメロ、Bメロ、サビの順番でくる曲ですけど、それが一番いいのかっていったらそうではなくて、違う曲の良さもあるやろって、もっと頭を柔らかくして書きました。サビが二つある曲って面白いやんって」
中途「そやね。Aメロはここやろなってはっきりしていると思うんだけど」
健太「その後が何なんか(笑)」
――でも、メロディがいいから、聴きづらい感じはないですよね。
健太「うん、メロディに凄く意識を持って行きましたね」
――歌詞に関しては、どうでしたか?
中途「そうっすね。今作の歌詞はトータルで、素直に強さも弱さも出していこうと思って書いたんですけど……この歌詞は展開が多いんで、合わせるのが難しかったです。起承転結の、何処に結を持ってくるかっていう。まあ、題材が決まれば流れは決まるんですけど、自分は文章自体が上手くないんで(苦笑)、いろいろ考えました」
《4.Story》
――前回のインタヴューでも出てきた、今作の肝になっている曲ですね。
健太「はい。こいつがこの形になって、他の曲がバーッと定まり出したところはあります」
――これぞキラーチューン、っていうものを書こうと思っていたんですか?
健太「そうですね。そこのハッパは自分で掛けました。みんなの首を縦に振らしたい意識は、持って書きましたね。でも、最初のサビ全然違かったんです」
中途「で、僕が、この曲のサビはライヴでこういう景色が見たいんだって言って、健太が変えてきてくれたのがこの形です」
健太「サビまでは結構早いペースで作れたんだんですけど……」
中途「健太は完璧主義なんで、僕がこういうことをしたいって言うと、10じゃなく12で返さんと嫌なタイプなんですよね。僕が言った通りをやるだけでは満足しなくて、僕がこれめちゃめちゃええやん!って言うところを目指すんです」
健太「だから、『Story』の音を渡した夜に電話が掛かってきた時の、どうなんやろう?感はハンパないですよね(笑)。いいって言え!って思いながら(笑)」
――で、どうだったんですか?
健太「言ってくれましたね!」
中途「僕が思っていたものと、全然違う形で返ってきたんですけど、これは絶対にやりたいって思いました」
健太「僕は電話しながらガッツポーズですよ、よっしゃ!って(笑)」
中途「他の4人も首を縦に振りましたし」
――歌詞もライヴの光景が描かれていて。今作までの3年半、F.I.Bがライヴを大切にしてきた思いが、歌詞にも曲にもキラキラと表れていると思いました。
中途「前のインタヴューで、自分らはマイペースで、最終的には何でもポジティヴに受け止められるって言いましたけど、何も考えていないわけではないんですよ。自分らの生活における一本のライヴの大切さもリアルになってきているし。このご時世で、やりたいことをやれているわけだし、みんなもそういうことに、もっとチャレンジしてもいいんじゃないかって意識で書いたところはありますね。音楽だけに限らず、自分のやりたいことに貪欲になってもいいんじゃないかって、僕は最近余計に思うので」
――それは、ステージの上に立つことを自覚して、キッズを引っ張っていこうという意識の高まりによるもののような気がしますね。
中途「あぁ、そこの変化は今まででよりも強く提示したかったですね」
――うん、強く出てると思います。
健太「俺もそう思う!」
《5.Trip》
――この歌詞もバンドストーリーなのかな、と思いましたが。
中途「僕、楽曲の受け取り方も、歌詞の受け取り方も、10通りあっていいと思うんですよ。歌詞を聴いてポジティヴになる人もいれば、感慨深くなる人もいれば、それぞれだと思うし。だから、あくまで僕のイメージの話なんですけど……今まで一緒にバンドの世界でやってきた奴らが、京都の中でも、年々減っていっているんですよね。それがダメだと言うつもりはないんですけど、そういうことも振り返ってみて……なんちゅうんすかね、楽しいばっかりでもなかったなって(苦笑)。最終的に今、周りにおる奴らの有難味とかも感じながら書きましたね」
――あと、歌がクリアに聴こえます。
中途「あぁ、テンション的に、Aメロとかはメロディが前に出るイメージは僕もありますね」
――F.I.Bは速くて激しいだけじゃないことがわかる曲というか。
健太「そうですね。僕もそこは持ち味やと思ってます。この曲に関しては、ほんまにメロディを意識して……今までやと、単純に自分の思う気持ちいいメロディを追求する感じやったんですけど、オムニバスの曲をレコ―ディングしたくらいから……言うのが気持ち悪いんですけど(笑)、こいつの声で聴きたいメロディを書こうっていう意識が出たんですよね」
中途「気持ち悪い言うな!(笑)」
健太「だから、今までのミドルテンポの曲とはテイストが違うと思います」
中途「ああ、そやね。ありがとう」
――言い方がさらっとしてるなあ(笑)。
《6.Burn Down》
中途「これは最後の最後に曲順が変わったんですよね。元々この位置は、『Do It More Fool』だったんです。曲順はメンバー4人とピザ・オブ・デスにお任せしていたんですけど、ここだけ、もうちょっと攻めれへんかなって思ってたんです。そうしたら、みんな思ってたことは一緒だったみたいで、この曲順で返ってきたんです」
健太「まさにこの(インタヴューをしているピザ・オブ・デスの)部屋で話していました(笑)。マスタリング前の音源を延々流して、一旦この位置は『Do It More Fool』に決まったんですよ。で、リーダー(中途)に送って。でも、一日置いてもう一回聴いたら、全員一致で入れ替えた方がいいんじゃないかっていう話になったんですよね」
――ここでこの爆発的な曲が入ることによって、コントラストがつきましたよね。
健太「めっちゃ怒ってたもんな、社会に対して」
中途「怒ってないよ!(笑)」
健太「レコーディングの歌録りの時に、僕は歌詞を見ながら聴いてるんですけど、わりと最初から、こういうふうに歌うねん俺はっていうイメージがあったみたいで、早いこと進んだんですよね」
中途「早すぎるから、俺、大丈夫なのかなって思った。健太が聴いてないんじゃないかなって(笑)」
健太「あまりにもハマってるから、俺もテンション上がってきて、煽りまくって、『ええねえ、怒ってるね!』って(笑)。そしたら、歌い終えた途端に、『お前ちゃんと聴いてないやろ!』って言われました(笑)」
中途「結構、健太は録りに厳しいんですよ。ピッチとか。ですけど、この曲は何も言わへんし、適当になってきてるんちゃうかって(笑)」
――(笑)。歌うイメージが沸きやすかったんですか?
