COMEBACK MY DAUGHTERS presents
"SUMMER DUDES -Back in the Summer Release Party-"
2012.09.01(Sat) 横須賀走水海岸 かねよ食堂
act:COMEBACK MY DAUGHTERS (Acoustic Set) & [DJs]
Open 16:00 Start 16:00 / Adv 3,000yen Door 3,500yen / Ticket 7/28(sat) On Sale at:Lawson (L:77402) / e+
Info:046-841-9881 (10:00-22:00) *会場に関するお問い合わせ
“当日Photo Book+CD盤を先行販売予定”
※ WEB掲載中の写真は写真集の内容とは異なります。
——中津川さんが作った1曲目の「WEEKEND」は、『OUTTA HERE』の1曲目の「Secret Castle」の作り方と言うか、曲調を発展させた曲なのかなと感じました。
中津川 そうかもしれないですね(笑)。作ったとき、僕はそんなつもり全然なかったんですけどね。僕がデモを持っていった段階では、曲と言うには正直、半分ぐらいしかできあがってなくて、あとはみんなに任せるという形でやらせてもらいました。メロディーは高本君が歌うので、彼に考えてもらいたいと思ってたんですけど、彼の歌と僕が持っていったアイディアに、こういうコードを足したらいいんじゃないかという提案を加えたことで、「Secret Castle」のような展開の曲になりましたね。
——デモの段階では、どんな形だったんですか?
中津川 そんなに違ったわけではないんですけど、僕の中ではライヴの1曲目にやれる曲が欲しいなというのがあったので、スケールが大きい感じをイメージしてました。
高本 吾郎ちゃんが送ってきたデモで、耳に残ったのが曲の頭のほうのコードのループだったんですよ。そこにフックをちょっと加えた形がほとんど展開せずに最後まで続いてたので、ぱっと聴いたとき、歌をつけてほしいというリクエストはあるけれど、これは頭から歌をつける展開じゃないんじゃないかなと思いました。それで、最初に「これぐらいまでインストで、これぐらいから歌をつけようと思うんだけど、どう?」って提案したら、「それいいね」って話になったので……まぁ、「Secret Castle」みたいにって思ってたのは主に僕でしたね(笑)。
——ああ、そうだったんですか(笑)。
高本 それとやっぱりコーラスで展開していきたいんだろうなっていうのは、デモを聴いたとき受け取れたので。
——曲の構成そのものは、ものすごくシンプルなんですけど、コーラスが加わってドラマチックに盛り上がりますよね。
CHUN2 俺のイメージでは、「Secret Castle」と(『OUTTA HERE』の)「Why」を足した感じがあるんですよ。叙情的で、壮大なコーラスがあって、高本が1分何秒から歌いだしたあとは、みんなでおもしろいことをやっちゃって、みたいなね。
——ヴォーカル・パートは繰り返さないでワン・コーラスだけでしたよね?
高本 歌が主役にも取れるし、楽曲が主役にも取れるしっていうのはいつかやりたかったんですよ。そのアイディアがばっちりはまりましたね。ただ、きついんですよ、この曲のコーラス。
——でも、ライヴでもやるんですよね?(笑)
高本 やりたいですね(笑)。
中津川 曲を形にしている時に、退屈だってワードがすごく気になりました(笑)。
——曲が退屈だ、と?
中津川 ええ、「単調なんだよな」ってみんな言いながら作ってたので、すみませんって思いながら(笑)。展開がないと言うか、いわゆるABCみたいなのじゃなくて、ずーっとワンフレーズみたいな曲なんだけど、別のところで盛り上がるような曲をやりたいと思ってたので、今回、それができてよかったです。もう大満足です。
——2曲目の「SHINING」ではCBMD流のフォーク/カントリー路線を追求していますね?