中途「あんま意識はしてないんですけどね……よく練習したのかなあ? 口づさんでたというか」
――やはり、アルバムの中に、こういう怒りの塊のような曲は欲しかったんですか?
健太「なんか、図太い曲……マイナーコードの曲は欲しいなと思っていて。もう『Cast Off Your Tinsel Lie』ができている時に書いたんですけど、サビでちょっとゴツいだけではない曲にしたいなと思って書きました」
――歌詞もストレートですよね。
中途「そうですね。初めて聴いた時に、真っ直ぐな歌詞を書きたいなって。楽曲的にも、拳がガンガン上がる光景を生みたかったし」
――はっきり、政治に関して言及していますが。
中途「元々はパンクロックって、そういうことを歌ってきたと思うんですよね。今の時代は、いろんな受け取り方や表現の仕方はあって当然だとも思うんですけど、自分らが何で今こういう音楽をやってるかっていうところで、聴いてきたものを踏まえた上で歌詞を書きたいと思ったところはあります」
――歌わずにいられない時代であるとも思いますしね。
中途「そうですね、確かに」
《7.I’ll Stay By Your Side》
――歌詞も曲もパーソナルな響きがあって、新鮮でした。
健太「そうかもしれない」
中途「僕の歌詞のイメージは、強さばっかりやとボロが出ちゃうのが僕なんで(苦笑)、一人間として浮き沈みがある中で、強さじゃない部分も見せられる人に対して思っていることを書きました。曲としては、Aメロからでサビっていう展開で。Aメロのテンションは静かな感じやと思うんですけど、サビでバチンて速くなるっていう。結構あるパターンやと思うんですけど、自分らでやるのは初めてなんで、ライヴでどういう感じになるか楽しみですね」
《8.So We Can Claim》
――痛快なファスト&ショートチューンですね。
健太「わりと曲も揃ってきた段階にできたんですけど、ずーっと家でギターを弾いていて、煮詰まってくると、だいたいイントロのフレーズを一人で弾き倒して、はっちゃけてる時があって。むちゃくちゃ気持ち悪い絵面なんですけど(笑)。その中から、スカっとした曲を入れてもええんじゃないかなって。全編を通してゴリっとさせるより、途中で綺麗なメロディがきてハッとさせるようなことをやれば、短い曲でも僕ららしさが出るんじゃないのかと思って書きましたね。ただ、長くせえへん?って話もあったよね(笑)」
中途「あぁ、曲的にサビのメロディが一回で終わっちゃうのが勿体ないと思って、ショートチューンじゃなく、がっつり仕上げてみいひんか?っていう話もして」
健太「最終的には、こっちの方がいいって言わせてもらいました。どっちがよかったかわかんないですけどね、僕自身も。でも、頭捻ってる段階で出てきていた長いものと、完結している短いものを秤に掛けると、短い方が綺麗に聴こえたので」
中途「あと、この曲、いろんな人に参加してもらって。メインヴォーカルも、僕らの仲間のMEANINGのHAYATOが歌いに来てくれて。コーラスでは、THINK AGAINとか、京都の先輩のKiMとか、DRADNATSのヤマケンくんとか、いろんな人らが歌いに来てくれて。嬉しかったです(笑)」
――歌詞はシリアスですよね。
中途「そうですね。テーマとしては、原爆などについて、日本人として言えることがあるんじゃないかって思ったところだったりします。自分自身は経験してなくても、授業で学んできたし、広島や長崎という場所があるし、恐怖を経験している国に住んでいるわけで、発信できることを強い姿勢で出したいなって思いました」
《9.Answer》
――あらゆる曲が入っている今作の中でも、特に異色な一曲です。
健太「そうですね」
中途「これ、初めて合わせた時にみんなハテナマークでしたもん。これ、2ビートにせえへん?って言ったりして(笑)」
――アイリッシュっていうのは、狙ったんですか?