高本 僕っぽいでしょ?(笑)。
——そう思いました。
高本 これはそれこそ『OUTTA HERE』の時からのアイディアと言うか、もうちょっとプリミティヴなものをやりたいっていうのがあって。元々、M.ウォードとかアイアン&ワインとかが好きで、ああいうちょっと哀しげで、きゅっと収まってる曲をやりたいなと思ってたんですけど、ここ最近すごくでかいフォークの人が出てきたじゃないですか。
——でかいフォークの人?
高本 たとえばフリート・フォクシーズみたいな。
——ああ。
高本 どちらも凄い好みなサウンドなので影響されて作り始めたんですけど、作ってるうちに普通の位置に収まっちゃったんですよね。
——普通の位置に収まっちゃった?(笑)
高本 そんなにでかくなくていいし、劇的じゃなくてもいいし、なんかすごくぼーっとできる曲を作りたかったんです。自然の音みたいなね。写真集ありきだったから……写真集のイメージが僕は移動だったんですけど、移動と言ったってたいしてドラマチックなことも起きないし、ただ揺られたりとか、止まってまた動いたりとかみたいな時にベストマッチなものってあるなって。けっこう日常もそういうことって多いじゃないですか。そういう時にあったら活力になる音楽ってあるよなって。
——ああ、確かにそういう音楽ってありますよね。
高本 いろいろ影響を受けていた音楽とはちょっと違うものをやりたくなったんですよね。最終的にはノラ・ジョーンズとかプリシラ・アーンとかみたいなのを意識してました。
——あ、この曲? へぇ。あぁ、そうなんだ。
高本 女性シンガーですけどね。ライヴですごく燃え上がるような感じではないけれど、普段の生活の中にあると、あったかい気持ちになるような。ヤマテツの写真集もそうだなと思って。
——あ、女性シンガーと言えば、この曲って女性コーラスが入ってますよね?
高本 入ってないんですよ。
——あれ、入ってませんか?
高本 あれ彼(戸川)なんですよ。
——え、そうなんですか?!
高本 そうなんですよ。
戸川 ……。
(全員 爆笑)
CHUN2 喋れよ、おまえ(笑)。
戸川 キンタマはあります(笑)。
——すっかり女性だとばかり思っていました。もちろん、女性コーラスをイメージしたわけですよね?
高本 そうですよ。女性コーラスをイメージしたとき、「あ、いた! ビューティフル・ヴォイスがいた!」って(笑)。『OUTTA HERE』を作ったとき、このバンドはコーラスを武器にしていったらすごいおもしろいなと思って。
——ああ、それは。
高本 声質がみんな違うんですね。しかも僕と全然似てない。中でも、たっくんの声はよく通るので、「SHINING」のコーラスは、たっくんがこのバンドのメンバーになって、歌ってきたからこそ可能になったアイディアだったのかな。
——女性の声をイメージしたコーラスを加えてくれというオファーを受けた時は、どう思いましたか?
戸川 デモを聴いたとき、すでにそういう雰囲気はあったんでね。それに合わせてやってみて、実際レコーディングしてみたら、よりそういう感じに聴こえたんで(笑)。
CHUN2 だいぶ女っぽかったよね(笑)。
——この曲もライヴでやります?(笑)
戸川 もちろん、やります。
CHUN2 高本がこの曲のデモを最初に持ってきたんですけど、今回の作品を作るうえで指針になりましたね。そういう意味では一番重要な曲ですね。
——終盤の、あれはランニング・ベースって言うんですか、弾きまくるベースがいいですね。
戸川 あれはリハーサルで、他の音をよけながら適当に弾いたんですよね。そしたらレコーディングで「あれやってよ」と言われて、慌てて耳コピして(笑)。でも、やってみたら、自分でもはまるなぁって。
高本 この曲はけっこうみんなに対するリクエストが多かったかもしれない。ラップ・スティールも入ってるんですけど、ちょっと前にCHUN2がラップ・スティールを買って、使いたいと言ってて。ただ、CHUN2はもっとカントリー/ブルース調のラップ・スティールをやるつもりだったんでしょうけど、それをね、敢えて言葉にせずに自然に促すように「CHUN2、このアーティストすごくいいんだけどさ」って、ああいう感じのラップ・スティールが入ってるアーティストばかり聴かせるっていうのをしばらくやったら、もうまんまとね。「いいねぇ、あれ」って(笑)。
——あ、ラップ・スティールはCHUN2さんが。
CHUN2 そうです。
高本 素晴らしいなと思いますよ。この人、ラップ・スティールの才能があるなぁって。だけど、そう思ってたらそのあと1回赤点を取って(笑)。
CHUN2 そう、自分の曲で(笑)。
(全員 爆笑)
高本 でも、CHUN2のラップ・スティールは今回、すごくいい世界観を加えてくれましたね。
戸川 そうだね。今までにないよね。
——あまりルーツィーな感じの音色じゃないところがいいですよね。
高本 そうなんですよ。そこをぼやかしたかったんです。自分がどっぷりはまっちゃってるところをぼやかしたいっていうのもありました。
CHUN2 ちょっとシンセ的な感じの音色と言うか入れ方を意識したんですよ。
——そういうラップ・スティールの音色をCHUN2さんにリクエストするとき、どんなアーティストを聴いてもらったんですか?
高本 主にA.A.ボンディー(※メランコリックな歌を歌うアラバマの男性シンガー・ソングライター。以前はヴァービーナというグランジ・バンドのフロントマンだった)。
——A.A.ボンディー! すごい名前が出てきましたね。
高本 あの感じです。A.A.ボンディーってものすごくこういう時に聴くじゃないですか。
CHUN2 ダルダルの時。
高本 ただ、「いいよ、この人」とだけ言って、それ以上のことは言わずに聴かせたんです。だから、CHUN2の解釈で、ああいう音になってるんです。初めの頃、言ってましたけどね、「これラップ・スティール入ってる?」って(笑)。
CHUN2 聴いててもラップ・スティールなのかシンセなのかわからないんですよ。
高本 だから「入ってるかもね」って。いや、入ってるって僕はわかってたんですけど、ラップ・スティールなのかシンセなのかよくわからないってところから、ああいう音色を作り出したんだからすごい。リヴァーヴをかけたり、ヴォリューム・ペダルを使ったり……。
CHUN2 ギターのヴァイオリン奏法を混ぜたりしてね。
高本 みなまで言わずにホントによかったと思いましたね(笑)。
——かなり研究したわけですね?
CHUN2 そうですね。まぁ、なんか感覚で(笑)。
——ちょっとビーチウッド・スパークスっぽいとも思いました。
高本 ああ、それはたぶんありました。元々、自分が本当に好きな、自分にとってルーツと言えるところは出したかったので、サイケデリックな雰囲気も意識しました。プリミティヴになりすぎないように、最近のでかいフォークに影響されすぎないように居心地のいいものでと悩んだ結果、うまい具合に、どちらでもないものになりました。
——CHUN2さんの「STEP BROTHERS」はトラディショナルなフォーク〜ブルーグラスを思わせるインスト・ナンバーですね。
CHUN2 『OUTTA HERE』のツアーが終わってからと言うか、ツアー中も最後のほうは、もうそういう気分になってたんですけど、新しい奏法にチャレンジしたいというのがあったんですよ。具体的に言うと、親指にサムピックつけて、フィンガー・スタイルでバンジョーを弾いていこうというブームが自分の中にあって、去年のクリスマス・シーズンもチェット・アトキンス(※1946年にデビューしたカントリー系ギタリスト。サムピックを使ったチェット・アトキンス奏法で知られる。ロック系のギタリストにも影響を与えた)のクリスマス・アルバムを聴いてたんです。それがすごくよくて、正月もずっとフィンガー・ピッキングやってて(笑)。デモもその頃には作っちゃってたんですよ。ラップ・スティールも買ったんで、それも入れてみて。『OUTTA HERE』を作って、そのあとツアーしたことで、初期衝動と言うか、音楽が本当に好きだから演奏するんだっていう感覚を取り戻すことができたんですよね。今思えば、『OUTTA HERE』を作る前は、どこかできあがっちゃってたようなところがあったのかな。でも、またそういう気持ちになれたんですよ。新しい楽器を買ったり、新しい奏法をチャレンジしたりするのが楽しくて、デモもその延長で作っちゃったんです。
戸川 最初は歌メロも入ってたんだよね。
CHUN2 そう。
戸川 楽しみにしてたら、インストになってて(笑)。