健太「完全に狙いでした。そういう曲をやりたいと思って。僕、『パイレーツ・オブ・カリビアン』が大好きで、そのテーマソングを一人で、ギターを6本も7本も重ねてMTRで遊んでいて……めちゃくちゃネクラな遊びですけど(笑)。ハモリにハモリ倒しているうちに、頭の中のイメージとか、手癖がそういう寄りになっていて、この曲が自然に出てきたんですよね。そこで、こういう曲はやったことないし、やりたいと思ってみんなで合わせたら、これどうなん?って言われて(苦笑)」
中途「でも、僕、凄くほっとしたんが、アイリッシュを狙ったんですか?って言ってもらえて。変なふうに受け取られたら嫌だったから」
健太「ただ、こういう曲って、だいたいハッピーじゃないですか。僕は、F.I.Bでそれはやりたくなくて、逆に渋くしようっていうのはめちゃめちゃ意識しましたね」
中途「うん、こういうテンポだからこそ、クールに見せたかったんですよね。ハテナマークが浮かんだ時は、まだサビができてなかったんだよね。サビができてからは、そういう懸念もなくなりました。最終的にはギターのハモりとかで、ハードロック路線も出てきて」
健太「レコーディングに入るひと月前くらいに、JJ(G)が家に来て、この曲の確認していて、あいつがイントロを弾いている時に、面白がって僕がギターでハモったんですよね。それが、お互いに生音で弾いていたんですけど、響きも素朴でいいじゃないの!ってなって。ただ、歪んだ音で聴くのが、レコーディングが初めてだったんです。あいつが弾いてるのを聴きながら、ちょっとだけ笑うてしまいました(笑)。こんなことになるんや!って」
中途「僕なんか、録りの時までこうなるのを知らなかったんです。どうやろ?って言われて、いや、入れるべきでしょ!って(笑)」
健太「最終的に、僕の想像とは全然違う響きになりましたね」
中途「うん、はじめから大きく変わった部分はないんですけど、違う色に落ち着いたよね」
――無理して幅を広げた感じもせず、ちゃんとF.I.Bらしく聴こえてきますしね。
中途「最終的に特徴のあるメロディを考えてくるんで、僕の中でもまとまったりするんですよね」
――歌詞も、ポジティヴだけど思わせぶりで。
中途「他の曲もそうやけど、一曲一曲振り返ると、10年間経験してきたことが出てるなあって。まぁ、歌詞については、さっきも言ったけど、いろんな受け取り方をして欲しいから、あんまり深く語りたくはないんですよね」
――だから思わせぶりに聴こえるのかも。
中途「そうかもしれないですね(笑)」
《10.Do It More Fool》
――これはライヴがイメージしやすい曲ですね。Aメロでハンドクラップが起きそう。
健太「あぁ、なるほど」
中途「俺、そのイメージなかったんでやってみます(笑)。この曲はできるのがめっちゃ早かったよね。こういうの作ってみてん!みたいな(笑)」
健太「このタイトルだし、聴けばわかる奴はニヤっとすると思うんですよね(笑)。僕はそこを……狙ったわけじゃないんですけど、単純にやりたかった。この曲はそれに尽きますね。ほんまに、僕らが聴いてきたメロコアって、特にどうサビがあるわけでもく、サーッと流れていく感じだったし、そういう曲を作りたかったんです」
中途「そやね。俺らが、こういうバンドしたいねん!って聴いてたような曲を、自分らでやってみようっていう」
健太「うん。この曲は、一番僕発信でライヴのことを考えて書いた曲かもしれません。他の曲は、聴かせてから、ライヴでどういう光景が見たいからこういうアレンジにしようっていう提案を、リーダーからされたりしますけど」
――歌詞もライヴのイメージが沸きますけど。
中途「でも、ライヴをイメージして曲を書いたっていうのは、今、初めて聞きました。バンドをやっていると、発想が一緒になってくるんでしょうね(笑))」
《11.Get Back》
――これぞ、熱く力強いF.I.B節という曲ですね。
健太「アルバムの真ん中に来る曲を模索している段階で、これやろ!って思って書きました(笑)。とにかくサビで力強いメロディを持ってきたいと思って」
中途「僕も、聴いた時にF.I.B節だと思ったんですけど、サビのアプローチは今までと違っていて。こういう曲でも、サビは凄く繊細に作ってくるのが今までの流れでしたけど、そこを強く書いてきたなって」
――歌詞にも、強い意思が籠っていますよね。
中途「そうすね。そういうイメージで書きましたね」
《12.Strings》
――こういう曲があることによって、アルバムが聴きやすくなるんだろうなって。
中途「うん。健太から、マイナーコードのミドルテンポの、こういうテンションの曲って、どんだけでも出てくる感じがするんですよね(笑)。また、そのメロディが気持ち良かったりするんで。僕、初めて聴いた時に、めちゃめちゃ好きやわって言った記憶があります(笑)」
健太「だいぶ前からあったもんね。トータルが出来上がったのは後やったんですけど。実は、この曲のイントロって、元々は『FIGURE』に入れた曲のイントロだったんです。結局、その曲は違うイントロになったので、使わへんかったイントロを持ってきたんですよね。ギターのフレーズやコード進行は、まんまで。『FIGURE』の……」
中途「どの曲かは内緒にしておいた方が面白いんじゃないの?」
健太「そやね(笑)。で、一曲がつっとじゃなく、そっからスタートさせて、後にいくにつれて曲が構築されていくイメージで作りましたね」
中途「だから、ライヴで楽しみですね。イントロから『FIGURE』の、その曲に繋げることもできるし。やっていくうちに、どっちの曲がくんのやろ?ってツアーの後半には思われるようになるのかなって。なかなか変わった出来上がり方やと思います」
健太「どういうサプライズを起こせるのか……上手いな、俺(笑)」
《13.Beginning Sign》
――優しいイントロから、みずみずしい本編に雪崩れ込んでいく、終盤に相応しいドラマティックな曲ですね。
中途「この曲が、前回のインタヴューで言っていた、ピザ・オブ・デスとの打ち合わせでできた曲です」
健太「それがなかったらこれはできていなかったです。もっとお前のやりたいことをやりまくった一曲を作ってみたらどうかと言われて、制限を全部取っ払って書いた曲なんです」
――なるほどね。歌詞もシンクロしていて、ピュアな感じが全面開放されていますもんね。
中途「素ですね。打ち合わせしなくても、繋がるところは一緒なのかな(笑)。結局一つのことが終わっても、またすぐに何かがはじまるなってずっと思ってて、それが楽しかったりするっていうことを歌っています」
――後半にグッと変わる歌もよかったです。
健太「そのへんも、思ったことをそのままやってやれと。ギターもややこしいけど、今までとの繋がりや、ライヴのことも考えずに作りました」
中途「だから、細かく聴いてもらうと、余計に面白いと思います」
《14.For All Time》
――最後は、スカッと抜けて終わっていくような印象を受けました。
中途「健太にも、歌詞的にも最後でいいんじゃないかなって言われましたけど、歌詞は、流れを全く気にせず書いたんですよね」
健太「僕も、曲を最後と思って書いたわけじゃないんですよ。これは、『Story』の位置に入るような曲を、頑張って捻り出している時に書いた曲なんです。いいメロディで、真っ直ぐなメロコアをっていう。でも、できあがって他の曲も揃ってから聴いてみると、これで締めるのが一番、綺麗なんじゃないかなって」
中途「曲の立ち方も変わりましたね。最後に持ってくることによって、より成り立ったっていう」
――最後も似合うけど、歌詞も相俟って、続いていく余韻も残すんですよね、この曲。
中途「結局は自分次第やなって。それは、これからも変わらへんし。自分がどういうふうにするかで、見えるもんが変わってくるやろうなって。やし、このアルバムって、先が見えた上で成り立ってたりするんかもね」
健太「かもしれんね」
photo by yuji honda
――『FIRE CRACKER』を作るにあたって、初期段階にイメージしていた全体像は、どんなものでしたか?
中途「僕と健太が一緒かどうかはわからないですけど、こういうふうにしたいっていうのはあったと思います」
健太「僕はちなみに、6、7曲できるまでは、全然見えてなかったです。最初は……そんなこと、『FIGURE』の時には考えなかったんですけど、真ん中にくる曲ができるまでは、正直どういうアルバムになるか不安でしたし、どういうふうにしたいっていうのも、明確にはなかったです。ただ、一曲一曲いいと思うものを作っていて。それで、真ん中にくる曲ができた時に、全体像が見えました。それが『Story』なんですけど」
――おぉ、キラーチューンですね。
健太「そうですね(笑)。僕らにとっては全部が可愛い曲たちなんですけど、『FIGURE』の時になかった感覚があったんですよね。何やろな……みんなを『うん』って言わせたいっていう。『Story』ができたことによって、この曲はこういう奴に好かれればいいやっていう開き直りができたっていうか、それぞれの曲のキャラ立ちを上手くさせられるようになったかな。それまでは、一曲に全部いいとこ出したい、みたいな感じだったから。曲を作ってる時も、リーダー(中途)が、ここはこういう方がいいんじゃないかって注文をしてくるんですけど、僕としてはまだ真ん中にくる曲ができていないから、全部そこを目指して作っていたんですよね。だから、リーダーの提示してくることに対して、どうかな?って思っちゃっていました」
中途「今回はそうですね。『FIGURE』の時は、途中段階の打ち合わせで、この曲はこうしたい、この曲ではこうしたいって言って、変えてきてもらっていたんですけど、今回は、健太に打ち合わせで首を傾げられる回数は多かったです。健太は、6、7曲できるまで全体像が見えてなかったって言ってましたけど、僕はライヴの光景を重視したんで、最初から前作とは違う考え方ができたんですよね。だから、意見が当たる、ってまではいかないですけど、じゃあこうしようっていう結論がスムーズに出なかったところはあります」
健太「かなり首を捻ったもんね、スタジオで。でも『Story』ができてからは、みんなの、この方がいいんじゃないかっていう声に、僕が素直に試す姿勢を持てるようになりましたね。余裕ができたというか」
中途「『Story』も元々、サビが全然違って。で、サビの部分に対して、僕が見たい景色を提示してできあがったのが今の形なんですよね」
――じゃあ、リリースまでに時間が掛かった理由には、曲作りに時間が掛かったところもあるということ?
中途「あったと思います」
健太「明らかに前よりも、スタジオでいろいろ試していて。最初に僕がデモで持っていったものを、スタジオでみんなで合わせるんですけど、終わってほんまに誰も喋らへんくて……全員、これどうなんやろ?って思っている時間が、ほんま多かったよね」
中途「『FIGURE』のツアーが終わってから、次にどうしていきたいかっていう5人の気持ちが、揃っていなかったんだと思います、正直。今振り返ると」
――じゃあ、『FIRE CRACKER』を制作しながら足並みを揃えていった、というか。
中途「そうやし、トータルで半々くらいで歩み寄っているバランスやと思う。プラス、今回は途中でピザ・オブ・デスに投げて、素直に感想をもらったりしました。ここのフレーズはこうしろとか、細かく求められるのは僕らは苦手っていうのもわかってくれているし、ピザのスタンスも、楽曲は自由にするべきっていうものだと思うんですけど、僕らはチームとして、この曲は自信あるんやけど、どう?って聴いてもらって、一曲一曲についてや、全体の流れも、こういうテンションの曲があればどうかなとか意見をもらって。確かに、その方が作品として面白いなって思えて、反映したところもたくさんありますし。なんで、今までの中でも一番レーベルとバンドが近い距離で、作品ができたと思います」
――枚数を重ねるにつれて、いい距離感でできるようになっていますか?