CHUN2 3分ぐらいのポップ・ソングにしようと思ったんですけど、しっくり来なかったんですよね。一度、そういう形でレコーディングもしたんですけど、ダメだ、何か違うと思って、録り直したのが「STEP BROTHERS」なんですけど、音的には40年代、50年代のローファイな音作りを意識しました。デモがたまたま、雑に録ったもんだから、いい感じにローファイなサウンドになってて。ガイデッド・バイ・ヴォイシズっぽい、いかにもUSインディーの連中がテープで録ってるような音になってたから、それでいいんじゃないかと思ったんですけど、改めてスタジオで録り直して……けっこう凝った録り方をしたんですよ。録り音をカセットテープに落としこんで、それをまた拾い上げたんですけど、古〜い、ルーツ・ロックっぽいインタールードになりました。
高本 おもしろいと思ったのは、いわゆるアメリカン・プリミティヴ・ミュージックとは違うんですよね。
CHUN2 そうですね。
高本 なんかヨーロッパの匂いがするんです。どこかヨーロッパのトラディショナルな音楽の雰囲気があるような気がして、初めはちょっとノーマン・ブレイク(※50年代から活躍しているブルースグラスのギタリスト。ボブ・ディランとの共演が有名)みたいな感じなのかなと思ったんですけど、バンジョーの音色が英国紳士的に聴こえるんですよ(笑)。だから、「ラップ・スティールがないほうがトラディショナルだよ」ってずっと言ってたんですけど、本人が(ラップ・スティールを)入れたいって言うんで、入れてもらったら、まぁ僕の曲の時の素晴らしさを帳消しにするようなラップ・スティールを入れたので、「こんなのは赤点だ」って。自分でもわかってたみたいですけどね(笑)。
CHUN2 いや、早いうちからできてたんで、性格なのか、それからあれこれ考えすぎちゃって、いろいろなものがごちゃ混ぜになっちゃったんですよね(苦笑)。
高本 僕の中ではラップ・スティールが入ることによって、英国紳士的な感じがなくなるから、「バンジョーとアコギだけですごくいいよ」って言ってたんですけど、そしたら最後だけハワイに行って終わるというあの形になりました(笑)。
——ああ、あのラップ・スティールのピヨーンって音色が(笑)。レコーディングはCHUN2さん一人で?
CHUN2 そう、一人です。ライヴはたっくんにラップ・スティールやってもらおうかなと思って。
戸川 あのラップ・スティール、コピーするの大変そうだな。
CHUN2 あれコピーするの大変だと思うよ。
戸川 がんばってみるよ。
——それで、さっきちらっと言ってましたけど、これはホモ・ソングなんですか?(笑)
CHUN2 いやいやいや(笑)。自分一人で演奏してるっていうのとツアーのことを思い出しながらっていうのもあるんですけど、サントラっぽいイメージで作るってことで、最初に思い浮かべたのが『トゥルー・ロマンス』だったんです。哀しくて、でも、最後はハッピーなアクション映画なんですけど、あの映画のテーマ音楽が大好きなんですよ。楽しいハッピーなメロディーなんですけど、どこかマイナー調が混じってて。それがヒントにはなってるんですけど、ヤマテツの写真も叙情的なところがあって、そういう感じだったんですよね。
―― 小坂さんが作った「CRUSIN’」の、何と言うか、アーバンなR&B感覚は、これまでなかったものじゃないかと思って、ちょっとびっくりしました。
小坂 ヤマテツの写真集を見ながら、やっぱり夏っぽいものをやりたいなと思って……。
戸川 でもさ、祐亮が最初に持ってきたデモ、全然、夏じゃなかったよ(笑)。
―― 最初のデモでは、どんな曲だったんですか?