中途「そうですね。単純に僕らに経験がなかったから、『FIGURE』の時とかはゼロにひとしいくらい何も求められていなかったと思うんですよね。ほんとにざっくりした打ち合わせはあったけど。それはそれでよかったのかもしれないですけど。」
健太「俺は、この曲がいいと思うんや、って言って出してもらう感覚で二枚リリースさせてもらいましたけど、今回は、これどうやねん!ってピザに思って出して欲しかったんですよね。だから、わりと細かいところまで思ったことは言って欲しかったし。でも、アホほど細かい意見は返ってこないですけど。僕らがどういうバンドかわかってくれているから。ただ、僕の姿勢としては、そういうスタイルをとりましたね。意見を聞きたい!っていう。それをどうするかは僕ら次第だし」
中途「ここってどうなんかなって掴めへんところを訊けたりとか、そういうのは……助かってます(笑)。やればやるほど正解が見えなくなってきたところが、今回はあって。『FIGURE』の時は見えないのが当たり前で、取り敢えずやってみて、これが一番の形やっていう自信に自然に繋げていったんですけど、今回はその上で、まだ見えへん部分をどう形にしようかっていうところに目線がいったから」
健太「迷ったよね」
中途「うん、結局正解は一生わからないと思うんですけど、その判断基準として、一意見がもらえることが、面白いと思いましたね」
――話を戻すと、『Story』ができた時に見えた全体像って、どういうものだったんですか?
健太「思いっきりメロディックハードコアをやったろうっていう感覚になったんです。いろんなことがしたいなっていう気持ちがないと言えば嘘になるんですけど、ただ、今回は思いっきりメロコアのアルバムを作ったれっていう焦点の絞り方になりましたね」
中途「単純に、僕らがこの5人の体制になって、やり始めた時にこういうのがしたいなってテンポが多いんじゃないかな。聴き手側がどう受け取るかはわからないけど、そういったところでは原点回帰なところはあると思います。10年やってきて、戻ってきた部分というか。いろんなバンドとやれるようになって、こういうのもしたいな、ああいうのもしたいなってやってきて、一周して戻ってきたっていうか。元々のメロディックハードコアをやりたいなって」
健太「次にどうなるかはわからないですけど、ほんまにいち曲を書く者として、いろんなことをやって、今までと違うことをしようとしたとして、自分が好きなメロコアって『FIGURE』までのもんだったんか!?って感覚が出てきて。別のことをやるにしても、もう一枚思いっきりメロコアやっとかんと、俺は後で後悔するんやろうなって。だから、途中からは、極端に綺麗なことをしたりするより、図太いメロコア……メロディックハードコアをやろうと。もちろん自分らで10年やってきた方法でって思ってはいるんですけど」
――いろんなバンドを見たり、音楽シーンを見たりして、立ち位置を考えて、これをやるべきだと思ったところもあるんですか?
健太「どうなんやろうね?」
中途「僕は全くないですね。自分らの立ち位置とかは気にしたことないです。単純に、自分らがやりたいように素直にやるだけかな。今んとこ、立ち位置っていうのを定めたり、自分らで考えると、やることが狭くなっちゃう気がするんです。というか、立ち位置とかあるほどやれているわけでもないし、単純に音楽って素直に、やりたいように、好きなようにやってくもんかなって、ここ最近で余計に思うようにはなりましたね」
――例えば、F.I.Bって、古き良きメロコアを踏襲している、シーンの中でも希少なバンドだと思うんです。そういう位置付けも、周りに言われて気付くようなところもあるんですか?
中途「そうですね。『FIGURE』の時も、何回かインタヴューで話したんですけど、一つの作品を聴いて、10人おったら10個の考えがあって当然というか。やし、自分らでこういうことをしたいなっていうのがあっても、聴く方は自由に受け取ってもらって……否定的な意見があっても、それはそれで、自分らで受け止められるような感覚はありますね。トータル面で好きじゃないけど、この曲だけ好きっていう意見があってもいいと思うし、打たれ強くはなっていると思います(笑)。自分の中で自然に受け止められるというか。だから、狙っていたことと違うふうに思われてるな、ってムカついたりはしないですね。それは10年間変わってないかな」
――人は人、自分は自分っていう考えは、状況や時代が変われど揺らがないというか。
中途「そうですね。僕自身、好きなバンドはそういうイメージなんですよね。やることが全然変わっても、作品が好きやったら好きやし、前の方がよかったっていうこともよくあるじゃないですか(笑)。そんなもんだと思うんですよね。ただ、聴き手に合わせてバンドをどうしていこうっていう考えは、僕らにはないですね。ライヴのことは考えますよ。こういうところで、こういう景色を見たいとか」
健太「うん。だから、この曲でこういう手法を使うとかやり取りはありますけど。だけど、曲に対して、望まれてるからこうしようっていう考えは、一切ないですね」
中途「もし、変わるとしたら、ライヴで見たい光景が変わってきた時とか。今はあくまでバンド主体ですね」
健太「単純に、俺たちの音楽の趣味が変わるとかね」
――自分たち自身が変われば、音楽もやり方も変わるっていう。
中途「そうですね」
――10年目っていう節目が、今作を作らせたところも、あるんじゃないですか。
中途「意識してたつもりはないすけどね。ただ、次のアルバムのことまでもう話してるんですけど、やることガラって変わるかもしれないですし、そこは思うようにこれからもやっていきたいなって」
健太「次からもやりたいことをやれるように、この形にしたところはあります」
中途「一個のまとめかもしれないですね。10年やってきて」
――リリースツアーでは、久々に行く場所もあるんじゃないですか?
中途「ある……と思いますね。本数は『FIGURE』の時の方が全然多いと思うんですけど、新しく持っていくものがあるんで、どういう光景が見れるんやろって、楽しみですね」
――やっと新しいもの持っていける、っていう思いもありますか?
健太「僕はあります。一番あるのはリーダーやと思いますけど、前回のインタヴューで話した、メンバーの諸事情で動きにくくなった時期に、曲を書き進めようってなったんですけど、やっぱバンドの動きの舵をとってるのはリーダーなんで、早くリリースしたいっていうのはあったと思うんです。で、僕の得意のマイペースな作曲でそれを遅らせたかもしれないですけど(苦笑)」
中途「いやぁ、単純に新曲を早くライヴでやりたかったっていうだけです(笑)。音源を出す理由としても、ライヴでやりたいからだと思うんで、早く出したいなっていうのはもちろんありましたけど、できてみて、やっとか!っていう気持ちは、逆に薄れていってます。もうちょっとでツアーがはじまるな、ぐらいな。レコーディングする前とかが、早く出したいって凄く思っていて、でも今は見えたからやと思うんですけど。あと、作曲は急がせたくないんですよね」
健太「うん、そのプレッシャーは一切言葉には出さないですよね。メンバーは一貫してそうなんですけど、ただ、そういう意識を持ってくれているのはわかるんで、逆に申し訳なくなってくるっていうか。でも、九割方、一年くらい前には見えていて、その時から僕は、早く音になった状態で聴きたいなって思って、だからレコーディングの時に、一曲終わるごとに、やっと聴けるって思っていました」
――暫く出せていないことで、焦りはなかったですか?
中途「あー、さっきも言いましたけど、元々はもっと早くできてるものだったんですけど、今の時期に出せてよかったなって。その間にできたことがあるんで、一番ベストな時期が今だったとは思えるから」
――焦ってたら、こういう作品にはならなかった?
中途「今とは違うと思います。単純に曲数も増えましたし。打ち合わせをピザとした時に、トータルをどや、って聴かせたら、アルバムのヴォリュームや流れで、もう一曲増やせへんかって言われて、それでできた曲もあるんです。そういうこともあったし、自分ら的に良かったと思います」
健太「その曲は、そのやり取りがなかったら、恐らく一生出てきてないんです。」
――ライヴでやっている曲もあるんですか?
中途「まあまあやってるのは、2曲くらいですね。レコ発がはじまると、思っていた光景と違うものが見れて、楽しかったりするもんね」
健太「『FIGURE』の時、衝撃だったもん。この曲はガッツリくんねんやろなって思ってたら、静かに見られていて、え?って」
中途「初日でほんっとに驚くんです」
健太「で、逆も然りで、全然予想していないところを歌ってくれたり」
中途「ライヴ意識して作ったけど、光景が予想と全然違っていたら、俺ら何を見てたんやろって(笑)」
健太「しもたなあ、って(笑)。それも面白いですけどね」
photo by yuji honda
Vol.3.へ続く
――1stフルアルバム『FIGURE』から、このたびリリースされる2ndアルバム『FIRE CRACKER』まで、約3年半ありましたが、バンドにとってはどんな期間でしたか?
中途 年によっていろいろでした。2年前くらいは、めちゃめちゃライヴしていて、その間に新曲もはじめていこうって思っていたんですけど、ライヴと曲作りの同時進行が難しくて、去年や今年はライヴを抑えめにして。曲作りとライヴはメリハリをつけてやった方がいいんだなって……勉強にはなりました(苦笑)。曲の元を作るのは健太なんですけど、ライヴが多いとざっくりとしか進んでいかなくて。元ネタはあるんですけど、まとめる時間がなかなか
健太 そやね。細かいところまで詰めて、曲にするぞ!ってギアになかなか……ライヴをバンバンやってると入っていかないっていうのは……学びましたね(苦笑)
中途 僕がライヴの予定を組むんですけど、僕は曲を作らないんで、先のことを考えずにガツガツいれちゃうんですよね(苦笑)。ライヴを凄く入れた年は、意図として自分ら的にもいろんな場所で自分らの音楽をやって、経験を積みたいと思って、取り敢えず本数を多くやってみたんですけど、その時の感覚だと作曲と両立は難しかったんですよね
健太 でも俺は、『FIGURE』がどういうアルバムなのかが、リリースしてからある程度は時間が経たないと見えてこなかったから、ライヴをバンバンやったことによって、こういうアルバムやってんなっていうのが見えてきて、そっから次はどういうことをしようかとか、どういう作品を作るかっていうふうに考えられたところはありました
――必用な時間だった、っていうことですね。
健太 だったと思います
中途 確かに、無駄になったものはないと思います
健太 あの時間がなかったら、『FIRE CRACKER』もこうなってなかったと思う
――ライヴが多い時は、どれくらいの本数をやっていたんですか?