小坂 割と……。
高本 意味がわからなかった(笑)。
戸川 そもそもマイナーなのかメジャーなのかわからなくて(笑)、「これ、どうすりゃいんだ?!」ってみんなで話し合いながら、結局、祐亮が持ってきた最初のイメージを無視して作ったら、ああいう感じになったというのが僕の印象です。
CHUN2 それがレコーディングの前日ですよ(笑)。
高本 この曲はホント、おもしろかったですよ。どういう方向に持っていこうか、みんなで考えているとき、「裏打ち(のリズムを)入れたらいいかもね」って苦肉の策で提案したら、みんなけっこう乗ってきて、すぐにアレンジしてくれたんですよ。何て言うか、それこそ夏っぽい、90年代以降のデジタルな感じもするR&Bインストみたいなね。そういう方向に持っていこうよってオケヒットみたいな音も入れちゃったんですけど、それでもなんとか形になるところまで持っていったら、こいつ(小坂)がそこにものすごいアレンジを加えてきたんですよ。みんなでようやく形にしたものに対して、ヴォコーダー・ヴォーカルを乗せてくるっていうね(笑)。
小坂 ええ、まぁ、ちょっとそういうような(冷や汗)。
高本 しかも変な音のシンセを2本重ねてきて……でも、それが僕はこの音しかないだろうってくらいしっくり来ちゃって。お、すげえ。祐亮、ここへ来て挽回するかって(笑)。ホントだっさい音なんですよ、1本1本を聴いたらね。でも、なんかそのデジタル感が絶妙で。最初はみんなに投げっぱなしで、みんなでなんとか形にしたんですけど、最終的にものすごい力を発揮したのは祐亮だっていう(笑)。
―― オルガンっぽいシンセが、その最後に加えたやつですか?
小坂 あ、そうですね。
高本 あれはちょっとびっくりしましたよね。性格が出るのかな(笑)。
小坂 本当はもっとアコースティックな曲にしたかったんですけどね(笑)。
戸川 えぇ?!
CHUN2 真逆?
戸川 ちょっと待て待て(笑)。最初、もっとレゲエと言うかダブと言うか、そういうのを……。
CHUN2 違うよ。たっくんと吾郎ちゃんが「これじゃやばいやばい」ってリズムを組んで、そこから「これはアコースティックじゃないな」ってなったんだよ。
戸川 そうか。祐亮が最初持ってきたデモだと、マイナーにしないとハマらないところがあったんだけど、祐亮が持ってきた感じを尊重したいよねって流れになったんで、「じゃあ明るい方向にはめたほうがいいんじゃないの」ってぽろって言ったら、みんながそれに乗っかってドカンとベーシックはできたんだ。
CHUN2 そう言えば、たっくん常に文句言いながらやってたよ(笑)。
小坂 ホントですよね。
CHUN2 「これ弾きたくねえ」って言ってたよね(笑)。
高本 僕らもなんとか打開策を見つけたくて、いつもどおりやっちゃダメだと思って、いつもなら弾かない弦の位置からスタートしましたもんね。この辺から行っちゃえって(笑)。
CHUN2 どうにかしなきゃって、あんなにみんなが建設的になったのは久々でした(笑)。
戸川 土壇場感はあったね。
小坂 そうですね。ホントに。
高本 ただ(祐亮の)最後の挽回はハンパなかった(笑)。
CHUN2 そうだねぇ。
高本 笑っちゃったよ。
CHUN2 ケバい女が好きなんですよ。だからケバい音色を使うんですよ(笑)。曲のイメージは何だったの?
小坂 イメージしたのはビーチで赤いTバックのねえちゃんがって、そういう感じの海辺感。
戸川 それは曲ができあがってからの想像だろ?