健太 多分、三日に一本くらいは。ライヴだけじゃなくレコーディングとか、バンドに使う日程ですけど。まぁ、ほぼライヴですけどね。一回計算したら、130本前後でした
健太 先輩に、今年ちょっと多くてこんくらいやってます、って言ったら、そんぐらいのペースが一番ええでーって言われて。僕は、無理やなって思いましたけど(苦笑)
中途 作曲に時間を割けませんからね
――さっきの話に出てきましたけど、『FIGURE』は、振り返ってみて、どういうアルバムだと思いますか?
健太 作ってるもんとしては、一曲一曲が12曲並びました、としか最初は捉えられないんですよ。この曲はこうで、この曲はこう、みたいに、曲単位でしか考えられなくて。でも、時間が経って、一曲一曲の繋がりや、アルバムのカラーとかがわかってきて
中途 元々フルアルバムを作るのが初めてだったので、経験値がない中で、流れとかも全く気にせずに、一曲一曲を集めたものが『FIGURE』だったと思うんです。その中で、ピザ・オブ・デスのチームと一緒に流れを作っていって。今回は、それに比べると、作っている時から、全体像を考えていました。一曲一曲に力を入れるところは変わらないんですけど、バランス的には、そのへんは差があると思っています
――今やピザ・オブ・デスはチームですけど、最初はプレッシャーがあったりしたんじゃないですか?
中途 プレッシャーは、正直あんま感じなかったんです。それよりも必死で、プレッシャーを感じる余裕すらなくて、取り敢えずやるしかなかったから。プレッシャーを感じた中で、考えて形にできれば、理想的なんやと思うんですけど、取り敢えずは見えへんことばっかりだし、単独作品を出したこともないし、それよりも取り敢えずは自分らのやれることをやるしかなかったんですよね、その時は。そう考えると、今は、余裕を持って考えられるようにはなってきましたね。ピザとの打ち合わせもスムーズにできるようになって、キャパシティが上がったというか(笑)
――悩むより、手と足を動かすというか。
中途 うん、考えてもやれることって限られてるんで、取り敢えずやるしかないって方向性にしかならなかったんですよね。多分、やっと『FIGURE』でプレッシャーを感じるくらいになったのかな。1stのミニ(『FILL IN THE BLANKS』) の時とかオムニバス(『The Very Best of PIZZA OF DEATH』)の時は、何も考えられなくて(笑)
健太 訳わかってなかったもんな(笑)
中途 やれることをやるしかないっていう開き直りで(笑)
――名前と音が急速に広まったことに関しては?
中途 そのへんは、単純に嬉しいとしか思わなかったですよ
――とは言え、浮かれるわけでもなく。
中途 浮かれる……余裕もなかったっす(笑)。目の前しか見えてない感じですね。ただ、求められるもんは、オムニバスの一曲(『Are you standing on?』)だけだった時は……ただ、その時に出している音源は一曲しかないですからね、ライヴでその曲ばっかり盛り上がるのは自然なんですけど、それが悔しくて。どの曲も同じくらい力を入れているし。ただ、今考えると戦う場所方向を間違えていたのかもしれない(笑)
健太 また、『Are you standing on?』は、それまでの僕らの曲とはちょっと違うんですよ。でも、それだけが一人歩きし始めて、そこには僕は物凄く戸惑いましたね。それまで明るい曲ばっか書いていて、いろんなバンドと対バンして、こういうのもカッコいいかも、と思って『Are you standing on?』を書いたら、急にいろんな人に認知されて、何処に行ってもあれだけが盛り上がるっていう……で、単独を出そうってなった時に、曲を作る上でどないしたらええねん!?と
――『Are you standing on?』=F.I.B節って思われているかもしれないけれど、違うっていう。
健太 そうです。僕が思っているF.I.B節はそうじゃなかったし、あくまでもカラーの一つで、当時の僕のF.I.Bのイメージの真ん中に来る曲ではなかったんですよね。だから、『FILL IN THE BLANKS』の曲を書いている時は、『Are you standing on?』が邪魔くさかったです(苦笑)。昔からの曲も入っていますけど。どうにかあれを越えるものを作らなきゃって思ってました
――その葛藤が収まったのは?
健太 『FIGURE』のカラーが自分の中で定まった時に、ちょっと納得できました、自分の中で
中途 ライヴでは、間もなくそういう感覚はなくなりましたね。自然にライヴを増やしていくうちに、自分らが別の曲をやるようになって、ライヴの光景としては、違う方向の楽しみも見えるようになっていったんで。今も、あの曲が一番好きやって言ってくれる人もいると思うんですけど
――また、そういう変化があっても、あくまで地元の京都を拠点に活動してきましたよね。
中途 そうですね。例えば、好きなバンドがツアーで京都に来るってなった時に、僕らの企画をやって欲しいって頼んでもらえると嬉しいし。応えられない時ももちろんあるんですけど、ライヴハウスに頼むんじゃなく、僕らに頼んできてくれるっていう……バンドの中では当たり前のことなんですけど、そういうところで、求められるものに対して、できることを広げていきたいとは思います。企画の内容だったり、そういう楽しい場所を作る上で。ただ、だからと言って、何ができているのかって言ったら、何もできていないですけど(苦笑)。自然にやってるだけっていう。でも、昔は、自然にやることもできていなかったと思うんです。目の前のことしかできなかったから。そう考えると、3年半の間でも、いろんなライヴに出て、こういうイベント面白いなって思ったら、自分らの企画に繋げたりできるようにはなってきましたね
――京都のバンドである自負って強いんですか?