高本 ヤマテツの写真と全然関係ない。
小坂 いや、移動している時に……。
高本 赤いTバックと移動、全然関係ないからな。
小坂 ツアーにスケボーも持っていってみたいな。
戸川 浮ついてるなぁ、おまえ(笑)。
―― でも、こういうアーバンなR&B感覚は、これまでほとんど出してきませんでしたよね?
高本 コンセプトに入らなかったですね、やっぱり赤いTバックは(笑)。そういうぶっとんだオリジリナリティーはありますよね。
CHUN2 ただ、元々、黒っぽい感じは、たとえば「Sissy Walk」とかね。ああいうモータウン的なやつはすごく好きなので。
高本 R&Bと言うか、ちょっと(アーチー・ベル&ザ・ドレルスの)「タイトゥン・アップ」っぽい感覚は元々持ってましたけどね。
―― 戸川さんが作った「URBAN COYOTE」からもR&Bっぽいヴァイブズが感じられませんか?
戸川 ヤマテツの写真を見ながら、最初はカントリー的な曲を作ろうと思ったんです。
―― あ、カントリーですか。
戸川 ちょっとトライしてみようと思って、コードにメロディーをはめてみたんですけど、なかなかうまく行かなくて、それで作りなおそうと思ったとき、高本のメロディー・ラインを最初にイメージして、キーは何がいいのか、コードはメジャーなのかマイナーなのかというところから始めて、最初に録ったデモが簡単なドラムとアコギと僕が適当に歌ったメロディーだったんですけど、そこからどうしようかなってとき、ちょうどベン・クウェラーと対バンすることがあって。2月に大阪でやらせてもらったんですけど、メンバー全員が心底楽しめるライヴだったんですよね。で、あ、なるほど。やっぱりCBMDにはこういうことが必要だなって単純に思っちゃって、個人的にそういう曲をやりたくなったんですよ。ただ、みんなに打ち出したら、どんなリアクションするかなって思ったら、意外に受け入れてくれて、じゃあ行けるかって、そこから高本に「こういうアレンジは?」って投げたら、「他の曲と雰囲気が違いすぎるからダメ」って言われて、何度かディスカッションして、いいところを取って、うまいところに収まりました。「URBAN COYOTE」ってタイトルに関してなんですけど、ベン・クウェラーとやった後、どこかのライヴで高本が酔っ払いすぎて、粗相をしたことがあって(笑)。なんだか高本がすごく反省してたんで、普通にメールを送るのも野暮だから、詩を書いて送ったんですよ。
CHUN2 フハハハ。何だそれ?(笑)
高本 それってすごくないですか?(笑)
戸川 もちそん、そんなことはその1回限りなんですけど、高本の様子を見てたら、なんかね。さくっと書いて送ったら、「なんかいいね」って返事が来て、高本が僕の曲に書いてくれた歌詞を見たとき、僕の詩に対するアンサーだと思ったんですよ。じゃあ、タイトルもそのタイトルにしちゃおうって、そんなストーリーも含め、僕の中ではできあがっていった曲ですね。
―― アンサーだったんですか?
高本 うーん、アンサーだったのかなぁ。ただ、確かに、そうだなみたいなところはあったと思います。手紙的な詩を読んだとき、確かにそうだよねって思ったところは(歌詞に)入れたんでしょうね。それと、この曲は彼がディレクションもしたんですけど、そのやり取りをしている時の彼が僕に負けないぐらい頑固なんですよ。そういう頑固者同士の答えの出ないやり取りをしている時に「戸川琢磨ってホント、モンスターだな」と思ったので、そういう意味でのアンサーもありましたね。
―― 「URBAN COYOTE」って今回の作品の中で唯一アップテンポのライヴ映えしそうな曲なんですけど、メンバー全員が楽しんでやれる曲っていうのは、やっぱりライヴで演奏して楽しいという意味ですか?