中途 んー、そこまで深く、自分らは京都のバンドやねん!みたいには思ってないですね。京都が大好きで、ずっとやってきて、もっと楽しい街になったらいいなっていう考えはありますし、けど、僕ら自身、好きなバンドに、この土地のバンドだからこのバンドが好きっていう感覚がないのと一緒です。ただ、京都で自分らがずっと一緒にやってきた仲間の看板も背負ってる感覚はありますけどね
――そして、この3年半の間には、壁にぶつかった時もあると訊いていますが。
中途 あー、そうですね。ライヴのペースを下げなきゃいけない時期があったんですけど、諸事情で。でも、だからってどよーんってなるわけではなかったです
健太 あれやんな、4人で飲みに行ってんな。どないするよ?って
中途 そうですね。諸事情を抱えてるメンバーがいて、あとの4人で打ち合わせして、そいつの事情を含めて、どういうサポートをしていけるか、F.I.Bをどうしていこうかって話し合って、結局はやれることをやって、ライヴ本数が減るなら一本一本を太くしていこうってポジティヴな考えにまとまりました。バンドやっていれば、大なり小なりあると思うんですけど、それによってマイナスムードにはならないですね、うちは
――メンバーがみんな前向きなんですね。
中途 ……適当なんじゃないですか(笑)
――いい言い方したのに!(笑)。
健太 ほなどうしようか?ってなった時に、誰かが『ま、動けるようになるまで、ライヴが減るなら減るでええし』って言ったら、他の3人も『俺もそう思う』って言って
中途 さっきは適当ってざっくりいいましたけど、結局、誰が言うかですね。バンドのスタンスに対して、思ってることはみんな一緒なんで
健太 その後は、ほんまに前向きな話しかしてないですもん
中途 多分僕が一番楽観的にぽんぽん喋るタイプなんで(笑)。その時は、こういう形がベストじゃない?ってなって、それをあいつに伝えようってなって、そっからアホな話しかしなくなった(笑)。でも、そんなかでもF.I.Bは生活の中で大事っていうスタンスは前提やし、諦めムードとかには誰一人ならないんで、最悪ワンシーズンに一回のライヴでも、極論だったら年に一回のライヴでも、その一回がむちゃくちゃ凄い日になればそれでいいんじゃないかって
――止まるっていうことも考えない?
中途 それはよっぽどじゃないとないんじゃないですかね。うちはメンバーが変わるとか抜けるとかは、本人が言うしかないだろうし、今んところ、そういうのは全然考えられないですね(笑)
――あと、そういう話し合いの時に、「そんな能天気なこと言って!
って怒る人もいないっていうところが重要というか。中途 そうですね。それはこれまで、我武者羅に言い合って当たってきたから、今は意識統一ができているんだと思います
――目指す先を一つにできたというか。
中途 そうだと思います……そんな、カッコいいもんでもないですけどね(笑)。そういうふうに書いてもらえると嬉しいです(笑)。それですわ、僕が言いたかったのは
――ズルい(笑)。また、「頑張ってくぞ!」みたいに力む人もおらず。
中途 そういうのも全くないですね(笑)。やらなあかんことを、それぞれがわかってきてるんだと思います。なんで、最終的に大変なメンバーがいる時には、そいつをどういうふうにフォローしていけるかっていう話にしかならないですよね。そこを済ませばさらさらって進む話だし。まあ、うちはなんやかんや仲がいいですけど、意見が食い違う時期はありましたから
――10年経ったからこそ、今があるというか。
中途 そうですね
――活動歴が10年って、どうですか?
中途 んー……まあ、永遠の若手って言われてますからね(笑)
――実感がない?
中途 んー……単純に、自分が年とってきてるなって感じるくらいで(笑)、19、20歳の時とは感覚も違うし
健太 でも、10年やったぞ、どや!みたいな感覚もないです
中途 自然にやってきて今があるっていう
――話を訊いていると、マイペースですよね。
二人 ははははは!
中途 あぁ……バンドとしてマイペースって、初めて言われたんですけど、個人的にはよく言われますけど(笑)、そうやなって思っちゃったりするんで。でも、そういうことなんでしょうね
健太 うん、マイペースやと思う
――どうしたらいいんだろう?って流されないっていう意味でも、マイペースだと思うんですよ。
中途 どうしたらいいんだろうっていうのは、ちょこちょこ思ったりしていますよ。でも、やれてる場所が恵まれているっていうのは、10年ずっと思ってますね。ピザにはいい兄貴分がいるし、悩んだ時には京都の仲間がいるし、だから最終的にはマイペースでやってけるんだろうなとは思います
――でも、その縁を引き寄せるのは自分たちですよ。
中途 ずっとピザ入りたくてバンドをやってましたからね。そう考えると
――その希望を、叶えられないバンドが五万といますからね。
中途 有難いですねツイてましたね(笑)
健太 僕がピザに憧れたのって、ビジネスライクな部分が一切見えないからだったんです。そういうところがカッコいいなって思って。だから自分たちも、ビジネスライクなやり取りをしない、人と人との繋がりを大事に、みたいなところには、ピザに入る前から神経を使ってやってきたから。僕はあんま使えてないと思うんですけど(苦笑)、主にリーダーが。だから、悩んだ時に話を訊いてもらえたりする関係性を作れているのかな
――憧れるだけじゃなく、ピザやメロコアに学んできたんですね。
中途 あぁ、でもいい見本お手本となる人はいますね。カッコよく生きている人らを見れているのは大きいと思います
photo by yuji honda
Vol.2.へ続く