戸川 「いいね!」と自然に言えるような感覚がベンのライヴを見たとき、全員にあったんですよ。それをCBMDが今までやっていないアプローチで、どうにか表現したいというそれだけの欲求だった気がします。今までのCBMDって割と遊びがないイメージがあって、だからこの曲の最後でアドリブやっちゃうっていうのは新たな試みなんですよ。これまでのCBMDってかちっとしたことをかちっとやるというイメージがあったんですけど、そうじゃない遊びの部分を、随所随所で表現できる曲も必要だなって。頭にノイズを入れるっていうのは、高本のアイディアだったんですけど、この曲はそんなふうにその場の雰囲気でいろいろやれちゃう曲なんじゃないかと思って、中盤、ギター・ソロとベース・ソロになるんですけど、あそこは何も決めず、もう流れでやりました。基本的にベースはパンチインしてないんです。全部エフェクターを踏み変えてるんですけど、いろいろなサウンドを1曲の中で表現できたんじゃないのかな。そういう意味では、おもしろい曲にはなりました。他のメンバーも同じように自分なりの色を単純に出しているだけなので、ベン・クウェラーがきっかけでしたけど、結果、CBMDらしい曲になりました。振り返ってみると、高本に出した発注が一番うるさかったですね。たぶん今まで、そういうことを言われたことがないと思うんですよ。自分で曲を作ってるし、メロディーに関しても僕も含め全員が信頼してるし。ただ、そこからの……。
高本 からのじゃねえよ(笑)。
戸川 そういうほうが刺激しあえておもしろいのかな。
高本 ふだん、みんなにやってもらっていることを、逆に自分がやるっていうのは新しい試みでしたけど、楽しかったですね。それと、やっぱり悩むんだなって思いました(笑)。いろいろなパターンは出てくるんですけど、それを自分の落としどころと曲を作った人間の落としどころにきれいに当てはめるのってけっこう悩むんものなんですよね。たっくんの曲は、うちで何回か録りなおしました。キーが低いEだったから、いくらでも家で歌えたので(笑)。僕がやりたいと思っていた低いキーとはまた違ったんですよ。もうちょっとプリミティヴな感じでやってみたいとは思ってたんですけど、「URBAN COYOTE」はけっこうロックだし、バックのサウンドも割と音量があるから、自分のヴォーカルとしてこのキーでやって、果たして存在感を出せるんだろうかというところはありました。ヴォーカルが後乗せ感バリバリみたいになるのだけはいやだったんで、そこはがんばりましたよ。
―― この曲のギターはかなり歪ませて弾きまくっていますね?
CHUN2 そうですね。まず、たっくんってどういうイメージかなって考えたんですよ。僕の中のイメージはかなりの変態(笑)。それをポップ・ソングにどう落とし込むかがテーマだったんですけど、歌メロの中ではきれいにいろいろなノイズを使って、歌が抜けた後は、みんなの個性がばっと出る。この曲は、やってて楽しかった。みんなのキャラが出てる感じがします。たっくんがバンドに入ってきてから、みんながどんどん自分を自然に打ち出せるようになったっていうのはあるので、たっくんの曲はみんなががんばって、自分の個性を磨いてるのかな。いろいろチャレンジしている曲だと思います。ただ、たっくんもそれで苦労したと思うんですよ。レコーディングでも自分の曲なのに一番苦戦してたよね(笑)。フリーすぎちゃって、逆に自分らしさを出すのがけっこう大変だんじゃないかな。
戸川 やっぱ同時進行って難しいね。弾いているところ見てなかったでしょ?
CHUN2 聴いてたよ。
戸川、すごかったよ、俺(笑)。自分で言うのもなんだけど、エフェクターを2個同時に踏んで、しゃがんでタッピングで音を出して、(エフェクターのツマミを)ひねったりしてさ。
高本 客観的に見て、たっくんって口に出した以上は実行しなきゃって気持ちが強いんじゃないかな。でも、モチベーションがけっこう高いから、言っちゃった手前、苦労してるなってところはありましたよ。
(全員 爆笑)
高本 自分で自分の首を絞めてるなとは思いました。
戸川 そんなことないよ(笑)。
高本 たっくん、そんなことあったよ(笑)。ただ、苦労しながらもそれをこなすことで、自分が予想もしてなかったことを生み出せるってことを考えると、曲の作り方としては、いいやりかたなんじゃないかな。限界までやれてるんだと思いますね。
CHUN2 「URBAN COYOTE」は今回、一番ポップだけど、一番変態の匂いがしてますね(笑)。
戸川 みんなのお陰でカラフルになりました。それが最終的な僕の印象です。
―― ラストを飾る「EARLIY MORNING」はインストですけど、バンド・サウンドではないという意味では、他のどの曲とも違いますね。
高本 これは地味に一人でやったんですけど、コンセプトは1個だけあって、本だからページをめくるっていうふだんとは違う作曲方法があって、いつも作曲するとき、何かしら景色はあるんですけど、それが動くってことはこれまで考えたことはなかったんですね。でも、本ってページが動くなと思って、そういうものは歌ものじゃないほうが作りやすいと思ったので、全然違う方向に展開する曲を作りたいと思いました。あとは初めてのインストだったので、考えすぎると悩むからぱっとインスピレーションで作りました。
―― この曲はオルガンとピアノだけですよね?
高本 そうですね。細かいことを言うと、すごく偏屈なところがあって、ピアノも半音ずつで、ものすごく弾きにくい(笑)。簡単なんですけど、普通ピアノを弾く人はここに動かないだろうってところばかりで選んで動いてるんです。半音同士でどうですかって(笑)。普通の人がぱっと手癖で弾いたら、絶対やらないであろうって動き方をしてやろうっていう(笑)。
―― スタジオでレコーディングしたんですか?
高本 スタジオで。祐亮と僕で。サントラでもあるし、みんなの曲も入るし、何をやってもいいだろうって。M・ウォードが大好きなんですよ。変な話をすれば、ああいうふうな作家に思われたいってところがある(笑)。シンプルな芯を持っているけど、何でもトライするよねっていうああいうタイプの作家だと思われたい。ずっと好きなんですよね。何も変わってないようだけど、作品を作るたび更新しているなって。
CHUN2 うんうん。
高本 オールディーズ風のポップ・ソングからカントリー・ブルースな曲、ピアノのインストから歌ものまで何でもできて、どれもいいじゃないですか。ああいうのすごくいいなと思って。音楽が好きでやってるんだろうなって感じがしますよね。
―― 今回の作品で、そういう部分がかなりアピールできるんじゃないですか? まさかCBMDのアルバムにオルガンとピアノだけの曲が入っているなんて想像できないじゃないですか。
戸川 写真集のサントラならではですね。
―― 逆に言うと、自分達のレギュラーなアルバムを作る時は、ちょっとまじめになりすぎるようなところもあるんでしょうか?
高本 そうだったのかなと思って。さっきも言ったと思うんですけど、今回、この作品を作れたからこそ、もうちょっと自分達の中でのやっていいことって増えると思うんですね。でも、アルバムとしては一貫したものを作りたいから、また新しい目標ができたのかな。別に爪弾きの曲が入っててもいいし、ファズ・ギターがガンガンの曲が入っててもいいし。でも、アルバムという一つの世界観も作りたいので、今回みたいにいろいろな曲を作りながら、その作業をプラスしたらおもしろいだろうなとは思いますね。
―― もう好き勝手にめちゃめちゃやっても、CBMDの世界観は勝手にできあがるんじゃないですか?
高本 それは言いすぎですね(笑)。(ファンから)嫌われる可能性がある。意味がわからないって(笑)。
CHUN2 そうですねって言っておけばいいんだよ(笑)。
―― 次の作品が楽しみになるような作品になりましたね。
高本 そうですね。制作意欲も全然落ちてないので、ライヴもしっかりやりながら制作も続けていきたいですね。これからはもう制作は制作、ライヴはライヴというふうに分けなくてもいいんじゃないのかな。
インタビュー@山口 智男